マイホームを購入するにあたり、殆どの方が利用するのが「住宅ローン」となります。

過去記事「住宅ローンの基礎知識をお届け!」では、こちらの金融商品ならではメリット等について解説を行いましたが、この融資を利用するに当たって、住宅購入者の負担を軽減する特別な減税制度が設けられています。

そして、この減税制度は一般的に「住宅ローン控除」と呼ばれており、ネットなどを検索すれば制度を利用する上での様々な情報を得ることができますが、「解説を読んではみたものの、今ひとつ理解ができない・・・」といったいったお声もよく耳に致します。

そこで本日は「住宅ローン控除とは?適用条件や注意点を解説します!」と題して、その控除制度をひたすらにわかりやすく、そして詳細にご説明して行くことと致しましょう。

住宅ローン控除とは

 

住宅ローン控除の概要

まず最初に、住宅ローン控除という優遇制度の概要からお話ししてみたいと思います。

この制度は住宅取得から10年の間に渡って、年末に残っているローンの残高に一定の割合(%)を掛けた金額を、所得から控除することができるという代物です。

つまり、給料で500万円の収入があり、住宅ローン控除額が40万円であった場合には、年収を460万円として所得税が課税されることとなり、節税効果が期待できることになります。

ちなみに実際に住宅ローン控除の適用を受ける場合には、購入した後に確定申告を行う必要がありますが、翌年以降は年末調整で控除額を差し引くのみとなりますから手続きも非常に簡単です。

なお、ローン控除額の計算方法ですが、消費税が8%となって以降(2014年4月以降)の購入であれば年末のローン残高に1%を掛けた金額(それ以前に購入された方の中には異なる割合のケースもあります)となり、この控除が10年に渡って可能となります。

更に消費税が10%となって以降(2019年10月以降2021年12月末まで)に入居の場合には、11年目から13年目まで「ローン残高の1%」または「消費税が8%だった場合との差額分×1/3」のどちらか低い方を所得税から控除することができるのです。

さて、このように解説すると「住宅ローン控除はマイホームさえ購入すれば誰でも当たり前に受けられる減税措置」のように感じられますが、実際には限度額や適用できる物件の条件等に細かな規定が存在しています。

そこで次項では、新築・中古など物件の種類別に適用条件や控除可能額についてご説明してまいります。

 

住宅ローン控除適用の条件

では早速、新築や中古などケースごとにローン控除のお話をさせていただきたましょう。

新築物件(新築建売や新築分譲マンション)

住宅ローン控除が適用される新築物件の条件は下記の通りとなります。

  • 公簿の床面積(登記簿上の面積)が50㎡以上
  • 購入後6ヶ月以内に入居し、その年の年末まで住んでいること
  • 床面積の50%以上が住居であること(店舗などが50%以上を占めてはいけない)
  • ローンを組んだ人の年収が3000万円以下であること
  • 借入期間が10年以上であること
  • 控除対象となるローンの残高上限額は4000万円

※2021年の税制改正により、公簿床面積が40㎡以上の物件について住宅ローン控除が適用されることとなりましたが、この場合の年収制限は1000万円以下となります。

なお、新築物件で1年に適用できる控除額の限界は40万円(控除対象残高上限額4000万円×1%)となっていますから、10年間で最大400万円の控除が可能となります。

ではここで、「購入した年の年末に4000万円の残債があったケース」にて具体的な控除額のシュミレーションをしてみましょう。

ちなみに、物件を購入した最初の年の控除額は4000万円×1%=40万円という計算です。

そして翌年末の残債が3800万円まで減っていれば、3800万円×1%=38万円の控除を受けられることになります。

こうして毎年同じことを繰り返し、10年目の年末の残債が2000万円であれば、2000万円×1%=20万円の控除をもって、住宅ローン控除の適用が終了することになるのです。

また、ここまでご紹介した控除は一般的な新築住宅が対象となりますが、購入した物件が「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」という特殊な建物となっている場合については、最大控除額が1年につき50万円(控除対象となる残高上限が5000万円)、10年で最大500万円に増額されます。

更に「住宅ローン控除の概要」の項にて解説した通り、消費税が10%となって以降に入居している場合には13年間の控除が受けられますので、一般の新築住宅で最大520万円、「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」ならば最大650万円もの所得税控除が可能となるのです。

中古住宅

続いて中古住宅でのケースをご紹介いたしますが、適用条件は新築住宅の際に解説したものと同様となります。(床面積50㎡以上【40㎡以上】、50%以上が住居である等)

但し中古住宅の場合には、更に下記の条件も付加される点に注意が必要です。

  • 築年数が20年以内
  • 築20年以上の木造等の非耐火建築物(マンション等の耐火建築物は25年以上)については、耐震基準適合証明や住宅性能評価書を取得していること、または瑕疵保険に加入していること
  • 過去に誰かが住んでいた物件であること
  • 売主が親族であったり、贈与で受け取った物件でないこと

そして控除可能額についても、中古物件は気を付ける点があります。

それは物件の売主が「不動産業者であるか」「一般の方であるか」によって控除額の上限が変わって来るという点です。

売主が不動産業者の場合は、新築の場合と同様に一般の住宅で年間最大40万円、10年で400万円、認定住宅で年間50万円、10年間で500万円となります。(消費税10%以降の入居で13年間)

ところが一般の方が売主の場合には、売買の際に消費税が課税されていないため一般住宅で年間最大20万円(控除対象となる残高上限が2000万円)、10年で200万円へと減額されてしまいますし、認定住宅のケースでも年間30万円(控除対象となる残高上限が3000万円)、10年で300万円となってしまうのです。

リフォームの場合

さて、この住宅ローン控除ですが実は自宅のリフォームや増改築にも利用できる場合があります。

ちなみに減税制度が適用となる条件は、購入した際と同様に床面積50㎡以上であることに加え、100万円以上の経費の掛かった一定規模の工事であることが必要です。

なお控除額についてはローン残高×1%の年間最大40万円(控除対象となる残高上限が4000万円)、10年で400万円という新築と同じ基準が適用されます。

 

また一方で、自宅をバリアフリーや2世帯住宅に改築したり、太陽光発電システムなどを導入する工事については、『ここまでご紹介して来たものとは異なるローン控除制度』が存在します。

「バリアフリー」「多世帯同居」「太陽光発電」共に250万円までのローン残高を限度に、2%を掛けた金額を5年に渡って控除することが可能です。

但し、上記の工事を単体で施行するケースは少ない(他のリフォーム工事と同時に行うことの方が多い)でしょうから、一般の工事(屋根の葺き替え、外壁工事等)に関しては1000万円からバリアフリー工事等に掛かる費用を差し引いたローン残高を上限として、1%の掛け率にて控除額を計算するルールとなります。

よってこの方式では、最大限に控除を利用した場合でも「バリアフリー」「多世帯同居」「太陽光発電」(250万円×2%)+その他工事(750万円×1%)=年間12.5万円の控除、5年で62.5万円が控除額の限度となるのです。

 

ちなみに、本項でご紹介した「通常のリフォームローン控除」と「バリアフリー・多世帯同居・太陽光発電等のローン控除」は、利用者がどちらを適用するか選択できることになっています。

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こんな場合は住宅ローン控除利用不可

さて、前項にて住宅ローン控除の細かな条件等をご説明してまいりましたが、実は他にも「控除の適用が受けられないケース」が存在します。

不動産取引を行っていると、時折こうしたパターンを見掛けますので本項では陥りやすいローン控除適用不可の例を見ていきましょう。

3000万円の譲渡所得控除との併用

既にマイホームを保有しており、その物件の売却にあたって3000万円の所得控除の特例を利用してしまうと、次に買う物件にて住宅ローン控除の適用を受けることができません。

但し、やり方を工夫することで3000万円控除とローン控除を併用することも不可能ではありませんので、ご興味がある方は別記事「住宅ローン控除と3000万円控除を同時に受ける裏技をお教えします!」をご参照ください。

なお、買い替えを行った際に未だ住宅ローン控除を利用中(10年以内の期間中)で、ローン控除を中止して3000万円控除を利用したいという場合には、これまで受けて来たローン控除に対して修正申告を行うことで、3000万円の譲渡所得控除が利用可能となります。

マイホームを購入したのに転勤を命じられた

「住宅ローン控除の適用の条件」の中でもお話しした通り、「購入後6ヶ月以内に入居し、その年の年末まで住んでいること」が本制度を利用する上での重要な要件の一つとなっています。

しかしながらマイホームを購入したものの、会社に転勤を命じられた場合には対象物件に住み続けることができなくなってしまいますよね。

実はこれまで、こうしたケースでは住宅ローン控除の利用を諦めざるを得なかったのですが、2016年に法改正が行われ、状況によって本制度の適用を受けることができるようになったのです。

なお住宅ローン控除の適用を認めてもらうためには、「勤務先から転勤を命じられる」等のやむを得ない事情、そして「単身赴任によって借入れをした本人は対象物件に住めないが、家族は引き続き住み続けられる」などの一定の生活形態となっていることが要件となります。

中古住宅で耐震基準適合証明書等が入手できない

中古住宅の場合、木造で築20年以上、マンションなら築25年以上の物件については住宅ローン控除の利用に際して、耐震基準適合証明書等が必要である旨を解説いたしました。

しかしながら、この耐震基準適合証明書の取得に当たっては、実は少々厄介な問題が存在しています。

そもそも耐震基準適合証明書とは、行政が指定する検査機関等が発行する「建物が現在の耐震基準をクリアーしていることを証明する書類」となりますが、その取得には現地調査や書類上の審査が必要です。

その上、耐震基準適合証明書発行の審査を受けるためには物件の売主の申請が必須となりますから、これを知らずに建物の引渡しが先行してしまうと、この時点で控除が受けられなくなってしまいます。

更には、売主が耐震基準適合証明書の取得に必要な調査に協力してくれないケースや、調査を受けてみたら「大規模なリフォームを行わないと証明書が発行できないことが発覚する」など、この耐震基準適合証明書を巡っては様々なトラブルが発生しているのです。

こうしたトラブルを避けるためにも、売買契約を締結する前に売主や仲介業者と綿密な打ち合わせを行っておくことが重要でしょう。

ちなみに既存住宅の瑕疵保険へ加入していれば、耐震基準適合証明書が取得できていなくとも住宅ローン控除の適用を受けることが可能であり、過去記事「インスペクションと瑕疵保険について解説いたします!」でもお話ししたように『現在はインスペクションと瑕疵保険への加入が中古物件取引のスタンダードなスタイル』となりつつありますので、今後は本項でご紹介したような問題は減少の一途を辿ることになるはずです。

住宅ローン控除の申告を忘れた

こちらも記事の冒頭でご説明いたしましたが、ローン控除の適用を受けるには確定申告を行うことが必要です。

そして確定申告を怠れば「当然控除は受けられない」ことになりますが、こうしたケースでも「まだやれること」は残っています。

実は税務署に嘆願書を提出することによって、時折、申告を忘れた場合でも住宅ローン控除の適用が許可されることもあるのです。

但し、これはあくまでも税務署の温情的な配慮によるものですから、あくまでも「ダメで元々」の精神でチャレンジしてみるしかありません。

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住宅ローン控除まとめ

さてここまで、住宅ローン控除についての解説を行ってまいりました。

住宅ローン控除はあまりにメジャーな減税制度であるが故に「住宅購入者なら誰でも気軽に受けられる税制優遇」といったイメージをお持ちのことと思いますが、掘り下げてみるとなかなか奥深いものがありますよね。

そして、マイホームが一生に一度のビッグなお買い物であるとすれば、住宅ローン控除も一生に一度の大切な減税制度ということになりますから、正しい知識を身に付け、そのメリットを存分に味わえるようにしておきたいものです。

ではこれにて、「住宅ローン控除とは?適用条件や注意点を解説します!」の記事を締め括らせていただきたいと思います。