賃貸物件に係わる不動産業者の業態と言えば、「客付け業者」と「賃貸管理業者」が挙げられます。
そして、先日お届けした記事においては、賃貸の営業会社(客付け業者)の仕事内容についてご説明をさせていただきましたので、
本日は「賃貸管理会社の仕事内容をご紹介いたします!」と題して、元付け業者の業務内容について解説してみたいと思います。
賃貸管理会社とは
では、まず最初に「そもそも賃貸管理会社とは何なのか」という点からお話を始めましょう。
管理会社の仕事内容を簡単にご説明するならば、アパートや賃貸マンションをお持ちの大家さんからの依頼を受け、
- 空室の入居者募集
- 新規契約の締結
- 契約更新
- 退去手続き
- 物件の維持管理
- 賃料の集金
などの業務を行うこととなります。
よって、先日ご紹介した客付け会社の業務を「攻めの仕事(お客様を獲得して、お部屋を決める仕事)」と表現するならば、管理会社はその相手方となる「守りの仕事(客付け業者がお客様をご案内する物件の管理を行う仕事)」がメインとなるでしょう。
ちなみに賃貸物件の管理形態には「契約管理」と「入金管理」という2つの種類があり、その違いによって管理会社が請け負う業務内容についても
- 新規入居者募集
- 賃貸借契約締結
- 更新契約の締結
- 上記の「契約管理」における全ての業務
- 物件の維持管理業務
- 立ち会い等の退去関連業務
- 賃料の収納代行、滞納賃料の督促業務
以上のような違いが生じてきます。
また、管理形態の違いよって報酬の発生条件についても
- 契約管理/新規契約、更新契約というイベントごとに単発の報酬を得る(新規契約時に広告宣伝費【通常・家賃1ヶ月分】、契約更新時に事務手数料【通常、2年毎の更新時に月額賃料の半月分】)
- 入金管理/毎月の賃料の何%といった固定収入(物件によって異なるが賃料の3%~5%程度が相場)
上記のような違いが生じるのが一般的です。
ちなみに、賃貸管理会社と言っても「一人の社員がフルタイムで物件管理の仕事のみをしているケースは意外に少ない」のが実情です。
余程の管理物件数を誇っている会社であれば管理業務専属の社員を雇用しているでしょうが、多くの会社では、営業マンが個々に担当の管理物件を抱えながら、客付け業務も同時にこなしているのが通常でしょう。
但し本日の記事では、管理業務の内容に焦点を絞って解説を行いますので、こうした実情は考えずにお話を進めることにいたします。
賃貸管理会社の業務
ここまでの解説にて管理業務の概要についてはご理解いただけたことと思いますので、本項ではより具体的に各業務の詳細を見て行きましょう。
空室の入居者募集業務
賃貸管理の営業マンがまず一番に行うべきは、現在空室となっているお部屋の募集業務です。
不動産屋さんには、レインズ・アットホームなど不動産業者専用の空室情報共有ツールが用意されていますので、募集図面を作成した上で、こうしたメディアを利用して客付け業者への物件情報提供を行います。
ちなみに、これ以外にもスーモやヤフー不動産など「お部屋を探している方に向けて直接的な広告を発信できる有料媒体(賃貸物件のポータルサイト)」もありますので、必要に応じてこれらに掲載を行い、お客様を募ることになるでしょう。
こうして募集を行っていると、時には一般のお客様から直に物件へのお問い合わせを頂くこともありますが、実際に成約に結び付くことは意外と少ないので、レインズ・アットホーム等の媒体を見た「客付け業者からの問い合わせを待つ」ことの方が多くなるはずです。
一方、レインズなどで空室情報を入手した客付け業者が「この物件は手持ちのお客様のご条件にピッタリだ」と判断すれば、すかさず管理会社に問い合わせを入れ、物件の最新の募集状況の確認(未だお申込み等が入っていないかの確認)を行って来ます。
よって、「●●アパートの●号室はございますか?」という客付け業者からの問い合わせがあれば、管理会社は「ございます」「申込みが入っております」など状況に合わせて返答をすることになるでしょう。
*近年では管理業務のデジタル化に伴い、ネット上からの手続きで物件確認を行うケースも増えつつあります。
また、ここで「実際にお部屋を見たい」と言われれば、名刺などをメールやFAXで送ってもらい、相手の身分の確認をした上で「お部屋の鍵」の在処を教えることになります。
通常、物件の鍵は空室の「ドアノブ」や「パイプスペース」などにダイヤルロック式の『キーボックス』と呼ばれる鍵保管用器具を設置し、このキーボックスの暗証番号を客付け業者に伝えることで、現地での鍵の受け取りが可能(鍵の現地対応が可能)な状態としておくのが一般的です。
但し、分譲マンションなどでオートロックが付いている物件に関しては、キーボックスの設置が不能な場合もあるため、こうしたケースでは鍵を管理会社にて保管し、ご案内の際は客付け業者にこれを取りに来てもらうことになります。
このようにして内覧が行われ、お部屋を見たお客様に物件を気に入っていただければ、いよいよ入居のお申込みが入って来くことになるでしょう。
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新規契約の締結業務
こうして入居申込がなされると、管理会社は
- 入居審査の実施
- 借主へ向けた契約金精算書、必要書類のご案内の作成
- 重要事項説明書の準備
- 賃貸借契約書の準備
- 借家人賠償保険の申込み準備
- 賃貸保証会社との保証契約の準備
- 連帯保証人への連絡と必要書類の請求
- 引渡し前のお部屋の確認
- 鍵の引渡し
などを行うことになります。
入居審査については、賃貸保証会社に丸投げするケースも増えつつありますが、本来は管理会社が入居希望者や連帯保証人(または緊急時の連絡先)への電話連絡や面談を行い、その結果をオーナー様に伝えて、入居の可否の判断を仰ぐことになるでしょう。
更に、オーナー様からのOKが出ても、「申込み内容に虚偽の記載などがないか」のチェックを行うことも重要です。
このチェック作業も管理会社の仕事となりますから、申込人や連帯保証人への電話連絡、勤め先の在籍確認などを契約前に済ませておきましょう。(近年では勤務先への在籍確認に応じてもらえないケースも多いので、社員証などによって確認を行います)
こうして審査を無事に通過した申込人に対しては、客付け業者を介して契約金のご案内(精算書)、契約時の持ち物の確認、契約日時の設定を行うと共に、同時進行で賃貸用重要事項説明書や賃貸借契約書の作成を行うことになります。
契約当日は、申込人が一人で来店(客付け業者は同伴しない)しますので、重要事項説明に契約書の読み合わせ、賃貸保証会社との契約や借家人賠償保険の手続き等を済ませて、鍵の引渡しとなります。
また契約終了後は、申込人が署名・捺印をした契約書類を取りまとめ、契約金と共にオーナー様へ届けることとなり、ここで初めて広告宣伝費を得ることになるのです。
なお、入居後のクレームがあれば大家さんに代わって窓口にならなければなりませんし、退去となれば立合いを行ったりと、この先長い長い管理業務が待ち構えています。
契約更新業務
賃貸借契約は通常2年ごと(事業用物件では3年ごとが多い)に更新時期を迎えますので、少なくと契約期間満了の1ヶ月前にはオーナー様と入居者へ連絡を入れて「契約更新の意思があるか」を確認します。
そして、両者に更新の意思があれば更新契約書等の必要書類を作成して、更新契約を締結します。(オーナー様から更新を拒絶することは困難ですが)
なお、報酬については借主がオーナーへ支払う更新料の半額程度を事務手数料として、管理会社が受け取るケースが多いでしょう。
ちなみに、更新契約に際して対象物件に「差押え」などの登記がされているのを知らずに契約が成立してしまうと、管理会社は注意義務違反で借主から損害賠償請求を受ける場合もありますので、更新に際しても必ず登記簿上の調査を怠らないようにするべきです。
退去に係わる業務
新規募集があるならば、必ず「退去」も発生するものです。
そして、入居者から退去予告の連絡が入れば、
- オーナー様へ退去のご報告
- 未納家賃の有無の確認
- 借主からの解約届の取得
- 退去立会い
- 敷金、原状回復費用の精算
- 原状回復工事の手配
以上のような退去関連業務を行うことになります。
退去の連絡があれば、まずはオーナー様へご連絡を入れなければなりませんが、この際に「滞納家賃はないか」「解約予告期限は守られているか」といった点にも注意を払うべきでしょう。
更には後々のトラブルを避ける意味でも「借主からの書面による解約届の提出」を求めておく必要があります。
そして具体的に退去日が決まれば、お部屋から荷物が出たタイミングで退去立会いを行い、お部屋のコンディションに応じた原状回復と敷金返還の相談を行い、書面の取り交しと精算を完了します。
なお、原状回復工事をオーナーから依頼された場合は、工事業者の手配を行って新規募集に備えたリフォームを行うことになるのです。
ちなみに、賃貸物件の解約に関しては別記事「賃貸退去立会いのポイントを解説!」にて、退去立会いのノウハウについては「賃貸契約解約の流れをご紹介いたします!」の記事にて詳細な解説を行っておりますので、是非ご一読ください。
物件の維持管理業務
ここまで入退去や更新に関する業務をご紹介してまいりましたが、ここでようやく物件の維持管理に関する業務のご紹介となります。
なお、一口に維持管理といってもその業務は非常に多岐に渡るものとなり、
- 定期的な物件への巡回
- 巡回において発見した問題点(「修繕が必要な個所」や「共用部分利用上の問題」など)についてオーナーへの報告
- 入居者や近隣住民からのクレーム対応
- 注意事項等、入居者への周知が必要な事項に関しての貼り紙の作成
- 問題を起こす入居者がいれば、面談や電話などでの直接的な注意喚起
- 空室の状況確認
- 定期清掃やエレベーター点検などの手配
以上が主な仕事内容となるでしょう。
そして、数ある仕事の中でも最も重要なのが「定期的な物件への巡回」であり、これを繰り返すことにより「建物の不具合」や「問題のある入居者」を早期に発見し、『クレームに発展する前に問題の芽を摘み取る』ことに繋がりますので、巡回は物件の維持管理業務の基本と言っても過言ではないのです。
賃料の集金業務
そして、「入金管理」の名称の由来ともなっているのが集金業務となりますが、近年では保証会社を利用するケースが圧倒的に多いため、管理会社が直接賃料を集金し、督促を掛けるというシーンは激減しつつあります。
但し、古い入居者の中には未だに賃貸保証会社を利用していない方も多いですから、滞納が発生した際には、
- 電話連絡やお部屋への訪問
- 内容証明等による督促状の送付
- 連帯保証人への連絡
- オーナーへの弁護士や債権回収業者の紹介
などを行って、集金を進めていくことになります。
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賃貸管理会社まとめ
さて、これまで見て来たのが管理会社の主な仕事となります。
なお、記事中でご紹介した以外にも、客付け会社に営業を掛けて「優先的にお客様をご案内してくれるようお願いする」などの業務も加わってきますので、元付け業者は正にアパート経営の縁の下の持ち主的な存在と言えるでしょう。
そして管理会社に勤務するならば、不動産の基本的な知識に加えて、退去立会い時の原状回復工事費用の交渉や、お部屋のリフォームの段取りを組む都合上、やや建築業者さん的なスキルも必要となる職種かもしれません。
なお、より本格的に管理会社の業務内容や仕事のノウハウを習得したいという方に向けては、管理人が出版しております下記のアマゾン・Kindleの電子書籍に詳細を記してありますので、是非お手に取っていただければ幸いです。
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不動産賃貸元付け(管理)業務マニュアル【後編】: 賃貸管理業務のノウハウ!全てお教えします! Kindle版
ではこれにて、「賃貸管理会社の仕事内容をご紹介いたします!」の知恵袋を閉じさせて頂きたいと思います。