新たにお部屋を探すことがあるならば、当然住み慣れた賃貸物件を退去する日が訪れることもあるものです。

ただ、入居までのプロセスを解説したウェブサイトが多数存在するのに対して、退去までの流れを扱ったサイトは意外にその数が少ないように感じます。

そこで本日は、「賃貸契約解約の流れを解説いたします!」と題して、解約の申し出から事前の手続き、退去の立会いとその後の事後処理についてわかりやすくご説明いたします。

賃貸契約解約の流れ

 

賃貸借契約解約の流れ

では早速、退去の手続きの進め方を見てまいりましょう。

なお、今回ご説明する契約解約の流れはその対象が居住用物件、個人契約の場合とさせていただく上、「退去立会い」「敷金精算・原状回復費用の負担交渉」などについての詳細は、各種イベントごとの特集記事をご参照願えればと思います。(記事内にリンクが貼ってあります)

解約予告

賃貸借契約の解約手続きの全ては入居者からの連絡(解約予告の連絡)がその幕開けとなります。

なお、電話やメールなどで解約予告がなされるのが通常ですが、後々「何時予告の連絡をしたか」で争いとなることもありますので、『解約届』などの書式を作成して、これに入居者から署名・捺印をもらう管理会社が多いでしょう。

ちなみに、この解約の連絡に際しては

  • 退去の予定日
  • 退去立会いの日時
  • 退去精算金の振込み口座
  • 転居先の住所
  • 転居の理由

などを聞かれることになりますので、回答の準備をしておくべきです。

また、通常の賃貸借契約書では解約予告日から1ヶ月間は賃料が発生する「1ヶ月前予告の条項」が入っているはずですので、解約の連絡をする際には賃貸借契約書の内容をチェツクした上、その場で「いつまで賃料が発生するか」を確認しておきましょう。

※例えば1ヶ月予告の契約で3月15日に解約予告をしたのであれば「4月15日までは賃料が発生する」ことになります。

物件オーナーへの報告

こうして解約予告の連絡を受け付けた管理会社は、物件のオーナーへ連絡を入れることになります。

そしてこの際「解約の予告が入った」旨を伝えると共に、賃料の入金状況を把握していない場合(入金管理を請け負っていない場合)には「何月分まで賃料が入金済みであるか」を物件オーナーに確認し、もしも滞納賃料があるならば「不足分を立会日までに振込む」ように入居者へ督促がなされることになります。

退去に関する案内状の送付

解約予告がなされた後には、管理会社から入居者へ向けた「退去手続きに関する手引き書」が送付されることも少なくありません。

この書面においては「水道・電気・ガス等の使用停止に関する連絡先」や「退去立会いに際しての持ち物」などが記されているはずですので、管理会社の指示に従い退去立会いに向けての準備を進めましょう。

引越しの準備

こうして解約に向けてお話が進み始めたら、引越しに向けて具体的な準備を開始しましょう。

なお、具体的な準備の内容としては

  • 住民票の転入転出手続き
  • 運転免許証の住所変更
  • 健康保険や年金の住所変更
  • お部屋の簡単な掃除
  • 引越し業者の手配

などが主なものとなるでしょう。

お部屋の掃除については「どうせリフォームするのだから、入居者が行う必要はないだろう」と思うかもしれませんが、お部屋を簡単に掃除するだけでも、管理会社が受ける印象は大きく変わりますので、退去立会いを有利に進めるためには意外に効果のある手段であると思われます。

また、退去立会いにおいてはお部屋の荷物が全て搬出されている必要がありますので、引っ越しの手配を行う場合には「引っ越し作業の開始時間」や「完了予定時間」を確認しておきましょう。

立会い日の確定

さて、引っ越し会社の手配が完了したなら、管理会社へ連絡を入れて退去立会日時の打ち合わせを行いましょう。

前項で解説した通り、立ち会いは荷物の搬出後に行われますので、おおよその引っ越し作業完了時間が立会い日時となるケースが殆どです。

ちなみに引っ越しのフリープラン(作業開始時間が確定できない分、費用が安価になるプラン)を利用する場合には、当日まで作業時間が確定できず、引越日に立会いができないケースもありますので、こうしたプランを利用する際には早めに管理会社へ申し出る必要があるでしょう。

※退去当日に立会いが不能な場合には、後日改めてお部屋に集合するか、リモートなどの方法で立会いが行われます。

また、この打ち合わせの際には退去立会いに必要な持ち物についても再度確認しておくべきです。

なお、立会時の主な持ち物としては

  • お部屋の鍵
  • 印鑑
  • 退去精算金返金用口座の通帳
  • お部屋の備品(エアコンのリモコン、設備のマニュアル等)
  • 引っ越し先の住所がわかる資料

などが挙げられるでしょう。

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退去立会い

さて、退去立会いの当日を迎えれば管理会社と待ち合わせをして「物件内部の確認」を行います。

確認の目的は「室内の汚損破損等の状況を確認して、原状回復費用の負担割合について相談を行うこと」となりますが、原則として入居者は

  • 自然損耗/通常使用により生じる汚損破損
  • 経年変化/時間経過により生じる汚損破損

については、責任を負わないのが通常です。

但し、賃貸借契約書等に特別な定め(特約)がなされている場合には、この原則が通じないケースもありますので、立会い日を迎える前に一度契約書の内容に目を通しておくべきでしょう。

※退去立会のポイントについては別記事「大家さん向け!退去立会いの注意点を解説いたします!」にて解説を行っております。

そして、お部屋の確認が完了した後には

  • 転居先住所の確認
  • 電気・水道・ガス等の停止連絡完了の確認
  • 退去精算金振込み口座の確認
  • 残置物の有無、物件の設備を持ち出していないかの確認
  • お部屋の鍵の返却

以上の作業が行われ、退去立会いはおおよそ完了です。

なお通常は、立会いの場で原状回復工事費用の負担分を取り決めるのは困難(原状回復の見積もりを現場で作成するのは困難)ですから、お部屋の状態を確認した上で「追って連絡」ということになるのが通常でしょう。

※近年では、立会いにリフォーム業者を同席させて「その場で原状回復費用の見積もりと借主の負担分」を算出するケースも増えつつあります。

原状回復のための見積書の作成

退去立会いが完了して鍵の返却を受けたなら、管理会社はリフォームを担当する工事業者に依頼して、原状回復工事の見積書を作成してもらいます。

そして見積書をまずは物件オーナーに確認してもらい、「原状回復費用として借主へ請求する負担分」の取り決めを行います。

※未だに過剰な原状回復費用を請求しようとする大家さんもいますので、管理会社はこの場で敷金精算の実情などをオーナーへ説明することになります。

ちなみに、どのような費用を敷金から差し引くことができるか(原状回復費用として請求できるか)については、過去記事「賃貸敷金トラブルについて解説いたします!」をご参照いただければと思います。

借主との交渉開始

原状回復工事の見積書を物件オーナーに確認してもらい、借主に請求を掛ける原状回復費用の金額が決定すれば、早速、入居者との交渉に入ります。

近年ではメールやラインで見積書を送り、全てをネット上のやり取りで済ませる方も少なくありませんが、文字媒体での交渉はトラブルを招くことが少なくありませんので、事前に送付した資料を見ながら、電話やビデオ通話を利用して打ち合わせを行う方のがおすすめです。

なお、ここで素直に「オーナーサイドからの提案」に入居者が納得できれば問題はありませんが、借主が異議を申し立てるようならば、再び大家さんとの交渉が続くこととなります。

ちなみに、ここで借主が注意したいのは「単に納得がいかない」と言うのではなく、「どの点が納得できず、原状回復費用がいくらなら承服できるのか」を必ず具体的に伝えることです。

また、管理会社は必ずしもオーナーの味方という訳ではありませんので、専門家として与えてくれるアドバイスにはある程度耳を傾けることも重要でしょう。

そして時にはこの貸主・借主間のラリーが果てしなく繰り返され、最悪の場合には訴訟へと発展することもあり得るのです。

交渉成立、書面の作成

そして交渉の末に、物件オーナーと借主間での原状回復費用負担分の合意が取れれば、後は事務的な手続きのみとなります。

なお、後々「言った言わない」といったトラブルにならないよう合意内容を確認するための「敷金精算の覚書」が作成されるのが通常です。

ちなみに記載される内容については、

  • 敷金、返還賃料の金額
  • 原状回復費用における借主負担分
  • 返金額(または借主の追加負担額)
  • 精算完了による賃貸借契約終了の確認
  • 貸主・借主間に債権債務が存在しない旨の確認

というのが一般的でしょう。

なお、敷金を全て投げ打っても借主が原状回復工事負担分が賄えない場合には、物件オーナーの口座を記載し、「賃借人が不足分を支払うことで賃貸借契約が終了します」という覚書の内容になります。

こうして退去時精算金の授受が完了すれば、賃貸借契約の解約手続きは全て終了したことになるのです。

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賃貸契約解約の流れを解説まとめ

さて、ここまでお話しして来た内容が、賃貸契約解約の流れとなります。

近年では、敷金の精算などに際して紛争に発展するケースも決して珍しくありませんから、立会いに臨む際には充分に注意を払っていただきたいところです。

また、新たにお部屋を借りる際には前向きな気持ちで手続きを進められるのに対して、退去手続きとなると「何となくおざなりになってしまう」のが世の常でしょうが、『立つ鳥跡を濁さず』の精神でことに臨んでいただければ幸いです。

ではこれにて、「賃貸契約解約の流れを解説いたします!」についての知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!