賃貸解約の流れとは?退去連絡から立会い・敷金精算まで管理会社の実務を解説

賃貸物件に入居していれば、いつかは迎えることになる「退去」。入居者から見れば、「管理会社へ解約の連絡をして、引っ越しをして鍵を返せば終了」というイメージがあるかもしれません。

しかし、管理会社の実務ではそう簡単ではありません。解約の申し出を受けた後には、次のように多くの業務が発生します。

  • 解約予告期間の確認
  • 解約日の確定
  • オーナーへの報告
  • 賃料や滞納状況の確認
  • 退去立会いの日程調整
  • 室内状況の確認
  • 原状回復工事の見積り
  • 借主負担額の算定
  • 敷金や日割り賃料の精算

しかも、この一連の手続きで確認を怠ると、「解約日はいつだったのか」「この傷は入居者が付けたものなのか」「なぜこの修繕費を負担しなければならないのか」といったトラブルにつながることもあります。

そこで今回は、不動産管理の実務経験をもとに、賃貸住宅の解約受付から退去、原状回復、敷金精算までの流れを順番に解説していきます。

なお、解約や退去を含めた賃貸管理会社の基本的な仕事内容については、関連記事「賃貸管理会社の仕事内容とは?現役不動産会社が業務内容を詳しく解説」でもご紹介しています。

賃貸解約の流れとは

目次

賃貸解約の大まかな流れ

一般的な居住用賃貸物件では、次のような流れで解約手続きを進めます。

  1. 入居者から解約の申し出を受ける
  2. 契約書を確認して解約日を確定する
  3. 解約届を提出してもらう
  4. オーナーへ解約を報告する
  5. 賃料・滞納状況などを確認する
  6. 退去案内を送り立会日時を調整する
  7. 退去立会いを行う
  8. 鍵の返却を受ける
  9. 原状回復工事の見積りを取る
  10. 借主負担額を確認する
  11. 敷金・返還賃料などを精算する

実際には管理会社や契約内容によって多少順番が前後しますが、おおむねこのような流れになります。

管理会社のポイント

退去トラブルを防ぐためには、立会い当日よりもむしろ「解約受付の段階」から正確に記録を残しておくことが重要です。

1.入居者から解約の申し出を受ける

賃貸契約の解約手続きは、通常、入居者から管理会社への連絡から始まります。電話だけでなく、現在ではメールやWebフォームなどから解約を受け付ける管理会社も増えています。

ここでまず確認したいのが、次のような内容です。

  • 契約者名
  • 物件名・部屋番号
  • 解約希望日
  • 実際の退去予定日
  • 連絡先
  • 転居先
  • 敷金等の返金口座
  • 退去理由

ただし、この時点で入居者が希望する日をそのまま「解約日」と確定してしまうのは避けるべきでしょう。まずは契約内容を確認する必要があります。

2.契約書で解約予告期間を確認する

解約受付で特に重要なのが、賃貸借契約書に記載された解約予告期間です。居住用賃貸では「1か月前予告」となっている契約をよく見かけますが、すべての契約が同じとは限りません。

そのため、次の点を必ず確認します。

  • いつ解約の連絡を受けたか
  • 契約上、何日前までに予告する必要があるか

例えば1か月前予告の契約で、3月15日に解約の申し出を受けた場合には、契約内容によって4月15日頃まで賃料が発生することになります。実際の引っ越しが4月5日に終わったとしても、退去日と賃料が発生する解約日は必ずしも同じではありません。ここは入居者にも誤解されやすい部分です。

確認ポイント

短期解約違約金などの特約が付いている契約もあります。解約予告期間だけでなく、契約期間や特約欄まで確認しておきましょう。

3.解約届を提出してもらう

電話で解約連絡を受けた場合でも、管理会社としては解約届を提出してもらうのがおすすめです。口頭だけで手続きを進めてしまうと、後になって「そんな日に解約すると言っていない」「もっと前に連絡したはずだ」といった問題が起きる可能性があるためです。

解約届には、次のような内容を記載してもらいます。

  • 解約の申し出日
  • 契約終了日
  • 退去予定日
  • 転居先
  • 連絡先
  • 返金口座

現在では紙に署名・押印して郵送する方法だけでなく、Webフォームや電子的な解約受付を利用する管理会社もあります。大切なのは形式そのものではなく、「いつ、誰から、どのような内容で解約の申し出があったのか」を記録として残すことです。

4.物件オーナーへ解約を報告する

解約を正式に受け付けたら、物件オーナーへ報告します。一般的には、次のような内容を伝えます。

  • 解約受付日
  • 契約終了予定日
  • 退去予定日
  • 現在の賃料入金状況
  • 募集開始の予定

空室期間を短くするため、解約受付と同時に次の入居募集について相談を始めることもあります。管理会社に募集業務まで任されている場合には、募集条件や原状回復工事の予定などもオーナーと打ち合わせていくことになるでしょう。

5.賃料や滞納状況を確認する

退去前には、賃料の入金状況も確認しておきます。管理会社が入金管理まで行っている物件なら社内で確認できますが、オーナーが直接賃料を受け取っている場合には、オーナーへの確認が必要です。

滞納賃料がある状態で退去となれば、次のような項目をまとめて精算しなければならないことがあります。

  • 未払い賃料
  • 原状回復費用
  • 敷金
  • 日割り賃料等の返還金
管理会社の現場メモ

退去した後では入居者との連絡が取りづらくなるケースもあります。未払い賃料がある場合には、退去立会いの日まで放置せず、解約受付の段階から確認と督促を進めておく方が実務上は安心です。

家賃滞納がある場合の具体的な対応については、関連記事「家賃滞納時の管理会社の対応とは?契約内容によって異なる3つのケースを実務経験をもとに解説」でも詳しくご紹介しています。

6.退去案内を送付する

解約日が確定したら、入居者へ退去手続きの案内を送ります。内容としては、次のようなものが一般的です。

  • 引っ越しまでに行う手続き
  • 電気・ガス・水道等の停止手続き
  • 粗大ゴミ・残置物の処分
  • 退去立会いについて
  • 鍵の返却
  • 設備や備品の返却
  • 転居先・返金口座の確認

また、退去立会いを行う場合には、原則として家具や荷物をすべて搬出した状態で室内を確認します。そのため、引っ越し終了予定時間と立会時間を調整しておく必要があります。

7.退去立会いの日程を調整する

引っ越しの日が決まったら、退去立会いの日時を調整します。ここで注意したいのが、「解約日=退去立会日」ではないという点です。

例えば契約上の解約日が4月30日でも、入居者が4月25日に引っ越しを完了し、その日に鍵を返却するケースもあります。反対に、引っ越し業者の作業時間が確定しないなどの理由から、退去当日に立会いができない場合もあります。

管理会社によっては立会いを行わず、鍵の返却後に室内確認を行う場合もあります。

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8.退去立会いで室内を確認する

退去立会いでは、入居者と管理会社が室内を確認します。主な確認事項は次のとおりです。

  • 壁・天井
  • 床
  • 建具
  • キッチン
  • 浴室・洗面・トイレ
  • エアコンなどの設備
  • バルコニー
  • 残置物
  • 鍵
  • 備品

傷や汚れがあれば、写真を撮影して記録します。そして重要なのが、入居前の室内写真や入居時チェックシートとの照合です。

「退去時に傷があった」という事実だけでは、それを現在の入居者が付けたものなのか判断できない場合があります。入居前の写真が残っていれば、「入居時にはこの傷は存在していなかった」という客観的な資料になります。

反対に、入居時から存在していた傷であれば、それも確認できます。そのため退去精算を正確に行うためには、実は入居時の記録管理が非常に重要なのです。

傷や汚れについて原因を確認する

退去立会いでは傷を見つけるだけではなく、次のような点も入居者から確認します。

  • いつ頃付いたのか
  • どのような状況で付いたのか
  • 設備の故障や漏水などが原因ではないか

例えばクロスに大きな汚れがあった場合でも、その場で「これは全面張替えで○万円です」などと断定する必要はありません。クリーニングで除去できる可能性もありますし、張替えが必要になったとしても施工範囲や経過年数などを確認する必要があります。

実務では、「クリーニングで落ちれば問題ありませんが、落ちなければこの面の張替えが必要になる可能性があります。まずはリフォーム業者さんにも確認してもらいますね」といった説明に留める方が安全でしょう。

その場で費用を断定しない

退去立会いの目的は、まず室内の状態と事実関係を確認することです。補修方法や費用については、施工業者の確認や契約内容、経過年数などを踏まえて後から判断する方がトラブルを防ぎやすくなります。

退去確認書を作成する

室内確認が終わったら、確認した傷や汚れなどを退去確認書に記録しておきます。また、立会い時には家具などで隠れていた部分や、設備を詳しく点検して初めて判明する不具合もあります。

そのため、「立会い後に新たな損傷等が確認された場合には、貸主・借主で改めて協議する」といった内容を確認書に入れておく方法もあります。

そして立会い後に傷が発見された場合には、一方的に請求するのではなく、次のような資料や内容を入居者へ示して説明します。

  • 入居前の写真
  • 退去後の写真
  • 発見された場所
  • 補修内容

入居前と退去後の状態を写真で比較できれば、話し合いも進めやすくなります。

9.鍵の返却を受ける

退去立会いが終わったら鍵を返却してもらいます。スペアキーを作成している場合には、それらも含めて返却してもらいます。

また、次のような貸与備品についても確認します。

  • エアコンのリモコン
  • 設備の取扱説明書
  • 宅配ボックスのカード
  • 駐車場・駐輪場関係の鍵

鍵の返却は、管理会社にとって物件の明渡しを確認する重要な手続きですので、返却本数なども記録しておくとよいでしょう。

10.原状回復工事の見積りを取る

退去後はリフォーム業者などに室内を確認してもらい、原状回復工事の見積りを作成します。ここで重要なのが、工事費用のすべてを入居者へ請求できるわけではないという点です。

一般的には、次のようなものについては貸主側の負担となります。

  • 経年変化
  • 通常使用による損耗

一方で、次のようなものについては借主負担を検討することになります。

  • 入居者の故意・過失
  • 善管注意義務違反
  • 通常の使用方法を超えた使用による損傷

また借主に責任のある傷であっても、建材の経過年数や補修範囲などを考慮する必要があります。賃貸借契約書に原状回復に関する特約がある場合には、その内容についても確認します。

11.オーナーと借主負担額を確認する

工事見積りが完成したら、まずオーナーへ内容を報告します。ここで、「工事として必要な費用」と「借主へ請求できる費用」を分けて考えることが重要です。

例えば部屋全体のクロスを張り替える工事になったからといって、その工事費全額を借主に請求できるとは限りません。管理会社には、オーナーの希望をそのまま借主へ伝えるだけではなく、契約内容や原状回復の考え方を踏まえて適切に調整する役割もあります。

12.借主へ精算内容を説明する

借主負担額がまとまったら、入居者へ精算内容を説明します。その際には、「原状回復費○万円」と総額だけを伝えるのではなく、次のような内容をできるだけ分かりやすく伝えることが重要です。

  • どこの損傷なのか
  • なぜ借主負担になるのか
  • どのような補修をするのか
  • 負担額はいくらなのか

入居者から異議が出た場合には、その理由を確認します。その上で必要であれば、入居時・退去時の写真や工事見積書などを提示しながら話し合います。

13.敷金・返還賃料などを精算する

原状回復費用について合意できれば、最終的な退去精算を行います。精算内容には、次のような項目を反映します。

  • 預かっている敷金
  • 日割り賃料等の返還金
  • 未払い賃料
  • 借主負担となる原状回復費用
  • その他契約上必要となる費用

敷金から借主負担額等を差し引いて残額があれば返金し、反対に敷金だけでは不足する場合には不足分を請求します。精算内容について書面や電子データで記録を残し、返金または入金が確認できれば、一連の解約業務は終了となります。

解約業務でトラブルを防ぐポイント

ここまでの流れを見ると、退去時のトラブルを防ぐために重要なのは、最後の「敷金精算」だけではないことが分かります。特に管理会社として押さえておきたいのは、次のような点です。

  • 解約受付日時を記録する
  • 契約書・特約を確認する
  • 解約日と退去日を区別する
  • 滞納状況を早めに確認する
  • 退去時の室内写真を十分に撮影する
  • 傷や汚れの原因をヒアリングする
  • 入居前写真と比較する
  • 立会いの場で費用を安易に断定しない
  • 退去確認書を作成する
  • 原状回復工事費と借主負担額を分けて考える
現場を知るから、本当に役立つ。

退去精算で強いのは「記憶」ではなく「記録」です。入居前・入居中・退去時の写真、契約書、解約届、確認書などをきちんと残しておけば、何か問題が起きたときにも事実を整理しやすくなります。

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賃貸解約の流れまとめ

今回は、賃貸住宅の解約受付から退去、原状回復、敷金精算までの流れについて、管理会社の実務目線から解説しました。賃貸の解約は、単に入居者から鍵を返してもらえば終わりという仕事ではありません。

解約連絡を受けた時点から、契約確認 → 解約受付 → オーナー報告 → 退去準備 → 立会い → 原状回復 → 精算という一連の管理業務が始まっています。

そして退去時のトラブルを減らすために何より重要なのが、契約内容の確認と記録の保存です。特に入居前の室内写真は、退去時になって初めてその価値を実感する資料でもあります。

「この傷はいつからあったのか」「入居者に負担してもらうべきものなのか」という問題が発生したとき、写真や書面という客観的な記録があれば、貸主・借主双方に説明しやすくなります。

管理会社としては、退去立会いだけに力を入れるのではなく、入居開始時から将来の退去まで見据えて記録を残しておくことが、円滑な解約業務につながると言えるでしょう。

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