不動産取引の中で、売買と並んで大きな一ジャンルとなっているのが、賃貸という取引態様です。

取引件数で言えば、売買の数十倍、否、数百倍にも達するであろう賃貸の取引ですが、一般の方からするとその裏側まではなかなか見えないものでしょう。

そしてお客様の立場や、物件オーナー様の立場では見え辛い取引の裏側を知ることは、これから不動産業界への就職を目指す方や、不動産投資を始めようという方にも必ずお役立ていただけるはずです。

そこで本日は、不動産業者の立場から見た賃貸契約の流れについて解説してみたいと思います。

賃貸契約の流れ

 

不動産屋さん目線での入居までの流れ

賃貸取引の裏側をご紹介する前にまずご理解いただきたいのが、殆どの賃貸物件の契約には「元付け業者(管理会社)」「客付け業者」という、2社の不動産屋さんが係って来るという点です。

その立場の違いについての詳細は、過去記事「賃貸仲介の仕組みを知り、投資を有利に進めよう!」にてご確認いただければと思いますが、簡単に言ってしまえば、

「元付け業者」は物件の管理会社(大家さん側の不動産業者)のことであり、「客付け業者」はお部屋探しをするお客様を物件にご案内し、お申込み手続きのサポートをする業者(入居者側の不動産業者)ということになるでしょう。

なお今回の記事では、それぞれを「管理会社」・「客付け業者」という呼び名でお話を進めさせていただき、取引の形態としては居住用のお部屋、入居者は個人での契約であることを前提とさせていただきます。

客付け業者へお客様が来店

お部屋を探した経験がある方ならお解りかと思いますが、物件探しはまず不動産屋さんに出向くことから始まります。

ちなみに現在ではネット上に膨大な物件情報が掲載されていますから、「最初はネット検索から」という方も多いでしょうが、意思決定にはやはり現地を見る必要がありますから、不動産屋さんへの来店が必要という点だけは今も昔も変わりません。

そして客付け業者の社員は、来店したお客様に物件情報をご紹介し、内見したい物件があればそのままご案内(物件を見に行く)に行くという流れになります。

なお、この際に「自分の会社で管理している物件」で成約することができれば、客付け業者は「客付け業者と管理会社の2社の仕事を一手に行う」こととなりますが、こうしたケースはあまり多くありませんので、

他の不動産業者がレインズ・アットホームなどの物件情報共有媒体に掲載した物件情報をご紹介していくことになるでしょう。

また、物件情報のご紹介はしたもののご案内まで至らない時は、「連絡先を聞いた上、物件情報を継続してご紹介し続ける」という流れとなるのが通常です。

物件確認

さて、お客様に「このお部屋が見たい」と言われれば、まずは管理会社に連絡して、「物件がまだ成約していないか」の確認と「鍵の手配」をしなければなりません。

ここで「ご案内が可能」ということになれば、客付け業者は名刺を管理会社に送り、鍵の在処を教えてもらいます。

そして現地に「キーボックス」と言われる暗証番号ダイヤル付の鍵保管器具が設置されている場合には、お客様を連れて直接物件に向かうことができますが、

時には管理会社に鍵が保管されているケースがあり、このパターンでは『鍵を取りに行く手間が掛かる』ために、客付け業者にご案内を敬遠されることも多いでしょう。(現地に鍵がない物件には「案内をしない」という客付け業者も存在します)

物件案内

実際のご案内においては、電車や営業車でお客様を現地にお連れすることになります。(物件の立地にもよりますが)

そして、お客様と共に物件を見ながら、様々なセールストークを駆使して成約を目指すこととなるでしょう。

なお、ここで物件を気に入っていただければ、晴れて管理会社に「入居申込み」をすることになります。

申込み

今までにお部屋を借りたことのある方ならお解りのことと思いますが、申込みの段階になると、客付け業者は一旦自分の会社に戻ることになります。

これは物件の申込みに使用する「申込書」の書式が管理会社によって異なるためで、客付け業者は現地より「申込みをしたい旨」を管理会社に伝え、申込書の雛形を事務所にFAXやメールで送ってもらえるように手配します。

そして事務所に戻ったら、管理会社から届いた申込書に(お客様が)必要事項を書き込み、身分証明書などを添付した上で返送し、管理会社の審査を受けることになるでしょう。

なお、ここでありがちなのが「申込書の必要事項がその場で埋めきれない」という状況です。

連帯保証人・緊急時連絡先となる方の「勤め先」や「住所」などは入居希望者が把握していない場合も多いため、こうしたケースでは『書ける範囲で記入してもらい、不足した情報は追って連絡する』という形を取ります。

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入居審査

さて、ここからは管理会社の仕事となりますが、申込書を基に入居審査を開始します。

まずは、物件のオーナー様に連絡を入れて申込書の内容を確認してもらうことになるでしょう。

そして、オーナー様には申込人の勤め先や勤続年数、年収なども含めて総合的に検討していただき、「入居させるに足る人物であるか否か」の判断を下してもらいます。

また、管理会社やオーナー様の方針によって「100%賃貸保証会社利用(申込人の内容に係わらず保証会社への加入が必須条件)」というケースもありますが、お客様の強い希望で「連帯保証人による契約をせざるを得ないケース」もありますし、属性の悪いお客様に対しては「保証会社・連帯保証人のダブル保証」となることもあるでしょう。

ちなみに連帯保証人を擁立しての契約の場合には、管理会社は保証人への電話による意志の確認に加え、連帯保証人引受承諾書を送付して、署名・捺印(実印)の上、印鑑証明書(発行より3ヶ月以内のもの)を添付して返送してもらうように手配するのが通常です。

一方、賃貸保証会社を利用する場合には保証会社に審査の依頼を行い、ひたすら結果を待ち続けことになります。

審査通過

こうしたプロセスを経て入居審査を通過した暁には、契約に必要な契約金の明細(精算書)や必要書類の一覧を作り、客付け業者に送付します。

これを受け取った客付け業者は、入居者にその内容を伝え、契約日の日程などを調整して行くことになるでしょう。

そして契約日が決まれば、客付け業者の業務はここで終了となり、契約日は入居者が一人で管理会社に出向いて、賃貸借契約の締結を行うこととなるのです。(仲介手数料はこの段階で、客付け業者に振込支払いとなるのが通常でしょう)

但し、大家さん側の不動産業者である「管理会社の業務はここからが本番」となり、契約書・重要事項説明書の作成に、借家人賠償保険や賃貸保証会社の申込書の手配などの作業が始まります。

契約締結・鍵の引渡し

さて契約の当日は先程も申し上げた通り、管理会社の事務所にて重要事項の説明や契約書の読み合わせが行われます。

そして契約書類への署名・捺印を済ませ、保険等の申し込み、契約金の受け渡しが完了すれば、取引も大詰めです。(契約金は事前に振込みの場合が殆どですが)

なお、「お部屋の鍵の引渡し」は賃料発生日から可能となりますが、賃貸借契約はそれに先行してに行われることも多いため、契約の場で鍵を引き渡すのは意外に稀なケースとなるでしょう。

ちなみに、契約日に鍵の引渡しができない場合には、入居者が賃料発生日以降に改めて鍵を管理会社に取りに来るのが通常です。

事後処理

契約完了後、管理会社は入居者から受け取った契約金や契約書類を、オーナー様の元に届け、署名・捺印をしてもらいます。(この段階で契約書類には借主の署名・捺印しかなされていないため)

そして、ここでようやく管理会社は大家さんより広告宣伝費等の名目で報酬を受けことになるのです。

なお、管理会社は契約書類にオーナー様の署名捺印を頂いた後、原本一通を入居者へ届けると共に、契約書と重要事項説明書の写しを客付け業者に送ることを忘れないようにしましょう。(客付け業者の事務処理上、必要となるため)

そしてこの作業をもって、賃貸の取引は完了となるのです。

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賃貸入居の流れまとめ

ここまでが、賃貸契約の流れについてのご説明となります。

ネットなどを見ても、細部まで解説したページがあまり存在しませんでしたので、何かのお役に立てれば思い記事を書きました。

いまいち賃貸契約の全貌が把握できないというオーナー様や、これから不動産屋さんに就職しようとお考えの方には是非お目を通していただければと思います。

ではこれにて、「賃貸契約の流れを解説いたします!」の知恵袋を閉じさせて頂きます。