不動産業者の業務の中でも、賃貸物件の管理は「大きなウェイトを占めるお仕事」となります。
売買にしろ賃貸にしろ、仲介は原則「単発のお仕事」となりますから、不動産業を営む上ではどうしても『固定収入』が欲しくなるものです。
そこで重要になってくるのがアパートや賃貸マンションの管理業務となるのですが、忘れはならないのが月極駐車場の管理でしょう。
さて、このようなお話をすると「駐車場の管理なんて微々たる業務なのでは?」と思われるかもしれませんが、これが50区画、100区画の月極駐車場となれば、それなりの仕事量と困難さ、そして非常にありがたい収入源となりますから、決して馬鹿にはできないのです。
そこで本日は「駐車場新規業務の内容を体験記風にレポート!」と題して、大型月極駐車場が稼働するまでの顛末をご紹介してまいりたいと思います。
月極め駐車場の作り方
不動産業界に飛び込んでからの数年間、賃貸の営業マンとして仕事をしていた私は客付け業務(他の会社が管理する物件にお客様を付ける仕事)のみならず、賃貸物件の管理業務も担当させられていました。
また、賃貸マンションやアパートには敷地内に駐車場を併設している物件も多いため、お部屋の管理をする傍ら、10区画くらいまで月極め駐車場の管理はこの当時既に経験済みであったと記憶しています。
そして、賃貸部門を卒業して売買担当となった後は、殆ど賃貸管理業務に触れることもなく日々を過していたのですが、ある時、日頃からお世話になっている地主さんから資産運用のご相談を受けることになりました。
なお、ご相談の内容はといえば「これまで工場として貸し出していた物件に空きが出てしまったので、今後その土地や建物を如何に運用していくべきか」というお話でしたので、
早速、対象物件について調査を開始することにしますが広大な土地に「恐ろしく古びた工場」が建てられており、このままの状態で再び貸工場として借り手の募集を行うのは『かなり厳しい状態』です。
更に、土地自体も道路に接する間口(接道幅)が僅か2.5mという『まるでオタマジャクシのような形状』をしていますので「建売用地として売却する」のは困難なため、
アパートや賃貸マンションを建てるのがベストな選択肢であるように思えます。(土地利用と地形に関する詳細は過去記事「土地形状は整形地・不整形地どちらがお得?」をご参照ください)
そこで、地主さんに「アパートの新築プラン」をご提案してみたのですが、『敷地面積が広大なため建築コストが掛かり過ぎる』との理由から私のアイデアは却下されてしまいます。
これ以降も何度か「土地利用の方向性」についての打ち合わせを地主さんと繰り替えしたのですが、結局はオーナー様の希望により「月極め駐車場」とすることが決まりました。
そして、「駐車場の整備」「新規利用者の募集業務」等は私の会社に一切をお任せいただけるとのことですので、古工場の解体を開始すると共に、駐車場のプランニングを進めていきます。
具体的なプランニングの作業としては「近隣の月極駐車場の相場調査」や「地積測量図を利用しての区割りの検討」などを行うことになりますが、実際に駐車区画の配置を進めていくと『この土地の面積が想像以上に大きい』ことに気付かされます。
なお、最終的に完成した区割図には90台分という膨大な数の駐車スペースが確保できてしまいました。
本来であれば「不動産屋さん的には管理する駐車場のキャパシティーが大きい程に、管理収入もアップするので嬉しい」はずなのですが、流石にこの区画数は多過ぎる気がします。
『本当に満車にできるのか?』という不安が頭を過り始めますが、こうした私の懸念を尻目に工事はノンストップで進んで行き、解体、アスファルト舗装、区割りの線引きに車止めの設置と、あっという間に整備作業は終了してしまうのでした。
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駐車場利用者大募集
そして工事が完了すれば、次は駐車場を埋めていく(駐車場利用者の募集を行う)のが私のお仕事です。
なお、地主さんとご相談の上で「近隣よりもやや安めの賃料」を設定した上で、新規募集業務を開始します。
まずは現地に巨大な募集看板を設置した上で、近隣の方にも幾ばくかの広告料をお支払いしてブロック塀などに募集看板を貼らせていただきました。
そして待つこと1ヶ月、ようやく10区画が成約しますが、「満車までの道のりはまだまだ程遠い状態」です。
『このままのペースでは、1年掛かっても満車にならないのでは・・・』と焦った私は、レインズの民間版とも言えるアットホーム(不動産屋さん同士の物件情報共有媒体)に広告を打つことを決心します。
月極駐車場の利用者募集業務における報酬についての詳細は過去記事「駐車場契約の流れを解説いたします!」にて解説していますが、駐車場の新規募集ではオーナー様からの広告宣伝費が頂けないケースが多いため費用が掛かる広告活動は行わないのが定石です。
しかし、ここで利用者の募集に手間取っているようではオーナー様からの信頼を損ねてしまいかねませんので、ここはセオリーを破って広告活動を試みることにしました。
ちなみに、自分的には「かなり思い切った判断」のつもりだったのですが広告の成果は今ひとつであり、結局プラス15区画の成約にしか結び付きませんでした。
よって、募集看板での成約が10区画に、アットホームの成約が15区画で合計25区画となりますので、残りの空き区画はまだ65区画もあります。
この結果を受けて『何か良い方法はないものか・・・』と思案した末に思い付いたのは、「新聞折り込み広告」だったのですが広告料の負担もなかなかの金額になりますし、駐車場から遠く離れたエリアからのお客様は見込めるはずもありませんので、このプランは却下することとなりました。(新聞折り込みは配布エリアが広いため、エリア限定の広告には向かない)
その後は、『様々なアイデアを思い付いては、自分の中で却下する』という不毛な脳内作業が続きますが、最終的に辿り着いたプランは「仲介手数料割引券付きのポスティング用広告の配布」という方法でした。
分譲マンションや賃貸マンション、アパートなどの集合ポストに直接広告を投函するポスティングならば費用も殆ど掛かりませんし、広告の配布範囲の絞り込みも可能なはずです。
そしてこのプランの最大のポイントは、広告に仲介手数料の割引券を数枚セットすることとなります。
なお、割引券は1人1回限り有効となりますが、「他人に譲ってもOK」というルールにすれば、「家族や近所の知り合いなどにも拡散できるのでは?」と考えたのです。
なお、配布当初はそれ程の反応はなかったのですが、時間を追うごとに問い合わせは多くなり、仕事の暇を見てはポスティングを継続する内に僅か(?)半年で90区画を見事に満車にすることができました。
現在では「時折空き区画が増加する」ことはあるものの、どうにか一定水準以上の利用率と賃料収入を確保できるようになっております。
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月極駐車場まとめ
こうした紆余曲折、試行錯誤を繰り返しながら「どうにか満車にすることができた」のが、私の初めての大規模駐車場オープンと新規募集のお仕事でした。
しかし、本当に大変だったのは『満車になって以降』のお話であり、「不法投棄をされた」「車上荒らしに遭った」「違法駐車車両があって自分の区画に駐車できない」「夜中に空ぶかしする奴がいて迷惑だ」など、この駐車場にまつわるクレームが尽きることは未だにありません。
なお、オーナー様からは管理費という形で毎月一定額の報酬を頂いてはいるのですが、正直、必要となる労力に対して微妙に採算がとれていないのが現実です。
ただ、こうした「あまり利益にならない仕事」であっても、これをコツコツこなすことで『地主さんとの強固な繋がりができるはず!』という信念の下、本日も管理業務を頑張っております。
「月極駐車場の管理なんて簡単な仕事!」と思われがちですが、規模がそれなりになれば結構苦労が多いことをご理解いただければ幸いです。
ちなみにこの当時は、SNSなどもあまり普及していない時代でしたが、もし今同じ状況となればツイッターなどで駐車場の空き情報を拡散するという手段も「あり」かもしれません。
ではこれにて、大規模駐車場募集業務の体験記を閉じさせていただきたいと思います。