アパートや賃貸マンション等の賃料に次いで、不動産投資を行う方の収入源となっているのが、月極駐車場の運営による収益です。

僅かなスペースで、そして手軽な契約にて収益が上げられる駐車場の経営は、正に大家さんの強い味方とも言える存在でしょう。

しかしながら近年、月極駐車場を経営する上での大きな問題となっているのが、無断駐車(違法駐車)に関する問題です。

そこで本日は、月極駐車場の無断駐車対策に関してお話をしてみたいと思います。

駐車場の違法駐車対応

 

無断駐車に対して警察は不介入

「月極駐車場での無断駐車」と言われても、今ひとつ『ピンッと来ない』という人も多いかもしれませんが、今回取り上げるのは本来契約者が定められている月極駐車場の区画に全く関係のない部外者が無許可で車を止めてしまう状況となります。

このようなお話をすると、『だったら警察に通報すればよい!』とも思われるかもしれませんが、月極駐車場へ違法に車を止める行為は「民事事件」の範疇となり、警察の立場としては『不介入』というのが原則なのです。(民事不介入)

ちなみに、私自身も管理している駐車場に無断駐車をされた経験があり、何度か警察を呼びましたがレッカー移動はしてもらえず、ナンバーを控えて警告文を貼る程度の対応しかしてもらえませんでした。

そして、本来の契約者が駐車場に戻ってくればトラブルとなるのは確実であり、場合によっては「駐車できなかった期間に要したコインパーキング代」を大家さんや管理会社に請求して来ることもあるのです。

では一体、こうした違法駐車車両に私たちはどのような対策を講じていけば良いのでしょうか。

絶対にやってはいけない「無断駐車対策」

ここまでの解説をお読みになって、『だったらレッカー車をチャーターして、移動してしまえば!』と思われる方もおられるかもしれませんが、レッカー移動は絶対に行ってはいけない無断駐車対策の一つとなります。

なぜなら、レッカー移動により車が傷付いたなど、後から難癖を付けられるケースも少なくありませんし、酷い場合には「レッカー移動によって車内の飲み物がこぼれ、シートが汚れたので張り替え代金を支払え」と言ってくる輩までいるのです。

また、「鍵の付いた車輪止めを無断駐車車両に設置して移動できないようにしてしまう」、「他の車両を違法駐車車両の前にぴったりと幅寄せしてしまう」といった方法もありますが、こちらもお薦めはできません。

車輪止めや幅寄せに際して「車に傷が付いた」と言い出すパターンは容易に想像がつきますし、『移動を妨害されたために、大切な商談に遅刻したので損害を賠償しろ』などと言ってくるケースもあるでしょう。

よって、無断駐車に直接触れたり、移動ができないようにするなどの実力行使(自力救済)は絶対に行ってはならないのです。

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自分でできる無断駐車対策をご紹介

このように無断駐車対策は一筋縄ではいかない厄介な作業となりますが、本項では一般の方々でも手軽に行える上、それなりの効果も望める不動産屋さん的無断駐車対策法をご紹介してみたいと思います。

なお、ここでご紹介する対処法は私や仲間の不動産屋さんが実際に行って、それなりの効果があった手法となりますが、実践される場合にはあくまでも自己責任でお願いしたいと思います。

駐車場の清掃と管理看板の設置

まず最初にご紹介するのは、直接的な対抗策ではなく「無断駐車自体を抑止する方法」であり、その最も基本的な手段となるのが『駐車場を清潔に保つ(清掃をする)』ことです。

このようなお話をすると「清掃など効果があるのか?」というお声が聞こえて来そうですが、その効果は決して馬鹿にできません。

例えばアパートや賃貸マンションの物件管理において、共用部分に入居者の私物やゴミが散乱している状態を放置していると、荷物やゴミがドンドン増加していくばかりか、外部の者までゴミを捨てに来る、不審者が現れるなどの『負の連鎖』が続いていくものです。

ところが、こうした状況になってしまった物件でも、荷物やゴミを一度整理して清潔な状態を保つように努力していると、こうした負の連鎖がピッタリと収まってしまうのは、不動産屋さんであれば誰もが一度は経験していることでしょう。

つまり、整頓がなされていなかったり、ゴミが散乱していると「ここは管理が行き届いていないから、何をやっても大丈夫だろう」という印象を第三者に抱かせる結果となり、逆に清潔な環境を維持していると『何時管理人が現れるのだろう?』『見付かれば、厳しく咎められそうだ』という不安を感じさせることになります。

よって、駐車場の日常的な清掃を心掛けると共に、「●●不動産 管理駐車場」などといった看板を設置しておけば、管理者の存在と頻繁な巡回が行われていることをアピールできますから、結果として違法駐車に対する抑止力となるのです。

罰金看板の設置

こちらについては既に対策済みの月極駐車場も多いかと思いますが、「無断駐車については5万円申し受けます」等の看板や張り紙を設置する方法となります。

『そんなことで抑止力になるの?』と思われる方も多いかもしれませんが、これが意外に効果的なのです。

また、この後に紹介する方法と合わせて行うことで絶大な効果を発揮しますので、まずは罰金看板の設置を行いましょう。

ちなみに、罰金の金額についてはあまりに法外な金額を提示すると現実味が薄れてしまいますし、実際に支払いを求めて訴訟などに発展した場合に、むしろ駐車場の運営者側に不利な材料となってしまうこともありますので、この点には注意が必要です。

警告文の貼り付け

こちらもオーソドックスな方法となりますが、前項でご紹介した「罰金看板の設置」が済んでいれば警告文に「支払命令」を書くことができますから、無断駐車を行う者に『かなりのプレッシャー』を与えることができるでしょう。

また、デジカメなどで車両の写真を撮影し、警告文と共に掲示して「晒し者」にするのも良い手段です。

こうすることで「証拠として写真を撮っていること」もアピールできますし、「ナンバーが控えらてれいること」も相手に伝わるでしょう。

但し注意したいのは、車のフロントガラスなどに直接粘着テープなどで貼り付けてはいけないという点です。

直接、貼り付けを行うと「ガラスが傷付いた」「汚れた」などのイチャモンを付けて来る輩もおりますので、おすすめは駐車場のアスファルトなどにデカデカと貼り付ける方法となります。

陸運局へ行き、車の所有者を特定

これまでの方法で事態が改善しない場合には、自動車の所有者に直接クレームを付けるという方法があります。

ご存じの方も多いと思いますが、陸運局に行けば第三者でも車の所有者の情報を取得することができますので、これを利用しない手はありません。

なお、以前は無断駐車車両のナンバーを控えることで誰でも所有者の情報(登録事項等証明書)の閲覧が可能でしたが、2007年以降は車体番号(車検証などに記載)を知らないと情報が取得できなくなってしまいました。

但し、無断駐車対策の場合には申立書(私有地放置車両関係位置図)を提出することで車体番号を知らなくても情報を開示してもらうことが可能です。

※申立書には違法駐車場所の地図や配置図、写真、駐車期間などの情報を添付する必要があります。

ちなみに所有者が判明した場合には、内容証明などを送付して「罰金看板」に基づいた損害賠償請求を行うことも可能です。

また、対象の無断駐車車両がどこのナンバーであろうと最寄りの陸運局にて対応が可能ですので、この点は非常にありがたいでしょう。

法的手段に訴える

ここまでやっても効果が無ければ、もはや法的な手段に訴えるしかありません。

「裁判などは面倒・・・」と思われるかもしれませんが、私の経験上、意外と簡単に片が付くことも多いものです。

大抵の場合は訴状が相手方に届いても反応はなく、欠席裁判にて車両を処分できる判決が迅速に下るのが王道のパターンとなります。

また、弁護士はもちろん、司法書士でも大家さんの代理人を務めることができますから、彼らに依頼をすれば裁判所に足を運ぶことなく問題を解決することが可能でしょう。

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駐車場の無断駐車対策!まとめ

さてここまで、月極駐車場の無断駐車対策について見てまいりました。

記事の冒頭にて「近年、無断駐車が大きな問題になりつつある」というお話をいたしましたが、その原因と目されているのが2006年に行われた道路交通法の改正となります。

この改正により、路上駐車の取り締まりが一部民間会社に委託された上、これまで一定の時間を空ける必要のあった違反切符の発行が、その場で行えるようになったのです。

また改正当時は当局も取り締まりに力を入れており、「ちょっとした路上駐車で痛い目を見た・・・」という方も多かったのではないでしょうか。

なお現在では、すっかり取り締まりも「緩くなった印象」ですし、この話を聞いて『そんなこともあったね・・・』と思われる方もおられるでしょうが、こうした道交法改正が残していった負の遺産こそが「月極駐車場での無断駐車」となります。

実は当時、ネットなどでは「駐車禁止の切符を切られるよりは、民間の土地である月極駐車場に無許可で駐車した方がマシ!」などの情報が流れ、以来、この悪しき手法が一部の不届き者達により脈々と継続されることとなってしまったという訳なのです。

また、本文中において「最終的には裁判に持ち込むしかない」とのお話をいたしましたが、訴訟にまで至るのは非常にレアなケースとなりますのでご安心ください。(これは違法駐車というよりも、もはや不法投棄ですし)

ちなみに、違法駐車車両の被害にあった月極駐車場の契約者から「コインパーキング代金などを請求された際の対策」としては、最初から契約書に『駐車料金等の請求はできない旨』の特約を入れておくという方法があります。

※月極駐車場の契約内容と特約については過去記事「駐車場契約書と特約の内容を解説致します!をご参照ください。

ここまでお話しして来たように自力で行える無断駐車対策は意外に多いものですが、「こうしたテクニックを使わずとも、違法駐車に頭を悩まされることのないモラルある社会」となってくれることを願わずにはおれません。

ではこれにて、駐車場の無断駐車対策について考える知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。