不動産に携わっていると時折遭遇することになるのが「賃貸物件の又貸しに係わるトラブル」となります。

もちろん一般的な賃貸借契約書においては、禁止事項に「又貸しは不可」という文言が必ず入っているものですが、悪質な入居者の中には『お部屋を友人などに又貸して利益を得ようとする輩』も存在しているようです。

そこで本日は「賃貸又貸しトラブルについて解説いたします!」と題して、「気が付いたら別人が住んでいた!」という無断転貸に係わる問題の概要やリスク、そして管理人が実際に経験した又貸し事件の顛末記をお届けしたいと思います。

賃貸又貸し

 

賃貸又貸しとは

では、まず最初に「そもそも賃貸物件の又貸しとは、如何なるものなのか」という点から解説を始めていきたいと思います。

賃貸物件の又貸しは、法律用語で言うところの「無断転貸」という状態であり、

賃貸物件を大家さんの承諾なしに、第三者へ貸し出すこと

を意味します。

なお、賃貸物件の管理を行っていると時折こうしたケースに遭遇することがありますが、借主が又貸しを行う状況としては

  • 借主が出張などで家を空ける際に「友人に部屋を貸す」
  • 何らかの事情で部屋を借りられない者のために「名義貸しで部屋を借りる」
  • 民泊経営などの「事業目的」で無断転貸を行う

というのが主なものとなるでしょう。

無断転貸の違法性と罰則について

では、こうした又貸しが行われた場合、借主はどのような罰則を受けることになるのでしょう。

賃貸物件の無断転貸については

  • 賃貸借契約上の違反行為/通常の賃貸借契約書にはほぼ100%、無断転貸禁止の条項が定められている
  • 民法第612条第1項の違反行為/民法においても無断転貸は禁止されていますので、万が一に契約書に記載がなくても法令違反となる

となりますから、「借主に非があることは明確」です。

よって無断転貸が判明した場合、大家さんは

  • 賃貸借契約の解除
  • 無断転貸より生じた損害賠償請求
  • 契約の内容によっては違約金の請求

以上の請求等を借主に行うことが可能となります。

また、借主から又借りしていた者(転借人)は、

大家さんが賃貸借契約を解除したことによって生じた損害(お部屋に住めなくなった損害)を、借主へ請求できる

ことになる可能性が高いですから、無断転貸は「これを行う借主にとっても非常にリスキーな行為」となるのです。

無断転貸によって生じる損害

では無断転貸が行われた場合、大家さんにはどのような損害が降り掛かってくるのでしょうか。

又貸しによって引き起こされるであろう問題については

  • 賃料の滞納リスク
  • お部屋の汚損や破損のリスク
  • 近隣トラブルのリスク

などが考えられます。

無断転貸の場合には、「転借人が支払う費用」から借主が家賃を支払うケースが多いですから、転借人の支払いが滞れば自然と滞納が発生することになります。

また、そもそも違法行為を平気で行うような借主ですから、初めから賃料を支払う意思がないケースもあるでしょう。

なお、転借人は重要事項の説明などを受けずに入居することになりますし、自分が部屋を借りているという認識も希薄であるため、物件の使い方が手荒いことも容易に想像がつきますよね。

そして、こうした転貸人が生活していれば「深夜の騒音」や「ゴミ出しのルールの無視」など、様々な近隣トラブルを招く結果となるでしょう。

無断転貸の発見方法と対処について

このように無断転貸は様々な問題を引き起こしますので

  • 「如何に事前に転貸を防ぐか」
  • 「可能な限り早期に転貸を見抜く」

ことが非常に重要となってきます。

まず事前の予防については、入居審査を厳しくして「怪しい入居者希望者」を排除するのが一番の方法です。

なお、入居審査につきましては別記事「賃貸入居審査のコツをご紹介いたします!」にて詳細な解説を行っておりますが、

  • 審査を賃貸保証会社に一任しない
  • 申込書の内容を精査する
  • 入居希望者と対話する
  • 転居理由の確認
  • 勤務先の調査

などを徹底することで、かなりの確率で危険な入居希望者の回避が可能となります。

一方、無断転貸の早期発見については

  • 引っ越しの際に本人確認を行う
  • 入居直後にお部屋を訪問してみる

などの方法が有効となるでしょう。

但し、一度引っ越しが完了してしまうと、借主自身が住んでいないことを立証するのは非常に困難となりますから、この点には是非ご注意ください。

そして、どんなに問い詰めても借主が転貸を認めない場合には、防犯カメラを設置するなどして「借主が居住していない証拠」を押さえる必要がありますが、これはかなり難しい作業となるはずです。

こうした事情から無断転貸の防止については、審査基準を厳格にして入居前に危険な因子を摘み取ることが何よりも重要となるでしょう。

スポンサーリンク

賃貸又貸しトラブルの顛末記

ではここからは、管理人が実際に経験した賃貸又貸しトラブルの顛末記をお届けしていきたいと思います。

又貸し事件発生!

今回の事件の舞台となるのは、私が賃貸管理を担当していた駅徒歩10分、築年20年のファミリータイプの賃貸マンションとなります。

実はこちらの物件、これまで「とある企業様」に法人契約で数室をまとめて借り上げてもらっていたのですが、借り手のご都合で解約となり一気に空室が発生することになってしまったのです。

そして、『これは一刻も早く満室にしなけば』というオーナー様の意向により、礼金・敷金なし、フリーレント2ヶ月という破格の条件で入居者募集が行われることとなりました。

ちなみに、過去記事「賃貸物件の空室対策について解説いたします!」でもお話ししましたが、いくら早くお部屋を決めたいと思っても「相場より大幅な値引きをしての新規募集」を行うことは、

むしろ属性の悪い入居者(質の悪い入居者)を招く結果となる可能性が非常に高く、危険この上ない行為と言えるのですが、今回はオーナー様の強い要望があり、私も「致し方なく」これに従います。

こうして始まった新規の入居者募集でしたが、開始後間もなくして客付け業者から「お申し込みを入れたい」との連絡が入って来ました。

気になる入居希望者のプロフィールについては、建築関係の会社に勤務する20代の男性とその妻というものでしたが、勤続年数は非常に短いものであった上、連帯保証人も友人という『なんとも緩い感じ』が否めない方であり、

オーナー様には「あまりお勧めできない入居者である旨」を繰り返しお伝えしたのですが、「空いているよりは良い」とのことで、契約締結・入居へとお話は進んで行きます。

なお、入居審査の時点で「申込人の人柄を確認する目的」で電話連絡を入れていたのですが、その際の印象は『非常に悪いもの』(何度連絡しても折り返しの連絡をして来ない上に、電話に出ても態度が横柄)であり、嫌な予感がムクムクと増大して行くのを感じていました。

こうした不安を抱えながら遂に「契約の日」を迎えますが、申込人と直接対面した際には「私の予想が見事に的中していたこと」を再確認させられることになります。

契約の席に現れた申込人は、脱色した髪の毛に乱れた服装、そしてガムを噛みながら契約手続きに臨もうとしていましたので、思わず大家さんにバックルームから電話を入れて「本当に契約して良いのか?」と再度確認をすることにしましたが、

それでもオーナー様のご判断は「契約を続行せよ」とのことでしたので、態度の悪さにイライラしながら鍵の引渡しを行うこととなります。

ちなみに契約に際して、「敷金や仲介手数料等の契約金」は通常どおり支払ってもらうことができましたが、それ以降の賃料は全く入金がなく、入居後僅か3ヶ月にして賃料取り立てのために物件を訪問することになってしまいました。

そして1度目の訪問は不在、2度目も不在、ならばと早朝に3度目の訪問を仕掛けたところ、ようやく入居者に会うことができたのですが、玄関ドアから出てきた人物は「契約者とは全くの別人」という想定外の事態が発生します。

『これは一体どういうこと?』と、慌てて玄関から出てきた人物に問い質してみると「自分、●●先輩(契約者の名前)にこの部屋借りてて、毎月賃料払ってますけど・・・」という驚愕の回答が返って来るのでした。

解決への道

この驚きの展開に『何か大変なことが起きている』と感じた私は、速攻でオーナー様に連絡を取って今後の対処方法を検討することにします。

そして、まずは契約者の「●●先輩」と話して事情を聞きたいところですが、又貸しをされている後輩(実際の入居者)も『最近は連絡が取れていない』とのことです。

そこで連帯保証人に連絡をしてみますが、今回の「又貸し」については一切事情を知らなかったご様子です。

なお通常であれば、即刻「契約解約」ということになるのですが、物件に住む後輩は若いながらも妻と2人の子供を養っている上、先輩●●に対しては多額の契約金を支払った直後であり「事実上、引っ越しは不可能」であると主張しています。

また、「ここを追い出されたら路頭に迷ってしまう」と入居継続を必死で懇願してきますので、私も対処に困ってしまいました。

ちなみにこの後輩のスペックはと言えば、契約者と同じく建築関係の会社に勤務しているとのことですが、年収は200万円程度であり『とても継続して家賃が支払えるとは思えない属性』の人物です。

ただ話を聞く限りは「この後輩も被害者」である様子ですから、オーナー様と一度面会をしてもらった上で、契約を結び直して入居を継続することになりました。

但し、『家賃の支払能力には大きな不安』がありましたので、「契約者の親」と「嫁の親」によるダブル保証人を擁立するという条件を付けさせてもらいます。

また一方で、これまで「先輩に支払って来た」という賃料も回収しない訳には行きませんので、こちらは先輩●●が擁立した連帯保証人に請求を行い、どうにか全額を回収することができました。

但し、友人である連帯保証人の怒りは相当なもので「地の果てまで●●を追いかける」と息巻いていましたから、その後「彼らがどうなったのかも非常に気になるところ」です。

スポンサーリンク

賃貸又貸しトラブルについて解説まとめ

さてここまで、「賃貸又貸しトラブル」というテーマでお話をしてまいりました。

なお、私が実際に経験した賃貸又貸しトラブルの事例に関しては、「今回は非常に運が良かった」というのが率直な感想です。

転借人である後輩がどうにか入居を継続できるスペックの人物(連帯保証人が擁立できるという意味で)であったから良かったものの、これが●●先輩以上の荒くれ者だったことを想像すると、非常に恐ろしいですよね。

また、借主と転借人が結託して「無断転貸の事実はない」と主張された場合には、証拠集めにかなりの費用と労力が必要となりますから、こちらも非常に厄介なことになっていたはずです。

ちなみに、知り合いの不動産屋さんたちに聞くと「近年、こうした又貸しのケースは増えている」とのことですから、素行の悪い若者たちのブラックビジネスとしてこの手口は広まりつつあるのかもしれません。

ちなみに本件の教訓から、私の会社では入居審査を更に厳しくしておりますし、契約・鍵の引渡しの後も「引っ越し作業の様子を見に行く」などの対応を行っています。

そして、「既に投資物件の運営をされている方」や「これから不動産投資を始めようという方」につきましては、こうしたトラブルに巻き込まれないように是非ともご注意いただきたいものです。

ではこれにて、「賃貸又貸しトラブルについて解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。