不動産の賃貸借契約の形態の中に「又貸し」というものがあります。

なお、読んで字の如く「賃貸で借りた物件を更に第三者に貸出す」ことを指す言葉となりますが、近年ではサブリースなどと呼ばれ、「新たな収益物件の運用形態」として普及しておりますので、ご存じの方も多いかもしれません。

しかしながら、この又貸しを「貸主で無断で行う」となれば、これは契約上の大問題に発展することとなるのが確実ですから絶対に避けるべき行為となるでしょう。

もちろん一般的な賃貸借契約書においては、禁止事項に「又貸しは不可」という文言が必ず入っているものですが、悪質な入居者の中には『お部屋を友人などに又貸して利益を得ようとする輩』も存在しているようです。

そこで本日は管理人が実際に経験した、賃貸又貸しトラブルの体験記をご紹介してみたいと思います。

賃貸又貸し

 

又貸し事件発生!

今回の事件の舞台となるのは、私が賃貸管理を担当していた駅徒歩10分、築年20年のファミリータイプの賃貸マンションとなります。

実はこちらの物件、これまで「とある企業様」に法人契約で数室をまとめて借り上げてもらっていたのですが、借り手のご都合で解約となり一気に空室が発生することになってしまったのです。

そして、『これは一刻も早く満室にしなけば』というオーナー様の意向により、礼金・敷金なし、フリーレント2ヶ月という破格の条件で入居者募集が行われることとなりました。

ちなみに、過去記事「賃貸物件の空室対策について解説いたします!」でもお話ししましたが、いくら早くお部屋を決めたいと思っても「相場より大幅な値引きをしての新規募集」を行うことは、

むしろ属性の悪い入居者(質の悪い入居者)を招く結果となる可能性が非常に高く、危険この上ない行為と言えるのですが、今回はオーナー様の強い要望があり、私も「致し方なく」これに従います。

こうして始まった新規の入居者募集でしたが、開始後間もなくして客付け業者から「お申し込みを入れたい」との連絡が入って来ました。

気になる入居希望者のプロフィールについては、建築関係の会社に勤務する20代の男性とその妻というものでしたが、勤続年数は非常に短いものであった上、連帯保証人も友人という『なんとも緩い感じ』が否めない方であり、

オーナー様には「あまりお勧めできない入居者である旨」を繰り返しお伝えしたのですが、「空いているよりは良い」とのことで、契約締結・入居へとお話は進んで行きます。

なお、入居審査の時点で「申込人の人柄を確認する目的」で電話連絡を入れていたのですが、その際の印象は『非常に悪いもの』(何度連絡しても折り返しの連絡をして来ない上に、電話に出ても態度が横柄)であり、嫌な予感がムクムクと増大して行くのを感じていました。

こうした不安を抱えながら遂に「契約の日」を迎えますが、申込人と直接対面した際には「私の予想が見事に的中していたこと」を再確認させられることになります。

契約の席に現れた申込人は、脱色した髪の毛に乱れた服装、そしてガムを噛みながら契約手続きに臨もうとしていましたので、思わず大家さんにバックルームから電話を入れて「本当に契約して良いのか?」と再度確認をすることにしましたが、

それでもオーナー様のご判断は「契約を続行せよ」とのことでしたので、態度の悪さにイライラしながら鍵の引渡しを行うこととなります。

ちなみに契約に際して、「敷金や仲介手数料等の契約金」は通常どおり支払ってもらうことができましたが、それ以降の賃料は全く入金がなく、入居後僅か3ヶ月にして賃料取り立てのために物件を訪問することになってしまいました。

そして1度目の訪問は不在、2度目も不在、ならばと早朝に3度目の訪問を仕掛けたところ、ようやく入居者に会うことができたのですが、玄関ドアから出てきた人物は「契約者とは全くの別人」という想定外の事態が発生します。

『これは一体どういうこと?』と、慌てて玄関から出てきた人物に問い質してみると「自分、●●先輩(契約者の名前)にこの部屋借りてて、毎月賃料払ってますけど・・・」という驚愕の回答が返って来るのでした。

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解決への道

この驚きの展開に『何か大変なことが起きている』と感じた私は、速攻でオーナー様に連絡を取って今後の対処方法を検討することにします。

そして、まずは契約者の「●●先輩」と話して事情を聞きたいところですが、又貸しをされている後輩(実際の入居者)も『最近は連絡が取れていない』とのことです。

そこで連帯保証人に連絡をしてみますが、今回の「又貸し」については一切事情を知らなかったご様子です。

なお通常であれば、即刻「契約解約」ということになるのですが、物件に住む後輩は若いながらも妻と2人の子供を養っている上、先輩●●に対しては多額の契約金を支払った直後であり「事実上、引っ越しは不可能」であると主張しています。

また、「ここを追い出されたら路頭に迷ってしまう」と入居継続を必死で懇願してきますので、私も対処に困ってしまいました。

ちなみにこの後輩のスペックはと言えば、契約者と同じく建築関係の会社に勤務しているとのことですが、年収は200万円程度であり『とても継続して家賃が支払えるとは思えない属性』の人物です。

ただ話を聞く限りは「この後輩も被害者」である様子ですから、オーナー様と一度面会をしてもらった上で、契約を結び直して入居を継続することになりました。

但し、『家賃の支払能力には大きな不安』がありましたので、「契約者の親」と「嫁の親」によるダブル保証人を擁立するという条件を付けさせてもらいます。

また一方で、これまで「先輩に支払って来た」という賃料も回収しない訳には行きませんので、こちらは先輩●●が擁立した連帯保証人に請求を行い、どうにか全額を回収することができました。

但し、友人である連帯保証人の怒りは相当なもので「地の果てまで●●を追いかける」と息巻いていましたから、その後「彼らがどうなったのかも非常に気になるところ」です。

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又貸しまとめ

さて、ここまでが私の賃貸又貸しトラブルの体験記となりますが、今回のケースは本当に運が良かったと思います。

実質の入居者である後輩がどうにか入居を継続できるスペックの人物(連帯保証人が擁立できるという意味で)であったから良かったものの、これが●●先輩以上の荒くれ者だったことを想像すると、非常に恐ろしいですよね。

なお、こうしたケースの場合、通常は裁判に持ち込み「強制執行」となるのでしょうが、その「手間」と「労力」、そして「判決が出るまでの期間に味わうストレス」は相当なものとなるはずですから、どんなに空室を埋めたくとも、審査での妥協は絶対にするべきではないでしょう。

また、知り合いの不動産屋さんたちに聞くと「近年、こうした又貸しのケースは増えている」とのことですから、素行の悪い若者たちのブラックビジネスとしてこの手口は広まりつつあるのかもしれません。

ちなみに本件の教訓から、私の会社では入居審査を更に厳しくしておりますし、契約・鍵の引渡しの後も「引っ越し作業の様子を見に行く」などの対応を行っています。

そして、「既に投資物件の運営をされている方」や「これから不動産投資を始めようという方」につきましては、こうしたトラブルに巻き込まれないように是非ともご注意いただきたいものです。

ではこれにて、「賃貸又貸しトラブルの体験記」を締め括らせていただきたいと思います。