三点ユニットのリフォーム

 

「いつの時代」でも「如何なる物」にも、『流行り廃り』というのものがあります。

ファッションや食べ物はもちろんのこと、私たち人間のライフスタイルにさえ、その時代時代によって「様々なトレンドがある」のはご理解いただけることと思います。

そしてもちろん、不動産や建築のジャンルにも流行というものが存在しており、戸建てを建築するにしても「ひと昔前までは和室を一部屋設けるのが当たり前」だったのが、今では『全居室洋室が当然の時代』となっているなど、その変化には「かなり目まぐるしい」ものがあるでしょう。

なお、こうした建築系のトレンドとして近年顕著になって来ているのが、単身者用の賃貸物件(ワンルーム・1K)などで見られる「風呂トイレ別」という仕様の一般化です。

少し前までは、風呂・トイレ・洗面台が一部屋にセットになった「三点ユニット」が当たり前でしたが、近年では「風呂とトイレが一緒など考えられない!」というお客様が殆ですから、そのトレンドの変化は非常に顕著といえるでしょう。

そこで今回は、現在今ひとつ人気のない「三点ユニット物件」を「バス・トイレ別物件」にリフォームした際の体験記をレポートさせていただきたいと思います。

では早速、三点ユニットのリフォーム体験記を見て行きましょう。

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やはり人気の無い三点ユニット

今回のレポートの舞台となる物件は、私の勤め先である不動産会社が自社で所有する築20年弱の鉄筋コンクリート造、ワンルーム20戸という賃貸マンションです。

なお現在の会社に入社後、数年間は賃貸の営業マンとして仕事をしていた私ですが、その後は売買部門に異動(社員8名ほど会社なので、異動というのも恥ずかしいのですが)されられましたので、

本来ならば「たとえ自社所有の物件であっても、私が賃貸物件の担当になることはない」はずだったのですが、今回は少々特殊な事情がありました。

実はこの物件、20戸ある内の10戸が空室となっていたのです。

ちなみに空室の内の5戸は「法人が社員寮として借り上げていたものが一気に解約された」ことによって生じたものですが、その後もじわじわと空室が増え続ける上に、新規の入居者がなかなか決まらないという状況が続いていました。

そして『これは流石にまずい・・・』と考えた社長から、空室対策の担当者として私に白羽の矢が立ったという訳なのです。

さて、このようなお話をすると「まるで私が仕事ができる男」のように聞こえるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

ただ「生来の運の悪さ」のためか、賃貸の営業時代から度々空室トラブルに見舞われ続けていましたので「私の経験値を活かせ」というのが、社長のお考えであったのでしょう。

またサラリーマンである以上はボスに逆らうこともできませんので、少々荷の重い仕事ではありますが、とりあえずは賃貸担当の社員たちと「対策を協議する場」を設けることにしました。

そこでまずは、賃料等の募集条件からチェックして行きますが近隣の相場から見ても「家賃設定が高過ぎる」ということは無いようです。

ちなみに賃貸担当者からは「もっと家賃を下げてみては?」との提案もありましたが、過去記事「収益物件の空室率低下に役立つ裏技をご紹介!」でもお話しした通り、相場より安過ぎる物件は『質の悪い入居者ばかりを集める結果』となりますから、必要以上の値下げは避けるべきでしょう。

なお賃料以外の募集内容を見ても、礼金はなし、敷金は一ヶ月、客付け業者に支払うボーナスの広告宣伝費(AD)も一ヶ月(100%)付けてありますから、条件面での問題がないはずです。

その上、室内にはエアコンやシーリングライト等を設備として設置してありますから、近隣のライバル物件に見劣りする要素はないように見受けられます。

となれば、「やはり原因は三点ユニット?」という私の言葉に、賃貸の営業たちは静かに頷くのでした。

彼らの話によれば、賃貸物件を探しに来店されるお客様の殆どが、お店に来た早々「三点ユニット不可」との条件を口にするとのことで、三点ユニットの人気は私が賃貸の営業をしていた時よりも「かなり落ち込んでいる」ようです。

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三点ユニットを風呂トイレ別に!

そこで、まずは「現地を確認しよう」ということになり、信頼の置ける工務店の社長Aさんと共にお部屋に向かいます。

過去記事「マンション大規模修繕工事の流れをレポート!」でも登場したAさんですが、彼は木造の戸建てから鉄筋コンクリート造のマンションまで、あらゆる建築技術に精通した腕の良い大工さんであり、こうしたシーンではとても頼りになる存在です。

そして、早速問題の三点ユニットを見て回りますが、確かに『お風呂に入った後、トイレを使うのに抵抗がある気持ち』は充分に理解できます。

またこの際に気が付いたのは、ユニットバス内には電源も無いため、トイレにウォシュレットを設置することができませんし、洗面台があっても電気シェーバーで髭を剃ったり、ドライヤーもかけられないのです。

「コンセントの問題だけでも改善したら、少しは人気が出るのでは?」とAさんに持ち掛けてみますが、やはりお風呂がある以上「怖いの感電事故」とのことで、このアイデアは諦めるしかなさそうです。

こうしたやり取りを繰り返しながら、お部屋を見ている内にAさんが『ある提案』をしてくれました。

それは「お部屋内にある幅1間×奥行1/2間(1.8m×0.9m)の収納をトイレに改造し、現在の三点ユニットからトイレのみを撤去してしまう」というアイデアでした。

なお、これまでにも「三点ユニットの内部に仕切りを作り、浴槽部分をシャワールームに改造する工事」などは見たことがありますが、

今回のように「収納をトイレに改造する」などという手法は初めてであり、改めてAさんのスキルの高さに関心させられます。

ただ、この方法を実行するには「新たに作るトイレから下水配管の勾配を確保できるか?」といった点や、一番気になる「コスト面での問題」も避けては通れません。

そこでまずは、Aさんに工事が可能であるかの調査と、見積もり作成を依頼してみます。

そして数日後、Aさんから見積書が届き、改めてユニットバスの件について打ち合わせをすることとなりました。

ちなみに、心配していた下水の勾配などの問題はどうにかクリアーできそうなのですが、工事費用は一部屋なんと60万円にも及ぶとのことです。

「これは高過ぎるのでは?」と問いただしてみると、「既存のユニットバスからトイレのみを取り除く作業は防水の関係上難しい」というのが、この金額となった理由であるといいます。

つまり「一旦現在のユニットバスを撤去し、お風呂と洗面台のみの(2点ユニット)を新設し、収納をトイレに改造する値段が一部屋60万円」になるのだそうです。

「この値段では社長に言えないよ」との私の言葉に、Aさんは「10部屋まとめて発注すれば、一部屋30万円くらいでできるかも」という驚きの言葉を発します。

読者の方も「なんだそれ?」と思われたことでしょうが、この工事で最も高額な経費は「新設するユニットバスの本体代と取り付け工賃」であり、これらの費用は数量を多く発注することで相当な値引き交渉が可能であるというのです。

私も不動産業界は長いのですが、建築に関してはあまり詳しくありませんので、このお話にはかなり驚愕させられました。(ちなみに前職は建材メーカーの営業マンだったのですが、1年で退職しているため業界の事情には詳しくありません)

ただ、それでも30万円×10戸で総額300万円もの工事となりますから、内心はドキドキで社長に話を持ち込みますが、何とあっさりOKのお返事を頂きます。

そこで早速発注を行い、工事も無事に完了したのですが、なんと完成後僅か3ヶ月で全ての空室が埋まってしまいました。

なお、最初の一部屋があまりにあっさり成約したので、他の部屋は賃料を5000円程値上げしてみたのですが、それでも申し込みの勢いは止まらず、全空室がアッという間に成約してしまったのです。

工事費はかなり高額なものとはなりましたが、長い目で見れば、決して悪い設備投資ではなかったことに胸をなでおろすと同時に、「三点ユニット」と「風呂トイレ別」の人気の違いに、心底驚愕されられた一件でした。

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三点ユニットまとめ

さて、ここまでが私の三点ユニットのリフォーム体験記となります。

我が社の社長に300万円の工事を提案した際には、「本当に空室が埋まるんだろうな?」というオーラがムンムン漂っており、

プレッシャーで心臓がバクバクしていたのですが、蓋を開けてみれば「空室がアッという間に埋まる」という奇跡のような結果を迎えることができのは本当に幸運でした。

また、一部屋だと60万円の工事費用が、10部屋まとまると半額になるという建築業界の仕組みにも、かなり驚かされました。

何はともあれ、空室が埋まったのはとても嬉しかったのですが、問題は工事が完了していないお部屋が空室となった時でしょう。

「まとめて何部屋もが一気に空室となること」はないでしょうから、一部屋ずつ工事をしていくとなると毎回60万円の出費が圧し掛かって来ます。

そして、これは流石に予算的にも厳しいでしょうから、他の部屋が空くのを待つことになりますが、その間「空室のまま」というのも困りものですよね。

どうかこうした状況になった際、『私が担当に選ばれることがありませんように!』と、今はお祈りするのみです。

ではこれにて、三点ユニットのリフォーム体験記を締め括らせていただきたいと思います。