近年、不動産市場にて「新たな物件カテゴリー」として注目を集めているのがリノベーションマンションなるものです。

分譲マンションに狙いを絞ったマイホーム探しなどをしていると、必ずと言って良い程目にする「この手の物件」ですが、その舞台裏や物件を購入した後のメリット・デメリットについての説明がなされることは殆どありませんよね。

そこで本日は「リノベーションマンションのデメリットや選び方を解説いたします!」と題して、リノベ物件購入のポイントについてお話ししてみたいと思います。

リノベーションマンションのデメリット

 

リノベーションマンションとは?

ではまず、そもそもリノベーションマンションとは、どのような物件であるかについて解説して行きたいと思います。

英語では「renovation」と表記されるこの言葉は、建物の改修を意味するものです。

改修工事と言えば「リフォーム」という用語の方がメジャーかと思いますが、不動産業界においてはユニットバスの入替えや壁紙の張り替え等、古くなった建物を新築に近づける改修工事を「リフォーム」と呼ぶのに対して、

床や天井、キッキンからトイレに至るまで、全ての内装を取り払い、物件に新たな価値を与える大規模工事を行うことを『リノベーション』と称している

のです。(マンションであれば、コンクリートの躯体を残して全ての内装を一新する等)

また、リノベーションと似た言葉でコンバージョンという用語もありますが、こちらは建築確認上の用途変更を伴う改築を指すワードとなっており、「確認上は店舗であった物件を行政の許可を得て居室に改造する」などといった工事がその代表例となるでしょう。

さて、このように建物の躯体を残して内装を一新してしまうリノベーション工事ですから、施工が完了した室内に入ると『まるで新築物件を見ているかのような感覚』を覚えるものです。

そこで不動産業者たちが目を付けたのが、

築年数の古い分譲マンションを安価で買取り、リノベーションを施して高く売りさばくという手法

でした。

これまで中古マンションの売買においては、引渡し後に買主が負担するリフォーム代が大きなネックとなっていましたが、リノベーション工事を完了することでリフォーム費用に対するユーザーの不安を解消できますし、

何よりも新品に生まれ変わった室内の美しさは購入希望者の購買意欲を強烈に掻き立てる結果となり、一気にリノベ物件の人気に火が付いたのです。

そして多くの不動産業者が分譲マンションのリノベーション事業に参戦することとなり、現在では「リノベ専門業者」と呼ばれる企業も数多く登場するなどして、熾烈な物件獲得競争を巻き起こす結果となっているのです。

リノベーションマンションのデメリット

ここまでのお話で、リノベーションマンションが市場に流通するようになった経緯についてはご理解いただけたことと思います。

そして、共用部分は少々古くても「室内は新品同様」、不動産業者が売主であるが故に契約不適合責任を負う期間は2年(一般の方が売主の場合は長くて3ヶ月程度)」「設備についても保証期間付き」となれば、『リノベーションマンションにはメリットが一杯!』といった印象をお持ちになられる方も多いはずです。

しかしながら「良い点があれば必ず悪い点もある」のが世の中の常であり、良いこと尽くめのはずのリノベーションマンションにも、やはりデメリットは存在しています。

そこで以下では、リノベマンションの問題点を検証して行きましょう。

建物自体の老朽化は隠し切れない

リノベーションマンションの室内に入ると、その輝くばかりに真新しい内装に心を奪われるものですが、

躯体の部分はしっかりと齢をとっている

ことを忘れてはいけません。

そして1981年以前に建築された建物であれば、建築確認上の耐震基準のレベルが非常に低い可能性がありますし、これ以降に建てられたものであっても外壁や共用部分は確実に経年劣化が進んでいるはずです。

もちろん、共用部分の改修は管理組合の義務とはなりますが、購入した早々から「1年にも及ぶ大規模修繕の振動や騒音に悩まされている・・・」などというユーザーは意外に少なくありませんから、築年が古い故のリスクも覚悟しておくべきでしょう。

また、友人などが遊びに来た際のも、室内こそ素晴らしいが「マンションの外観の古さにドン引きされてしまった」というお話もよく耳に致します。

住宅ローンが思うように利用できない

リノベーションマンションを購入するに当たって、大きな障害の一つとなるのが住宅ローンの問題です。

借入を行う銀行にもよりますが、

築年数の古いマンションについては35年ローンなどが組めない場合も多く、高額な月々の返済に苦労させられているという方が多い

のも事実となります。

また住宅ローン控除を利用する際にも、築年数の問題で適用が受けられない場合があるのです。(築25年を超えている場合や耐震基準を満たしていない物件は原則として住宅ローン控除の適用が不可となります)

※住宅ローン控除についての詳細は過去記事「住宅ローン控除とは?適用条件や注意点を解説します!」をご参照ください。

管理費・修繕積立金の問題

これは分譲マンション全般に言えることですが、

築年数が古くなればなる程に『管理費や修繕積立金が値上がりしていく』

のが常です。

また、現在はそれ程の金額でなくても、近い将来に「値上げとなるリスク」は築年数の経過と共に増していくことになるでしょう。

建替えや大規模修繕の問題

そして老朽化したマンションが抱える最大の問題が、建替えに関する事項となります。

仮に総会にて建替えが決議されても、貯えられて来た修繕積立金のみで工事費用全額を賄える管理組合は殆ど存在しませんから、

組合員が各々建替え用のローンを組まされることも珍しくはなく、中古でマンションを購入した者は住宅ローンとの二重払いを余儀なくされる

ケースもあるのです。

また、こうした現象は大規模修繕で費用を調達する際にも発生する可能性がありますから、老朽化が進んだリノベーションマンションを購入する際には大いに注意が必要でしょう。

なお、分譲マンションの建替え決議には原則「組合員の4/5の議決が必要」なため、仲介業者などから『建替えはまず有り得ませんよ』などといった説明を受けるかもしれませんが、現在では『要除却認定マンションの認定制度』など建て替えを円滑にする様々な法令が誕生していますから、決して安心はできないのが実情です。

※要除却認定マンションの詳細については、過去記事「要除却認定マンションとは?という疑問にお答えします!」をご参照ください。

リノベーションの品質

本項の冒頭にて、「売主が不動産業者だけにリノベーションマンションは安心な面がある」とご説明いたしましたが、不動産業者にもピンからキリまであるのが実情となります。

また、現在では不動産業者同士による「リノベーション用物件の仕入れ合戦」が起こっていますから、高値で物件を仕入れて工事費用を安価に抑えようとする業者が多いのが現実です。

そしてこうした状況によって生じるのが、引渡し後の物件の不具合となります。

私のお客様の中にも、下水配管の接続不良によって床下で汚水が流れ出してしまった方や、床の傾きを巡って売主と紛争に発展しているという方もおられました。

なお、近年非常に増えて来ているのが水道管の交換工事を行っていないことによって生じるトラブルです。

本来であれば、床下を走る水道配管の更新もリノベーション工事に含まれるべきなのですが、中には「どうせ床で見えないのだから・・・」と古い配管をそのまま利用してしまう業者も少なくありません。

その結果として、引渡し後に「水道から錆水が出る」「水道管の破損によって漏水が発生する」といったトラブルが発生する訳です。

一方、壁や天井の内部についても注意が必要となります。

既に申し上げた通り、売主は工事費用をなるべく安価に抑えようとするものですから、壁や天井については「壁紙を借り換えただけ」ということも多く、こうした物件においては

  • 外壁の壁の間に断熱材に施工不良があり、壁の内部がカビだらけである
  • 室内電気配線の劣化による漏電事故の発生

と言った問題が発生する可能性もあるのです。

近隣住民の質の問題

安価なリノベーションマンションの中には築30年、築40年といった築年数の古い物件も珍しくありませんが、こうした物件の購入者が口を揃えておっしゃるのが近隣住民との係りに関する問題です。

築年数を経た物件となれば、

隣近所の住民が高齢化している可能性は当然高くなり、「思い描いていたような近所付き合いができない」

といったお悩みはよく耳に致します。

また、「リノベーションをしていないお部屋」が激安で販売されているマンションにおいては、近隣住民の素行の悪さ(民度の低さ)に悩まされているといったご意見も少なくありません。

自分のお部屋が美しいと「周囲も同じような環境に住んでいる方々である」と錯覚しがちですが、リノベーションマンションではこうした点にも注意が必要になるでしょう。

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リノベーションマンションの選び方

ここまで見て来た通り、リノベーションマンションの購入に当たっては様々な注意点やデメリットも存在するものです。

そこで本項では、リノベーションマンションを探す際に「どのような物件を選ぶべきか」という点についてお話ししてみたいと思います。

築年数は20年以内の物件を選ぶ

リノベーションマンションのデメリットに関する解説の中でもお話しした通り、「築年数が古過ぎる物件」は建物の老朽化や建替えの問題、そして住環境に関する事項など様々なリスクが存在しています。

また、住宅ローンの借入可能年数やローン控除の問題なども合わせて考えれば、やはり築20年以内の物件を選ぶのがおすすめです。

売主(不動産業者)の質を見極める

そして次にチェックするべきなのが、物件を販売する売主の質に関する問題となります。

「分譲マンションの買取り」と「リノベーション再販売」は、建売事業以上に少ない資金繰りで可能となるビジネスですから、悪質な業者が売主となっている可能性も低くはありません。

なお、悪徳不動産業者の見分け方については過去記事「悪徳不動産会社の見分け方」にて詳しく解説しておりますので、是非そちらをご参考にしていただければと思います。

リノベーション工事の質を見極める

続いて重要になって来るのが、「お部屋に施されたリノベーション工事自体の質を見極める」こととなります。

一般の方が工事の完了したお部屋を見て、外観から施工の良し悪しを判断するのは極めて困難なこととなるでしょうから、こうした場合には設計士や信頼の置ける工務店に依頼してチェックを行うのがおすすめです。

また、「水道・下水の配管」や「壁・天井内の配線や断熱材」については、『しっかりと更新工事が行われているか否か』の確認を売主に行うことも忘れないようにしましょう。

価格が適正であるかを確認

またリノベーションマンションは、「設定されている販売価格が適正であるか否か」の判断が非常に難しい物件となります。

そもそもリノベーション事業自体が「お部屋をリニューアルすることで付加価値を与えてより高値で販売しよう」というビジネスですから、それも当然と言えば当然なのですが、やはり高額過ぎる買い物は避けたいところですよね。

そこで重要となって来るのが、購入者が適正な中古マンションの相場を把握しておくことです。

インターネットなどを検索すれば、同じマンションで「リノベーションが行われていない部屋」の売買事例を発見できることもあるでしょうし、仲介に入る不動産業者に依頼すれば「一般に公開されていない過去の取引事例」もチェックできるでしょう。

なお、通常リノベーションに掛かる費用は500~700万円程度となりますので、自分の買う物件にどれくらい利益が載せられているかをしっかりと把握してから購入に踏み切るべきです。

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リノベーションマンションのデメリットや選び方を解説まとめ

さてここまで、リノベーションマンション購入時の注意点やチェックポイントを解説してまいりました。

物件の見た目が良いと「ついついお財布の紐も緩んでしまいがち」になりますが、こうした時ほど冷静に物件の価値を見詰め直していただきたいところです。

なお、過去の取引事例などを調べると『売主はこんなに儲けているのか』と驚かされるケースもあるでしょうが、販売会社もそれなりの広告費や人件費を支払って安価に物件を仕入れている訳ですから、安易に価格交渉を行うべきではありません。

よって、売主である不動産業者が得る利益よりも、自分にとって「その金額を支払っても手に入れるべき物件であるのか?」という点をしっかりと見極めて契約に臨んでいただきたいところです。

ではこれにて、「リノベーションマンションのデメリットや選び方を解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。