アパートや賃貸マンションの運用を行っている不動産投資家様にとっての「最大の関心事」と言えば、それはやはり賃料収入ということになるでしょう。

よって1部屋でも空室が出れば「収入が減ってしまう!」と焦るものですが、こうした収入面ばかりに気を取られていると、時には『手痛いしっぺ返し』を受けることがあります。

例えば外壁の修繕や共用部分の清掃などを怠れば、既存の入居者が出て行ってしまうこともあるでしょうし、こうしたケースでは新規の入居者もなかなか決まらないものです。

また、空室を埋めることばかりを考えていると「質の悪い入居者を迎え入れてしまう」ことになり、滞納賃料の回収に手を焼くという場合も往々にしてあるでしょう。

そして、こうした管理上の問題の中でも『今特に注意を払うべき』とされているのが、地震や火災などの災害に対する備えであると言われています。

そこで本日は「アパート等の災害時の責任について!」と題して、災害が発生し収益物件が損壊した場合や、入居者が死傷した場合の物件オーナーの責任について解説してみましょう。

アパート等の災害時の責任

 

収益物件に関するオーナー責任

既に収益物件を保有し、運用を開始している投資家様であっても「災害時に大家に降り懸かって来る責任についてなど考えたことも無い」という方が多いことでしょう。

また、入居者と取り交わす賃貸借契約書の中には「地震・火災等の天災による被害について貸主は責任を負わない」と書いてあるのだから、『そんな責任を負う必要はないのでは?』とお考えになられるかもしれません。

しかしながら実際に過去の判例などをチェックしてみると、こうした災害において「貸主の責任は免責」と書かれた賃貸借契約書を取り交わしているにも係らず、賠償命令を受けているケースが数多く存在しているのです。

そして、運悪く入居者が死亡した例などを見てみれば「その賠償額は1億円以上」といった場合もありますから、これは大家さんにとって大問題ですよね。

そこで以下では「地震や火災などにおいて、どのような場合に物件オーナー様に賠償命令が下っているか」という点について解説してみたいと思います。

 

地震の場合の大家さんの責任

東日本大震災に熊本大地震と、近年多くの被害をもたらしているが地震です。

こうした一連の事態を受け、専門家の間からは「日本は本格的な火山やプレートの活動期に突入した」などの指摘もされていますし、行政によっては「近い将来大地震に見舞われる可能性が80%以上」などという恐ろしい予測を発表している地域あります。

このように何時どこで発生してもおかしくない大地震ですが、一体如何なる場合に収益物件のオーナー様が被害に対する責任を負わされるのでしょうか。

なお、過去に発生した阪神淡路大震災などの事例を見ていくと「建物に何らかなの瑕疵(欠陥)が存在し、これを放置したことにより発生した被害は大家さんが責任を負う」という判断が裁判所によってなされています。

なお、裁判所がこうした判断を下す背景には民法717条に定められた「土地の工作物に瑕疵(欠陥)があることによって生じた被害は、所有者が損害を賠償しなければならない」(工作物責任)という条文が根拠となっており、

法律は建物所有者に対して「たとえ所有者の管理に故意や過失がなくとも責任を負うべし」という厳しい責任(無過失責任)を課しているのです。

では、この場合の「建物の瑕疵(欠陥)」とは一体どのようなケースが該当するのでしょう。

ちなみに、この点については未だ判例も少ないため専門家の間でも意見が分かれるところなのですが、多数派の意見としては「建物が建築された時点での耐震基準をクリアーしているか否かによる」とされています。

なお、これまで建築基準法は過去の地震の被害状況を受けて何度かその耐震性の基準を変更していますが、対象の建物が建築された際に当時定められていた耐震性を有していれば、「建物に瑕疵はない」との主張が行えるはずです。

そして、この考え方に立てば新築時に建築確認を取得し、完了検査に合格してさえいれば、地震で建物が倒壊して死傷者が出ても「大家さんはその責任を負わない」ことになるでしょう。

また、たとえ建築確認を取得していなかったり、完了検査に合格していなくとも、倒壊した建物が新築当時の基準をクリアーしていることが立証できれば、その責めを逃れることが可能となるはずです。

ただ、少数派の意見によれば「熊本大地震などで、震度7以上の地震が発生することが予見できている以上、新築当時の耐震基準ではなく熊本大地震と同等の地震に耐えられなければ瑕疵に当たる」との見解もありますから、この基準をクリアーするためには相当な費用を掛けた耐震補強工事が必要となるでしょう。

そして現在では、行政が耐震診断を無償で行ってくれたり、耐震工事に補助金を出してくれるところも少なくありませんから、建物の強度に不安がある方は是非ともこうした制度を利用して、補強工事を行うべきです。

一方ここで一つ気になるのが、「建物が壊れてしまった場合の賃料の扱いはどうなるのか?」という点なのではないでしょうか。

この点について判例は全壊の場合は賃貸借契約が終了するものとしており、大家さんが再建築をする義務は無いとの判断をしています。(全壊に限らず住めない状態も同様)

これに対して半壊については、無事だった部屋についてはそのままの家賃の支払いを求めることができますが、お部屋が中途半端に破損した場合には「破損面積に応じて賃料を減額するべきである」という見解です。(2020年の民法改正においてはこの半壊に関する法解釈が条文に組み込まれました)

また、半壊で修復が可能な場合には物件オーナーはその修繕義務を負うことになりますから、地震保険などへの加入は絶対にしておくべきでしょう。

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火災の場合の大家さんの責任

ここまで地震のケースについてお話ししてまいりましたが、火災の場合は少々事情が異なる点が出てきます。

まず申し上げたいのは、火災の場合はその多くが人災であるという点です。

また、「大家さんが収益物件に住んでいて火元が大家さん自身である」というのならば話は別ですが、通常は部屋を借りている人間が火災の原因である場合が殆どでしょう。

そしてこうしたケースでは、入居者が大家さんに対して、建物を燃やしたことによって生じた損害を賠償する義務を負うことになります。

なお、こうした判断となる理由は、入居者は借りている部屋に対して「善管注意義務」と呼ばれる管理責任を負っており、ここで火災を発生させたことは注意義務違反の不法行為があったとみなされるためです。

但し、賃貸物件に住う者が「建物の損害を賠償するだけの資力」を有している可能性は低いはずですから、入居時に加入してもらう借家人賠償保険の保険金より大家さんが賠償を受けるケースが殆どとなるでしょう。

よって、「借家人賠償保険の掛け金など安い方が、入居者の募集に有利である」といった安易な考え方は非常に危険なものとなりますから、この点には注意が必要です。

一方、アパート・マンションタイプの物件の場合には、火災を起こした部屋の両隣や上下の部屋に対する責任も気になるところでしょうが、こちらも大家さんには責任がなく、失火の原因を作った入居者がその責めを負うことになります。

但し日本の法律では、火災によって生じた隣家の損害については出火元となった部屋の住人に「重過失」があった場合のみに責任が降り懸かることとなっていますから、隣接する部屋の入居者は「賠償をしてもらえないケースも多い」というのが実情です。

さて、ここまでの解説をお読みいただくと「火災の場合は物件オーナーに責任が降り懸かることはない!」というように聞えてしまいそうですが、注意すべき点もあります。

それは避難経路に荷物が放置されており、これが原因で被害者が出てしまった場合などとなります。

こうしたケースでは、大家さんの管理責任が厳しく問われることとなりますから「非常口や避難経路の確保」や「適切なスパンでの消防点検」など、消防法上の違反が無いように充分な注意が必要となるのです。

*荷物等を置いたのが大家さんでなくとも、この状態で放置した場合には責任を追及される可能性があります。

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賃貸物件の大家さんの責任まとめ

さてここまで、収益物件が災害に直面した際の物件オーナー様の責任についてご説明してまいりました。

地震については、今後発生リスクが益々高まっていくことが予想されますので、未だに対応が万全でない大家さんには是非とも適切な対応をお願いしたいところです。

ちなみに、万が一大家さんに収益物件における責任が振り掛かって来た際の備えとして、施設賠償保険に加入するという手立てもあります。

施設賠償保険は保険対象の建物の瑕疵が原因で発生した事故に対して、保険金が支払われる商品ですから、地震などの倒壊で犠牲者が出た場合にも保険金が受け取れるのです。

また、火災保険などとセットにすることで、それほど高額な掛け金を支払わずとも加入することができますから、気になる方は是非お見積もりをとってみてください。

「ようやく手に入れた収益物件」や「親が残してくれたアパート」などが、自分自身の首を絞めることになっては笑い話にもなりませんので、いざという時のための備えは万全にしておきましょう。

ではこれにて、「アパート等の災害時の責任について!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。