先祖代々の土地を受け継ぐ地主さんが、自分の土地にアパートを建築している光景を目にすることは珍しくありません。

しかしながら、何も資産がない状態から不動産投資を始めた方々からすると「自分で建物を新築することなど夢のまた夢だな」というのが現実ですよね。

そこで本日は「アパート経営を土地なしの状態から始める方法について解説します!」と題して、一般的には非常に困難とされの土地購入から不動産投資を始める手法について考えてみたいと思います。

アパート経営を土地から始める

 

土地からのアパート新築は儲からない

既に不動産投資を始めており、ある程度の成功を収めている方であれば、一度は「土地を購入して、新築アパート建設をしてみよう」という考えをお持ちになられたことがあるのではないでしょうか。

そして多くの方が、色々とプランを練った挙句に「新築は儲からない」という結論に達していることと思います。

さて、記事の冒頭から「新築は儲からない」なんて話をされては、やる気が失せてしまいそうですが、まずは新築アパートが儲からない理由から考えて行きましょう。

※土地を買ってアパートを建てるのではなく、不動産業者が土地付きで分譲する新築アパートの購入については「新築収益物件購入のメリット・デメリットを解説いたします!」の記事をご参照ください。

土地の値段が高過ぎる

土地を購入してアパート建設するプランを実現する上で、まず障害となって来るのが、土地価格の高騰という問題です。

「あまり景気が良い感覚がないのに、どうして土地がそんなに高いの?」と不思議に思う方も多いかと思いますが、値上がりの原因は景気変動による地価の高騰だけではありません。

過去記事「建売とは?戸建て分譲の仕組みや舞台裏を解説いたします!」でもお話ししましたが、現在の不動産業界(実際は建売屋さんの業界)では、パワービルダーと呼ばれる大手建売業者の台頭により、熾烈な土地の仕入れ合戦が展開されています。

昔の建売業者と言えば、土地を安く買い叩いて用地を確保するのが常でしたが、近年ではライバル企業の増加などにより、相場よりも安い価格で土地を確保するが困難な状況になっているのが実情です。

そこで建売業者たちは、海外に材木の調達を行うための現地法人を設立したり、自社の工務店を立ち上げるなどの方法で、徹底した建物代のローコスト化を進めて行きました。

そして現在では驚く程の安価で建物を建築することが可能となり、建物のコストが安くなった分、土地の買取価格が上昇することになったのです。

なお、この買取価格の高騰は「一般の方が購入する以上の価格で、建売業者が用地を仕入れられる状況」を生み出すことなり、遂にはまともな土地売り物件が市場に供給されない状態にまでなっています。(売地が出ても全て建売業者が購入してしまう)

もちろん不動産の市場に目を向ければ、未だに「売地」として流通している物件は存在しますが、これらの土地の殆どは『不動産業者が売主の転売物件(転がし物件)』か『相場から逸脱した値付けがされたため、建売屋さんから相手にされない物件』というのが実情でしょう。

こうした理由から、今の不動産市場で購入できる土地売り物件は『価格が高過ぎて、アパート用地としては不向き』となってしまっているのです。

建物代が高過ぎる

前項にてお話しした「土地の価格が高過ぎる」という事情に加え、土地取得からのアパート建築を困難なものとしているのが『建築コストが高過ぎる』という問題です。

ロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナウィルスの流行等の影響によって跳ね上がった建築コストは、未だに高い水準を維持したままですし、地価の高騰に伴う建売物件や新築分譲マンションの建築ラッシュもこの高騰の一因といえるでしょう。

そしてアパートとなれば、一部屋毎にユニットバスやキッチンなどの設備を設置しなければなりませんから、その建築単価は戸建てと比較しても非常に高額となってしまうのです。

こうした事情から土地の情報が入ってきても、計画の段階で「収支のバランスが合わない」という判断となってしまい、アパート建築が実現できないケースが非常に多いのです。

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土地のない状態からアパート経営を始めるためのテクニック

さてここまで、土地を購入してのアパート経営が困難な理由を解説してまいりましたが、やり方次第ではまだまだ夢を実現できる可能性は残されています。

そこで本項では、土地からアパート経営を成功させるためのテクニックをご紹介していくことにいたしましょう。

狙い目は住宅の建設に適さない土地

さて、ここまでの解説をお読みになり「更地から新築アパートを建てようという計画自体が、そもそも無理なのでは?」とお考えの方も多いかと思いますが、実はそうとばかりも言えない部分もあります。

実は不動産業者の中には、これだけ地価や建築単価が高騰している中でも、土地を買い、新築したアパートを販売して利益を上げている会社がいくつも存在しているのです。

そして彼らの用地仕入れの秘訣は、「住宅の建設に適さない土地にアパートを建てる」という手法を用いている点にあります。

もちろんこれは、人が住めないような山奥や、工場地帯にアパートを建てるという意味ではなく、「土地の形状や大きさなどの問題で、建売業者から敬遠されてしまう土地を利用する」という意味です。

詳しくは、過去記事「マイホームの土地の広さや面積について解説いたします!」「土地形状は整形地・不整形地どちらがお得?」で解説しておりますが、建売の分譲を行う土地には、クリアーするべき一定の基準が存在しています。

例えば、土地自体は広いのに、道路に接する間口が2mしかない旗竿地(建築基準法の定めにより、建物の建築には最低2mの間口が必要)では、一軒の家しか建てられない上に、

入り口の狭さによって自動車を出入りさせることが不可能である(カーポートを設けるなら、少なくとも2.3mの通路幅が必要)など、どう足掻いても建売にすることができない事情があるのです。

また、車が入らないのでは「注文住宅で家を建てたい」という一般の方からも敬遠されてしまうでしょうから、こうした土地の価値は非常に低いものとなります。

しかしながら、このような土地をアパート用地として利用するのであれば、必ずしも駐車場は必要ありませんし、土地の分割ができなくとも問題はありませんから、「戸建用地として利用価値のない土地」こそがアパート建設に最適な土地となってくる訳です。

アパート分譲業者がスルーする土地を狙う

前項の解説にて「どのような土地がアパート用地に適しているか」はご理解いただけたことと思いますが、『素人が頑張って物件を探しても、アパート分譲を本業とする不動産屋さんに勝てるはずがない』とお考えの方も少なくはないでしょう。

確かにひと昔前であれば、多くの不動産業者がアパート用地の取得に血眼になっていましたから、その争奪戦に一般の方が参入するのは困難な状況でした。

しかしながら、某銀行の不動産投資に係わる不祥事が発覚して以降は、多くの金融機関が収益物件への融資を手控えるようになっており、これに伴って不動産業者のアパート用地購入意欲も大きく減退することになったのです。

もちろん時間の経過と共に、金融機関も再び投資物件への融資に力を入れ始めてはいますが、この騒動でアパート分譲業者の勢いが削がれたことは間違いありません。

そして、こうした地合いの中で狙うべきなのが、アパート分譲業者が買い辛い土地ということになります。

まず前提としてご理解いただきたいのが、アパート用地を探す不動産業者の目的はアパートを建て、満室にした後に「転売」することであるという点です。

そうとなれば、「多くのお客さんが欲しがるような商品作り」をしなければなりませんので、土地の形状は別にしても、ある程度の世帯数と利回りを確保しなければならず、2世帯、3世帯といった「世帯数の少ないアパートしか建てられない物件」には手を出さないのが通常です。

よって、土地面積が30㎡~40㎡(9坪~12坪)という、超狭小の戸建てに向かない土地であるならば、競合する買い手が存在しないため、安値で購入できる可能性が高まるでしょう。

また、この土地面積となれば建物についても建築コストが抑えられますから、木造の建物で2世帯~3世帯のプチアパートを建てることにより、収益物件として『それなりに旨味の物件』に仕立てることができるはずです。

借地権の土地を狙う

さて、続いてご紹介するのが借地権付きの建物(古家が付いていますが建替えも可能)を購入して、アパートを建てるという手法になります。

借地権については別記事「借地権とは?わかりやすくご説明いたします!」にて詳しく解説を行っておりますが、不動産市場においては借地権付きの建物が当たり前に売買されており、その価格は所有権の物件の半額程度となっているケースも少なくありません。

一般的に借地権は所有権価格の70~60%の価値があると言われていますが、借地権を売却する際には

  • 譲渡承諾料/借地権価格の10%
  • 建物の建替え承諾料/所有権更地価格の4~5%(建物が老朽化しており建て替えが必要な場合)
  • 更新料/所有権更地価格の3~5%(借地契約の更新が迫っている場合)

といった地主へ支払う各種費用を差し引いた上で価格設定を行わねばなりません。

更に借地権の物件については「金融機関が満額の融資を行わないのが通常」である上、「地主が承諾しない場合には、購入希望者が融資を利用すること自体ができない」という弱点がありますので、格安で取引されるのも致し方のないことなのです。

なお、マイホームの購入などに際してはこうした問題点を抱えているが故に「借地は買わない」という方も多いのですが、収益を上げることが目的の不動産投資においては「初期費用を安価に抑えられる借地権は絶好の狙い目」と言えるでしょう。

もちろん、月々の地代は払っていかねばなりませんし、更新に際しては更新料も必要となるでしょうが、これを差引いても十分な収益が上げられるのであれば、何も問題はありません。

また、前項でお話しした一戸建てに向かない面積や地形の借地であれば、より安価に購入することができますから、アパート建築用地としての魅力は更に高まるはずです。

但し、購入に際しては建て替えが前提となりますから、建替え承諾料をしっかりと資金計画に組み込んでおかねばなりませんし、

現在建っている建物が通常の戸建ての場合には、「アパートへの建て替えは借地の条件変更に当たる」との指摘を地主から受ける可能性もありますので、購入までにしっかりと土地の使用目的や建物の概要について説明を行っておく必要があるでしょう。

借地権の土地を新たに発掘する

前項においては市場に出回る借地物件を購入して、アパートを建築する手法を解説いたしましたが、『新たなに借地権を設定できる土地を発掘する』という方法もあります。

通常、一度借地権を設定してしまうと半永久的に土地の返却を受けられないため、地主の多くは新たに土地を貸し出すことに難色を示すものですが、

ここまでお話しして来たように土地面積が30㎡~40㎡(9坪~12坪)といった、超狭小の土地であれば『遊ばせておくよりは借地権を設定して収益を上げたい』という気持ちになることもあるはずです。

また、一般定期借地権(最短契約期間50年、期間満了後は確実に地主に返還される)での契約を持ち掛ければ、更に承諾のハードルを下げることができるでしょう。

ちなみに事業用定期借地権などでは更に短い契約期間が実現可能ですが、アパートは事業用物件とは認められないため、このスキームにおいて用いるのは一般定期借地権でなくてはなりません。

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アパート経営を土地なしの状態から始める方法!まとめ

このように購入する土地さえ選べば、一般の方でも更地からアパートを建てる事業は不可能ではありません。

但し、こうした土地は非常に数も少ないですし、建物代は最小限に抑える必要がありますから、「物件探しのノウハウ」を確立した上で、「コストが安く信頼のおける建築屋さん」をしっかりと確保しておく必要があるでしょう。

「折角不動産投資を始めるなら、見た目も綺麗で、瑕疵の心配もない新築が良い!」、そんな夢を叶えてくれる超狭小地のアパート建設に挑戦されてみては如何でしょうか。

ではこれにて、「アパート経営を土地なしの状態から始める方法について解説します!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!