前回、本ブログでは「借地権とはどのうようなものなのか?」という記事を書かせていただきました。

その中で借地権者は、借地契約の更新や譲渡に際して、底地権者(土地の持ち主・地主)に更新料や承諾料等を支払う必要があることをお話いたしましたが、『更に詳しく、借地権に係わる費用について知りたい』という方も多いことかと思います。

そこで本日は、借地権更新料の相場や、各種承諾料の金額の目安について解説させていただきたいと思います。

借地権更新料の相場

 

更新料について

借地権と聞けば、直ぐに「更新料」というイメージが浮かぶ方も多いかと思います。

なお前提として申し上げておきたいのが、実はこの更新料なるもの「借地権の契約書(土地賃貸借契約書)上で、借主がこれを負担する旨が定められていない限りは、原則として支払い義務はない」という点です。

但し、たとえ契約書に記されていなくとも、過去の更新において「更新料支払いの実績がある場合」などは、『負担義務あり』と判断されることがありますので注意が必要でしょう。

また、世間に出回っている契約書式にはかなりの確率で「更新料に関する条項」が入っていますから、支払いを回避できないケースも多いはずです。

更に、地主が更新料を請求してきているにも係わらず、これを拒否すれば揉め事になるのは必至ですから、地主との円滑な関係を維持するために「敢えて更新料を支払っている」という借地権者も少なくありません。

そして更新料については、「所有権更地価格の3~5%が相場である」と言われています。

所有権更地価格とは、文字通り「建物の価格を加味せず、所有権の更地であった場合の評価額」という意味になりますが、ここで気になるのが『評価の方法』となるでしょう。

土地の評価額には

  • 実勢価格(実際に不動産が取引されてる価格)
  • 不動産鑑定評価(不動産鑑定士が算出した価格)
  • 固定資産税評価等(路線価などから計算された税務上の課税標準額)

などの様々な考え方がありますから、「この中でどれを採用するか」によって価格には大きな差が発生します。

ちなみに、借地契約書の中に「所有権更地価格算出の方法」が具体的に記されている場合には、その定めに従うことになりますが、特に記載がなく裁判などで算出方法について争われた場合には不動産鑑定評価が採用されることが多いでしょう。

ただ、不動産鑑定士に鑑定を依頼すればそれなりの費用が発生しますので、地主との話し合いで決着を付ける場合には、実勢価格をベースとして交渉するのがスムーズかと思います。(実勢価格と不動産鑑定評価額はかなり近い価格となりますが、固定資産評価等はこれらの価格と比べて低いものとなるため)

なお、3~5%という所有権更地価格に対する割合については、裁判所の判例などを基に算出した数値となりますが、「地域による格差は加味されていない」という点に注意が必要です。

つまり、都心部の一等地などの場合には、この基準を大きく上回る場合もあるでしょうし、人口の少ない過疎化の進んだ地域などでは反対に基準を下回るケースもありますので、3~5%という数値をベースに地主と話し合った上で更新料を算出することになるでしょう。

 

各種承諾料の相場

さて、更新料に続いては「借地人が一定のアクションを行う際に必要となってくる、各種の承諾料」について、解説させていただきましょう。

前項の更新料に関しては、支払い義務の有無について「契約書に記されているかがポイントである」とお話ししましたが、本項で解説する各種の承諾料については、契約書の内容に係わらず借主が負担すべき費用となります。

そして、以下の項目について借地権者は地主に承諾を求めなければならない(承諾料を支払わなければならない)とされているのです。

  • 建物の建替え     所有権更地価格の 3%~5%
  • 建物の増改築     所有権更地価格の 1%
  • 契約条件変更     所有権更地価格の 10%
  • 譲渡承諾(名義変更) 借地権価格(所有権更地価格の60~70%)の10%

なお、上記の各種承諾料の基準(%)については、判例などを基に算出したものとなりますが、ここでは更に詳しくその内容を解説していくことにいたしましょう。

まず、増改築や建替えの承諾料についてですが、借地に建つ建物に変更を加える場合には承諾料が発生することになります。

これまでの判例を見ていくと、建替えについては「更地価格の3%」という判断が下されているケースが圧倒的に多いのですが、建替え後の「建物の規模や用途」によっては、それ以上の承諾料が必要とされる場合もありますので5%までの幅が生じています。

また、増改築は行われる工事の内容によって裁判所の判断にもかなりの違いがありますので、判例の集中する1%を基準としながらも、軽微な増改築は1%未満となる場合もあるでしょうし、建物の骨組みだけを残して全てをリフォームするリノベーション工事などでは、建替えの基準である3%に近い価格となることもあるはずです。

一方、契約条件の変更については「契約期間の変更」や「旧法借地権における非堅固建物から堅固建物への変更」などがこれに当たることになり、単に住居から店舗への用途変更などは該当しません。

そして譲渡承諾(名義変更)は、文字通り借地の上に建つ建物を売買する(借地権売買)際などに必要となる承諾のことです。

ちなみに、譲渡承諾料については所有権更地価格ではなく、借地権価格の10%となっている点に注意が必要となります。

借地権価格とは、土地の上に建てられた建物とこれを使用することのできる権利(借地権)の価格を指しますが、実際の算出方法については路線価図に記載されている借地権割合をベースとするのが一般的です。

「更新料の項」でも若干触れましたが、路線価とは税金の計算などに用いられる『公的な土地の評価額』のことであり、

これを図面化した路線価図には、借地割合という借地と地主が持つ土地の価値の割合がエリアごとに定められており、多くの地域で「借地割合60%(地主の割合40%)」、商業地などで「借地割合70%(地主の割合30%)」となっています。

そして、所有権更地価格を借地割合で按分することで借地価格を算出することになりますから、仮に「所有権更地価格3000万円」の物件で、該当エリアの借地割合が60%ならば、借地権価格1800万円(3000万円×60%)、土地の価格(底地の価格)が1200万円という計算になる訳です。

よって、この地域の譲渡承諾料の相場を算出するとなれば借地権価格1800万円の10%で「180万円」ということになります。

なお、相続で借地人の名義が変更となる場合には、原則として譲渡承諾料は不要との判断になるでしょう。

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実際の擦り合わせについて

では最後に、ここまで解説してきた更新料や各種承諾料の相場に関する知識を活かして、「どのように地主と話し合いを進めて行くか」について記してみたいと思います。

まず何より大切なのは、判断の基準となる「所有権更地価格」や「借地権価格」を如何に正確に算出するかということになるでしょう。

ちなみに更新料の項でもお話しいたしましたが、借地権の契約書に価格算出の方法が示されていない場合には、不動産鑑定評価額か実勢価格を用いて計算をする他はありませんので、ここではあまり費用の掛からない実勢価格の算出方法についてお話ししていくことにいたします。

本ブログの不動産業者さんへ向けた記事「不動産の査定方法について!」でも解説していますが、『どこどこの土地が坪何万で売りに出されているから、自分の土地はこれに近い価格になるはずだ』といった短絡的な考えで、土地の相場を判断するのは非常に危険です。(実勢価格とはかけ離れた価格が算出される可能性があるため)

では「どのように土地の価格を導き出せば良いの?」ということになるかと思いますが、こうした場合には中立的な立場の不動産業者に費用を支払い、査定報告書を作成してもらうのが有効な手段となるでしょう。

なお、一社の査定だけでは信頼できないという場合は複数の業者に依頼を掛けても問題はありませんが、手間を掛ける以上、報酬だけはしっかり払うようにしていただきたいものです。

 

さて、こうして根拠のある所有権更地価格が示されれば、後はここまでご説明してきた判例ベースの相場に基づいて、地主・借地権者の両者間で協議を行うのみとなります。

そして、この交渉に当たっては、「現在の地代と土地の固定資産税のバランス」「過去に支払って来た更新料・建替え承諾等の金額」「物件所在地の地域特性」等も考慮しながら、着地点を模索していくことになるでしょう。

またここで、実勢価格の算出において査定報告書の作成を依頼した不動産業者に話し合いの仲裁に入ってもらうというのも一つの方法です。

地元の不動産業者であれば、地域の地代や更新料の相場にも精通しているはずですから、彼らのアドバイスは大いに参考となるでしょう。

こうした事例が示されれば、如何に強気な地主でもあまり無茶なことは言えませんので、交渉を行う上での重要な指標になるかと思いますし、不動産屋さんという第三者の介入でよりスムーズな話し合いが行えるはずです。

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借地権更新料の相場まとめ

さてここまで、借地権の更新料や各種承諾料の相場について解説をしてまいりました。

更新料や承諾料の交渉は非常に面倒に思えますが、ここまでお話ししてきた手法を用いれば、ある程度スムーズに問題が解決できそうですよね。

なお、地元の不動産業者に交渉の仲裁に入ってもらう場合には、査定報告書の作成費用とは別にコンサルタント料などを支払うべきです。

また、不要なトラブルを避けるためにも、依頼を行う不動産業者とは事前に料金の打ち合わせをしておくことをお勧めいたします。

ではこれにて、借地権更新料の相場、各種承諾料の金額の目安についての知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!