不動産業者の仕事おいて、賃貸物件の管理業務は非常に大きなウエイトを占めるものとなります。
なお、これまでも過去記事「賃貸元付けのお仕事をレポートいたします!」や「賃貸入金管理のお仕事レポートをお届け!」などで、賃貸管理の仕事内容についてご紹介してまいりましたが、これが月極め駐車場の管理となると「その業務内容もかなり変わってくる」ものです。
そこで本日は、一般の方にはあまり知られていない月極駐車場の管理業務について解説していきたいと思います。
駐車場管理の仕事内容
管理会社が月極駐車場の管理を引き受ける際に、まずオーナー様(大家さん)との間で取り決めなければならないのが「管理の形態」と「報酬」についてとなります。
月極駐車場においてもアパートなどの管理と同様に、賃料収入の管理(賃料の集金や滞納発生時の督促)を行い、その中から一定の割合を管理報酬として受け取る「入金管理」と、
新規契約や契約更新といった契約系のイベントに際して報酬を受け取る「契約管理」という、2つのタイプの管理形態がありますので、駐車場の区画数や地域性、オーナー様の希望などを勘案しながら、物件ごとに管理の形態と報酬を取り決めていきます。
なお、管理報酬の相場については地域によってかなりの差がありますが、入金管理の場合で「月の賃料収入の5~10%程度」というケースが多いようです。
一方、契約管理の場合には原則オーナー様から報酬を頂くことはありませんが、借主より新規契約時に賃料1ヵ月分程度の仲介手数料を受け取った上、契約更新時や車庫証明発行などのイベントに際して報酬を得ていくことになります。
ちなみに区画数の少ない駐車場では月額賃料収入がどうしても低くなりがちですので、入金や物件の管理をオーナー様にお任せした「契約管理」という形態を採るのが一般的でしょう。
※当事者同士が合意すればどのような管理形態を定めることも自由ですから、入金管理と契約管理をミックスした管理契約を締結することも多々あります。
こうして管理業務の条件が確定すれば、いよいよ具体的な管理業務を開始していくこととなりますので以下では「駐車場管理の主な業務の内容」について解説していくことといたしましょう。
駐車場利用者の新規募集業務
オーナー様から駐車場の管理を任された以上、空き区画があれば新たな利用者を募集しなければなりません。
近年ではアットホームなどの入居者募集媒体において「駐車場の空き区画情報」を掲載することができるケースも増えてきましたが、こうした広告媒体を利用した募集だけでは少々心もとない部分もあります。
そこで効果を発揮するのが、昔ながらの現地募集看板(現地に設置された「駐車場空きあり」などと書かれた看板)やポスティングなどのレトロな広告活動です。
このようなお話をすると「今時そんな方法で利用希望者が集まるのか?」と疑問に思われる方もおられるでしょうが、車庫証明を取得するための条件(駐車場から一定の距離内に自宅がないと車庫証明が取得できない)から考えても、駐車場を借りてくれる方は物件の近辺に居住している可能性が非常に高いため、募集看板のような地域密着型の広告活動が有効となります。
そして駐車場の利用希望者が現れたならば、続いては申し込みの手続きを行います。
近年では駐車場の新規契約に賃貸保証会社の保証をつけることも多いですから審査用に申込書は必須となりますし、保証会社を利用しない場合でも「オーナー様が自身の意思で申込人の駐車場利用を許可した」という事実を明確にするために、しっかりと申込書を提出してもらうべきでしょう。
自動車保管場所契約やその他手続き上の管理
新規募集によって空き区画に申込みが入れば、次は自動車保管場所契約を締結することになりますし、新たな駐車場利用者から車庫証明の発行依頼を受けることもあるはずです。
また、契約書に更新の定めがあれば定期的な更新手続きが必要となりますし、解約の申し出が舞い込めば敷金や日割り賃料の返金など、駐車場の管理には様々な契約や手続き上の業務が付いて回るものですから、本項ではこの点について解説してまいりましょう。
駐車場の新規契約
駐車場の空き区画に申込みがあり、賃貸保証会社とオーナー様の審査を通過すれば次は契約を締結することになります。
契約に際しては駐車場使用契約書を作成することになりますが、この契約書の内容を如何に精査し、緻密に条項を組み上げていくかが駐車場を管理する上で非常に大切な作業となります。
なお本記事は駐車場の管理業務の概要にスポットを当てたものとなりますので、契約条項の詳細については割愛いたしますが、より詳しく知りたいという方は別記事「駐車場契約書と特約の内容を解説致します!」をご参照いただければと思います。
そして、契約までの間に賃料や敷金、仲介手数料といった契約金についての明細を作成した上で、申込人から事前にこれを受領しておく必要があります。
*契約金の受け渡し方法については「契約の場にて現金で受取る」、または「事前に振込んでもらう」かのどちらかになるでしょう。
*仲介手数料については宅建業法による制限を受けませんが、1ヶ月分を頂くの相場でしょう。
また契約に際して賃貸保証会社を利用するのであれば保証会社の契約書が必要となりますし、保証人を擁立するのであれば連帯保証人承諾書と保証人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)を提出してもらわねばなりません。
ちなみに表記の契約関係書類以外にも、必要書類として
- 身分証明書
- 会社謄本(法人契約の場合)
- 車検証
などを借主に持参してもらい、その控えを契約書類と合わせてオーナー様に提出することになります。
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自動車保管場所契約の更新
月極駐車場の契約においては、自動更新の条項を盛り込んでしまう場合もありますが、更新手続きは更新料や事務手数料を頂戴する機会となりますので、1年、2年などの期間ごとに契約更新を定めている契約書も少なくありません。
更新料等の価格については特に決まりはありませんが、賃料の1ヶ月分あるいは半月分といった取り決めを行なっているケースが多いようです。
車庫証明(保管場所使用承諾証明書)の発行
借主が自動車の購入や引っ越しに伴って月極駐車場を借りる場合には、車庫証明を取得するための保管場所使用承諾証明書という書類の発行を求めてくるケースが少なくありません。
この保管場所使用承諾証明書は対象の駐車区画を間違いなく借主に貸し出されていることを証明するための書式であり、オーナーまたは管理会社が発行権限を有しているのですが、この証明書の発行も管理会社の重要な業務となります。
証明書の発行自体はそれ程手間のかかる作業ではありませんが、発行手数料として1万円~3千円程度の手数料を求める管理会社が多いようです。
※車庫証明に関する詳細は別記事「保管場所使用承諾証明書について解説致します!」をご参照ください。
月極駐車場の解約手続き
新たに駐車場を借りる方いるのであれば、解約される方がおられるのも当然の理です。
通常、駐車場の契約書には解約予告についての条項(「1ヶ月前に予告することで解約が可能となる」などの条項)が組み込まれているはずですから、借主から解約の申し出があった場合には、この条項の取り決めに従って精算金の処理を行います。
また、敷金を預かっているケースではこちらも返金しなければなりませんが、最終月の家賃と相殺することも可能ですから、場合によっては敷金を預かっている方がスムーズな精算を行えることもあるでしょう。
なお、「言った言わないのトラブル」を避けるためにも、解約に際しては借主に書面にて解約届等の提出をお願いするべきです。
そして解約期日を過ぎたなら、車両が移動されているかの確認を行うことも忘れないようにしましょう。
駐車場賃料の管理
オーナー様から入金管理を請け負っている場合には、毎月入ってくる賃料収入をしっかりと管理しなければなりません。
近年では「集金は賃貸保証会社に任せっきり」という管理会社も珍しくありませんが、保証料もそれなりの金額となりますから、時には昔ながら入金管理をしなければならないこともあるはずです。
そして保証会社を利用しておらず賃料の未払いが発生した場合には、借主や連帯保証人への督促を行わなければなりませんし、それでも滞納が解消しないようであればオーナー様へ弁護士を紹介し、訴訟手続きを進めるサポートなども行うことになるでしょう。
また、毎月の賃料入金状況の報告も管理会社の大切な業務となりますので、一目で収入と支出の状況が見て取れるわかりやすい報告書の作成するように心掛けなければなりません。
月極駐車場の維持管理
アパートや賃貸マンションの管理と同様に、月極駐車においても現地で行う物件管理は非常に重要な業務であり、その中でも最も基本となるのが「物件巡回」です。
物件巡回は定期的なスパンで行う必要があり、その際にゴミが散乱していれば清掃を行うのはもちろんですが、未舗装の駐車場であれば雑草が生い茂って利用者に不便をかけることもあるでしょうし、ある日突然「大型家電が不法投棄されていた」などというケースもありますので、オーナー様と連携を取りながらトラブルに対処していかなければなりません。
また、深夜に駐車場に若者がたむろしたり、空ぶかしをする利用者に対する近隣住民からのクレームも処理しなければなりませんし、時には駐車場内での接触事故や違法駐車車両によって車が止められないといったトラブルに対処しなければならない場合もあるでしょう。
こうしたトラブルを上手に解決するためには管理会社としてのスキルと経験値が重要となりますが、それ以上に大切なのが「自動車保管場所契約書の内容を如何に緻密に作り込めるか」という点になるでしょう。
例えば違法駐車によって、本来の利用者が駐車できない場合には「駐車料金を負担しろ!」といった要望が出るのは想定できますから、先回りして契約書に『違法駐車による損害の賠償は免責』と記載しておけば、事無きを得ることができるはずです。
このように月極駐車場の物件管理においては「発生し得るリスクを如何に予測し、それを契約書の内容によって上手にカバーしていくか」が何よりも重要となってきます。
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駐車場管理業務まとめ
さてここまで、「月極駐車場の管理について解説いたします」と題して、駐車場の管理業務についてお話しさせていただきました。
少し前までは「駐車場の管理は大家さんが自ら行う」という時代もありましたが、複雑化する現代社会においては『オーナー様による自己管理は難しい時代になりつつある』というのが実情でしょう。
また、「アパートや賃貸マンションの管理に比べれば駐車場の管理は容易い」とお考えの不動産業者さんも多いようですが、この記事をお読みいただければ解るとおり、『月極駐車場の管理には、駐車場なりの難しさがある』というのが本当のところです。
よって、これから月極駐車場の管理会社をお探しになられるオーナー様におかれましては、依頼しようとしている会社がどのような姿勢で駐車場の管理に向き合っているかを知ることが何よりも大切となるでしょう。
そして、これから駐車場の管理を請け負うという管理会社様におかれましては、他の先輩管理会社がどのような駐車場管理を行っているかという点に常にアンテナを張り巡らせ、自身の会社に最も適した管理スタイルを確立することが重要であるように思えます。
ではこれにて、駐車場管理に関する知恵袋を閉じさせていただきます。