賃貸物件を探す際には、ネットで物件情報を検索して地域の不動産会社へ連絡、内覧を行った上で賃貸借契約を締結するというのが一般的な流れであるかと思います。
しかしながら、こうした流れに乗ってお部屋を決めてしまうと、後々「もっと物件を精査するべきであった」などといった後悔の念に駆られる方も少なくないのが実情でしょう。
そこで本日は「お部屋探しのコツ!お教えします!(賃貸編)」と題して、失敗しないお部屋探しのポイントと注意点についてお話ししていきたいと思います。
※本記事は対象物件がアパート、賃貸マンション等の集合住宅であることを前提に執筆されています。

賃貸仲介の仕組みについて
さて、早速お部屋探しのコツについての解説を始めたいところですが、本題に入る前にまずは「賃貸仲介の仕組み」について簡単にご説明しておきましょう。
物件オーナーが所有するアパート等の物件に空室が発生し、新たな入居者の募集を行う際には不動産業者に依頼をすることになりますが、依頼を受けた不動産業者が自力でお客様を探し出すの決して簡単な作業ではないのが実情です。
一口に不動産業者と言っても、募集対象物件の所在地が「依頼を受けた不動産業者の営業エリア外である可能性」もありますし、そもそも会社の業態が売買に特化しており「手持ちの賃貸のお客様が全くいないケース」だってあるでしょう。
そこで不動産業界においては「業者同士が物件情報を共有できる媒体(レインズ等)」を立ち上げ、ここに物件情報を掲載することで日本中からお客様(借主)を募ることを可能としたのです。
なお、大家から募集依頼を受けた業者を「元付け業者(管理会社)」、お客様の紹介を行う業者を「客付け業者」と呼んでおり、客付け業者にお部屋を探しているお客様が来店した際には、元付け業者に募集物件の空室情報の確認(物件確認)を行った上で、お部屋へご案内(内見)することになります。
ちなみに、お部屋が気に入った場合には入居審査を経て、賃貸借契約を締結した上で鍵の引き渡しを受けることになりますが、これらの業務を行うのは「元付け業者(管理会社)」となり、入居後のアフターケアも『管理会社が貸主と連携して、これを担当する』ことになりますから、
お部屋を借りる上では「周辺環境」や「お部屋の設備や間取り」のみならず、『管理会社や大家さんの質を見極まることが非常に重要となってくる』
という訳なのです。
ちなみに、より詳しく賃貸仲介の仕組みについて知りたいという方におかれましては、
以上の記事にて詳細な解説を行っておりますので、是非ご一読ください。
地形や立地、周辺環境等について
ではここから、より具体的に賃貸物件選びのポイントを解説してまいりましょう。
地形や立地について
お部屋探しのビギナーが『最も見落としがち』と言われるのが、地形と立地の問題となります。
例えば入居者募集図面に「駅まで徒歩8分」と記載されていても、その道のりが「平坦」なのと「激しいアップダウン(山や坂)」があるのとでは、通勤や通学に要する労力は大きく変わってくるものです。
よって、お部屋選びに際しては
最寄りの駅やバス停などへの道程を必ず自分の足と目で確認することが重要
となりますし、通勤・通学時の駅やバス停の混雑状況や、車内の状況などもチェックしておくのがおすすめです。
また、平坦な地域では「1階のお部屋は日当たりが悪いケースが多い」の対して、山坂のある地域では『1階でも十分な日照が確保しやすい」という点にも注意が必要です。
都市計画法や建築基準法などの法律では「建物の建築に必要な土地の大きさ」や「隣家との距離」、「建物の高さ制限」などの街づくりのルールを定めていますが、
- 平坦な地域/狭い土地であっても、お隣と距離を空けずに高い建物が建築できる
- 山坂のある地域/広い敷地に対して小さな建物し許可されず、高層階の建物は建築できない
というのが原則となりますから、先程お話ししたような日照の違いが生じてくるという訳なのです。
そして、高い建物が建つ地域となれば自然と人口が増加し、それに伴って店舗や事務所も増えていくものですから、利便性が向上する反面、治安の悪化といった問題が引き起こされる可能性も高いでしょう。
周辺環境について
お部屋探しにおいては『物件所在地の周辺環境のチェック』も非常に重要な問題となります。
そして特に注意が必要となるのが「住環境へ影響を及ぼす施設」の存在です。
具体的に例を挙げれば、
- 騒音や振動等を発生させる工場や道路・線路
- パチンコ店や競馬・競輪場
- キャバクラや風俗店
- ゴミ屋敷やハト屋敷
などがこれに当たり、『こうした施設が物件の周辺に存在しないか』を確認しておくべきしょう。
なお、公園や神社仏閣は問題がないように思えますが、イベントや祭礼に際して騒音や渋滞が発生するケースもありますのでご注意ください。
また、「平日の昼間のみに稼働する町工場」や「夜間のみ営業するカラオケスナック」などの存在には一度の内見だけでは気付きにくいものですから、『曜日や時間帯を変えての下見をする』のがおすすめです。
更には、同じ建物内であっても
- ゴミ捨て場に近い
- バイク置き場や駐車場と隣接している
- 両隣、上下階の住人の様子がおかしい(共用部分やバルコニー大量の荷物を置いている等)
といったお部屋は臭気や騒音、近隣トラブルのリスクが高まりますので注意が必要です。
ハザードマップについて
2020年8月の宅地建物取引業法の改正により、賃貸物件を借りる場合でも契約締結前に行われる重要事項の説明においては洪水等に関するハザードマップが提示されるルールになっていますが、
この段階においては「既に契約金の支払いが完了している」のが通常ですから、たとえ災害リスクが高いことを告知されても『契約を続行せざるを得ない』と諦めてしまう方も多いようです。
また洪水とは異なり、「地震」や「液状化」の危険性については説明義務さえありませんが、お部屋を借りる者からすれば、こうしたリスクは事前に知っておきたいところでしょう。
よって、入居申込みに当たっては事前に自治体のハザードマップに目を通しておくべきです。
物件の管理状況について
「賃貸仲介の仕組みについて」の項でもお話しした通り、賃貸物件に住まう上で非常に重要になってくるのが『物件の管理状況』となります。
どれだけ素晴らしい立地にある理想的な間取りの物件であっても、「設備の故障をなかなか修理してくれない」「廊下がゴミだらけ」というのでは、気持ちの良い生活を送れるはずがありませんし、
「物件管理の品質」は『管理会社と大家さんのクオリティー』とも言い換えることができますから、お部屋を決めるに当たっては管理の状況をしっかりと確認しておく必要があるという訳です。
そこでここからは、お部屋の中と共用部分に分けて管理状況のチェックポイントを解説していきましょう。
お部屋の管理について
入居者募集中のお部屋はリフォーム完了後にルームクリーニングが行われますので、非常に美しい状態に仕上がっているのが通常です。
しかしながら、1ケ月、2ヶ月と空室の期間が続けば、
- 床に埃や砂が積もる
- 案内に入った業者やお客の髪の毛が床に落ちる
- 排水口の防臭トラップの水が枯れ、下水の悪臭が上がってくる
といった状況となりますので、しっかりとした管理会社であれば定期的に巡回を行い、清掃等を行うものですが、こうした対応がなされていない物件は『管理会社の対応に問題がある』と言わざるを得ません。
また、お部屋の原状回復工事の仕上がりからも管理会社や大家さんの姿勢が見えてくるものです。
例えば、ルームクリーニング済んでいるにも係わらず、隅々に汚れが残っているいるならば、大家さんや管理会社が「施工完了後の確認を怠っている」、または「細かいところまでチェックが行き届いていない」ことの証となるでしょう。
一方、壁紙についても「汚れていない壁面のクロスはそのまま残し、汚れた面のみアクセントクロスへ張り返る」と言った手法はよく用いられますが、『色あせた壁紙をそのまま貼り続けている』『細かい傷や汚れは気にしていない』といった兆候が見られるようなら、
大家さんが極端な節約家、または財務状態が厳しい状態にある
という見方もできるはずです。
なお、入居者募集図面に「日当たり良好」と書かれているのに室内が真っ暗など、図面に虚偽の記載がされているのは問題外ですし、これとは反対に内覧者用にスリッパが用意してある、ブレイカーを上げると室内の照明が一気に点灯するように準備されているなど、細やかな気配りを行う管理会社も存在します。
このように室内の状況をじっくり観察していくと、入居後に長いお付き合いとなる「管理会社のクオリティー」や「物件オーナーの賃貸経営への姿勢」が浮き彫りになってくるものなのです。
共用部分の管理について
さて、前項ではお部屋の状況から様々な情報が読み取れる旨をお話しいたしましたが、これは共用部分についても同様のことが言えます。
よって、内見に際しては共用部分にもしっかりと目を配り、
- エントランスや廊下への掃除が行き届いているか(定期清掃がしっかりと行われているか)
- 共用部分に入居者の荷物が置かれていなかい(消防法違反の状態を放置していないか)
- 共用灯の故障などが放置されていないか(物件の巡回が行われているか)
といった「管理上の問題が発生していないか」を確認することも重要です。
また、エレベーターなど大掛かりな共用設備は建物完了後に設置するのが困難ですが、
- オートロックや宅配ボックスの設置
- 防犯カメラの導入
- 集合ポストの更新
などは、そこまで費用を掛けずとも後付けが可能ですから、「常に入居者の利便性向上を考え、新たな共用設備の導入を進めている大家さんの物件を選ぶ」というのも、お部屋探しを成功させるコツの一つと言えるでしょう。
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間取りや住宅設備について
ここまで物件の周辺環境、物件から見えてくる大家さんや管理会社の品質についてお話ししてまいりましたが、お部屋探しを成功させるにはやはり生活の拠点となる専有部分の住宅設備状況や間取りも非常に重要なポイントとなってくるものです。
そこで本項では、内見に際して「これだけは押さえておくべき」という間取りや住宅設備の知識をご紹介していきたいと思います。
一口に賃貸物件と言っても単身者用からファミリー向けまで様々なタイプのお部屋がありますので一概には言えない部分もありますが、間取りに関しては
- 長い廊下、幅広い廊下/お部屋の面積は増大するものの、デッドスペースとなる可能性が高い点に注意が必要
- 細長い居室/ベッドや家具を置くと十分な居住スペースが確保できない場合がある
- 収納のサイズ/奥行きが深すぎる、または浅すぎて使い勝手が悪いケースも多いので、収納の寸法は要注意となる
- ウォークインクローゼット/便利な設備であるが、大きさや寸法によってはデッドスペースが多くなり、利便性が低い
- 窓の位置/内見に際しては「隣接する物件と視線がバッティングしないか」を十分に注意すべき
- 天井の高さ/極端に天井が高い物件は電球交換や掃除が大変な上、断熱性能や遮音性能が低い可能性がある
- 日照について/採光については周囲の建物の状況や建築計画もチェックする必要がある上、南向き以外の方位の物件は、季節や時間帯によって光が入る時間が大きく制限される可能性がある
- 最上階の部屋/憧れの最上階だが、夏場の室内が非常に高温となる場合があるので要注意
- トイレの位置/「リビングに接している」「玄関の前に設置されている」などの場合には、音や視線が非常に気になる
- 冷蔵庫スペース/スペースの大きさ次第で設置可能な冷蔵庫のサイズに制約が生じるため、必ず採寸を行うべき
- キッチンの調理スペース/ワンルームなどでは「まな板を置くスペースさえ確保できていないケース」もあるので注意が必要
- コンセントやスイッチの位置/扉の開閉などにより隠れてしまうコンセントやスイッチの取り付け位置は、使い勝手が悪い
- ロフト付きの物件/ロフトへの出入りは転落の危険を伴うので、寝室としての利用は避けるべき
といった下知識は身に付けた上で内覧に臨むべきでしょう。
一方、お部屋の住宅設備に関しては
- 3点ユニットについて/感電防止のためコンセントが設置されておらず、温水洗浄便座やドライヤーが利用できない場合がある
- コンロについて/「コンロの口数」や「ガスとIHの別」などを確認する
- 電気のアンペア数について/現状のアンペア数以上の契約が不能なケースがある(建物ごとに契約可能なアンペア数の上限が設定されている)
- ジャロジー窓/窓掃除に非常に手間が掛かる
- マンション物件における廊下側の部屋の「エアコン室外機」/廊下に室外機が設置できないケースが多く、窓付けエアコンなどで対応せざるを得ない場合がある
- エアコンの位置/設置位置によっては、間取りの都合上エアコンの恩恵を受けられない部屋が生じる場合もあるので、十分な確認が必要
- 「吊り下げ型の室内物干し」と「浴室乾燥機」/浴室乾燥機で洗濯物を乾かすにはかなりの時間を要するため、吊り下げ型の室内物干しとエアコンを併用した方が効率的である
以上のような下知識は是非身に付けておいていただきたいと思います。
また、住宅設備についてもう一つの重要なポイントとなってくるのが、お部屋に設置された備品が
- 設備/大家の所有物であり、使用方法に問題がない限りはメンテナンスや故障時の交換を物件オーナーが負担する備品
- 残置物/以前に住んでいた方が所有権を放棄して置いていった備品であり、故障等が発生しても原則として大家は責任を負わない
以上の「どちらであるか」という点です。
例えば、お部屋を内覧して全居室にエアコンが設置されていれば「非常にありがたい」と思うのが通常ですが、そのエアコンが残置物で古い型のものであった場合には、故障時の修理から交換まですべて借主が自身の負担でこれを行うこととなりますから、これはむしろ『マイナス要因』とも呼べる備品となってくる訳です。
もちろん、入居する時点で
- 既に故障している
- そもそも不要な備品である
というのであれば、大家の負担で撤去してもらうことが可能ですが、
大家が住宅設備に対する責任を負いたくないばかりに「何でもかんでも残置物」としているような物件は、避けて通るのが得策
でしょう。
なお、残置物とされている物件を「設備として扱って欲しい」といった交渉を大家さんに対して行うことも可能ですから、気に入った物件を見つけた際には是非お試しいただければと思います。
管理会社や大家さんへ質問しておくべき事項
ここまで、お部屋探しの様々なコツをご紹介してまいりましたが、入居申込みを行う前は
- 対象物件の入居審査の基準
- 入居審査の方法について
- 消防点検、高圧洗浄等の実施状況
- 対象物件における心理的瑕疵に関わる事項の有無
以上の点について管理会社等へ質問しておくことも「優良物件見極めのポイント」となります。
近年では「賃貸保証会社の審査さえ通れば入居が可能」という物件も増えつつありますが、これとは逆に『独自の審査基準が存在する』という物件も少なくありません。
なお、具体的な「審査基準」の例としては
- 外国人の入居不可
- 生活保護受給者の入居不可
- 単身用物件での2人暮らしは不可
- ルームシェア不可
- 入籍前の同棲は不可
- 居住用物件の店舗、事務所利用不可
以上のようなものが挙げられるでしょう。
そして、こうした入居審査のルールがある物件であれば『自ずと入居者が洗練されていく』ことになるでしょうから、「無用な近隣トラブルを回避したい」という方にはおすすめの物件となるはずです。
また、一口に「入居審査」と言っても
- 賃貸保証会社のみが入居審査を行う
- 管理会社が入居希望者や緊急時連絡先への「電話連絡」や「直接面談」を行う
- 大家さん自らが入居希望者や緊急時連絡先への「電話連絡」や「直接面談」を行う
など、その方法には管理会社、大家さんごとの違いがあるものです。
ちなみに、何らかの方法で入居希望者等へ直接連絡を行うのは「粗暴な態度をとる者」や「意思の疎通が図れない者」を排除するのが目的ですから、より丁寧な入居審査を行っている物件ほど、厄介な隣人に遭遇する確率は低くなるでしょう。
さて、アパート等の収益物件においては定期的な消防点検、下水の高圧洗浄等の作業も必須となります。
消防点検については「本来は半年に1回」、「少ない場合でも年に1回」は実施すべきとなりますから、これが『3年に1回』、『定期的な実施されていない』という場合には、物件の安全性と大家さんの順法性に大きな疑問が生じることになるでしょう。
※消防法上は半年に1回の検査が義務付けられています。
これに対して下水の高圧洗浄については法律的な義務はありませんが、「下水の詰まりなどで入居者に負担を掛けたくない」と考える大家さんならある程度のスパンで実施すべきメンテナンスとなりますから、定期的な洗浄が行われていない物件には注意が必要でしょう。
一方、物件内で自殺などの事故が発生した物件については、契約前に行われる重要事項の説明において告知が行われるルールですが、国土交通省の事故物件ガイドラインによれば、隣室や共用部分での事故については『告知の必要がない(賃貸物件の場合のみ)』とされています。
但し、入居希望者から「こうした心理的瑕疵に当たる問題が発生したことがないか」と尋ねられた場合には、正直に告知を行わねばなりませんので、申込みを行う前には一度確認を行っておくのが得策でしょう。
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お部屋探しのコツ!(賃貸編)まとめ
さてここまで、お部屋探しのコツというテーマで解説を行ってまいりました。
賃貸物件探しと言うと「非常に気軽なイメージをお持ちの方も多い」ことと思いますが、この記事をお読みいただければ注意すべき点も多々あることをご理解いただけたはずです。
引っ越しに際しては非常に大きな労力を要するものですから、この記事をご参考に悔いのないお部屋探しを行っていただければ幸いです。
ではこれにて「お部屋探しのコツ!お教えします!(賃貸編)」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。