毎日を忙しく過ごしておられる方々の中には「自宅が唯一の寛げる場所」という人も多いことと思いますが、こうした安らぎの空間を一瞬にして恐怖のどん底に叩き落すのが「G」、つまりはゴキブリという害虫の出現です。

「1匹いれば100匹は隠れている」「死ぬ間際に卵を産み残す」「人間の大きさにすると移動速度は時速100キロ以上」など、その生態全てが嫌悪の対象となるゴキブリは正に「最も身近にある脅威」という他はない存在でしょう。

そこで本日は「賃貸ゴキブリ対策について解説いたします!」と題して、お部屋に出現する憎き「G」への対策や駆除方法、そして管理人が実際に経験した駆除体験記をお届けしたいと思います!

賃貸ゴキブリ対策

 

出現するゴキブリは2種類

さて、憎き敵への完勝を望むなら「まずは相手を知ること」が何よりも重要です。

そこでまずは、ゴキブリの生態についてお話をしていきたいと思いますが、実は家庭に出現するゴキブリの殆どはクロゴキブリ、チャバネゴキブリとなりますので、本項ではこの2種についてお話ししまいります。

クロゴキブリの生態

ゴキブリと聞いて、皆様が最初にイメージするのが恐らくこちらのクロゴキブリであるかと思います。

その生態は

  • 大きさ/3〜4cm
  • 色/黒褐色
  • 行動上の特徴/素早く移動し、飛ぶことができる
  • 好む場所/キッチン、風呂場など湿気のある場所
  • 侵入経路/室外から直接の侵入
  • 卵/こげ茶色の小豆サイズ(約1cm)

というものになります。

賃貸物件において「ゴキブリが出る」との苦情があった場合、その殆どがこのクロゴキブリとなるはずです。

チャバネゴキブリの生態

一方、もう一種類のチャバネゴキブリの生態については

  • 大きさ/1〜1.5cm
  • 色/黄土色(黄褐色)
  • 行動上の特徴/動きは鈍く、飛べない
  • 好む場所/壁の隙間など温かい場所
  • 侵入経路/荷物などに付着して侵入
  • 卵/薄茶色の米粒サイズ(約5mm)

以上のような特徴があります。

本来、チャバネゴキブリは飲食店などに生息する種類であり、賃貸物件で見掛けることはあまりありません。

但し、飲食店勤務の入居者などの荷物に紛れて侵入し、凄まじい増殖力で一気にその数を増やすという恐ろしいゴキブリとなります。

なお、赤茶色の2~3cmくらい個体を「チャバネゴキブリである」と勘違いされている方も多いようですが、これは若いクロゴキブリである場合が殆どとなるでしょう。

チャバネゴキブリはその名に反して、どちらかと言うと黄色に近い体色に細長い体形をしており、蟻のような速度で歩き回るのが特徴であり、一見するとゴキブリであることに気づかないケースもあるかもしれません。

ちなみにこのチャバネゴキブリを放置すると、壁の隙間を通って隣戸へ侵攻するケースも多く、最悪の場合は建物全体に広がって駆除が不可能となる場合もありますのでご注意ください。

賃貸物件におけるゴキブリ対策

ここまで2種類のゴキブリの生態について解説してまいりましたが、彼らを放置し続ければ

  • 見た目による不快感
  • 病原菌の媒介
  • アレルギーの誘発
  • 分電盤等への侵入による火災

といった被害を引き起こす可能性がありますので、これは何として駆除しなければなりません。

そこで本項では、私の実体験を交えつつ、プロ直伝の対策方法についてお話ししてまいります。

クロゴキブリへの対策

では早速、クロゴキブリへの対策について見ていきましょう。

クロゴキブリの侵入を防ぐ

クロゴキブリの侵入経路は原則として「お部屋の外から」となりますので、駆除作業を行うに当たっては出入り口の封鎖が何よりも重要となります。

侵入経路として考えられるのは

  • 玄関ドアや窓の開け閉め
  • 洗濯物に取り付いて
  • 宅配便の荷物に紛れて
  • エアコンのドレインから
  • 排水溝から

といったケースが多いでしょう。

窓や洗濯物、荷物については、注意を払うことで侵入を未然に防ぐことができますが、問題はエアコンと排水溝からの場合となります。

エアコンのドレインとは、室外機の周囲に設置されている水抜き用のホースとなりますが、クロゴキブリはこの小さな穴から侵入し、エアコンの吹き出し口より室内に侵入してくるのです。

対策としては室外のドレインの入り口に網などを被せるのが効果的ですが、網の目が細か過ぎると目詰まりを起こし、エアコンから水が噴き出すことになるのでご注意ください。(近年ではドレインからの侵入防止用商品も販売されています)

一方、排水溝については臭気トラップと呼ばれる臭気逆流防止設備(配管の一部に水を貯めておく設備)がある場合は、定期的に水を流すことでゴキブリの侵入を防ぐことができますが、問題なのはトラップの設置されていない排水溝となります。

こうした排水溝については「網を設置する」「使用しない時は栓で蓋をする」などの処置を行いましょう。

クロゴキブリの駆除

こうして外部からの侵入経路を断ったら、続いては室内にいるゴキブリを駆除していくことになります。

クロゴキブリは室外から侵入すると申し上げましたが、これを放置するとコロニーと呼ばれる巣を作ることがあるのです。

巣とは言っても「蜂の巣」ように形のあるものではなく、ゴキブリが集団で集まる「たまり場」といったイメージのものですが、ここには彼らの糞と卵が塗り付けられており、糞から発せられるフェロモンにより次々に外部から仲間を引き寄せるという厄介な代物となります。

よって、まずは燻煙剤系の殺虫剤などで成虫を駆除した後に、このゴキブリの巣を探し出して残された卵と糞を除去することが重要です。(卵には殺虫剤の効果がありません)

ちなみに巣は、キッチンのコンロや冷蔵庫の裏側、電気スイッチや配電盤の内部などの、人目に付かない暖かい場所を好みますので、こうした箇所を徹底的に探していきましょう。

そして、巣を発見したら卵と糞を完全に駆除して、匂いが残らないように掃除をすれば作業は完了となります。

なお、ゴキブリの巣を見つけ出すのはかなり困難ですし、電気設備の内部などの場合には感電などのリスクもありますので、プロの駆除業者に依頼するのも一つの方法でしょう。

プロの駆除業者に依頼した場合にはベイト剤と呼ばれる毒餌を使用した駆除作業がメインとなり、卵の駆除はできないものの、後日孵化したゴキブリもいずれはこの毒餌を食べることで死にますから、時間は掛かるものの確実な駆除が期待できるはずです。

なお、依頼をかける業者の腕前によって毒餌の配合や仕掛ける場所、巣を如何に上手く発見するかなど、作業のクオリティーには大きな違いが生じることになるでしょう。

チャバネゴキブリへの対策

続いてはチャバネゴキブリへの対策となりますが、こちらは「素人では太刀打ちできない」というのが正直なところです。

チャバネゴキブリは恐ろしい程の生命力と繁殖力を備えており、食料が無くなっても共食いを繰り返しながら、その数をネズミ算的に増やしていきます。

よって、チャバネゴキブリが大量発生しているお部屋で燻煙剤系の殺虫剤を使用すると数百匹レベルの死骸が出ることもありますが、卵に殺虫剤は効かないため、直ぐに新手が出現することになるでしょう。

また、クロゴキブリと同様にコロニーと呼ばれる巣を形成しますが、体が小さいため床下や天井裏、壁の隙間などに入り込んで巣を作りますし、 ある程度の個体数になると巣が分裂を繰り返しますので、一つのお部屋に複数のコロニーが形成されていることも珍しくありません。

そして、このコロニーがお部屋に留まらず、建物全体に広がってしまうと、

たとえ自分の部屋を駆除しても他の部屋から再びゴキブリが侵入してくるので、建物丸ごとの駆除作業が必要になる

といったケースも珍しくないのです。

なお、駆除の方法としてはクロゴキブリと同様にベイト剤を使用する方法が主流となりますが、薬剤の効能に耐性を持った個体も発生しやすいですから、駆除業者には更に高いスキルが求められることになります。

また、ベイト剤等と併用して、コーキングで壁の隙間などを埋める方法も有効ではありますが、住み着いたチャバネゴキブリを全滅させない限りは、必ず再発生することになりますので、やはりベイト剤が駆除の鍵であることに変わりはありません。

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チャバネゴキブリ対策体験記

ではここからは、管理人が実際に経験したチャバネゴキブリ駆除の体験記をお届けしたいと思います。

恐怖のゴキブリ部屋

今回の事件の舞台となるのは、私が賃貸の営業をしている際に、あるオーナー様からお預かりした管理物件の一室となります。

物件のスペックはといえば木造2階建て、築年は10年弱とまあまあ新しい物件であり、1DKが6部屋という小ぶりな建物となります。

ちなみに賃貸管理の依頼を受けた際には満室だったのですが、その後1階の1室が退去を迎えることとなりました。

なお、「この物件では初めての退去立会い」ということで少々気合を入れて立会いに臨んだのですが、お部屋はそれ程汚れておらず、トラブルもなく退去は終了します。

そして敷金精算の打ち合わせをする中、退去する入居者に「住んでいて何か問題はありませんでしたか?」と水を向けてみたところ、「この部屋、とても虫が多いんです」とのお返事が返って来ました。

入居者のお話によるとゴキブリと思われる小さな虫が時折姿を現し、今回の退去も「それに耐えかねて・・・」というのが原因であるようです。

この入居者の訴えに『場合によっては、害虫駆除工事も視野に入れなくては・・・』と考えながも、とりあえずその日は物件を後にします。

後日、建築業者とリフォームの打ち合わせをするべく空室となったお部屋を再び訪ねてみますが、床にはまるで小豆をばら撒いたように無数の「何か」が転がっていました。

『これは一体何ごと・・・』とリフォーム業者と顔を見合わせてながらその物体をじっくり観察してみましたが、その正体は体長1cm程の小さなGの死骸のようです。

ただ、この小さなGは「私たちが普段目にするタイプとは明らかに種類の異なるもの」であり、『これはマズイ!』と感じた私はこの状況をオーナー様にお伝えした上で、リフォーム工事に害虫駆除を組み込むことにします。

やがて工事は完了し、出来栄えの確認に再度部屋に足を向けますが、そこには既に数匹のGの死骸が転がっていました。

そこで慌てて工事会社に再度駆除を依頼し、今回は隅々まで念入りに薬剤を散布させますが、数日後には再びGが出現するという始末です。

『何度も薬剤を散布しているのにどうして駆除しきれないのか?』と駆除業者に問い質してみますが、「今回のGは一般家庭ではあまり見掛けないチャバネゴキブリ(飲食店などに多い種類)であり、その生命力・繁殖力は共に非常に強く、自分のスキルでは完全駆除は難しい」との返答が返ってきます。

そこで、この駆除業者への依頼は一旦打ち切って、私自身で市販の毒餌タイプの駆除剤などを仕掛けたところ、時間の経過と共に徐々に数が減って行き、『あと一歩で根絶では?』というところまで漕ぎ着けます。

そんな折り、既に入居者募集を開始していたこの物件にお申込みが入り、お部屋に新たな入居者が引っ越して来ることとなりました。

しかし入居以来、「虫が出る」とのクレームが絶えることはなく、あっと言う間に退去となってしまったのです。

徹底抗戦!

そして退去に際しては、入居者からかなり文句を言われることとなりましたが、オーナー様より『敷金を全額返金する』とのご提案があり、揉め事に発展することなく円満に収めることができました。

但し、こうした状況となった以上、Gを完全に根絶するまでは新たな入居者募集を行うことはできませんので、この日から私とGの戦いの日々が始まることとなります。

そこでまずは「原因を突き止めよう」とのことでオーナー様からお部屋の経歴を聞き出すことにしますが、どうやら事の発端は私が最初に立会いをした入居者の更に先代の住人にあったようです。

この先代の入居者、飲食店を経営していた人物だったのですが、お店の経営が悪化して賃料滞納を繰り返した揚句、部屋をゴミ屋敷化させて退去していったというのです。

なお、お部屋に出るGの種類は飲食店に多いタイプということなので、そもそもの原因はこの先代入居者に間違いはないでしょう。

また、「Gが巣食っているのは壁や天井、床下の可能性が高い」ということなので、天井や床に点検口を作り、3日に一度のペースでバルサンを焚きまくります。

しかし、それでもGが減る様子はない(数日期間をあけると5〜6匹の死骸がある)ため、今度は部屋の隙間という隙間にコーキングを打ち込み、出入り口の封鎖を図ることにしました。

ちなみに「この隙間埋め」が功を奏したのか、その後はかなり出現数を減らすことには成功し、最終的には「1ヶ月経過しても姿を見掛けない状態」にまで漕ぎ着けることに成功します。

「これでようやく事件は解決」と胸を撫でおろしていた所に入居者申込みが入り、新たな借主をを迎えることになるのですが、本当の悪夢はここから始まるのでした。

完全敗北

それから1年半が経過し、この部屋の住人が退去することとなったのですが、立会いに物件を訪れると既にキッチンの収納の中などに数十匹レベルの死骸が転がっています。

そこで入居者に退去理由を訊ねてみたところ「更新が近かったのもあるけど、この部屋は変な虫が多いんだよね・・・」とのこと。

どうやらこの入居者、虫の存在には気付いていたものの我慢して生活していた上、これがゴキブリであることは知らなかったご様子です。

入居中にクレームにならなかったことはラッキーでしたが、私の駆除作戦は見事に失敗した訳ですし、新規募集に際しては再び駆除作業を行うしかありません。

そして今回は、知り合いの不動産業者へ相談しまくり、特にゴキブリ退治を得意とする駆除業者さんを紹介してもらい、お部屋を調査してもらいました。

この時点で退去から2ヶ月が経過していたのですが、お部屋の中には数百匹レベルの死骸が転がっています。

駆除業者さんが室中を点検した結果、部屋中に無数のコロニーが存在しており、隠れている個体の数はかなりのもので、既にお隣などにも侵攻している可能性があるとのことです。

また、「この部屋が原因であることは間違いないので、駆除作業を徹底すれば隣家に拡がった個体も誘き寄せて駆除することが可能であるかもしれない」とも話してくれました。

早速、大家さんに事情を説明した上で作業依頼を行うと、お部屋のあちらこちらにベイト剤と呼ばれる毒エサを設置した上、カプセル剤と呼ばれる粉末を室内に撒いていきます。

ベイト剤は所謂毒の餌であり、卵に効果はないものの持続力があるため、2週間サイクルで孵化する幼虫もいずれは全滅させられるとのことです。

一方、カプセル剤はその上を通過したゴキブリの油分に反応して薬効を発揮する代物であり、地雷のようにこれを踏んだ個体を死滅させるトラップとなります。

こうした処置を一定の期間を空けて3回程繰り返し、その後の発生状況を確認することになりました。

なお、駆除作業施工後のお部屋を確認に訪れたのですがそれは正に地獄絵図であり、数百匹レベルの死骸が至る所に散乱していました。

こうして駆除作業を終え、数か月間はお部屋の点検作業を繰り返しますがその後は一匹たりともGの姿を見掛けることはなく、すっかり安心していたのですが、チャバネゴキブリの恐怖はまだ終わっていませんでした。

実は問題のお部屋の2軒お隣りが退去することになったのですが、何とこの離れた部屋でも大量のGの死骸を発見してしまったのです。

また、これらのお部屋とは全く配置が異なる上に、フロアーまで違う2階の部屋の退去に当たっても同じ状況が見受けられました。

更に、駆除が完了したはずのお部屋にも夏が近づくにつれて数匹ではあるものの、新たな死骸が目立つようになります。

こうした状況を受けて、改めて駆除業者さんに相談してみますが、「恐らくは既に建物全体にチャバネゴキブリの生息域が広がっており、駆除しても他の部屋の個体が次々に侵入してくる状態になっているのだろう」との見解であり、

今後できることと言えば『入居中の部屋も含めて、建物全体の駆除作業を実施するしか方法はない」とのことです。

そこで大家さんに全体駆除のご提案をしてみますが、

  • 入居中のお部屋に大量の死骸が発生するのは大問題
  • ベイト剤の設置を拒否する入居者もいるはず
  • そもそも一部屋でも施工ができないと意味がない
  • G大量発生を告知して退去する部屋が出るかもしれない
  • 全体の駆除作業ができても、完全駆除が成功するとは限らない(業者曰く成功率は80%程度)

という状況を耳にして、建物一棟の駆除は実施しないとの判断になりました。

ちなみに現在では、賃料を相場よりも安めに設定して「可能な限りの駆除を行った上でお部屋を貸出し、クレームがあった際には再度駆除を行う」という状態で貸し出しを継続しています。

また、法的なお話に関しては「貸主が適切な害虫駆除を行っていれば、完全駆除はできなくても借主から損害賠償請求等を受けることはない」という判例がありますので、この点はあまり問題がないのですが、

入居者からクレームが入って早期の退去に至った場合には、ある程度の賃料返金や引っ越し代の一部をオーナーが負担することは避けられない状態となっており、大家さんにとっても管理会社にとっても非常に厳しい状況が続いているのです。

こうした状況を考えれば、チャバネゴキブリと私の戦いは「人間側の完全敗北」としか言えない状況とあり、害虫の恐ろしさを改めて思い知られる事件となりました。

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賃貸ゴキブリ対策について解説まとめ

さてここまで、賃貸物件のゴキブリ駆除をテーマに記事をお届けしてまいりました。

記事の中でもお話しした通り、状況次第ではGの存在が入居者の平穏な生活や、収益物件の運用に大きな損害を及ぼすケースもありますので、皆様も是非お気を付けいただければと思います。

なお、私はこの事件を通して完全ならゴキブリ恐怖症になってしまいました。

ではこれにて、「賃貸ゴキブリ対策について解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。