過去記事「不動産会社の選び方について」においては、『どのような業態の不動産業者に売却や購入の依頼を行うべきか』についてのお話をさせていただきましたが、誠に残念ながら『不動産業者の中には、質の悪い会社は混ざっている』ものです。

なお、昨今では企業のコンプライアンスがしきりに叫ばれていますから、「悪徳不動産会社」と呼ばれる企業もその数を減らしてはいますが、現在もなお『この手の業者』は確実に存在しています。

そこで本日は、「悪徳不動産会社の見分け方」と題して、大切な資産の購入や売却を任せるには危険な企業の見抜き方についてお話をさせていただければと思います。

悪徳不動産業者

 

不動産業者の免許番号を参考にする

既にインターネットの情報サイトや不動産関連の書籍などでも紹介されている方法なので、ご存じの方もおられるかとは思いますが、不動産業者の免許番号から対象業者の素性をある程度は推測することが可能です。

不動産業者は通常、国土交通省または事務所を置く都道府県から免許を得て営業を行っており、それぞれの企業には免許番号と呼ばれるものが割り振られています。

そして不動産業の免許番号の中には、免許更新回数を表す数字が組み込まれていますから、この数字を見れば対象の不動産業者が「何度免許更新を行い、何年くらい営業を続けているか」を知ることができるという訳です。

こうしたお話をすると「企業の営業年数が判っても、悪徳業者を見抜くことはできないのでは?」というお声も聞こえて来そうですが、免許制である不動産業では、顧客とトラブルを起こした場合に行政から処分を受けることとなり、最悪のケースでは免許を取り消されることもあります。

よって免許番号が若い会社は、設立して間もない企業であるか、何らかの原因で免許を取り消されてしまった可能性があるということになりますから、免許番号が古い会社を選べばある程度の安心感を得ることはできるでしょう。

不動産免許番号の例

「●●不動産 免許番号 ▲▲県知事(または国土交通大臣) 第12345(★)12345」

★の部分に開業当初は(1)が入り、5年ごとの免許更新に際してひとつずつ数字が上がっていく仕組みです。

(1)ならば開業から5年以内 (2)ならば開業から6年以上~11年以下ということになります。

仮にこの番号が(7)であるならば、36年以上~41年以下の営業実績がある上、この期間に重い行政処分を受けていないという証拠になりますから、「ある程度信頼のおける業者」という判断ができますよね。

※以前は免許が3年更新であった期間もあり、(13)だからと言って65年以上の実績とはなりません。

但しこの方法、開業したばかりの業者にとっては迷惑千万な判定法でありますし、「免許取り消し」という処分は大変に重く、ここまで厳重な処分を受けていなくても小さなトラブルを起こして処罰(業務停止・指示・行政指導などの処分)を受けている企業は数多く存在するのが実態です。

※不動産の免許には「国土交通大臣免許(他の都道府県に跨って店舗を有している場合の免許)」と「知事免許(一つの都道府県のみに店舗を構えている免許)」の2種類があり、知事免許から事業の拡大で国土交通大臣免許となった場合には、全ての企業が実績に係わりなく(1)へと戻されます。

監督官庁・行政庁で処分の記録を閲覧する

そこで役立つのが、対象の不動産業者に免許を交付している監督官庁・行政庁にて行政処分の記録を閲覧するという方法です。

東京であれば都庁で、埼玉県であれば埼玉県庁といった具合に、各行政庁で不動産業者の情報を公開しておりますので、こちらで調べれば過去5年間に不動産業者が受けた行政処分の内容を詳細に知ることが可能ですから、免許の番号を確認する以上に精度の高い情報を入手することができるでしょう。

また、免許更新の際には更新年度から過去5年分の決算内容も申告しなければならないルールになっており、このデータも閲覧が可能ですから、相手の財務状況が判れば更に安心して取引が行えますよね。

※自治体によっては5年分の決算内容を閲覧できない場合もあります。(更新年度のみ閲覧可能なパターンなど)

なお、広域に店舗展開をしている国土交通大臣免許の不動産業者については国土交通省にて情報を閲覧することになります

※近年では「国土交通省ネガティブ情報等検索システム」というサイト上から、国土交通大臣免許、知事免許の業者を問わず、過去5年の行政処分の内容を閲覧することが可能です。(決算内容の閲覧はできません)

その他の悪徳業者判別法

ここまで免許番号によるチェック法や監督官庁に対する調査についてお話ししてまいりましたが、不動産業者のクオリティーを知る手段はまだまだあるものです。

地元での評判を知る

対象の不動産業者が地元で賃貸物件の管理業務を行っている場合などには、管理を任せている大家さんから人づてに情報を得ることができるはずです。

もちろん、賃貸は一切扱っていない業者さんには通用しない手法とはなってしまいますが、大手不動産会社以外はまず間違いなく賃貸管理も請け負っているものですから、こちらの方法はかなり有効なものとなるでしょう。

また、不動産業者としての品質が悪ければ管理件数も減りますので、頻繁に街で「管理会社 ●●不動産」などと書いてある看板が掛けられたアパートや店舗を目にするのであれば、その業者は「地元である程度信頼を得ている」という判断の材料となるはずです。

ちなみに、評判を調べるとなると「ネットの口コミ」も気になるところですが、こちらについてはライバル会社が故意に低評価を付けたり、誹謗中傷コメントを書いているケースも多いのあまり当てにはできません。

ホームページを熟読する

前項の方法に比べれば精度は落ちるかもしれませんが、ホームページの内容も参考にすることができると思います。

会社によってホームページへの力の入れ方も異なるとは思いますが、既に販売や入居者募集が終了している物件を掲載し続けているようであれば、これは立派なルール違反となりますから、こうした情報を放置している業者は信頼することができませんよね。

特に既に成約している物件を集客目的で敢えて掲載し続けているような業者(おとり広告を掲載している業者)は、非常に悪質な企業といえるでしょう。

また、不動産の広告には「宅地建物取引業法」や「不動産の表示に関する公正競争規約」によって非常に厳しいルールが定められています。

例えば、価格について「激安」「お買い得」といったワードは使用できませんし、「物件情報量業界NO.1」という記載も違反となってしまいますので、こうした禁止用語が羅列されているホームページを有している業者には注意が必要でしょう。

従業員の服装や接客態度をチェック

我が国では古来より「服装の乱れは心の乱れ」なんて言われ方がされていますが、この言葉はなかなか的を射たものがあります。

もちろん外見のみで人を判断するのは危険なことですが、接客業の不動産屋さんが「だらしのない服装」をしていたり、「敬語もまともに使えない」のでは、会社の教育がなっていないという判断になるのは当然でしょう。

また、案内の途中で営業マンに掛かって来る電話の内容にも注意深く耳を傾けていると、普段どんな仕事のやり方をしているかが見えて来るものです。

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店舗や事務所の様子を観察する

従業員のチェックが完了したら、続いては不動産会社の店舗や事務所の様子に目を向けてみましょう。

明らかに店舗中の清掃が行き届いていない会社は、社員の身だしなみと同様に会社の管理体制に問題がある証拠ですし、汚れてはいなくともデスクの上に種類が山になっているようでは、良い仕事ができるはずがありません。

また、従業員募集の貼り紙が常に出ているようなら、離職率の高さと営業ノルマの厳しさを感じ取ることができますから、こうした会社には注意が必要でしょう。

更に、来店中に電話が鳴っていればその対応にも耳を傾けてみる必要があります。

電話のコール音に対して我先にと受話器を奪い合っているようであれば、社内での競争の激しさが窺い知れますし、電話先の相手への対応に聞き耳を立てていれば会社の雰囲気が自ずと感じ取れるはずです。

営業スタイルから社風を知る

そしてこちらは、実際に仕事を依頼した後でないと判らない部分ではありますが、不動産会社の営業スタイルからも悪徳業者であるか否かの判断が可能です。

お部屋探しやマイホームの購入の場合なら、

  • やたらと頻繁に電話をして来る
  • 連絡時間が常識外れである
  • 直ぐに自宅に訪ねてくる
  • 案内などに際してなかなか帰らせてくれない
  • 物件のメリットのみを強調してくる

といった傾向がある会社にはは少々注意が必要です。

こうした傾向は苛烈な営業ノルマを社員に強いている会社である可能性が高く、強引に成約を迫って来る可能性が高いからです。

一方、マイホームの売却などに際しては、

  • 専任媒介でないと売却依頼を受け付けない
  • 専任媒介なのに不動産業者間の情報共有媒体(レインズ)への登録を行わない
  • 他の不動産会社へ物件の紹介を行わない
  • 当初の売却依頼価格から様々な理由を付けて値引きさせようとしてくる

専任媒介契約とは売却依頼に際して不動産会社と締結する媒介契約の一つですが、この契約は他の不動産業者へ重ねて売却を依頼することができないのが特徴です。

もちろん、優良業者でも可能であれば専任媒介契約を締結したいところではありますが、強引に専任媒介を勧めてくる業者は少々品性を欠くように思えます。

また、専任媒介契約では不動産業者間の情報共有媒体である「レインズ」への登録が義務付けられていますが、売りと買いの手数料をダブルで取得するために敢えてレインズ登録を行わない悪徳業者も存在するのです。

更に、レインズへの登録は行うが、他の業者からの問い合わせに対しては「既にお話が入っている」と断り、自分で買い手を見つけようとする業者も少なくありません。

一方、売却依頼を勝ち取るために「高額な査定額」を提示しておきながら、実際に販売活動が始まると理由をつけてジリジリと値引きを迫ってくるという会社も珍しくないでしょう。

ここまでご紹介してきた危険な兆候が「悪徳業者」へと直結する訳ではありませんが、「レインズへの不登録」や「他業者への紹介拒否」は完全に法令違反となりますので、こうした業者への依頼は避けるべきです。

※レインズへ登録されているか否かは、他の不動産業者に調べてもらえば直ぐに判ります。

悪徳不動産会社に騙された際の相談機関

これまで様々な悪徳不動産業者の見分け方をご紹介してまいりましたが、本項では実際にこうした業者の被害に遭ってしまった際の相談先について解説していきましょう。

独立行政法人 国民生活センター

国民生活センターは重要消費者紛争について法による解決を行うために設立された独立行政法人です。

所管官庁は消費者庁であり、不動産取引における紛争も取り扱っています。

消費生活センター

国民生活センターと名称が似ていますが、こちらは地方公共団体が設置する行政機関となります。

消費者からの苦情相談を受け付けており、不動産取引のクレームも取り扱い可能です。

一般財団法人 不動産適正取引推進機構

不動産取引における紛争の解決を目指して設立された業界団体となります。

不動産取引におけるトラブルを専門に受け付けており、消費者と不動産の間で中立的な立場に立って問題解決を図ってくれる組織です。

全国宅地建物取引業保証協会および全日本不動産協会

大手不動産会社を除く、殆どの不動産業者が加盟している業界団体(保証協会)です。

*両組織共に公益社団法人となります。

本来は不動産業開業時の供託金について保証を行うための組織でしたが、現在では取引における苦情の処理や、所属する不動産会社への研修活動などにも力を入れています。

国土交通省、地方自治体の監督部署

不動産業は行政から許可を受けることで開業が可能となる「免許制の事業」であり、その監督官庁は国土交通省となります。

但し、同一の都道府県内のみに店舗を置く不動産会社は都道府県知事から免許を受けていますので、取引に関する苦情等は都道府県の担当部署が受け付け窓口となっていますので、こちらに相談するのも一つの方法でしょう。

自治体によって担当部署の呼称は異なります(東京なら住宅政策本部、千葉なら建設・不動産業課など)が、違反行為を行った業者に行政処分を行う機関となりますので、最も頼りになる相談先と言えるかもしれません。

*都道府県をまたいで店舗展開する業者についての相談窓口は国土交通省となります。

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悪徳不動産会社の見分け方まとめ

さてここまで、「悪徳不動産会社の見分け方」というテーマで解説を行ってまいりました。

売買を依頼する不動産業者選びには極力慎重を期すべきですし、不動産業者が分譲する建売住宅などを購入すれば、長年その分譲主である業者と付き合って行くこととなりますから、是非本記事を参考にして『失敗のない不動産会社選び』をしていただきたいと思います。

ちなみに悪徳不動産業者とは少々異なりますが、地面師という詐欺手法も存在しており、こちらにつきましては別記事「地面師とは?その手口と対策について解説いたします!」にて解説を行なっておりますのでご興味をお持ちの方は是非ともご一読ください。

また本文中でもお話しした通り、不動産業者の評判を調べる際にネットの掲示板などを参考にされる方も多いでしょうが、こうした書き込みを鵜呑みにするのも問題があるように思います。

仕事柄、謂れのない恨みを買うことも多いのが不動産業者というものですから、今回ご紹介したような手段を用いて、ご自身の目と耳で不動産会社の本質を見抜いていただければ幸いです。

ではこれにて、悪徳不動産会社の見分け方の知恵袋をこれにて閉じさせていただきたいと思います。