以前にお届けした「悪徳不動産会社の見分け方について解説いたします!」の記事においては、『注意すべき質の悪い不動産業者の判別方法』を解説いたしました。
もちろん、不動産業界においてはこうした悪質業者の排除に全力を尽くしてはいるのですが、悪徳業者の出現は後を絶たず、近年では不動産賃貸を巡る詐欺行為も増加しつつあると聞きます。
そこで本日は「不動産賃貸詐欺について解説いたします!」と題して、お部屋の貸し借りを巡る様々な詐欺行為についてご説明してみたいと思います。
賃貸詐欺と呼ばれる事例
では早速、不動産業界において「詐欺だ!」と問題視されている事例について見て行くことにしましょう。
礼金の積み増し請求
お部屋を探している入居希望者が、紹介された賃貸物件に申込みを入れたところ礼金の金額が水増しされており、本来設定されていた募集条件を超える礼金の支払いを求められたというのが、この詐欺の典型的なパターンです。
このような事態が発生する背景には
客付け業者(物件にお客様を紹介する不動産屋さん)が報酬額のアップを狙い、資金に余裕のありそうなお客様に対して「礼金を上乗せして物件紹介を行う」という不適切な行為
が行われている可能性が高いでしょう。
なお、積み増された礼金は一旦大家さんや管理会社の手に渡り、その後、客付け業者に広告宣伝費として戻って来ることになりますので、「仲介手数料」と「広告宣伝費」の二重取りが可能となるという訳です。
そして通常は、最初にお客様へ入居者募集図面を渡す段階から「礼金上乗せ済みの資料」に差し替えておくのが一般的なのですが、『渡すべき資料を取り違えてしまった』などのミスにより、礼金積み増しの事実が発覚してトラブルに発展することになります。
もちろんこうした行為は「不動産屋業者として好ましくない行為」となりますが、実務においては頻繁に行われているのが実情です。
但し、今時はネット検索をすれば「複数の不動産業者がホームページに同じ物件を掲載しているのを発見できるケース」も多いため、礼金の水増しはアッと間に露見してしまう可能性が高いでしょう。
ちなみに似たような手口としては、法人契約で会社が契約金を負担する場合などに、入居希望者と仲介業者が結託して礼金を水増し請求をするケースがあります。
囮(おとり)広告
最近では報道番組などでもこの手口が取り上げられているため、既にご存じの方も多いかもしれませんが、「存在しない物件情報をお客様に提供して集客を行う」のが囮広告のやり口です。
手口の概要としては、
「条件が良く、直ぐに成約しそうな物件情報」を見付けた不動産業者がこれをネット広告として掲載し、たとえ物件が成約済みとなっても広告を取り下げることなく放置し続けて、存在しない物件情報で集客を行うといった手法
となります。
そして実際にお客様から問い合わせがあった際には「是非一緒に物件を見に行きましょう」とご案内のアポイントメントを取るのですが、
当日業者に来店すると「こめんなさい、物件の募集状況を確認したところ既に成約してしまったようなので、別の物件を見に行きましょう」といった具合に、囮の物件でお客様を誘い出し、他の物件に誘導していく手口となります。
なお、こちらの手口は不動産業界内でも「業界全体の信頼性を損ねる行為」として強く問題視されており、囮広告撲滅のために業界団体などでも自主的な取り締まりを強化しているの実情です。
ちなみに囮広告に引っ掛からないようにするためには、案内の当日、来店前に電話で仲介業者に物件の募集状況についての確認を行う方法が有効でしょう。
また、ここまでしても来店した際に「決まってしまいました」などと言って来る業者は非常に悪質ですからキッパリと案内を拒否して、別の不動産業者に物件探しの依頼をするべきです。
申込金を巡る詐欺行為
さて続いてご紹介するのが、お気に入りのお部屋が見つかった後の申込みの段階で発生する「申込金を巡る詐欺行為」となります。
通常、賃貸の申込みに際して申込金が必要となるケースは稀なのですが、一部の悪徳客付け業者は
「物件を押さえておくためには申込金が必要」などと説明して金員を預った上、審査落ちを理由に申込金の返還に応じない
というケースがあるのです。
既にお話しした通り、賃貸の取引において申込金自体が発生することは滅諦にありませんし、審査落ちに際して申込金が戻って来ないというのは、明らかな詐欺行為となりますので、こうした申し出を行ってくる不動産業者は決して信用してはなりません。
また万が一、本当に預り金が必要な場合であっても
- 申込金の預り証の発行
- 預り証への「預り期限」の記載
- 入居審査後の預り金の処理についての明確な説明
以上の内容については、必ず確認してから申し込みを行うべきです。
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リフォーム費用等に関する詐欺行為
こちらは大家さん、入居者共に注意が必要な詐欺行為となります。
賃貸物件においては退去後の「原状回復工事」や、新規入居に際して「オプション工事」として害虫駆除作業などが行われることがありますが、こうした状況において
管理会社や客付け業者が「不要な工事の提案」を行い、法外な施工費用を請求してくる
といったケースが増えつつあるのです。
もちろん、必要な工事を提案することは全く問題がありませんし、施工に対して常識の範囲内のキックバック(施工業者からの謝礼)をもらうこともあるでしょうが、問題となるのは『そこに虚偽の内容が含まれるか、否か』という点になります。
具体的な事例としては、発生してもいない「虚偽の漏水」をでっち上げて配管工事費用を請求したり、入居直前に室内を点検したところ「害虫の死骸を発見した」と嘘の報告をする等、
言葉巧みに顧客の不安を煽ってオプション工事の提案を行ってくる不動産業者は決して少なくありませんので、是非ご注意ください。
不動産業者をターゲットとした詐欺行為
さて、ここまでは「入居者や大家さんが不動産業者に騙されるケース」をご紹介してまいりましたが、近年では不動産屋さん自体も詐欺の被害に遭ってしまうパターンも増えているようです。
そこでこちらの項では、私の知り合いの不動産業者が実際に引っ掛かってしまった不動産賃貸詐欺の手口をご紹介いたしましょう。
賃貸物件の入居者募集においては、大家さんから物件の管理を任されている「管理会社」と、物件に入居希望者をご案内して成約を目指す「客付け業者」の2種類の業者が取引に介在します。
そして「客付け業者」は管理会社に連絡の上、鍵の在処を聞き出し、お客様を物件へとお連れして入居の申し込みを入れるまでが仕事となりますが、これ以降は「管理会社」が重要事項の説明から賃貸借契約、引渡しまでを取り仕切るのが通常です。
ちなみに、この詐欺の手口においてはこの管理会社と客付け会社のシステムを巧妙に利用しているのが特徴となります。
さて具体的な詐欺手口としては、まず詐欺会社がレインズ(不動産業者同士の物件情報共有媒体)などで「複数の会社が管理を行っている(入居者募集を行っている)賃貸物件」について『管理会社のフリ』をして客付け業者に入居者募集の広告活動を行うところから全てが始まります。
なお、何も知らない客付け会社はこの広告を見て「物件の問い合わせ」を詐欺会社に行い、物件へのお客様のご案内やお申し込みをしてしまうのです。
また先程も申し上げた通り、ここまでくれば客付け会社の仕事はほぼ完了となりますから、後は管理会社との契約の段取りを整えるだけとなりますが、ここで詐欺会社は客付け会社に対して「契約金を事前に指定口座に振り込んで欲しい」との依頼を掛けて来ます。
ちなみに、「事前に契約金を振込むこと」自体は業界内ではよくあるパターンなので、客付け会社は何の疑いもなく指定口座へ振込みを行った上で、管理会社へ契約に向かうようにお客様へ指示を出してしまうことになるでしょう。
しかしながら、契約するためにお客様が管理会社を訪ねると事務所はもぬけの殻となっており、まんまと契約金を詐欺会社に騙し取られてしまうという訳なのです。
そして、このような事態になってしまえば「お客様の怒りの矛先」は当然客付け会社に向けられる(契約金の返還を求められる)こととなりますから、結局は「不動産屋さんが最大の被害者」となってしまうのです。
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不動産賃貸詐欺について解説まとめ
さて、ここまで解説して来たように、賃貸物件を巡る詐欺行為は入居者や大家さんばかりではなく、不動産屋さんまでもがターゲットにされてしまう時代となってきています。
もちろん不動産業界としてはこうした詐欺を撲滅するために最大限の努力を行ってはいるのですが、次々に新手の手法が登場するために「万全な対応はできていない」というのが実情です。
また、今回の記事では賃貸における詐欺の手口について解説いたしましたが、近年では売買においても地面師による事件が頻発していますので、不動産業者はこれまで以上に緊張感っを持って業務に臨むべきでしょう。
ではこれにて、「不動産賃貸詐欺について解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。