不動産会社に勤務する管理人は、これまでも日々の業務において建売の建築や中古戸建のリフォーム、そしてマンションのリノベーション工事などをこなして来ました。

もちろんどの仕事においても「それなりの苦労」は付いて回るものですが、私の経験上でも屈指の厄介事として記憶に残っているのが世帯50戸、鉄筋コンクリート5階建ての大型一棟ものマンションの大規模修繕工事を担当した時のことです。

前回の記事「マンション大規模修繕工事の流れをレポート!(収益物件のメンテナンス・前編)」では、工事に至る経緯、そして施工会社の選択、工事前の下準備などについてお話しいたしましたが、今回は本工事から完了までをレポートしてみたいと思います。

では、大型マンション外壁塗装の顛末記を見て行きましょう。

マンション外壁塗装工事

 

爆裂箇所の補修と下地処理

人生初となる大型物件修繕工事の段取りに右往左往する管理人でしたが、担当する工務店さんのご協力もあり、どうにか本工事を開始する段階まで辿り着くことができました。

ちなみに今回工事をお願いする建築屋さんは、Aさんという方が経営する従業員10名ほどの小さな工務店となります。

このようなお話しをすると『そんな規模の会社にお願いして大丈夫なの?』というお声も聞こえて来そうですが、Aさんとは既に何度もお取引をしていますし、木造から鉄筋コンクリート造の建物まで、あらゆるに分野に精通した彼の腕前と経験値に、私は心から信頼を寄せていました。

また実際、今回の修繕工事の下準備においても、Aさんの会社の手際の良さには尋常ならざるものがあり、内心「これは案外楽勝かも!」などと考えていたのです。

そしていよいよ、本格的な工事が開始されます。

私もこれ程の規模の工事を担当するのは初めてのことでしたから、なるべく現場に貼り付いて勉強させていただくことにします。

『まずは何から始めるのか?』とドキドキしながら現場を見に行ってみますが、そこには作業服姿の男達が手にマドラー(水割りなどを掻き回す棒)のような器具を持ち、集団で建物の壁という壁を叩いているという「異様な光景」が目に飛び込んで来ました。

「これは一体・・・」と現場監督に尋ねてみると、どうやら「打診」と言われる検査であるらしく、コンクリートを叩き、その音で内部の「爆裂現象の状態」や「コンクリートの浮き」を調べているとのことです。

試しに私も叩かせてもらったのですが、確かに場所により音の違う箇所が存在します。

更に詳しく話を聞くと、作業に当たっている方々は全員この打診専門の職人さんということで、音の度合いで内部の状態を確認し、修繕が必要な個所に印を付けているとのこと。

以前にテレビで、棒で叩くだけで缶詰の中身を検査する職人さんを見たことがありますが、こうした珍しい職業の方というのは本当にいらっしゃるのですね。

そして打診から数日が経過したある日、建築会社の社長Aさんより「現場で打合せがしたい」との連絡を頂きます。

『着工後に何のお話だろう』と現場に向かうと、そこには壁という壁にスプレーで落書きをされた我が物件が佇んでいたました。

「これは一体・・・」と目を凝らしてみれば、その落書きは全て「浮き」「爆裂」などの補修箇所を示したものであるようです。

それにしても印(しるし)の数が尋常ではなく、まるで全身にお経を書かれた「耳なし芳一」のようです。

あまりの事態に唖然としている私に、A社長が説明を始めます。

A社長によれば、爆裂とコンクリートの浮きは合計で400か所を超えるとのことで、若干追加費用が出そうとのことでした。

しかしここまでお金を掛けた以上、今さらケチることもできませんので、ここは覚悟を決めて承諾することにします。

この追加工事によって少々工期は伸びることとなりましたが、全てのコンクリート補修が完了しましたので、いよいよ塗装作業に突入です。

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いよいよ塗装工事へ

塗装作業は、屋上→外壁→廊下→階段の順番で工事が進められて行きます。

なお、作業を開始するまでに「新しく塗る外壁の色」を決めなければならないのですが、これを決めるのが『また一苦労』でした。(今までは古いマンションにありがちな薄いアボリー1色で塗られていました)

散々検討を重ねた結果、今回はスタイリッシュな雰囲気にしたいと「黒」と「白」で仕上げるプランを提案しますが、これは敢えなく社長により却下されてしまいます。

そして社長の独断により、アクセントに明るい「茶色」、その他の部分は「黄色の強いアイボリー」という、『明るくファニーな仕上げ』となることに決まりました。

また、同じ色でも「艶(光沢)の強弱」が5段階で選べるとのことでしたので、この辺の選択にも案外頭を悩ませることとなります。

※光沢が強い程に塗装としても耐久性が高まりますが、あまりに艶を強くすると派手派手しい印象に仕上がってします。

やがて塗料の色も決まり、ついに塗装作業の開始です。

まずは屋上のボロボロの古い塗装を剥離して行きますが、出しゃばりな管理人はここでもヘルメットを被り工事を見学していました。

現場監督が親切な方でしたので、色々と解説を加えてくれますが、確かに古い塗装の下には無数のひび割れが隠れており、これを放置していたら大変なことになるのは、素人目に見ても明らかです。

そして古い塗装の「剥離」が完了すれば、お次は「下地の処理」に「本塗装」と、想像していた以上に時間を掛けながら作業は続いて行きます。

さて屋上の塗装が完了すれば、お次は建物全体の外壁の施工です。

こちらの工程では、住戸のバルコニーなどもに防水塗装をして行くことになるのですが、この頃から作業上のトラブルが増え始めます。

まず問題となったのは、散々周知を行ったにも係らず、物品をバルコニーに放置している入居者たちです。(物品を移動してもらわないとバルコニーの塗装ができない)

また、この日は洗濯物が干せないと伝えてあるのに、干したまま外出してしまう者も後を絶ちません。

こうした問題まで建築屋さんに押し付ける訳には行きませんので、私の方で個別に住人に連絡を入れ対処を行って行きます。

やがて時は、2週間、3週間と経過し、遂に外壁の塗装も完了を迎えました。

「では仕上がりを確認・・・」と見回っていると、一部の壁面に明らかに塗りムラのある箇所を発見します。

ただ、一部とはいっても結構な面積ですので、ドキドキしながらA社長に確認してみると、施工サイドもこれには気付いているご様子です。

そして、「当然やり直させますから!」という、実に頼もしい回答が返ってきます。

建築屋さんの中にはミスを指摘された際に、「いや、あそこはあれ以上無理ですね」などと誤魔化す者も少なくありませんので、こうした真摯な対応はとてもありがたいです。

なお、この問題も程なく解決され、残すは共用部分の塗装です。

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工事完了、そしてまとめ

共用部分の塗装はあまり手間が掛からなそうに思えましたが、入居者が普段利用する場所だけに、これはこれで結構大変な作業でした。

無計画に廊下で塗装作業をすると、「外出したが部屋に戻れない」「出掛けようとしたら工事で部屋から出られない」などのトラブルを招くことになるからです。

各部屋に通行禁止の時間を連絡し、迂回路の案内表示を出すなど、なかなかに神経を使います。

また、作業員が共用部分をうろ付いているため、「ついでにサッシの調子を見て欲しい」など、住人が勝手に作業依頼をして来たりもしました。

現場監督から「どうしましょう?」とのお窺いがありましたが、折角各職人が揃っている機会ですから「入居者が故意・過失で壊したもの以外はやって上げて」とまたまた経費が掛かる発注をしてしまいます。

そんな紆余曲折を経ながら、ついに共用部分の工事も完了し、足場も解体されました。

改めて全体を見渡せば、これは正に「生まれ変わった」ような仕上がりです。

これまで様々な塗装工事を見て来ましたが、ここまでのクオリティーは初めて見ました。

そしてこの仕上がりについては、社長もご満悦の様子でしたので、ここでようやく胸を撫で下ろすことができました。

こうして私の初めてのマンション外壁塗装の大規模修繕は完了を迎えたのです。

しかし工事を進める中では、共用部分の電灯器具が相当劣化していることが発覚したり、水道管に錆が出始めていることに気付くなど、次なる修繕に向けての課題も多数発見されましたから、決して安心できる状態ではないのも事実でしょう。

今後も計画的に、修繕工事のスケジュールを組んで行きたいと思います。

また今回の修繕で強く実感させらえたのは、「知識の無い者が値段の安さに釣られ、質の悪い業者に工事を依頼してしまうのは非常に危険である」ということです。

「安物買いの銭失い」という諺がありますが、今回は正にこれを思い知らされた気分でした。

『これからは建築に対する知識をしっかりと身に付けながら、的確に良い業者・悪い業者の選別ができるようになりたい』と切に感じたのを今でも憶えています。

さて、これにて今回の記事を締め括らせていただきたいと思います。

今後の修繕についても、逐次ご報告いたしますので、またお付き合いを頂ければ幸いです。