マイホーム購入時に、意外に「注目されることがない」のが『土地の広さ』であると言われています。
土地を購入して「自分で注文住宅を建てる」というのであれば敷地面積は非常に気になるでしょうが、建売物件を購入する際には、間取りや価格ばかりに目が行ってしまいがちなものですよね。
そこで本日は「マイホームの土地の広さや面積について解説いたします!」と題して、不動産の資産価値を大きく左右する敷地面積についてお話しいたします。
マイホームの土地の広さはどれくらい必要なのか
以前にお届けした「土地の形状について解説いたします!」の記事においては、『マイホーム探しにおいて土地の形状が如何に重要な要素であるか』というテーマでお話をさせていただきましたが、今回は土地の面積に着目してみたいと思います。
マイホーム探しにおいては販売図面を見ながら物件を絞り込んでいくことになりますが、そこには必ず土地の面積についての記載があるはずです。
なお、1㎡が1m×1mの面積を表すことは皆さんご存じのことと思いますが、一坪の面積が何㎡であるかと問われると頭を抱えてしまう方も多いのではないでしょうか。
ちなみに、1坪を㎡換算した面積は
※1尺=10/33m
となります。
「尺」や「坪」という単位は耳慣れないものとなるでしょうが、我が国では古来より尺貫法と呼ばれる単位系が使用されており、 不動産業界や建築業界では未だにこの単位が現役で使用されているのです。
さてこのようなお話をすると「家を買うためだけに、そんな時代遅れの単位を覚える必要があるのか?」という疑問を持たれる方も多いでしょうが、
土地の価格などを比較する場合には「坪単価」が非常に重要になって来ますし、建物を建てる際にも「坪あたりの工事価格」といった表現はよく使われますので、『1坪がどれくらいの面積である』という感覚は是非身に付けておくべきでしょう。
また、十分な面積が確保できている土地であっても、法令などによって敷地全体に家を建てられないケースがありますので、「理想のマイホームを建てるためにはどれくらいの床面積が必要になるのか」という点もしっかりと把握しておくべきです。
ちなみに家族構成別の理想的な建物床面積と間取りは以下のようになります。
よって、土地選びに当たっては敷地の大きさだけではなく、建築に際して利用できる建築面積や延べ床面積についても注意が必要となるのです。
※建築面積や延べ床面積については後程詳しく解説いたします。
土地面積が売買価値に与える影響
さて続いては、「土地の大きさと価格の関係」についてお話しさせていただきたいと思います。
まず前提として申し上げておきたいのが「土地は小さくなればなる程に、単価が高めになる」ということです。
※単価とは「1坪又は1㎡あたりの値段」という意味であり、30坪で3600万円の土地なら「坪単価は120万円(㎡単価は36万円)」ということになります。
つまり、50坪の土地をそのままの広さで売りに出すよりも、1/2の大きさに(25坪ずつ)に切り分けて売却した方が、高く売ることができるという訳なのです。
さて、このようなお話をする「そんなことがあるの?」と疑問に思われる方もおられるでしょうが、そのような方には「賃貸物件の賃料」にこの理屈を当てはめていただければわかりやすいかと思います。
例えば専有面積20㎡のワンルームが月額賃料8万円で借りられる地域で、60㎡の2LDKを貸し出す際に、面積が3倍だからといって月額24万円の賃料設定では、賃料が高額過ぎて借手はまず現れないでしょう。
そして、これと同様の現象が土地においても生じることになり、50㎡(15坪)→100㎡(30坪)→150㎡(45坪)と土地の面積が大きくなるのに随い、坪当たり(㎡当たり)の単価は下がっていくこととなります。
※但し、5坪などの土地にはそもそもニーズがないため、むしろ単価は下落することになるでしょう。
近年では50㎡やそれ以下の面積の土地に建てられた建売住宅が普通に販売されていますが、総額こそ安く抑えられているものの、実際には割高なお買い物となっていることは、心に留め置かれた方が良いかもしれません。
これに対して、面積が大きくなればなる程に土地の単価は割安となりますが、当然ながら面積の増大に伴い「売買価格の総額は高額なもの」となりますので、『単価の安さを実感し辛い』というのが現実でしょう。
ちなみに、住宅用地として最も人気のある面積は15坪(50㎡)~30坪(100㎡)程の大きさとなりますので、建売物件などを見てもこの範囲内に物件が集中しているはずです。
法令上の建築制限よって生じる土地面積の問題
前項において、15坪(50㎡)~30坪(100㎡)程の大きさが住宅用地として最も人気のある土地のサイズである旨をお話ししましたが、既にご説明した通り土地には法令によって定められた建築制限がありますので、制限の内容によっては確保するべき土地面積にも違いが出てくるものです。
そこで本項では、土地面積に影響を与える建築制限について解説していきます。
容積率と建ぺい率
建築基準法にて定めらてた容積率と建ぺい率は土地の面積に大きな影響を及ぼす建築制限となります。
容積率・建ぺい率はどちらも50%、300%などのパーセンテージで表示される建築制限となりますが、その意味には大きな違いがあります。
まず建ぺい率は「真上から土地を見た際に建物を建てることができる面積(建築面積)の上限」を表した値です。
よって、その制限が50%なら土地の半分までしか家を建てられませんから、建ぺい率が80%の地域に比べて、同じボリュームの家を建てるにもより広い土地が必要となってきます。
これに対して容積率は「延べ床面積の限度」を示すものですから、容積率が200%の土地なら「土地の大きさの2倍の延べ床面積の建物が建築可能」であり、建ぺい率400%なら「4倍の延べ床面積」となりますから、当然必要となってくる土地の面積も変わってくる訳です。
よって、マイホーム探しにおいては「土地の面積」と「容積率・建ぺい率による建築制限」をしっかりと把握して『必要な土地面積が確保できているか』を確認する必要があります。
敷地の最低限度
前項でも登場した建築基準法においては、用途地域という土地の利用方法についてのルールが定められています。
なお、用途地域は全部で13種類存在し、地域ごとに「店舗が建築できない」「工場不可」といった土地利用上の制限が設けられているのですが、「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「田園住居地域」については、自治体が任意に「敷地の最低限度」を定めることが可能となっているのです。
つまり、自治体が「この地域では100㎡(30坪)未満の土地には建物を建てる許可を与えない」と定めれば、その決定に従わざるを得ないことになり、50㎡などの小さな土地は極端にその価値を落とすことになります。
なお、法令上は「200㎡までの範囲で最低限度を定められる」としていますが、実際には100㎡、150㎡といった制限になっている地域が多いようです。
ちなにみ自治体によっては、特例としてこうした地域における「許可面積以下の土地での建築」を認めているケースもありますが、こうした特例を利用する場合には建築に様々な制約を課せられることになりますから、これに該当する物件の購入には充分な注意が必要でしょう。
建築協定・地区計画
続いてご紹介するのが建築協定・地区計画という制度における土地面積の制限となります。
実はこの二つの制度、成り立ちから根拠となる法律まで、全く異なるものとなっているのですが、どちらも土地の最低限度を定めることが可能となっていますので、これらのエリア指定がある地域で不動産を購入する際には是非ご注意ください。
なお、地区計画は自治体が定めるものとなりますので、違反した場合には建築許可を受けることができませんが、建築協定はあくまで民間人同士の取り決めですので建物を建てること自体は可能です。
但し、建築協定は一種の契約と見なされますので、協定を管理する組合などから訴訟を起こされる場合もあるでしょう。
※建築協定と地区計画に関しては別記事「建築協定・地区計画」にて詳細な解説を行っております。
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土地面積ごとのチェックポイント
では次に、住宅用地にありがちな土地面積について、それぞれの利点・注意点などを解説して行きたいと思います。
40~50㎡(12~15坪くらいの土地)
住宅用地としては最も面積の小さい部類に入るのがこのサイズの物件となるでしょう。
また、近年では50㎡を下回った物件も数多く登場していますが、40㎡以下の面積ですと多くの銀行で住宅ローンの融資対象から除外されることになりますので注意が必要です。
なお、面積が40㎡を超えていたとしても自分が希望する銀行で融資を受けることができないケースが考えられますし、50㎡に満たない土地の場合には住宅ローン控除等の税制優遇が受けられない場合もあります。
そして、このサイズの物件の魅力は何よりも価格が低く抑えられることですが、既に申し上げた通り「単価としては割高」である上、土地が小さ過ぎるため建替えの際に間取りを変更するのが非常に困難となるはずです。
更に売却に際しても、その狭さ故に使い道が極端に限られることになりますから、どうしても資産価値は低いものとなってしまうでしょう。
53~66㎡(16~20坪くらいの土地)
所謂、3階建て住宅がきっちりと収まるサイズの土地となります。
但し、あまり間取りの自由は利きませんし、カーポートもビルトインタイプ(建物の一部が駐車場となっているタイプ)となってしまうケースが殆どでしょう。
よって、1階部分はその面積の多くを駐車場に取られてしまうため、居住スペースは2階以上となりますから、老後のことなどを考えると少々不安も残る物件となります。
一方、3階建てがしっかりと収まるため、土地の大きさ的には人気があり、流通性も高い物件と言えるでしょう。
75~85㎡(23~25坪くらいの土地)
3階建てなら、かなり広々とした間取りとなり、地形によっては2階建ての建築も夢ではない土地の大きさです。(専用通路の場合を除く)
また、建替えに際しても3階建ならば、かなり間取りのプランを選ぶことができるでしょう。
一方、2階建てを建築しようとすると、間取りは相当制限を受けることとなるはずです。
よって、「子育てを終え、子供たちが独立した後はこじんまりとした2階建て、子供たちが同居するなら3階建ての2世帯住宅に建替える」といった人生設計をお持ちの方には、ちょうどよい大きさの土地となるでしょう。
100㎡超の土地(30坪以上)
文句なしに、2階建て4LDKの間取りが入る広さの土地となります。
法令上の制限により、2階建てしか建てられない地域に多い大きさの土地とはなりますが、時折3階建OKのエリアでの分譲も見掛けます。
小型の物件より土地の単価は下がっているはずですし、3階が建つ地域なら将来的には自宅兼アパートなどのプランも可能になりますから、最も応用範囲の広い物件と言えそうです。
但し問題は、単価が下がるとはいっても購入価格はかなりのものとなりますから、資金計画には慎重な判断が必要でしょう。
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不動産の土地面積まとめ
このように土地の面積には、そのサイズによって様々な利点や問題点があるものです。
マイホームの購入に際して、「今の自分にぴったりの間取りと値段だから!」という理由だけで購入の意思決定を行う方も少なくありませんが、「家族の将来を見据え、子孫たちに残す資産を選ぶ」という視点に立ち、土地の面積もじっくりと吟味した上で決断をすることを、管理人は強くお勧めいたします。
ではこれにて、不動産の土地面積の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!