近年、各メディアで取りざたされているのが「空き家を巡る問題」となります。

長年、放置された空き家は景観という意味でも望ましくありませんし、治安上の問題、そして大地震発生時には倒壊の危険性も高まるため決して放置できませんが、この問題の根底には「そもそも建物や土地の所有者がわからない物件が増えている」という事情があるようです。

そこで本日は「所有者不明土地の対策について解説いたします!」と題して、所有者がわからない土地を巡る諸問題と、現状を打破するべき施行された法令等についてご説明してみたいと思います。

所有者不明土地

 

所有者不明土地を巡る問題

街中を歩いていると住宅街のど真ん中にも係わらず、雑草がボウボウに生えた空き地を目にすることがあります。

また、駅前の繁華街などでも『何故こんなところに空いた土地が?』といった光景を目の当たりにすることがあるはずです。

もちろん、こうした土地の全てが所有者不明土地という訳ではないでしょうが、現在、我が国には「北海道の面積の約半分(4100㎢)にも相当する所有者のわからない土地が存在している」と言われていますし、驚くべきことに「20年後にはその面積が2倍(北海道と同等の面積)にまで増加する」との予測がなされています。

そして所有者が不明である以上、こうした物件を売買することはできませんから、ただでさえ狭い国土に『死地(しにち)』ともいうべき土地が増殖を続けている現状は正に由々しき事態と言えますし、「生い茂る雑草」や「不法投棄」などの住環境上の問題も発生しますので、近隣住民にとっても迷惑極まりないお話となるでしょう。

なお、近年問題となっている地面師の犯行においても、こうした所有者不明の土地が利用されるケースが少なくありませんから、このような土地の存在は『不動産の安全な取引』さえも脅かす存在となっているのです。

では一体、どうしてこのような所有者不明の土地が発生し、増殖を続けることになったのでしょうか。

まず、その理由として挙げられるのが「地方の過疎化の問題」となります。

地方においては現在も深刻な過疎化が進行しており、たとえ相続が発生したとしても「資産価値も低く、管理に手間が掛かる地方の不動産は相続したくない」と考える方々が少なくありません。(特に故郷を離れ、都会で生活する相続人にはこうした傾向が強いようです)

一方、現在では法改正により相続登記が義務化されていますが、つい最近までは相続時に不動産を受け継いだとしても登記を行う義務はありませんでしたから、相続登記が行われずに世代交代が続いてしまうと、最早「現在の所有者が誰であるか」が全くわからなくなってしまうという訳です。

こうした理由から、徐々に増え始めた所有者不明の土地は時代を追うごとにその面積を増やして行くこととなり、今や4100㎢という途方もない広さにまで増大することとなりました。

ただ、このような状況を放置し続ければ日本の国土の利用に大きな障害が発生することは明白ですから、政府としても現状を打破するべく様々な手段を講じています。

そこで次項では、所有者不明の土地問題を解決するべく定められた2つの法律について解説していくことにいたしましょう。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

ここまでお話しして来た所有者不明土地の問題を解決するべく、2018年に施行されたのが「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」なるものです。

この法律においては所有者不明の土地に対して以下の措置を講ずることができるようになりました。

公園等を作る「地域福利増進事業」の創設

所有者不明の土地を有効利用するために、まず定められたのが「地域福利増進事業を行うことが可能となる制度」となります。

地域福利増進事業とは、地域住人へ憩いの場となる公園や広場を提供する事業を指す言葉であり、

こうした目的で空き地を利用したい者(企業や町内会などでもよい)が地方自治体へ申請を行い、知事などがこれを許可すれば最長で10年間、所有者不明の土地を使用することができる

というものです。(異議申し立てがなければ延長も可能)

また、知事等の判断には「収用委員会の採決」なども不要となりますから、よりスムーズな土地の利用が可能となりました。

※この法律と同様の土地利用が可能となる「土地収用法」の手続きと比べて、1/3程度の期間短縮が可能となります。

所有者探しの合理化

これまで国や地方自治体が土地の所有者を探す場合でも、様々な制度的なハードルにより検索に必要な資料の閲覧さえ自由に行うことができない状態でした。

そこで、この法律においては

固定資産税の台帳等、所有者探しに欠かせない資料を行政がスムーズに入手できるようにした

のです。

また、こうした調査活動によって所有者が特定された場合には、登記官による「相続登記の勧告」等の行為も可能となりました。

土地の適正管理制度

また、前項の調査によって所有者が特定できないケースでも、近隣住人などの申立てがあった場合には、

地方自治体等は土地の管理者を選任し、一定の管理行為(雑草の処理など)を行うことが可能

になりました。

これにより、「害虫の被害」や「不法投棄」といった近隣住人の被る住環境上の問題に対しても、救いの手が差し伸べられることとなったのです。

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表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律

ここまでご説明したとおり、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の施行によって『持ち主がわからない土地に対する一定の対策』が行えるようにはなりましたが、まだまだ行き届かない点があるのも事実でしょう。

そこで政府は2019年に「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」という新たな法律を施行することとし、更に対策を強化することにしました。

所有者不明土地の所有者探索制度

法律の名称にある「表題部」という言葉からもわかる通り、この法律は不動産登記に係わる部分に重きを置いた法律となります。(表題部とは登記簿における土地の特定を行う欄を指します)

よって、この法律に定める所有者検索の主役は登記ついて権限を有する「登記官(法務局にに勤務する事務官)」となっており、

職務にあたる登記官には固定資産台帳など『所有者検索に役立つ資料の閲覧権限』を与える

こととしました。

また、調査に当たる登記官を補助するために所有者等探索委員(所有者探しに能力を発揮する各分野のスペシャリスト達)の任命も可能となりましたので、これまで以上に効率的な調査が可能となったのです。

調査結果の登記簿への反映

先程解説した「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」においては、特定した所有者に対して『登記するように勧告する』程度のことしかできませんでしたが、この法律が施行されたことにより、

登記官は職権によって表題部所有者の登記を行うことが可能

になりました。

所有者が特定できない土地への管理措置

既に解説した「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」においても管理者に係わる制度がありましたが、この法律においては管理者の権限が大幅に強化されているのが特徴です。

そして、「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」における管理措置では、利害関係者が申し立てを行うことにより、裁判所が管理者を選任することになります。

なお、管理者は自己の判断に基づいて、

雑草の除去等の管理行為が行えるのはもちろんのこと、状況によっては土地を売却することさえ可能となった

のです。

また、土地の売却によって得られた利益は供託されることとなり、後々所有者が判明した際にはその者へ返還されることになりますが、所有者が現れない場合には一定の期間(10年間)が経過した段階で国の財産へと組み込まれることになります。

その他の所有者不明土地への対策

ここまでご紹介してきた以外にも、所有者不明土地問題を解決するための法令や制度がございますので以下で解説してまいります。

相続登記の義務化

所有者不明の土地が発生する原因の一つとされていたのが、相続登記が「任意」であるという制度上の問題でした。

そこで政府は2024年4月1日より、

相続登記を義務化することとした上、これに違反した場合には10万円以下の過料という罰則を科する

こととしたのです。

また、法改正以前の相続についても「2024年4月1日から3年間以内のものにはその効力が及ぶルール」となっていますので、この点からも政府が所有者不明土地問題の解決に強い意欲を持っていることが窺い知れます。

なお、この相続登記義務化については別記事「相続登記義務化についてわかりやすく解説いたします!」にて詳細な解説を行っておりますので、是非こちらもご一読ください。

相続土地国庫帰属制度の導入

所有者不明の土地が発生する背景には、相続に際しての「活用が困難な不動産」の存在が大きな影響を及ぼしていると言われています。

生活拠点が都心部の方が地方の土地を相続しても、『これを有効に活用することが困難であるために放置してしまう』という訳です。

なお、これまでの相続制度においては

  • 不要な土地も含めて、全ての財産を相続する
  • 全ての財産の相続を放棄する

という2つの選択しかできないルールでしたが、令和5年(2023年)4月27日の「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」の施行により、

相続財産に不要な土地が含まれている場合に、これを国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる『相続土地国庫帰属制度』

が導入されました。

但し、どのような物件でも引き取ってもらえる訳ではなく、

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

といった状態の土地は対象外となる上、がけ地などの場合には引き取りを断られる場合もあるようですが、この制度が所有者不明土地の問題に一石を投じることになるのは間違いなさそうです。

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所有者不明土地への対策まとめ

さてここまで、所有者不明土地の土地を巡る諸問題と、政府が行っている対策について解説してまいりました。

「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」においては、調査結果に基づいて登記官が自力で登記を行える制度をはじめ、土地の売却までも可能な仕組みが創設されましたので、これは大きな進展と言えるでしょう。

但し、実際に売却を行うまでのプロセスはかなり複雑なものとなりますし、「実際に売却が可能な条件を備えた所有者不明土地は極僅かしか存在しない」との指摘もありますので、まだまだ追加の対策が必要となって来るでしょう。

全世界においても「国土の狭さに関しては指折りの存在」である我が国ですから、合理的なルールを定めて、より効率的な土地利用が行える社会を目指して行きたいものです。

ではこれにて、「所有者不明土地への対策について解説いたします!」に関する知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。