不動産投資を行っている方にとって、最も頭を悩ませる問題の一つが「所有する物件の空室率」に関するものなのではないでしょうか。

どんなに「利回りが回る物件」を保有していても、『空室だらけの状態』では思うような収益を上げることができる訳がありません。

また、購入した時は満室であったのに「ドンドン部屋が空いてしまい、お金を掛けてリフォームしたのに全然空室が埋まらない」というケースも少なくないようです。

なお、「こうした状況をどうにかできないものか?」と管理を任せている不動産屋さんに何度も連絡を入れてくるオーナー様もいらっしゃいますが、どんなに管理会社を責めても簡単に空室が埋まるはずもありません。

そこで本日は、空いているお部屋をより決めやすくする手法について考えてみたいと思います。

では、収益物件の空室率を下げるための知恵袋を開いてみましょう。

収益物件の空室率

 

まずは決まらない理由を考える

「どんなに募集を掛けてもお部屋が埋まらない・・・」、そんな時に一番に頭に浮かぶのが『賃料が高過ぎるのでは?』という疑問です。

確かに相場から逸脱した割高な賃料が設定されているお部屋に、簡単に申し込みが入る訳もありませんから、募集を掛ける際の市場調査には充分な時間を掛けるべきでしょう。

また管理会社などに委託をしている場合には、状況に応じて的確な賃料設定のアドバイスをしてもらえるはずですから、こうした助言に耳を傾けることも必要です。

また、「周辺のライバル物件と、自分の物件をしっかりと比較してみること」も非常に大切な作業となります。

なお、ライバル物件との比較に際しては「駅からの距離」や「お部屋の間取り」などの違いだけではなく、『お部屋の所在階(1階にあるのか2階にあるのか等)』や『築年数』、そして『建物の構造(木造、鉄骨造、RC造)』の違いに、

『日当たりの良さ』『収納、宅配ボックスやオートロック、エレベーターの有無』『契約条件(敷金の有無、保証会社利用の要否など)』についてもじっくり吟味して、賃料設定に反映させるべきです。

但し、ここで注意すべきなのは徹底した周辺物件との比較を行っても、決して相場より賃料設定が高くない場合となります。

このようなケースにおいて、経験の少ない不動産管理会社は「更に賃料を下げて割安感を出しましょう」などと言って来るかもしれませんが、これは絶対に避けるべきしょう。

相場から逸脱した極端な値下げは、結果的に属性の悪い(質の悪い)入居者を招くことになり、賃料滞納や近隣住人とのトラブルなどが増え、逆にトラブルを抱え込むだけとなってしまうことが殆どとなるからです。

また値引きと同様に、「敷金なし」や「フリーレント(当初1ヶ月は賃料無料など)」等の優遇条件は、貯金も満足にできないような入居者を呼び寄せる結果になりますから、決しておすすめしません。

では、近隣の相場より決して高くない賃料設定であるにも係わらず、空室率が高い場合には一体何をするべきなのでしょう。

次の項では、不動産屋さんならではの実践的な空室対策手段をご紹介して行きます。

 

有効な空室対策をご紹介!

近隣のライバル物件と比べ、明らかに劣るところがないのであれば、取るべき行動は他の物件以上に自分の物件の価値を高めることです。

もちろん、宅配ボックスを設置したり、オートロックを新設すれば付加価値は大きく上昇しますが、当然それに伴った多額の経費が必要となりますから、資金に余裕のない物件オーナー様にとっては正に「イバラの道」となるのは必定でしょう。

ただ、『殆どお金を使わなくても、物件の価値を向上させる手段』は意外にあるものです。

以下にその具体例をご紹介して行きましょう。

お部屋設備を充実させる

あまりお金を掛けずに行える対策のひとつとして、お部屋の設備を充実させるという手段があります。

もちろん、テレビを付けたり、家具を置いたりすればインパクトは抜群ですが、これらの方法はコストがそれなりに掛かる割に、お客様からの反応が意外に薄かったりするのも事実です。(家具などには「個人の好み」があるため、センスが合わない方からは敬遠されてしまう)

そこでおすすめなのが、お部屋に電灯(シーリングライト)を設置するという方法になります。

最近では量販店などに行くと、LED電球を使用したライトでも5,000円~7,000円くらいでそれなりの商品が購入できますので、全ての居室にこれらを設置してみましょう。

この方法であれば、2LDKの間取りで3部屋(リビング×1、居室×2)に設置しても20,000円程度の出費で済みますし、お部屋のブレイカーを上げた際に「全てのライトが点灯する状態」にしておけば、お部屋自体も明るい印象になるのは間違いありません。

また、入居の際「自分で買うから電灯は不要!」と借主に言われてしまった場合には、自宅などで保管しておいて、別の部屋が空いた時に再度利用することもできるでしょう。

なお、電灯と同様にトイレにウォーシュレットを設置するという手段もおすすめです。

自分で取付けるのならば、15,000円くらいの出費で設置が可能となるはずですから、「コストパフォーマンスは非常に高い」と言えるでしょう。

但し、大家さんが『設備』としてこれらの器具を設置した場合には、「入居者の故意や過失で故障したケースを除き、修理費用や交換費用は貸主の負担となる点」については是非ご注意ください。

ちなみに、「修理費用等を負担したくない」という場合には、賃貸借契約書や重要事項説明書に『対象の備品は残置物である』旨を明記しておくのが良いでしょう。(設備と残置物についての詳細は過去記事「賃貸の残置物と設備の使い分けについて!」をご参照ください)

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管理や建物のメンテナンスを充実させる

一方、こちらは一切お金の掛からない空室対策となりますが、「物件の管理」や「建物のメンテナンス」を充実させるという方法もあります。

例えばお客さんが物件を見に来た際、エントランスや廊下などにゴミが落ちていたり、入居者の荷物が放置されているといった状況は非常に印象が悪いですから、こうした管理面の問題を改善して行く訳です。

よって空室を抱えている際には、週に1回、最悪でも2週に1回くらいは物件の巡回を行って「共用部分の掃除」を行いましょう。

またリフォームが完了し、空室となっているお部屋の内部にも気を配ることが大切です。

賃貸物件の情報サイトなどを見ていると、「洗面所やキッチンの排水口から下水の臭いが上がって来ている部屋は、契約するべきではない」などといったアドバイスをよく目にいたします。

この現象は、下水配管の途中に設けられている「トラップ(臭気の侵入を防ぐ設備)」に溜められた水が、長い間お部屋を使用しなかったことにより蒸発してしまうのが原因です。

なお、トラップとは敢えて下水配管の途中に水の溜まる箇所(配管をS字に捻ったものや、コップ形などトラップの形状は様々です)を作り、下水の臭いの逆流や害虫の侵入を防ぐ設備となりますが、

「トラップに水がない」ということは『長い期間、申込みが入っていない不人気物件の証拠である』というのが、このアドバイスの意味するところとなっているようです。

オーナー様からすると「何をふざけたことを!」と思うかもしれませんが、確かに「不人気物件の判別法」としては一理ある方法ではありますし、このような状態で物件を放置し続ければ『配管から上がって来たゴキブリなどがお部屋で死んでいる』といった最悪の事態にも繋がりかねません。

こうした事態を防ぐためにも、1月に1回(夏場は2週間に1回)くらいは空室を巡回し、ペットボトルなどで排水口に水を流すのがおすすめです。

ちなみに、下水のトラップ以外にもトイレの便器に溜まっている水が干上がれば、同様の現象が発生する可能性がありますし、水が残っていても便器の中にカビが発生している状態は、当然ながらお客様に悪い印象を与えることになります。

よって巡回の際には、必ずトイレの水を流すのも忘れないようにしたいところです。

広告宣伝費で優先的な案内を行わせる

そして最も有効に空室率を低下させる手段が、広告宣伝費の額を増額して、物件へのお客様のご案内を増やすという方法です。

賃貸物件の管理を不動産屋さんに任せている場合、空室が成約した際には管理会社に1ヶ月分の宣伝広告費を支払うのが一般的でしょう。

また、管理会社の先に「入居者を連れて来た別の不動産屋さん」が存在しているならば、その業者は入居者から仲介手数料を受け取るのが通常の取引形態(報酬形態)となります。(賃貸取引の仕組みに関しては過去記事「賃貸仲介の仕組みを知り、投資を有利に進めよう!」をご参照ください)

なお、この一般的な仲介報酬のシステムの中に『ボーナス的な報酬を大家さんの手で加えてやる』のが、この手法の「肝」となります。

つまり、管理会社(元付け業者)にはこれまで通り1ヶ月の広告宣伝費を支払いながら、成約のあかつきには「入居者を連れて来た業者(客付け業者)」にも、更に1ヶ月の広告宣伝費を支払う募集形態にするという意味です。

これにより、お客様を連れて来た業者(客付け業者)の報酬は2倍(仲介手数料+広告宣伝費)となりますから、当然ながら競合物件よりも優先的にお客様へ空室情報が提供されることになりますし、ご案内に当たる営業マンの士気もかなり変わって来るはずです。

ちなみに、このようなお話をすると「そんなに報酬を払ったら、収益が圧迫される!」とのお声も聞えて来そうですが、この方式の効果は絶大なものがありますので、是非お試しいただければと思います。

なお公平性を保つためにも、管理会社が直接お客を連れて来た場合には、惜しまず2ヶ月分の広告宣伝費を支払って上げるのが、管理会社との円満な関係を保つ秘訣となるでしょう。

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空室対策まとめ

さて、ここまで見て来たように、空室対策の中にはそれ程費用を掛けずとも、かなりの効果を上げる方法があるものです。

なお、広告宣伝費の手法は「かなり費用が掛かるような気がする」かもしれませんが、3ヶ月、4ヶ月と空室が続くのに比べれば、遥かに少ない出費となるはずですから、機会があれば是非お試しいただきたいと思います。

ちなみに、管理会社へ広告宣伝費の件を伝える場合には「募集中の物件にAD(広告宣伝費)を付けたい」と申し出れば、お話がスムーズに進むはずです。

更にADについては、広告費半月分を50%、1ヶ月分を100%、2ヶ月分を200%といった具合に、「%」で表現するのが一般的ですので、これも是非覚えておいてください。

空室率を下げる方法は様々ですが、「費用を掛けるべき点」と「節約すべき点」を上手に使い分け、安定的な賃貸経営を目指していただければ幸いです。

ではこれにて、収益物件の空室率低下に役立つ裏技の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。