これまで本ブログでは、賃貸管理に関する記事を何度かお届けしてまいりました。

賃貸管理の会社の実情を記した「賃貸管理会社の仕事内容をご紹介いたします!」という記事に、契約管理についての「賃貸元付けのお仕事をレポート致します!」

そして入金管理に関しては「賃貸入金管理のお仕事レポートをお届け!」といった記事がそれに当たるでしょう。

なお、これらの記事をお読みくだされば「賃貸の管理がどのような仕事であるか」はおおよそご理解いただけることと思いますが、管理の仕事をしていて特に「厄介だな!」と感じるが『賃貸管理会社変更に伴うトラブル』です。

もちろん物件内で入居者が事故を起こしたり、訴訟に発展するようなヘヴィな滞納者等の方が「嫌には嫌」なのですが、『後味が悪い』という意味ではこちらもなかなかのものがあるかと思います。

そこで本日は、「賃貸管理会社変更のトラブル始末記」と題して管理会社変更にまつわる揉め事の顛末をレポートしてみたいと思います。

賃貸管理会社変更

 

「抜いた」「抜かない」のトラブル

賃貸管理会社変更トラブルと聞いて、「一体何のことだろう?」と首を傾げた方も少なくないことと思います。

以前の記事でも申し上げましたが、賃貸物件の管理報酬は不動産屋さんにとって貴重な固定収入源です。(他の不動産屋さんが管理する物件の空室にお客様を紹介する「客付け仕事」は収入が安定しないため)

よって、賃貸管理をメインにしている会社さんにとって「現在管理している物件を他の会社に取られる(管理会社を変更される)という事態は絶対に許せないこと」となります。

しかしながら、管理の質が悪かったり、何時まで経っても空室が埋まらないとなれば、オーナー様も思わず「管理会社を変えようか・・・」などという想いに駆られてしまうものです。

もちろん、依頼主は大家さんなのですから「管理委託に伴う契約」に違反しない限りは、自由に委託先を変えることができるのですが、

不動産業界ではこうして管理を外された業者が「抜かれた!(管理の仕事を横取りされた)」などと大騒ぎをするケースも珍しくありません。

そこでまずは、「抜いた・抜かれた」というお話の経験談を披露させていただきましょう。

 

ある時、以前よりお付き合いのある物件オーナー様が、突然我が社にいらっしゃられました。

その方は地元では有名な資産家であり、保有する賃貸マンション、アパートはかなりの数におよびます。

ちなみに、私の会社もその中の数件の管理を任されていたのですが、今回のご用件は「他の業者に管理を委託している物件を、今後は当社に任せたい」というのです。

そして、これまで管理をして来た業者さんの名前を尋ねてみれば、この界隈では何かと悪い噂を耳にする賃貸管理メインの業者さんでした。

とは言え、オーナーからの正式な依頼ですし、これまでのお付き合い(他の物件の管理を任されていた経緯)を考えれば断れる訳がありません。

そこで、「従前の不動産会社さんとの管理契約に違反しないこと」、そして「大家さん自ら、現在の管理会社へ委託先を変更する旨の通達をしていただく」ことを条件に、この仕事を引き受けました。

そして業務を始めて数か月が経過した頃、突然当社に顔を真っ赤に紅潮させたおっさんが現れます。

そう、このおっさんこそ管理を切られた不動産屋さんの社長です。

物件担当者が私であることを聞いていたらしく、名指しで私を呼び出すと、その後は罵詈雑言の嵐が吹き荒れます。

30分以上文句を言われ、「この街で商売ができると思うなよ!」という捨て台詞を残して帰って行きました。

もちろんこちらのやり方に落ち度は無かったので反省する点はありませんが、業界の友人と飲みにいくと時折「●●不動産の社長(怒鳴り込んで来た人物)が君の悪口を言いふらしていたよ・・・」などという情報を耳にいたします。

この手のことは日常茶飯事なのですが、ちょっぴり切ない気持ちになる出来事でした。

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恐怖の重複管理委託大家さん

次のお話は、単なる管理会社変更とは「趣を異にするもの」かもしれませんが、こちらも合わせてお話しさせてください。

この案件は、私が勤める会社の社長より「この件はお前に任せる」と降って来たお仕事です。

何でも社長の個人的な知り合いである大家さんが、賃貸物件の管理を我が社に任せたいとのオフォーをして来たといいます。

なお、社長直々の仕事である以上は断ることもできませんので、まずはその大家さんへの「ご挨拶」と「物件の下見」に行ってみますが、そこには驚くべき光景が展開されていました。

対象物件は築十年そこそこの綺麗なアパートなのですが、敷地のブロック塀フェンスに大手賃貸系不動産屋さん3社の看板が交互に10枚以上貼られていたのです。

あまりの光景に『これは何事だ?』と思い、大家さんに問い質してみると「なかなか部屋が決まらないから、3社にそれぞれ新規募集の依頼を掛けてしまった」と悪びれる様子もありません。

ちなみに看板を貼っていた3社は、テレビでもCMを打つくらいの大手同士ですから、「ライバル会社に負ける訳にはいかない」と熱い闘志を煮えたぎらせていたのでしょう。

そして彼らの意地の張り合いが、あの交互に並んだ看板の応酬に繋がったようです。

このようにオーナー様の中には、お部屋が決まらないからと言って複数の不動産会社に新規入居者募集を掛ける方も少なくありませんが、これはむしろ逆効果となるように思えます。

不動産会社も新規の募集に当たっては、広告費を掛けて宣伝活動を行いますが、他の会社でも募集を掛けていれば「その広告費が回収できる可能性は非常に低い」という判断になってしまうため、積極的な宣伝活動を控えるのが通常です。

よって、何社に頼んでも「どうせ他の会社で決まるんでしょ」とタカを括られ、真剣な募集活動をして貰えない結果となるでしょう。

なお、今回の案件については「社長のお知り合い」ということなので、こうした業界のセオリーもお伝えしましたが、どうしても多重依頼を止める気はないようです。

その上、当社にも重ねて「入居者募集をして欲しい」の一点張りなので、渋々ご依頼を受けることにしました。

但し、先程ご説明した事情もありますので『それなりの募集活動』しか行っていなかったのですが、こんな時に限って当社へお部屋探しにご来店されたお客様が「この物件にお申し込みを入れたい」と言い出したのです。

正直、少々嫌な予感はしていたのですが、例の大家さんに電話をしてみると「昨日、他社から申し込みがあったんだよね・・・」と取り付く島もなくお断りされてしまいました。

『だったら先に教えてくれよ・・・』と毒づきながら、申込人にはひたすら平謝りです。

そして結局は社長に事情を話し、管理の継続を辞退させていただくことにしました。

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管理会社変更のトラブルまとめ

ここまでお話して来たように、賃貸の管理には業界ならではの様々な事情があるものです。

どちらかと言えば、「不動産業界内のあるある」的な体験談であり、大家さんサイドには直接係わりのないことかもしれませんが、知っておいて損はないお話かと思いましたので、敢えて記事にしてみました。

なお、現役で賃貸管理業をされている方の中には、私以上に「業界内のゴタゴタに迷惑している」という方も少なくないことと思います。

確かに、お仕事である以上は様々な軋轢が生まれのは致し方ありませんが、「もう少しビジネスライクな不動産屋さん同士の関係を構築した方が業界全体のプラスになるのでは・・・」というのが、私の正直な感想です。

ではこれにて、賃貸管理会社変更のトラブル始末記を締め括らせていただきたいと思います。