これまで本ブログでは、「賃貸管理会社の選び方」や「管理会社の仕事内容」などについての記事をお届けしてまいりました。

そして、こうした記事をご覧いただく内に「管理会社の変更が必要だ!」というお考えに至った方もおられることでしょう。

そこで本日は「賃貸管理会社変更手続きについて解説いたします!」と題して、管理会社を変更する際の手順や注意点のご説明、そして管理人が経験した管理会社変更トラブルの体験記をお届けしてみたいと思います!

賃貸管理会社変更

 

賃貸管理会社変更の流れ

ではまず最初に、賃貸管理会社を変更する流れについてお話ししていきましょう。

管理会社の変更に当たっては

  1. 変更する管理会社の選定
  2. 新たな管理会社との打ち合わせ
  3. 旧管理会社への管理契約解約予告
  4. 新管理会社との管理委託契約の締結
  5. 旧管理会社と新管理会社間での引継ぎ
  6. 入居者への管理会社変更通知の発送

以上の流れで手続きが進められるのが一般的です。

そして「管理会社を変更しよう」と思い立った際に、まず行うべきなのが新たに管理を委託する会社の選定作業となります。

なお、管理会社選びに際しては

  • 管理業務に注力している会社を選ぶ
  • 管理会社の実績の確認
  • 人員数と仕事量に余裕のある会社を選ぶ
  • 地域に根差した企業を選ぶ
  • 新規募集時のノウハウが確立した会社を選ぶ

といった基本的な事項から、より応用的なチェックポイントが複数存在しますが、その詳細については別記事「賃貸管理会社の選び方について解説いたします!」をご参照いただければと思います。

そして、管理会社の候補を見付けたなら

  • どのような管理形態で委託を行うか(入金管理、契約管理等)
  • 委託する各業務の具体的な内容
  • 賃貸保証会社等の引継ぎ等はどうなるか
  • 報酬額をいくらにするか

などについての打ち合わせを行い、納得できる内容であるならば、旧管理会社へ連絡を入れて「管理委託契約の解約予告」を行うことになります。

近年では管理委託契約に関して契約書を取り交わすの一般的であり、契約書には解約に際して「何か月前までに予告を行う」という条項が定められているはずですので、その定めに従って解約予告を行う訳です。

なお、この段階になって旧管理会社から「条件等を見直すので考え直して欲しい」との提案を受ける場合もありますので、新管理会社との契約締結は旧管理会社への解約予告が完了してからにするべきでしょう。

こうして新管理会社との管理委託契約が締結されれば、後は新・旧管理会社間での引継ぎが行われた後、入居者に対して管理会社変更の通知がなされ、管理会社変更手続きが完了することになります。

管理会社変更時のポイントと注意点

さて、管理会社を変更する際には

  • 旧管理会社としっかりと話し合う
  • 新・旧管理会社の橋渡しは大家が行う
  • 賃貸保証会社の引継ぎを上手にこなす
  • 問題のある入居者等を事前に伝える
  • 建物の問題点や修繕履歴等を事前に伝える
  • 管理費の安すぎる会社には依頼を行わない

以上のようなポイントと注意点が存在します。

まず重要なことは、オーナー様と現在依頼を行っている管理会社とがしっかり話し合った末に、「管理を任せることができない」という結論に至っているのかという点です。

収益物件の運用を行っていると「管理会社の対応に不満を感じる」ことはよくありますが、『それが本当に管理会社の怠慢等によるものであるのか、あるいは不可抗力によるものであるのか』の判断は意外に難しいところもあります。

こうした誤解の積み重ねが管理会社変更の動機である場合には、優れた管理会社を自ら除外することになりますし、管理会社を変えても同じことの繰り返しになるはずです。

また実際に管理会社の変更を行う際の解約予告については新管理会社へ任せることなく、大家さんが自ら行うのがおすすめです。

前項でもお話しした通り、この解約予告の場で旧管理会社から新たな提案を受けられる場合もあるでしょうし、管理を切られるにしても依頼者本人から申し出があるのと、新管理会社から通知を受けるのでは、その印象に天と地ほどの差が生じるはずです。

そして最終的には「新・旧管理会社間での引継ぎ作業」が必須となりますから、大家さんとしては『お互いにやりやすい環境』を提供すべきでしょう。

さて、管理会社変更における実務上の問題点となるのが「賃貸保証会社の引継ぎ」となります。

管理会社は賃貸保証会社と代理店契約を締結することで、保証契約の窓口としての業務を行うことができますが、どの保証会社の代理店になっているかは管理会社ごとに異なっているのが通常です。

よって、管理会社の変更に当たっては

  • 旧管理会社で加入した保証契約の更新が、新管理会社ではできない
  • 新管理会社が代理店になっている保証会社に申し込んだら、審査に落ちた

というトラブルが意外に少なくありません。

こうした事態を回避するためには、管理会社変更前の相談の段階で「保証会社の引継ぎ」について十分に打ち合わせを行っておく必要があります。

※近年では保証契約の更新手続きを保証会社が独自に行うケースも多いですし、新たに保証会社の代理店になるのに費用が発生することは滅多にありませんので、新管理会社の対応次第でトラブルを回避できることも多いでしょう。

なお、新管理会社と管理内容の打ち合わせをする際には「問題のある入居者」や「建物の問題点、修繕履歴」等を事前に伝えておくことが重要です。

ヘヴィな滞納者やクレーマーが入居していることが事前にわかっていれば、その労力に合わせた適切な管理費の提案が可能となりますが、こうした事実を伏せたまま管理委託契約を締結することはトラブル発生の大きな原因となります。

また、既に雨漏り等の問題が発生しているなら、こちらも同様の理由で事前に知っておきたいところですし、これまでの修繕履歴を示してもらえれば、より適切な管理費の価格を提案することが可能となるはずです。

そして、こうした事実を全て伝えた上でも「他の管理会社候補よりも圧倒的に安価な管理費を提案してくる会社」には注意が必要です。

賃貸物件の管理にはそれなりのマンパワーが必要になりますから、群を抜いて安い管理費を提案してくる管理会社については『何か訳がある』と思って接するべきでしょう。

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賃貸管理会社変更のトラブル始末記

さてここからは、管理人が実際に体験した賃貸管理会社変更に係わるトラブル始末記を2本お届けしてまいりましょう。

「抜いた」「抜かない」のトラブル

賃貸管理会社変更トラブルと聞いて、「一体何のことだろう?」と首を傾げた方も少なくないことと思います。

以前の記事でも申し上げましたが、賃貸物件の管理報酬は不動産屋さんにとって貴重な固定収入源です。(他の不動産屋さんが管理する物件の空室にお客様を紹介する「客付け仕事」は収入が安定しないため)

よって、賃貸管理をメインにしている会社さんにとって「現在管理している物件を他の会社に取られる(管理会社を変更される)という事態は絶対に許せないこと」となります。

しかしながら、管理の質が悪かったり、何時まで経っても空室が埋まらないとなれば、オーナー様も思わず「管理会社を変えようか・・・」などという想いに駆られてしまうものです。

もちろん、依頼主は大家さんなのですから「管理委託に伴う契約」に違反しない限りは、自由に委託先を変えることができるのですが、

不動産業界ではこうして管理を外された業者が「抜かれた!(管理の仕事を横取りされた)」などと大騒ぎをするケースも珍しくありません。

そこでまずは、「抜いた・抜かれた」というお話の経験談を披露させていただきましょう。

 

ある時、以前よりお付き合いのある物件オーナー様が、突然我が社にご来店されました。

その方は地元では有名な資産家であり、保有する賃貸マンション、アパートはかなりの数におよびます。

ちなみに、私の会社もその中の数件の管理を任されていたのですが、今回のご用件は「他の業者に管理を委託している物件を、今後は当社に任せたい」というのです。

そして、これまで管理をして来た業者さんの名前を尋ねてみれば、この界隈では何かと悪い噂を耳にする賃貸管理メインの業者さんでした。

とは言え、オーナーからの正式な依頼ですし、これまでのお付き合い(他の物件の管理を任されていた経緯)を考えれば断れる訳がありません。

そこで、「従前の不動産会社さんとの管理契約に違反しないこと」、そして「大家さん自ら、現在の管理会社へ委託先を変更する旨の通達をしていただく」ことを条件に、この仕事を引き受けました。

そして数日が経過し、『そろそろ旧管理会社と打ち合わせをしなれば・・・』と考えていた矢先、突然当社に顔を真っ赤に紅潮させたおっさんが現れます。

そう、このおっさんこそ管理を切られた不動産屋さんの社長です。

物件担当者が私であることを聞いていたらしく、名指しで私を呼び出すと、その後は罵詈雑言の嵐が吹き荒れます。

30分以上文句を言われ、「この街で商売ができると思うなよ!」という捨て台詞を残して帰って行きました。

もちろんこちらのやり方に落ち度は無かったので反省する点はありませんが、業界の友人と飲みにいくと時折「●●不動産の社長(怒鳴り込んで来た人物)が君の悪口を言いふらしていたよ・・・」などという情報を耳にいたします。

この手のことは日常茶飯事なのですが、ちょっぴり切ない気持ちになる出来事でした。

恐怖の重複管理委託大家さん

次のお話は、単なる管理会社変更とは「趣を異にするもの」かもしれませんが、こちらも合わせてお話しさせてください。

この案件は、私が勤める会社の社長より「この件はお前に任せる」と降って来たお仕事です。

何でも社長の個人的な知り合いである大家さんが、賃貸物件の管理を我が社に任せたいとのオフォーをして来たといいます。

なお、社長直々の仕事である以上は断ることもできませんので、まずはその大家さんへの「ご挨拶」と「物件の下見」に行ってみますが、そこには驚くべき光景が展開されていました。

対象物件は築十年そこそこの綺麗なアパートなのですが、敷地のブロック塀フェンスに大手賃貸系不動産屋さん3社の看板が交互に10枚以上貼られていたのです。

あまりの光景に『これは何事だ?』と思い、大家さんに問い質してみると「なかなか部屋が決まらないから、3社にそれぞれ新規募集の依頼を掛けてしまった」と悪びれる様子もありません。

ちなみに看板を貼っていた3社は、テレビでもCMを打つくらいの大手同士ですから、「ライバル会社に負ける訳にはいかない」と熱い闘志を煮えたぎらせていたのでしょう。

そして彼らの意地の張り合いが、あの交互に並んだ看板の応酬に繋がったようです。

このようにオーナー様の中には、お部屋が決まらないからと言って複数の不動産会社に新規入居者募集を掛ける方も少なくありませんが、これはむしろ逆効果となるように思えます。

不動産会社も新規の募集に当たっては、広告費を掛けて宣伝活動を行いますが、他の会社でも募集を掛けていれば「その広告費が回収できる可能性は非常に低い」という判断になってしまうため、積極的な宣伝活動を控えるのが通常です。

よって、何社に頼んでも「どうせ他の会社で決まるんでしょ」とタカを括られ、真剣な募集活動をして貰えない結果となるでしょう。

なお、今回の案件については「社長のお知り合い」ということなので、こうした業界のセオリーもお伝えしましたが、どうしても多重依頼を止める気はないようです。

その上、当社にも重ねて「入居者募集をして欲しい」の一点張りなので、渋々ご依頼を受けることにしました。

但し、先程ご説明した事情もありますので『それなりの募集活動』しか行っていなかったのですが、こんな時に限って当社へお部屋探しにご来店されたお客様が「この物件にお申し込みを入れたい」と言い出したのです。

正直、少々嫌な予感はしていたのですが、例の大家さんに電話をしてみると「昨日、他社から申し込みがあったんだよね・・・」と取り付く島もなくお断りされてしまいました。

『だったら先に教えてくれよ・・・』と毒づきながら、申込人にはひたすら平謝りです。

そして結局は社長に事情を話し、管理の継続を辞退させていただくことにしました。

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賃貸管理会社変更手続きについて解説まとめ

さてここまで、賃貸管理会社変更手続きをテーマにお話をしてまいりました。

毎月の賃料収入の中から管理費を支払っていると、「管理会社なのだから、もう少し頑張って欲しい」などと思うものですが、実際に管理会社の立場に立ってみないとわからない問題も決して少なくないのが実情です。

一方、管理会社の中にはあからさまに手を抜いた業務を行う、質の悪い業者も少なくありませんので、こうした業者を見分ける技量も物件オーナー様には求められることになるでしょう。

そして本ブログがそんな悩めるオーナー様の一助となれば、管理人としては望外の喜びです。

ではこれにて、「賃貸管理会社変更手続きについて解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。