マイホームを購入する際に『旦那様一人では住宅ローンが組みきれない』という方も多いはずですし、『夫婦の家なのだから少しは資金を提供したい』と考える奥様も多いことと思います。

そして、こうしたケースにおいては物件の権利関係が「夫婦の共有物」という扱いになりますが、いざ物件の購入を前に『果たしてこうした購入の仕方で、後々問題が生じることは無いのだろうか』と不安になる方も居られるはずです。

そこで本日は「マイホーム共有名義のデメリット・メリットを解説いたします!」と題して、住宅の共同購入についてお話ししてみたいと思います。

マイホーム共有名義のデメリット・メリット

 

共有名義での購入とは

さて、具体的な共有のメリット・デメリットをご紹介する前に、まずは「共同名義での物件購入とは一体どのような取引形態・権利関係となるのか」という点から解説してみましょう。

ご存じの通り、不動産の売買は「売主に売買代金を支払い、買主に所有権の移転登記を行うこと」で取引が完了します。

そして、この所有権の移転が1人の方に行われた状態を「単独名義」と呼ぶのに対して、

複数人(2人以上)が物件の所有者となっている状態を「共有名義」

と称しているのです。

また、共有名義で物件を購入するということは、本来100%である所有権を「70%・30%」「80%・20%」といった具合に、異なる人間に分割して移転することになりますが、こうした所有権の割合のことを「持分(もちぶん)」と呼んでいます。

なお共有名義で物件を購入する際には、売買契約にも「共有で購入する旨」を記載しなければなりませんので、事前に共有者同士(夫婦間など)で「共有とするか否か」を協議しておく必要があるでしょう。

更に、それぞれの買主が取得する「持分の割合」については

自由に取り決めることができず、実際に購入資金をどれだけ負担したかによって決定する

という点にも注意が必要です。

ちなみに、実際に負担した資金以上の持分を取得した場合には、後々「贈与」として扱われる可能性もありますのでお気を付けください。

但し、「誰がいくら購入資金を負担するか」については売買契約時に取り決めておく必要はなく、決済(引渡し)前までに登記を担当する司法書士に『負担する金額と希望する持分』を伝えておけば問題はありません。

マイホーム共有名義のメリット

ではここからは、具体的に共有でのマイホーム購入の利点を見て行きましょう。

夫婦それぞれが住宅ローン減税を受けられる

我が国には、住宅の供給を促進するための「住宅ローン控除」という制度が存在しています。

そしてこの減税制度は「住宅ローンを利用している者、1人1人に適用されるもの」となっていますので、

夫婦が各々が住宅ローンを組んだ場合には『個々に控除の恩恵に預かることができる』

という状態になるのです。

なお現在の税制では、最大13年間で約450万円の減税が受けられますから、夫婦2人ならば約900万円もの減税効果が見込めることとなります。(2024年現在)

売却時も有利に

そしてもう一点有利になるのが、住宅を売却する際の税制優遇についてです。

不動産売却時の減税措置には様々な種類がありますが、その中でも非常に効果が大きいとされるのがマイホームを売却する際に生じた所得に対して、最大で3000万円の控除を受けることができる制度となります。

実はこの制度についても『持分を持つ者にそれぞれ適用されるルール』になっていますから、

夫婦2人で売却するならば控除の上限も2倍の6000万円に跳ね上がる

こととなるのです。

なお現在は不動産価格が上昇傾向にありますので、都心の一等地などに物件をお持ちの方にとっては、これは非常に嬉しいメリットとなることでしょう。

相続税対策に

旦那様が単独で不動産の所有権を保有している場合、ご主人が亡くなれば、当然ながら資産全てが相続税の課税対象となってしまいます。

これに対して、

所有権を夫婦で共有しているのであれば、あくまでも「亡くなった方が持っていた持分のみ」が課税対象

となりますから、地価の高いエリアなどでは有効な相続税対策となるはずです。

勝手な借入を抑止できる

不動産の実務をこなしていると「家の持ち主である旦那様が勝手に自宅を担保に入れて、借金を重ねていた」などの事例に遭遇することも少なくありません。

その点、共有名義になっていれば

こうした借入れはできません(共有者に無断で自宅を担保提供することは困難)

から、『パートナーの金銭面が今一つ信用できない』という方には見逃せない利点となるでしょう。

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共有名義のデメリット

マイホームの共同購入のメリットに続いて、ここからは共有名義の問題点をご紹介して行きます。

自由な売却ができない

ここまでお話しして来たように、共有名義でのマイホーム購入は実に大きなメリットをもたらすことになりますが、その一方で甚大なデメリットも付いて回ります。

例えば売却などに際して、

共有者の内1人でも同意しなければ、「売買は不成立」となり売却は不可能

となってしまうでしょう。

さて、このようなお話をすると「夫婦仲が良いからそんな心配はない」と思われるかもしれませんが、たとえ仲睦まじい夫婦でも『売却金額にパートナーが納得せず契約ができないケース』が現実にありますから、この点には注意が必要となります。

離婚の際に面倒

どんなに努力をしていても、夫婦には時として「離婚をせざるを得ない状況となる」こともあるでしょう。

こうした場合、共有財産があると何かとトラブルに発展するものです。

均等に財産を分けるにしても、前項でご説明したように

両者の合意が無ければ売却して現金化することはできませんし、顔も見たくない相手と売買の手続きを進めて行くのは精神的に非常に厳しい

ことは間違いないでしょう。

よって、マイホームの購入に際しては「最悪のケース」も充分に想定した上で共同名義を選択するべきです。

なお、このように共有者同士で売却の条件が整わない場合には

  • どちらか一方が現金で持分を買い取る
  • 自分の持分を単体で第三者へ売却する
  • 訴訟を起こして共有物分割請求を行う

などの方法で解決が図られることになります。

但し、持分の買取りにはそれなりの資力が必要となりますし、第三者への売却は「持分の評価額が非常に安価になる可能性が高い」のが実情です。

また、訴訟を起こして共有物分割請求が認められれば、売却に応じない相手方に持分を相当対価で買い取らせたり、裁判所の命令に基づいて物件の売却(競売)を行うことが可能となりますが、

相手方が物件に居住中であり、資力に乏しい場合には共有物分割請求が認められないケースもありますので注意が必要でしょう。

相続発生時にトラブルになることも

こちらもまた「メリットの裏返し」となりますが、相続発生時に『共有財産であるが故のトラブル』に発展するケースも少なくありません。

例えば、自宅について1/2ずつ持分を持つ夫婦の旦那様が亡くなり、相続対象の持分を奥様と子供の両者が相続したとします。

そしてその後、子供が亡くなり「亡くなった子供の妻が持分の相続人となる」ような事態が発生すると、問題は少々厄介な方向に進んで行く可能性が出てきますよね。

また、共有名義となる夫婦にそれぞれ離婚歴があり、連れ子がいるというケースでは問題は更に深刻です。

この場合、たとえ2人が結婚していても連れ子に対して「養子縁組」をしていなければ『子供には相続権は発生しません』から、夫婦のどちらかが亡くなった場合にその親兄弟が持分を相続することになってしまいますし、過去に離婚した相手との間に別の子供が居れば、その子にも相続権が発生することになるでしょう。

固定資産税等の按分が面倒

共有名義で物件を保有していても固定資産税等を徴収する自治体は、どちらか一方にしか税金の請求を行わないのが通常です。

なお、このようなお話をすると「それくらい1人で負担するよ!」とも思われるかもしれませんが、固定資産税等が高額なエリアであれば、この一方負担が贈与とみなされてしまう可能性もありますから、この点にも注意が必要でしょう。

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マイホーム共有の利点・問題点まとめ

このようにマイホームを共有名義で購入する際には「様々なメリット・デメリットが付きまとう」のが現実です。

そしてマイナス面を考えれば「共有にしないのがベスト」なのでしょうが、そのリスクを差し引いても共有名義による「メリットは非常に大きい」ですから、ここは実に頭を悩まされるところでしょう。

なお、不動産屋さん的な目線としては夫婦関係に少しでも不安がある場合には、共有名義での物件購入を控えるのがおすすめです。

但し資金計画の関係上、どうしても共有とせざるを得ない方も多いでしょうから、こうした場合には一か八か勝負に出てみるしかありません。

また、「マイホームの共有が離婚の歯止めになった」というお話も耳にしたこともありますから、自分への戒めとして共有名義にしてみるのも一つの方法と言えるでしょう。

何はともあれ、マイホームの購入は人生の一大イベントとなりますから、後悔の無いように「熟慮した上で判断すること」をお勧めいたします。

ではこれにて、「マイホーム共有名義のデメリット・メリットを解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。