近年、世間の関心が高まっているのが「環境に関する問題」です。
持続可能な社会を目指して様々な取り組みが行われていますが、最も身近に環境問題を考えさせられるのは「地域の緑化について」となるでしょう。
そこで本日は「都市緑地法とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、都市緑地法の概要や不動産取引おける注意点などについてお話ししていきたいと思います。

都市緑地法の概要
都市緑地法とは、良好な生活環境を維持するべく都市部の緑地を保全し、更なる緑化を推進することを目的に施行された法律となります。
なお、都市緑地法の前身となる「都市緑地保全法」は1973年(昭和48年)からある古い法律でしたが、2004年(平成29年)に改正が行われ「都市緑地法」へとリニューアルされることになりました。
そして、2024年(令和6年)には更なる改正が加えられ、
- 国主導による戦略的な都市緑地の確保
- 貴重な都市緑地の積極的な保全・更新
- 緑と調和した都市環境整備への民間投資の呼び込み
引用元: 国土交通省HP
といった内容まで盛り込まれた「強力な緑化推進法」へと進化を遂げたのです。
さて、ここで気になるのが「都市緑地法がどのようにして緑化を推し進めていくか」という点であるかと思いますが、この法律においては
- 特別緑地保全地区
- 緑地保全地域
- 緑化地域
- 緑地協定が定められた地域
という4つの制限区域を定めることで、その目的達成を目指すこととなります。
ちなみに、この4つのエリアにおいては各々異なる「行為制限」等が定められることになりますので、次項で詳しく解説してまいりましょう。
都市緑地法の4つの制限区域
ではここから、具体的に4つの制限区域について解説を始めてまいりますが、ここでご注意いただきたいのが「首都圏近郊緑地保全法」と「近畿圏の保全区域の整備に関する法律」という2つの法律との関係についてとなります。
実はこの2つの法律は、今回ご紹介する都市緑地法の「都会版」とも言える法律であり、
- 首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・群馬県・栃木県・茨城県・山梨県)
- 近畿圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県・福井県・三重県)
上記のエリア内にて非常によく似た制限区域を定めることができるのです。
よって、一つの都府県内に
「都市緑地法」と「首都圏近郊緑地保全法(または近畿圏の保全区域の整備に関する法律)」による異なる2つの制限区域が存在するケースもあります
ので、この点には十分にご注意ください。
また、以下で解説する緑地保全地域、特別緑地保全地区、緑化地域については、都市緑地法の制限区域ではあるものの、都市計画法で定める「地域地区」である点にもご留意いただければと思います。
特別緑地保全地区
特別緑地保全地区は緑地の自然環境を凍結的に保全することを目的に設定される、非常に厳しい制限区域であり、神社や寺院、城跡などがその対象となるケースが多いようです。
ちなみに特別緑地保全地区の指定を行うのは「市町村」であり、地域地区として計画決定を行います。
※指定区域が10ha以上であり、複数の区域に跨るものは都道府県が指定を行います。
そして、この区域内においては
- 建築物その他工作物の新築、改築又は増築
- 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の採掘その他の土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 水面の埋立て又は干拓
引用元: 国土交通省HP
などの行為に際して、都道府県知事(市の区域内においては市長)の許可が必要となります。
また、特別緑地保全地区の指定を受けたことにより土地所有者が大きな損害を被る場合には、自治体等への「土地の買い上げ申請」を行うことが可能です。
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緑地保全地域
一定大規模の緑地(里山など)に対して、環境保護と土地利用が両立可能となる「穏やか行為制限」を行う地域となります。
なお、地域の指定を行うのは都道府県知事(市の区域内においては市長)です。
そして、緑地保全地域においては
- 建築物その他工作物の新築、改築又は増築
- 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の採掘その他の土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 水面の埋立て又は干拓
- 屋外における土石、廃棄物又は再生資源の堆積
引用元: 国土交通省HP
などの行為に際して、工事着手の30日前までに都道府県知事(市の区域内においては市長)への届出をしなければなりません。
また、届出の内容が緑地保全計画の基準に反する場合には、工事着手前に「行為の禁止」等の措置を講じることが可能です。
緑化地域
これまで解説してきた制限区域が「既に存在する緑地」を保護するものであったのに対して、
『緑化地域』は緑が不足しているエリアで「一定規模以上の建物の新築・増築」を行う際に、敷地面積に対して『一定の割合の緑化が義務付けられた地域』
となります。
そして、緑化地域の指定は市町村が行うルールとなっており、地域地区として決定されます。
なお、緑化が義務付けられるのは
- 敷地面積が原則1000㎡以上の建築物の新築又は増築(市町村は条例で敷地面積の対象規模を300㎡まで引き下げ可能)
- 増築については、従前の床面積の2割以上の増築を行う場合
引用元: 国土交通省HP
などが対象です。
緑地協定が定められた地域
ここまでご紹介してきた制限区域は『都市計画法における地域地区によって定められるもの』でしたが、本項で解説する緑地協定は「土地所有者等の合意によって成立する私的な契約(私法上の制限)を締結する制度」となります。
但し、住民同士の合意で自由に協定を結ぶことはできず、その効力を発生させるには市町村長の認可が必要です。
なお、以前の記事で解説した建築協定と同様に
- 全員協定/複数の土地所有者が共同で成立させる協定
- 一人協定/戸建て販売業者等が開発に際して立ち上げる協定
などのパターンが存在します。
また、協定で定める内容については
- 緑地協定の目的となる土地の区域
- 保全または植栽する樹木等の種類
- 保全または植栽する樹木等の場所
- 保全または設置するかき又はさくの構造
- その他緑地の保全または緑化に関する事項
- 緑地協定の有効期間(5年以上30年未満)
- 緑地協定に違反した場合の措置
引用元: 国土交通省HP
以上のような内容となるでしょう。
都市緑地法と不動産取引
では、ここまで解説してきた「4つの制限エリア」は不動産取引にどのような影響を及ぼすのでしょう。
まず、不動産売買の契約前に行われる重要事項説明においては、
対象物件が4つの制限区域(特別緑地保全地区、緑地保全地域、緑化地域、緑地協定内)のいずれかに存している場合には、必ずその事実を告知
しなければなりません。
なお、『制限区域が何処にあるか』については国土交通省HP「都市緑化データベース」にて調査が可能です。
ちなみに、「特別緑地保全地区」「緑地保全地域」については規模の大きな緑地や寺社仏閣などが対象となりますので、不動産取引において遭遇する確率は非常に低いと言えるでしょう。
一方、「緑化地域」と「緑地協定」については、その制限が土地利用に際して大きな影響を及ぼすケースも多く、制限のない物件と比べて売買価格が下落する可能性は十分にあるかと思われます。
但し、「緑化地域」についてはかなり広い範囲でエリア指定されているケースが多いため、『この地域で物件を購入するなら一定面積の緑化は当たり前』という認識になっている場合も多いでしょうし、
「良好な住環境が維持できる」という意味ではプラスの要素と判断されることも少なくないはずです。
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都市緑地法とは?わかりやすく解説まとめ
さてここまで、都市緑地法をテーマに解説を行ってまいりました。
法律によって土地利用に様々な制限を課せられることは、不動産取引に際して「非常に煩わしい」と感じることも多いでしょうが、緑地を守ることは「我が国の未来の住環境を守ること同義」となりますから、是非ご協力をお願したいところです。
ではこれにて、「都市緑地法とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。