現在、我が国は様々な政治的問題に直面していますが、その中でも対応が急がれるのが安全保障の問題となります。

世界情勢に目を向ければ「他国からの侵攻を受ける」という事態は決して絵空事ではありませんし、日本においても有事に備えた『重要土地等調査法』という法律が施行されましたので、私たち一般の人間もこの問題から決して目を背けてはならないです。

そこで本日は「重要土地等調査法とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、安全保障に大きな役割を果たす特別注視区域などの概要についてお話ししていきたいと思います。

重要土地等調査法とは

 

重要土地等調査法の概要

重要土地等調査法は正式名称を「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」と言い、2022年(令和4年)9月20日に施行された法律となります。

その非常に長い名称を読んでも「どういう意味だろう?」と首をかしげてしまう方が多いことと思いますが、端的に申し上げれば

安全保障上、重要な施設や国境となっている離島の土地利用に一定の制限を行う法律

ということになるでしょう。

皆様もご存じの通り、日本では外国人も自由に土地の購入が可能です。

そして、このような制度化においては自衛隊の基地や米軍基地の周辺の土地を他国に買い占められ、巨大な建造物などを建てられることにより「有事の防衛活動に支障が出る」ことだってあり得るでしょう。

一方、我が国は島国となりますから国境は自ずと離島が基準となりますが、これらの島を万が一にも他国に購入されては大変な損失を招くことになります。

このように国土の中には、安全保障上の重要拠点が数多く存在しており、こうした土地の売買に制限を課するのがこの法律の狙いとなる訳です。

なお具体的な制限の方法としては、

  • 注視区域
  • 特別注視区域

という区域の指定を行った上で、

土地及び建物の所有者、賃借人を対象に『氏名、住所、国籍等、そして土地の状況』の調査を行う

ことになります。

ちなみに具体的な調査の方法としては

  • 現地調査
  • 不動産の登記識別情報、住民基本台帳等の公的な資料の閲覧
  • 当事者へのヒヤリング、資料提出の要請

などが可能というルールになっています。

そしてこの調査の結果、土地の利用状況に安全保障上の問題がある判断される場合には

  • 土地の利用制限
  • 国による土地の買取り

などを行うことができるのです。

さて、ここまでの説明を聞いて「人権第一主義の日本にしてはかなり厳しい法律だなぁ」とお思いになられた方もおられるでしょうが、

土地の利用制限と言っても、まずは勧告を行った上でのこととなりますし、これにより所有者等に損失が発生した場合には補償が受けられる上、国に土地を買い取ってもらうことも可能ですから、他国の同様の制度に比べるとかなりソフトな内容と言わざるを得ません。

但し、安全保障上問題のある行為などについて国から勧告や命令が出ているにも係わらず、これを無視した場合には「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が科されることになりますから、一定の抑止力にはなるはずです。

「注視区域」および「特別注視区域」について

ここまでの解説にて重要土地等調査法の概要はご理解いただけたことと思いますので、この法律の肝となる「注視区域」と「特別注視区域」について更に掘り下げてみることにいたしましょう。

なお、『特別注視区域』が単体で指定されることは無く、「注視区域」の指定区域内で特に重要な地域がこれに指定されることになります。

注視区域

注視区域に指定されるのは

  • 重要施設の敷地の周囲おおむね1000メートルの区域内
  • 国境離島等の周辺区域で、国防上の脅威になり得る可能性のある土地等

となります。

なお、ここで言う重要施設とは

  • 防衛関係施設/自衛隊や在日米軍の基地など
  • 海上保安庁の施設/管区海上保安本部など
  • 生活関連施設/原子力発電所や空港など

以上の施設を指すことになります。

一方、国境離島等の周辺区域とは、文字通り「日本が領海等を主張する離島の周辺」や「国境ではないが、その付近で日本国民が生活をしている島」などがこれに含まれることになるでしょう。

特別注視区域

さて、前項にて解説した注視区域の中でも

  • 特に重要性が高く
  • 容易に安全保障時の脅威となり得る

ものについては 特定重要施設、特定国境離島等として『特別注視区域』の指定が可能となります。

なお、特別注視区域の具体例としては

  • 与那国島(那国町)の一部(沖縄県)
  • 小笠原村の一部(東京都)
  • 座間駐屯地(神奈川県)

などが挙げられます。

また、この特別注視区域における最重要ルールとなるのが、

「200㎡以上の土地」「床面積200㎡以上の建物」を売買する際には、契約締結後2週間以内に売主・買主双方が内閣府に届出を行う必要がある

というものです。

※届出る内容は「売主・買主の氏名、住所、国籍」、「物件の所在地、面積、利用目的」等となります。

そして、「届出を行わない売買」や「虚偽の届出」を行った者には6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金という厳しいペナルティーが科されることになります。

ちなみに、届出の方法としては郵送以外にも、ネット上での申請が可能です。

こうして届出を受けた国は対象の不動産に対して、「調査」や「物件買取り」を行うことで安全保障上の脅威を取り除いていくことになります。

重要土地等調査法と不動産取引

これまでの解説にて重要土地等調査法の要点は十分に把握していただけたことと思いますので、ここでは不動産取引と関係性をテーマにお話をさせていただきます。

重要土地等調査法の施行に合わせて「宅地建物取引業法施行令等」が一部改正され、不動産売買に際して行われる重要事項説明においては

取引対象が『特別注視区域内』に存する場合には、その制限の内容等について説明を行うルール

が追加されることになりました。

なお、特別注視区域内で届出が必要になるのは「面積200㎡以上の土地や建物の売買」となりますので、

賃貸の取引においては説明が不要

ということになります。

また、法律的には売買の取引であっても「注視区域内であれば説明は不要」ということになりますが、実務においてはその旨を重要事項に記載している業者が多いようです。

ちなみに、取引対象が「注視区域」や「特別注視区域」に存しているか否かについては、内閣府のホームページにて確認が可能となっています。

そして実際に全国の指定区域をご確認してみると、「特別注視区域内」は自衛隊等の防衛施設や国境離島等の周辺に集中していることがおわかりいただけると思いますので、実際の取引において重要土地等調査法が問題となるのは非常にレアなケースとなるはずです。

但し、届出を行わずに売買を行った場合には重いペナルティーを受けることになりますので、決して油断をしないようにご注意ください。

重要土地等調査法とは?わかりやすく解説!まとめ

さてここまで、重要土地等調査法をテーマに解説を行ってまいりました。

「安全保障上の問題」などと言うと、現実離れしたお話のような気も致しますが、世界情勢に目を向ければ『それが決して絵空事ではない』ことを思い知らされますから、日々の平和を維持するためにも不動産取引に際しては重要土地等調査法の遵守をお願いしたいところです。

ではこれにて「重要土地等調査法とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。