マイホーム選びに際して、「新築の一戸建てに住みたい!」とお考えの方の殆どが購入することとなるのが『建売住宅』となります。
そしてこのようなお話をすると、「土地を購入して、注文住宅を建てる人もいるはず!」と思われる方も多いでしょうが、現在の不動産市況においては『土地だけを購入するのは至難の業である』と言わざるを得ません。
なお、このような状態となっている理由については当ブログの過去記事「建売とは?戸建て分譲の仕組みや舞台裏を解説!」にて詳しく解説しておりますが、現在は戸建て分譲業者同士が建売用地の獲得を目指して、熾烈な競争を繰り広げている時代となっており、最早『一般の方が思うように土地を買える状況ではなくなっている』のです。
さて、このようなお話を耳にすると「では、自分の好きな間取りの戸建てを建てるこのはできないのか・・・」と落胆される方も多いかと思いますが、こうした願いを叶えてくれる「建築条件付き土地」という物件があるのをご存知でしょうか。
そこで本日は、この建築条件付き土地について解説を行ってみたいと思います。
建築条件付き土地って何だろう?
では、まず最初に「建築条件付き土地とは如何なるものであるか」という点からご説明を始めていきましょう。
「建築条件付き土地」とは、不動産業者が売主となって戸建て分譲を行う際の『販売方法の一形態』を指す言葉となります。
さて、このようにご説明すると「不動産業者が戸建てを分譲するのなら、建売なのでは?』というお声も聞こえて来そうですが、建売との最大の相違点は「販売対象が土地となっている」という点です。
ただ、土地の購入者には「一定の期間内(通常は3ヶ月以内)に、売主が指定する建築業者との間で請負契約(建物を建築するための契約)を締結する義務」が課せられ、請負契約が成就しない場合には『土地の購入契約も白紙に戻る』というルールが定められています。
そして、ここで気になるのが「何故このような複雑な取引の方法が執られるのか?」という点かと思いますが、ここには宅建業法という法律が大きく係わってきます。
実は宅建業法においては不動産業者が分譲を行う場合、建築確認(行政による建築の許可)や開発許可(宅地造成工事などへの許可)などを取得していない状態では、『広告活動も売買契約の締結も行ってはならない』と定めているのです。
なお、建築確認の取得においては物件の間取りや床面積、構造などが決定している必要がありますから、言い換えれば『不動産業者は建物の設計を自由に変更できる状態の物件を販売してはならない』ということになるでしょう。
こうしたルールができた背景には「プランの定まっていない物件が流通することによって、無用なトラブルが増加するのを防ぎたい」という意図があるのですが、戸建ての購入を希望する方の中には『自分の好みの間取りを実現させたい』という方が少なくないのも現実です。
そこで登場することになったのが「建築条件付き土地」という販売方法であり、この方式で売買することによって、宅建業法の制限を受けずにプラン変更が可能な戸建てを販売することが可能となりました。
建築条件付き土地のメリット・デメリット
ここまでの解説にて「建築条件付き土地という商品が如何なるものであるか」についてはある程度、ご理解いただけたことと思いますので、ここからはこのタイプの物件のメリットとデメリットを解説していきたい思います。
但し、一見「利点である」と思える点が「実は問題点でもあった」というケースも少なくありませんので、本項では建築条件付き土地ならでは特色を上げながらメリットとデメリットの双方をご説明していくことにいたしましょう。
自由な間取りの建物を建てることができる?
建築条件付き土地の最大のメリットは、やはり何と言っても「自分好みのカスタマイズ住宅が手に入る」という点になります。
基本的に建売住宅は「多くのお客様に気に入ってもらえる間取り」を目指すため、実に無難な間取りが多く、『寝室の面積は最小限にして、リビングを大きくしたい!』『子供の人数が多いので、面積の小さな子供部屋が複数欲しい』といった要望を叶えるのは困難です。
しかしながら、建築条件付き土地であるからと言って「注文住宅同様の自由な設計が行えるか」と言えば、これは『否』というのが正直な答えとなります。
まず、自由な設計を阻む最大の問題が「3ヶ月以内に指定の建築会社と請負契約を結ばなければならない」というルールです。
注文住宅を建てる場合、工務店や設計士との打ち合わせには非常に長い時間を要することとなり、正直3ヶ月では「最低限の打ち合わせしかできない」というのが現実です。
また、建築会社が指定されることによって「建物の工法」や「建材、設備の仕様」についても、制限が課せられることになるでしょう。
更に、建築条件付き土地の販売に際しては「参考プラン」と「モデル価格」が示されているケースが殆どですが、この参考プランから外れた設計を選択すると法外なオプション費用を請求されることもあります。
戸建て分譲業者の殆どは、土地の仕入れに際して金融機関から借入れを行っているものですから、分譲主としては一定の期間内に販売を完了して、借入金の返済を行わなければなりません。
こうした状況の中で、手間と時間の掛かる凝った造りの建物を建てられたのでは、返済スケジュールに大きな影響が生じるため、オプション費用を高額に設定している会社も少なくないのです。(請負契約締結期限が3ヶ月となっているのも同様の理由による)
もちろん、「自由な設計で最高のマイホームを建てて欲しい」との想いの下に、良心的な事業をされている分譲主もいなくはないでしょうが、建築条件付き土地の中には『ほぼ建売と変わりない(設計上の自由が利かない)』という物件も少なくありません。
土地を割安に購入できる?
建築条件付き土地について、よく言われるのが「通常の土地(建築条件のない土地)に比べて、価格設定が割安である」という点です。
そして確かに、流通している一般的な土地物件と見比べてみると『多くの場合、これは事実』というのが結論ですが、ここにも注意すべき点があります。
建築条件付き土地では「土地の売主は分譲主」となり、建物の発注を行うのは「売主とは別の建築会社」となりますが、実際には『土地からも、建物からも分譲主は利益が確保できる状態』となっているのです。
そうとなれば「土地の値段を安価に設定して、建物代で利益が出るように価格設定をした方が、顧客に割安感を与えられる」といった考え方をする業者が出てくるのも当たり前のことでしょう。
よって、「周辺の相場よりも、建築条件付き土地の価格の方が割安である」と感じても、必ずしも得なお買い物ができる訳ではないのです。
なお、こうした事情を十分に理解した上で「土地の価格が上がっても構わないから、建築条件を外して欲しい」との要望を出してくるお客様もおられますので、資金に余裕のある方は是非交渉してみてください。
土地と建物の双方で見込んでいる利益さえ確保できれば、分譲主に損はありませんので、「土地の購入価格をアップさせる」ことで建築条件を外すことが可能なケースもあります。
不動産業者が売主であるが故の安心感
ここまでお話ししてきた通り、建築条件付き土地は不動産業者が売主であるため、分譲主が儲かるための仕掛けが随所に散りばめられています。
ただ、「不動産業者が売主であるが故に、買主が安心感を得られる」という側面があるのも、また事実です。
一般の方が売主の土地を購入して、もしも物件に隠れた欠陥(土壌汚染や権利関係の問題といった「契約不適合」)があった場合、損害賠償などを求める先は、当然ながら売主個人となります。
しかしながら、上手く補償が受けられることになっても、売主にそれだけの資力がなければ「実際には泣き寝入りするしかない」というのが実情です。
これに対して、相手方が健全な財務状態の不動産業者であれば、こうした問題が発生することはありませんし、それ以前に「引き渡し後のトラブルを回避するために、商品である土地の加工には万全を期している」という企業が殆どとなるでしょう。
※土壌汚染があれば土壌改良を行い、権利関係の問題があれば「これを解決した上での商品化する」といった意味での加工を行う。
よって、価格に不動産会社の利益が含まれいることを承知しながらも、「建売よりもそれなりに自由度が高く、不動産業者が売主であるという安心感も含めて購入するのだ」という腹づもりで建築条件付き土地を購入するのであれば、決して損な買い物ではないのです。
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建築条件付き土地と住宅ローン
では最後に、建築条件付き土地を購入する際の住宅ローンの組み方についてご説明しましょう。
まず前提として、建売物件を購入する場合とは異なり、建築条件付き土地では通常の住宅ローンを利用することはできません。(建築条件なしの土地を購入して、注文住宅を建てる場合も同様)
実は住宅ローンという金融商品は、土地と完成済みの建物が揃って初めて成立する融資の形態なのです。
そして、建築条件付き土地の売買に当たってはまず土地の引渡し(土地代金の支払い)を完了した上で、建物を建てなければなりませんので、通常の住宅ローンでは対応が不能ということになります。
ただ、こうした状況に備えて金融機関は「土地先行融資」と「つなぎ融資」という2つのタイプの金融商品を用意していますので、以下ではこの点について解説していきます。
土地先行融資
その名が示す通り、まずは土地代のみを先行して融資して、後から建物代を貸付けるタイプの商品となります。
なお、通常の住宅ローンとは貸付けの過程が異なるものの、住宅ローンの一部と位置付けられるため、特定の条件を満たせば住宅ローン控除の適用を受けることが可能です。
また、後述する「つなぎ融資」と比べて金利が安く済むのが利点ですが、土地代の融資に際しては土地への抵当権の設定が義務付けられますので、登記費用という意味では割高になるでしょう。
つなぎ融資
一方、つなぎ融資という商品は住宅ローンとは全く別物の無担保融資となります。
よって、土地代を借入れても抵当権の設定などを行う必要はない代わりに、金利が高めの設定となっているのが特徴です。
なお「土地代」や「建築工事の着手金」など、必要に応じて融資を受け、最終的に建物が完成した段階で住宅ローンへの借り換え(つなぎ融資を返済して、住宅ローンへ切り替える作業)を行うことになりますので、問題となるのは「つなぎ融資の期間に発生する高い金利」ということになるでしょう。
ちなみに、土地先行融資・つなぎ融資共に「取り扱いのない銀行」もありますし、金融機関ごとに融資の内容も異なりますので、事前にしっかりと比較検討をした上で、借入れを行う銀行を選択する必要があります。
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建築条件付き土地とは?まとめ
さてここまで、建築条件付き土地というテーマで解説を行ってまいりました。
記事をお読みになり、「建売と比べて、あまりメリットを感じられない」という思われた方も多いのではないかと思いますが、管理人としては『分譲主を吟味すれば、充分に利点を感じすることができる』と考えています。
もちろん、事業における収益性ばかりを追求している会社から物件を購入すれば、「建売と何ら変わらない」という結末を迎えるでしょうが、『建物のプランをある程度自由に変更できることで、物件に付加価値を与えたい』と考えている分譲主も間違いなく存在しますから、しっかりと売主を吟味すれば建築条件付き土地ならではのメリットを味わっていただけることと思います。
ではこれにて、「建築条件付き土地とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。