不動産業界を題材にしたドラマなどには、非常に優秀な「カリスマ営業マン」が登場するケースが多々あります。
実際に不動産会社に席を置く管理人から見ると、こうしたドラマはツッコミ所が満載なのですが、作品を見ている内に「現実世界における、できる営業マンとは如何なるタイプの人物なのだろう」などという疑問が頭をもたげてくるのでした。
そこで本日は「不動産案内のコツについて考えてみます!(売買編)」と題して、現実世界のカリスマ営業マンの秘密に迫ってみたいと思います。
できる営業マン伝説を検証
冒頭にてお話ししたドラマの世界のみならず、現実の世界においても「都市伝説なのでは?」と思ってしまうような不動産業界の逸話を耳にすることは意外に多いものです。
例えば、「電話の受話器と手をガムテープでグルグル巻きにして電話営業をさせられる」「営業圏内のあらゆる裏道に精通している営業マンがいる」などといったお話になります。
そして結論から申し上げれば、これらの逸話は都市伝説ではなく「事実」というのが真相です。
電話機ガムテープは、実際に私も目にしたことがありますし(かなり昔のお話ですが)、裏道の件もできる営業マンほど道に詳しいのは事実です。
なお、裏道に精通していることのも重要ですが、運転のスキルは更に大切であり、「道幅の狭い道路に面する物件」を案内する時にサクサクとハンドルを切り、「駐車場が止め辛い物件」でも切り返しなしで駐車が可能となれば、それだけで『道路が弱く、車庫入れが困難な物件の弱点を目立たなくする』ことができるでしょう。
また、運転に関するスキル以外にも、不動産の営業マンは成約率を上げるために「それぞれが涙ぐましい努力をしている」ものです。(他の業種の営業マンも同様かもしれませんが・・・)
例えば、あらゆる趣向のお客様とお話が盛り上がるようにと、様々なジャンルの話題を仕入れているという方もおられますし、外国人のお客さんとの成約率を上げるため、英会話や中国語の勉強をしている方もいらっしゃいますから、その努力の方向性も様々です。
ちなみに私が知る中には、あらゆる地方の方言をマスターし、対応するお客様ごとに出身地が変わるなんていう強者もいました。
ただ、ここで申し上げておきたいのは「この人は成績を上げている!」という営業マンの多くは、こうした特殊な手法に走っていない者が殆どであるということです。
では、「どのようなスタイルの営業マンが良い成績を上げているの?」ということになりますが、『できる営業マンの共通点を見付けるのは非常に困難である』というのが実情であり、残念ながらその問いに明確な答えを示すことはできません。
但し、管理人なりに「これは!」と感じる営業のポイントも無くはありませんので、ここからは『成約を勝ち取るためのコツ』をご紹介していきたいと思います。
物件案内を成功させるコツ(基本編)
ではまず最初に、物件案内における基本的な事項をまとめておきましょう。
- お客様の希望条件を的確に反映させた案内物件をチョイスする
- 案内する物件の周辺環境や競合物件をチェック
- 案内する物件自体の情報を集める
- 販売会社や仲介業者と良好なリレーションを築く
物件のご案内に際しては、まず内覧する物件を慎重に選択することが重要です。
お客様のニーズにそぐわない物件をご紹介すれば「案内に連れ出すこと自体ができない」でしょうから、これではお話にもなりません。
また、営業マンが「お客様が求めている物件の条件はこれだ!」と思い込んでいたものが、実は『真にお客様が要望する条件と異なっている』というケースは意外に多いですから、これまでお客様からヒヤリングした情報を改めて確認しながら物件のチョイスを行っていく必要があるでしょう。
なお、お客様の求める条件を全てクリアーする物件など存在するはずがありませんから、
- 妥協すべきポイントが明確になる物件/例えば「駅からの5分以内という希望条件さえ妥協すれば、他の条件は全てクリアーできる物件」などを案内先に加える
- 妥協するポイントが比較できる物件/「間取りは希望通りだが、駅からの距離は条件をクリアーできていない物件」と「駅からの距離は問題ないが、間取りが希望と異なる物件」を両方案内する
といった手法を用いることで、「お客様が物件を絞り込みやすい状態」を作っていくことが重要でしょう。
一方、ご案内する物件が決まったなら「近隣の競合物件」や、「小中学校」「病院」「最寄りのコンビニ・スーパー」などの情報はしっかりと頭に入れておくべきですし、住環境へ影響をおよぼす嫌悪施設などをチェックしておくことも重要です。
そして、お客様をご案内する以上は一度は現地を下見しておくべきですから、物件を訪れた際には現地調査のノウハウを生かして「物件の特徴や問題点」をしっかりと確認した上で、販売図面に記載された法令上の制限などについても把握しておきましょう。
ちなみに、新築物件の場合は売主業者、中古物件の場合は元付業者との関係性も良好に保つ必要がありますので、ご案内に際しては
- 事前の挨拶や手続き(内覧申込書の提出等)をしっかりと行う
- 予告したご案内時間を厳守する
- ご案内終了後の御礼の連絡を欠かさない
- 空室物件では鍵・窓の閉め忘れや、ブレーカーの下げ忘れに注意する
- 入居中物件では売主へ十分な配慮を行う
等の気遣いも忘れてはなりません。
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物件案内のコツ(応用編)
ここまでは「ご案内を行う上でのマナー」とも言うべき基本的な内容を解説してまいりましたが、ここからはより実戦的なご案内のコツをご教授してまいりましょう。
- ライバルの追随を許さない物件情報量を身に付ける
- 建売用地の情報に精通し、物件化前にご紹介を行う
- お客様を購入へ導くための「ご案内ルート」と「トークのシナリオ」を準備する
- お客様との信頼関係を築くための自分なりのノウハウを獲得する
皆様も既にご存じの通り、物件案内の主な業務は「自分が抱えているお客様に物件情報をご紹介して、現地にご案内すること」となりますが、成約を獲得するためにまず必要となるのが『高い物件情報力』となるでしょう。
そして、できる営業マンは総じて、他の追随を許さない圧倒的な物件情報量を有していることが特徴に挙げられます。
なお、未公開の建売物件の情報に精通していることはもちろんですが、時には建売用地であるとの情報が入った段階で「将来的に物件化しますよ!」と、お客様にご紹介している強者までいるのです。
そして私の知る者の中には、まだ購入する建売屋さんも決まっていない建売用地に対して商品化された際のおおよその「区割り」と「価格帯」を予想してお客様に情報を提供している上、『その予測と実際の販売条件の間に殆どブレがない』ということを自慢にしている方もいらっしゃいますから、これは文句なしの『凄腕』ですよね。
また、ご紹介する物件が決まれば、来るべきご案内に備えて綿密な準備を行うのも「できる方」の特徴となります。
「ご案内のルート」から「移動中にする雑談の内容」まで、何通りものシナリオを用意している方もおられるようです。
なお、こちらは既に実践されている方も多いとは思いますが、見せる物件に「それぞれの役割を与える」ことも重要でしょう。
例を挙げるとするならば、「日当たりが悪いが、それさえクリアーすればお客が気に入りそうな物件」がある場合には、更に日当たりの悪い物件を数軒見させた後に、本命物件を見せるといった手法です。(これを業界では「当て物」などと呼んでいます)
一方、こちらは管理人の私見となりますが、営業成績の良い営業マンほど、案内時のセールストークが少ないという特徴もあるように思います。
私の知り合いの中には、「説明こそするが、物件を褒めることなど滅諦にない」というトップセールスマンもいるのですが、確かに物件の良いところばかりを羅列する営業マンは何処か信用が置けない気もしますよね。
そして、このような営業スタイルの方が好成績を上げてくる背景には、「一生に一度の重要な買いものをするお客様にとっては、売り子ではなく、親身になって一緒にマイホームを探してくれる専門家こそが必要とされている」という事情があるのかもしれません。
このように、ただ闇雲に物件をご紹介し、褒めるのではなく、お客様との信頼関係を築きながら、「この物件に決めよう!」という意思決定をスムーズに促すシナリオを組み込んだご案内をすることが、できる営業マンに共通するスキルであるように思えます。
ある営業マンの勝利の法則
では最後に、私の師匠とも言える方が行っていた営業手法をご紹介したいと思います。
その方曰く、成約できるか否かは「ご案内に行く前のプロセスに90%以上のウエイトが占められている」と話しておられました。
よって、ご案内のアポイントを取り付けたならば入念に物件の下見を行い、当日辿る「ルートの確認」から、「どの物件でどのような話をするか」というシナリオの組み立てに至るまで、丁寧にプランを作り込んでいたようです。
また彼の事前準備は先程申し上げたような「物理的なもの」だけに止まらず、お客様との心の距離を縮めるための努力も欠かすことはありませんでした。
例えば物件紹介やご案内のアポイントを取る際にも、メールのみに頼らず「必ず電話で会話を交わすようにする」など、「ご案内までに如何に信頼を勝ち取り、人間関係を築いていくことができるか」という点にこだわっていたようです。
なお初めてのご案内で成約に至らず、長いお付き合いとなりそうなお客様に対しては、旅行などにいった際に必ずお土産を買っていったり、不動産とは無関係なお客様の仕事上の愚痴などに対しても嫌な顔一つせずに付き合い、時には共にお酒も飲みに行くというスタイルで営業を行っておりました。
そして、「お客様と営業マン」という関係を超え、まるで友人のようなお付き合いができれば、他の不動産業者に浮気をすることもありませんし、「これ以外に買う物件はありませんよ!」なんて言葉にも、素直にお客様が頷いてくれるのだそうです。
なおこの先輩は「購入客の成約率」も高かったのですが、それ以上に以前に物件を買ってくれた方からの売却依頼が途切れることなく入ってくる点も特徴であり、ここでもお客様との盤石な信頼関係が活きていたのだと思います。
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不動産案内のコツまとめ
さてここまで、「物件案内のコツ」と「できる営業マンの仕事ぶり」などをテーマにお話をしてまいりました。
不動産の営業マンといえば、「巧妙なトークが売り」というイメージをお持ちの方も多かったことと思いますが、実際には『物件に対する情報力』や『お客様の信頼を勝ち取るための努力』といった非常に地味な部分が重要になってくることをお判りいただけたことと思います。
そして、ご案内という限られた時間の中で、如何にこれらのポイントをお客様にアピールできるかが、物件案内における最大の要点となってくるのではないでしょうか。
ではこれにて、不動産案内のコツについて考える知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!