収益物件を運用する上で避けてと売れないのが、賃料の滞納リスクとなります。

なお、近年では賃貸保証会社を利用する契約が殆どとなりますが、入居希望者の中には「どうしても保証人で契約して欲しい」という方もいますし、居住年数の長い入居者は連帯保証人利用のケースも多いことでしょう。

そこで本日は「賃貸滞納の督促テクニックをご紹介いたします!」と題して、賃貸保証会社に頼れない状況での督促手法について解説してみたいと思います。

賃貸滞納の督促

 

まずは滞納を防ぐの一番大切

私も長く不動産屋さんに勤めていますが、やはり督促の作業にはなかなか厳しいものがあります。

もちろん「ネガティブな仕事である」ということのもありますが、「無いところから取りようがない」というのが最大の理由です。

なお、オーナー様の中には「やり方が生ぬるい」などということをおっしゃる方もおられますが、厳し過ぎる督促は荷物を置いたままの「夜逃げ」や「失踪」、また時には「自らの命を絶つ」といった最悪な事態を迎えることもありますから、その力加減には非常に難しいものがあります。

そこで、まず行うべきなのが「滞納をさせないための努力」となるのです。

滞納しそうな入居者とは契約しない

「そんなことは、わかりきっている!」と言われてしまいそうですが、意外にリスキーな入居者希望者を審査で通してしまっているオーナー様も多く見掛けます。

詳しくは「賃貸申し込み書類から入居者の真実を見抜く」の記事にてご説明していますが、実は申込書の内容を精査するだけでもかなりの危険予想が可能となるです。

なお、具体的な例を挙げるとすれば、

  • 勤続が短い(勤続1年未満)
  • 短期間に引っ越しを繰り返している
  • 年収が低い(収入の半分以上が賃料に充てられている等)
  • 勤務先に問題がある(会社の実態がない等)

といった状態が申込書から読み取れる場合は、入居の可否を慎重に判断するべきかと思います。

そして賃貸保証会社を利用しないケースでは、特にこの入居審査のハードルを上げる必要があるのです。

複数の連帯保証人を擁立してもらう

さて、賃貸保証会社を利用しない場合の最大のリスクは、何と言っても「賃料の滞納」となります。

よって、こうしたケースにおいては連帯保証人を擁立してもらうことになりますが、『保証人の財務状態も安心できる内容ではない』という場合も少なくありません。

そこで有効なのが「連帯保証人を複数(2人など)擁立してもらう」という方法となります。

これならば未払い賃料を回収できる可能性が飛躍的に高まりますし、複数の連帯保証人が擁立できるということは「入居希望者が周囲の人間から信頼されている証」ともなりますから、審査を通過させるか否か悩ましい申込人の選定には非常に有効な手法となるでしょう。

賃料を自動引き落としにする

在り来たりのことを書いているようですが、これがなかなかに効果的な方法となります。

初回から滞納している入居者(意図的に滞納している入居者)でない限り、賃料の支払いが滞るには何らかの原因があるものです。

なお、その原因としては「ギャンブル」であったり、「趣味にお金を注ぎ込み過ぎてしまう」など様々でしょうが、結局は『他のことにお金を使ってしまうから滞納が発生する』ことになります。

そして、こうした滞納者は「何を優先して支払いを行うべきか」を理解していない方が意外に多いものなので、賃料の支払いを自動引き落としにさせることは「その優先順位を自動的に引き上げる行為」に他なりません。

事実、賃貸保証会社の中には「賃料の口座引き落としを契約条件としている」ところもある程ですから、その効果の程は推して知るべしといったところでしょう。

なお、賃貸借契約書の特約にて「賃料の支払は口座引き落としとするものとし、契約締結後1週間以内に引き落とし手続き書類の控えを提出すること」などの文言を入れておけば、スムーズに手続きを行わせることができるはずです。

滞納したら即督促

オーナー様の中には賃料支払期限を過ぎているのにも係らず、滞納者を長らく放置される方が少なくありません。

ちなみにこれは、言うまでもなく「非常に危険な行為」となります。

不動産業界では、『3ヶ月分滞納すれば、既に回収の見込みは薄い』とまで言われますから、「支払い期日から2~3日待ったら即督促を始める」ようにしましょう。

なお、初回は手紙などでも構いませんが、以降は電話やメール、直接訪問など、滞納者に「この大家は面倒な奴だ!」と思わせることが重要です。

なお最近では、ショートメールやラインなど便利なツールも多いので、こうした手段をフルに活用したいところです。

普段から人間関係を構築する

あまり現実味が無いようにも思える手段ですが、実はかなり効果があります。

先程も申し上げた通り、たとえ賃料を滞納していても全くお金に余裕の無いという方は意外に少ないものです。

そして滞納者の中には、消費者金融やクレジットカード会社への支払いを優先しているがために、賃料までお金が回らない(賃料を後回しにしている)方が少なくありません。

そこで大切になって来るのが、日頃から挨拶をしたり、声を掛ける努力です。

「顔も見たことがない大家さん」に対する滞納は何とも思わない滞納者でも、「顔見知りには、なるべくカッコ悪いところは見せたくない」という心理が働くものですから、その点を突く訳です。

よって、保有物件が自宅から遠方にあるならともかく、家の近所にある場合には可能な限り入居者と対話をするように心掛けましょう。

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様々な督促テクニック

これまでお話しした様々な努力を重ねても滞納が発生してしまった場合には、督促を開始するしかありません。

では、実践的な督促の手法について解説して行きましょう。

滞納者との信頼関係を構築する

滞納者と相対した際には「強い言葉」で支払いを促してしまいがちですが、これはむしろ逆効果となるケースが少なくありません。

相手に強いプレッシャーを与え続けると、電話連絡や面会にも応じなくなることが多いですし、あまり追い詰めると「最悪の結果」を招くことだってあり得るでしょう。

そこで重要になるのが賃料の未払いを咎めるのではなく、「どういう事情で支払いができないのか」という理由をじっくりと聞き出し、「滞納者が抱える問題に対して親身に相談に乗ってあげる」ことです。

このようなお話をすると「何を甘いことを・・・」などと思われるかもしれませんが、まずは滞納者との人間関係、信頼関係を築いて、『この人に迷惑を掛けてはいけない』という気持ちに誘導することが、督促においては非常に重要となります。

既にお話しした通り、滞納者であっても全く生活に余裕がない者は意外に少なく、こうして信頼関係を築くことで支払いの優先順位は自然に上がっていくものですし、プロである賃貸保証会社の人間もこの手法を用いるケースが多いと聞きますから、一定の効果は期待できるはずです。

支払い条件の交渉を行う

こうして滞納者との信頼関係ができあがれば、その後は「滞納家賃の処理をどのように進めていくか」という支払い条件の交渉を進めていくことになります。

なお、ここに至るまでの話し合いにおいて滞納者の置かれた境遇や財務状況はある程度把握できているはずですから、滞納家賃について「2年間、毎月の賃料支払に1万円を上乗せして、滞納分を完済する」などといった返済計画を提案してみましょう。

もしもこうした計画に滞納者が賛同してくれるのであれば、まだ見込みはありますので返済計画を覚書などの文書に残した上で、約束が履行されるか否かを見守ることになります。

一方、「返済計画には同意できない」「そもそも話し合う気もない」というタイプの滞納者については、連帯保証人への連絡などより圧力を高めた対応を行っていくことになります。

連帯保証人への連絡

最もオーソドックスな督促の手段ですが、なかなか効果のある方法です。

まず気を付けてたいのが審査の段階で入居者とより親しい関係にある方、可能であれば親族、更には親や子供・兄弟と、なるべく血縁が近い保証人を擁立させることです。

こうした近しい関係にある者であれば、ある程に「保証人になった憶えない!」などと開き直られる可能性が下がりますし、入居者自身も『親しい人に迷惑は掛けられない』という意識が強くなります。

また単に「賃料を支払って欲しい」と伝えるだけではなく、「保証人の法的立ち位置」や「このまま行けば保証人である貴方自身を相手に訴訟を起こさなければならなくなる」といった、暗い未来をガッツリ語ることも重要です。

こうしたポイントをしっかりと押さえた上での保証人への連絡を行えば、その効果はより大きなものとなるでしょう。

内容証明の送付

連帯保証人に連絡しても、滞納が解消しない場合には内容証明を送付しましょう。

多くの大家さんが書留や配達証明で督促状を送り付けますが、私の経験上内容証明が一番効果的です。

内容証明は訴訟等に発展した場合にも十分な証拠能力を有することになりますし、これを受け取った滞納者が受ける精神的ダメージの大きさはかなりのものとなります。

ちなみに内容的には、現時点での滞納額やこれまでの経緯に加え、具体的な支払期日を記載して「期日までに支払がない場合には契約を解除する旨」も書き添えておきましょう。

なお、内容証明は同じ書式を3枚用意する必要があり、手書きはかなり大変ですが、書面の「重み」が変わりますのでパソコンではなく「手書き」で作成することをおすすめします。

更には、入居者と同時に連帯保証人へも内容証明を送付することと、発送に際しては配達証明を付加することも忘れないようにしましょう。

調停・裁判

これでもまだ滞納が解消しないのであれば、もはや法的手段に訴えるしか方法はありません。

過去の判例からみて、滞納開始から3ヶ月以上経過したところが良いタイミングとなるでしょう。

ちなみに「弁護士に依頼して訴訟を起こすのが一般的」ではありますが、認定司法書士でも少額訴訟には対応できます。

また慣れた方なら、大家さんが自ら訴訟を起こすという方法もあります。

その際に気を付けたいのは、いきなり訴訟を起こすのではなく一度は調停を行うことです。

この調停の場に上手く滞納者が出席し「支払う」と確約すれば、次に滞納が発生した時には、判決無くして強制執行を行うことが可能となります。(これにより、訴訟に比べて費用も期間も大幅に圧縮することができます)

なお、強制執行の段取りについては別記事「賃料滞納時の強制執行までの流れを解説!」を参考にしていただければと思います。

督促会社の利用

前項の内容をお読みいただいて「裁判はちょっと・・・」という方には、賃料の督促を専門に行う業者を利用するという手もあります。

ちなみに「督促業務を請け負う会社」は何社かありますので、ネットで検索すれば直ぐにヒットするはずです。

なお、督促業務を依頼した際の「料金システム」としては回収に成功した賃料の10%~30%を報酬として支払うといった料金形態が一般的で、なかなか高い回収率を誇る会社もあります。

また、このようなお話をすると「怖い方々が取り立てに行く」のを想像してしまいますが、実際には警察や消費者金融のOBが業務に当たることとなりますから、コンプライアンスを守りながらも、しっかり成果を上げてくれるはずです。

そして、いよいよ回収が不能となれば訴訟の手続きも丸投げできますから、回収会社の利用はかなりおすすめの手段となります。

※あくまでも原告は貸主となりますが、弁護士の手配等は督促会社が行ってくれるのが一般的です。

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賃貸滞納の督促テクニックをご紹介まとめ

さて、ここまで様々な賃貸滞納の督促テクニックをご紹介してまいりました。

なお、滞納賃料の督促は非常にネガティブなお仕事ですし、決して気が進むものではありませんが、賃貸経営には避けて通れないイベントとなりますので、是非やり方だけでも頭に入れておいてください。

また、過去に一度だけ督促会社のエージェント(実際に回収を行う実戦部隊)とお話をしたことがありますが、本文中でも触れた通り最も有効な督促方法は『滞納者と人間関係を構築すること』だそうです。

つまり高圧的に支払いを迫るよりも、親身に相談に乗りつつ「この人は自分の味方である」と滞納者に思わせることが、滞納解消の突破口となると話しておられました。

そして、こうした関係性が築ければ、退去を迫る際にも「とにかく物件を引き払って身の丈に合った家賃の部屋を借りるのが、大家のみならず、入居者にとっても幸せになる道である」といった説得がしっかりと滞納者の心に響くようになるのだそうです。

やはり何をやるにしても、不動産において「人と人の関わりが何よりも大切」ということなのでしょう。

ではこれにて、「貸滞納の督促テクニックをご紹介いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。