アパートや賃貸マンションの管理を行っていると、実に様々なクレームが舞い込んで来るものです。
「設備の故障」に「近隣の騒音問題」などその枚挙には暇がありませんが、その中でも非常に発生件数が多いのが下水配管の「つまり」などによるトラブルとなります。
そこで本日は、「賃貸排水管トラブルについて解説いたします!」と題して、賃貸物件における下水管の不具合を巡る問題の概要や法的な取り扱い、そして私が実際に経験した配管問題の顛末をレポートさせていただきたいと思います。
賃貸排水管トラブルとは
冒頭でも申し上げた通り、賃貸物件で発生するトラブルの中でも「排水管の不具合」は色々な意味で厄介な問題となります。
そこで本項では、賃貸排水管トラブル概要について解説していきたいと思います。
排水管トラブルの事例と原因
さて、一口に排水管トラブルと言っても、
- 防水パンの排水パイプの外れによる漏水
- 排水口のつまりによる漏水
- 配管の老朽化による漏水
など、様々なパターンがあるものです。
また、水道であれば一気に水が下の階に廻りますし、水道メーターを確認すれば一目で漏水であることがわかるのに対して、下水の場合は徐々に漏水の被害が拡大していく上、トイレが原因となれば床下や天井裏に汚物が撒き散らされるといった悲惨な状況に陥ることになります。
なお、こちらは上水であっても同様ですが漏水した水が下の階に漏れ出せば、パソコンなどの家財道具に被害が発生することになり、保証問題へと発展することも珍しくありませんので、こうした点も排水管トラブルの厄介な側面と言えるでしょう。
排水管トラブルの法的な取り扱い等
では、排水管トラブルが発生した場合の責任の所在はどの様になっているのでしょうか。
基本的な考え方としては、漏水を発生させた原因が
- 賃借人の故意過失
- 建物の老朽化やメンテナンスの不足
のどちらであるかによって、その取扱い大きく変わってきます。
賃借人の故意過失であれば、当然ながらその責任は漏水を引き起こした本人が負うこととなり、下の階の家財に被害が出た場合もその賠償責任を負うことになるでしょう。
なお、こうした事態に備えて入居者には借家人賠償保険への加入が義務付けられていますので、殆どのケースにおいては保険の適用により、問題の解決が可能です。
一方、建物の老朽化やメンテナンスの不足が原因の場合には、物件オーナーが責任を負うことになりますが、こうしたケースでは火災保険の適用外となることが多いため、大家が自腹での修繕と保証を行うことになります。(火災保険に施設賠償の特約がある場合は「保証費用」のみが保険適用となります)
そして、ここで問題となるのが「漏水の原因がはっきりしない場合」となります。
たとえば「漏水が発生して、業者が対応に当たったものの既に「つまり」が解消しており、原因が特定できない」というケースも意外にあるものです。
もちろん、下水管つまりとなれば「つまっていた異物が自然に流れていく」こともあるでしょうが、漏水を発生させた入居者が自力で異物を取り出したにも係わらず、それを黙っているというパターンもありますし、
防水パンの排水パイプをしっかり固定していなかったミスを隠蔽しているために、漏水の原因が不明のままとなっているといったケースもあるでしょう。
そして、このような状況においては「結局大家さんがすべての責任を負うしかない」という結果に終わることが殆どとなりますから、下水管の不具合は数ある賃貸物件の設備トラブルの中でも『非常に厄介なもの』として扱われることになるのです。
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排水管髪の毛のつまりに関するトラブル体験記
ではここからは、私が実際に経験した賃貸物件での下水管トラブルの顛末記をお届けしてまいりましょう。
厄介な入居者
この事件が発生したのは私がまだ「賃貸の営業マン」をしていた頃のお話であり、事件の舞台となったのは自社で保有する賃貸マンションの一室となります。
賃貸マンションのスペックとしては築20年の鉄筋コンクリート造、30世帯が入居する1Kタイプの物件であり、長期保有を目的に我が社の社長が購入したものです。
また運の良いことに購入以来1年間は満室での運用となっていたのですが、その後一室が退去することになり新たな入居者の募集を行うこととなりました。
なお、募集開始のタイミングが年明けの繁忙期と重なり、賃料設定が適切だったことも幸いして直ぐに「お申込み」が舞い込み、無事に契約・引渡しも完了します。
ちなみに借主は30代後半のOLさんであり、アパレル関係の会社にお勤めの方とのことです。
そして引っ越し後もしばらくは何事もなく生活を続けていたようなのですが、我が社の定休日明けのある日、この入居者から連絡が入ります。
さて、その連絡の内容はといえば「昨日バスタブの排水口が詰まってしまい、会社(私の会社)に一報を入れたもののお休みであった為、自分で業者を手配して工事を行った」というものでした。
その上、作業にあったた水道業者曰く「配管のつまりの原因は長年の汚れが蓄積していることによるもの」であり、「工事費用はオーナーが負担するべきだ」と言っているというのです。
その話を聞いた私は咄嗟に『何だそれ?』と思ったのですが、配管のつまりが改善してしまった以上、原因の究明もできませんので止む無く費用を負担することにしました。
なおその工事費用は「3万円」とのことですから、これはなかなかに良いお値段です。
そこで慌てて物件の修繕記録を確認してみたところ半年前に全部屋の排水管高圧洗浄が行われており、借主が主張する「長年の汚れの蓄積」というのは少々無理のある理由に思えます。(最近になって物件管理の担当者が私に変更され、この時は過去の修繕履歴を把握していませんでした)
ただ、既に請求された工事費用は支払ってしまっていましたし、今さら文句を言うのも「アレ」なので、とりあえずは配管の状況のみを改めて確認させてもらうことにしました。
そして後日、借主立会いの下でお部屋に上げてもらい水回りの状況を見せてもらうことにしましたが、お部屋の中は入居後数か月しか経過していないにも係らず既になかなかのゴミ屋敷状態となっています。
また問題のバスタブを見てみると湯船には長い髪の毛が何本も落ちていますから、今回の配管トラブルは髪の毛をつまらせた可能性が高そうです。
更に洗面化粧台にも同様にたくさんの髪の毛が落ちていましたから、排水口のメンテナンス方法を教えた上、今後排水が詰まった場合には管理会社指定の会社へ連絡を入れるように伝えました。
再発防止に向けて!
こうした出来事があってから数か月後、再びこの入居者からの連絡が入ります。
なお、今回は洗面化粧台の排水が詰まったとのことであり、私が指定した水道業者に依頼したところ「つまりの原因が髪の毛であったため、工事費用は入居者の負担となる」と言われたことに対するクレームでした。
また幸いにも「水道業者が今も現地にいる」とのことなので、営業車で急行して状況の確認をすることにします。
そして水道業者と入居者、大家である私を含めた3者立会いの下で、器具を排水口に差し入れて「詰まっているもの」を取り出してみたところ、大量の髪の毛がワカメのように器具にビッシリと絡みついていました。
この驚くべき状況に流石の入居者も「言い逃れができない様子」であり、大人しく工事費用を支払うことに納得してくれました。
ちなみにバスタブについても、その場で再度点検してもらうことにしましたが排水口の目皿には既に大量の髪の毛が詰まっており、このまま放置していれば近い将来再び「つまり」を起こしていたはずです。
その惨状を入居者に確認させると共に「半年前に高圧洗浄を行っていたこと」を伝えると、前回のお風呂のつまりに際して借主が手配した水道業者が「オーナーさんのせいにしてしまいましょう」と持ち掛けて来たことを白状しました。
この告白を耳にして『本当に業者が持ち掛けたの?』という言葉が喉元まで出掛りましたが、そこは無理やり言葉を呑み込んで「今回の工事費用だけ払って貰えれば結構です」と告げ、お部屋を後にすることにします。
ただ、今後も同様のトラブルが他の物件にて発生する可能性も充分にありますから、賃貸借契約書には「排水管の詰まりについて、その原因が借主の使用方法に起因する場合には、補修費用は全て買主の負担とする」という文言を加えた上、
「排水のつまり・水道の故障等が発生し、管理会社と連絡が取れない場合には下記の貸主指定業者に修理の依頼を行うものとします」という2つの条項を付加することにいたしました。
なお「いざという時に業者との連絡が付かない」という万が一の事態に備えて、定休日の異なる指定工事業者を必ず2社は契約書に記載するようにしています。
以来、こうしたトラブルで余計な工事費用を負担させられることは無くなりましたから、皆様にも私の経験を是非ともご参考にしていただければ幸いです。
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賃貸排水管トラブルについて解説まとめ
さてここまで、賃貸排水管トラブルをテーマに記事をお届けしてまいりました。
排水口絡みのトラブルは発生件数も多いですし、状況によっては下階の入居者の家財が被害を受ける可能性もありますので、是非ご注意いただければと思います。
また、既にアパート経営などされている方はご存じかと思いますが、水道業者の中には集合ポストなどに「水のトラブルは弊社まで」などという内容のチラシやマグネットシートなどを投函して行く者も少なくありません。
そして実は今回ご紹介したケースも、こうした水道業者に入居者が依頼をしてしまったことが事件の発端だったようです。
もちろん、こうした宣伝活動を行う会社の中にもしっかりとした水道業者はおられるでしょうが、今回のような質の悪い者も少なくはありませんから、是非お気を付けいただきたいところです。
ではこれにて、「賃貸排水管トラブルについて解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。