電気やガスなどの「ライフライン」は私たち生活にとって欠かせないものとなりますが、その中でも水道は文字通りの生命線と言っても過言ではないでしょう。
こうした事情から、災害時の対策においては「飲み水の確保が最優先事項」とされていますが、日常の暮らしの中でも『水道が利用できない』という危機的な状況は訪れるものです。
そこで本日は「水道代滞納トラブルについて解説いたします!」と題して、滞納が引き起こす諸問題と、管理人が経験したトラブル顛末記をお届けしてみたいと思います。
水道代滞納トラブルの概要
ではまず最初に、水道料金の滞納が発生した場合の流れを見ていきましょう。
なお、滞納が発生した際の対応については、全国共通ではなく「自治体によってかなり内容が変わってくる」ものですが、一般的な流れとしては
- 1~2ヶ月の滞納/督促状の送付や訪問
- 3~4ヶ月の滞納/一時的な給水停止処置(メーターバルブによる停水)
- 5ヶ月以降/水道メーターの撤去など
以上のようなケースが多いはずです。
また、「料金を滞納すると給水を止められる」というのは少々厳し過ぎる対応にも思えますが、水道法には停水を可能とする条項がしっかりと盛り込まれていますので法的な争いの余地はありません。
ちなみに自治体が行える滞納者への措置は「停水」以外にも
- 遅延損害金の請求
- 資産の差し押さえ
- 強制執行
などが可能とされています。
遅延損害金が発生し始めれば滞納額は徐々に増大していくことになりますし、それでも支払いがない場合には給与や年金の差し押さえも法的には可能です。
そして、これでも滞納が解消されない場合には不動産などの財産に対して強制執行が行われ、これらを売却して得た利益で水道料金の回収を行うことになります。
もちろん、強制執行まで行われるケースは非常に稀ではありますが、税金の滞納と同様に「水道代未納による強制執行については裁判所の判決は不要」と法令に定められていますし、自治体としても滞納期間に応じて淡々と手続きを進めていくのみとなりますので、滞納を放置し続ければ最悪のケースも覚悟しなければならないのは紛れもない事実です。
ちなみに、ここまで追い込まれる前に自治体へ相談することで
- 滞納額の減免
- 滞納額の分割支払い
- 生活保護等の公的補助の適用
を受けることができる場合もありますので、滞納から目を背けることなく問題解決の糸口を探していくべきでしょう。
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水道代滞納トラブルの顛末記
ではここからは、管理人が実際に経験した「水道代を滞納した入居者」を巡るトラブルの顛末記をお届けしていくことにいたしましょう。
水道トラブル発生の経緯
今回のトラブルの舞台となるのは、築18年、鉄筋コンクリート造4階建の賃貸マンションの1室(間取り1K)となります。
現在では売買担当の営業マンとして仕事をしている管理人ですが、その当時は賃貸部門の営業マンとして、アパートや賃貸マンションの物件管理や客付け業務(他社の管理物件に入居希望者を紹介する仕事)に汗を流しておりました。
そんな私が賃貸管理を担当するこの物件の一室について、ある時「退去したい」との入居者からの連絡が舞い込みます。
そして退去立会い等の手続きも無事に済みましたので、早速大家さんと新規入居者の募集条件を打ち合わせして、広告活動を開始することとなりました。
しかし季節は丁度、春から夏に向かうゴールデンウィーク明けの頃で「賃貸の繁忙期が完全に終了」しており、お客様からの問い合わせもなかなか頂けない状況が続きます。
こうした状況を受けて『この募集は苦戦するかも・・・』などと思い始めていたのですが、そんな矢先にようやく1本の入居申込みが舞い込んで来ました。
なお、このお申込みは同じ地域で営業している顔見知りの不動産業者さんによるものあり、入居希望者のスペックは建築関係の会社に勤める30代の男性、勤続年数2年で年収は350万円程です。
収入から考えると少々高めの家賃設定でしたので、物件オーナー様にもその旨を伝えますが、「賃貸保証会社の審査が通れば契約して欲しい」とのご返答を頂きます。
その後、保証会社の審査も無事に通過し、賃貸借契約締結・引渡しへと手続きは進んで行きました。
また入居後の数か月は何事もなく時が過ぎて行きますが、ある日の定期物件巡回(今回の物件は建物の総合的な管理も任されていたので)の際、共用部分で作業をしている水道局の方に出くわします。
そこで私は「何かあったのですか?」と作業員に声を掛けてみたところ、先日契約をした例の入居者が『水道代を滞納しているため、水道を止めに来た』と言うのです。
この話を聞いて『これは大変だ』と慌てた私は、会社の事務の人間に賃料の入金状況を確認してもらうことにしますが、「月々の賃料はしっかりと収められている」との報告を受け、胸を撫で下ろします。
そして『たまたま水道料金の支払いを忘れたのか・・・』と考え、しばらく様子を見ることにしましたが、その後何度確かめても水道メーターには「停水中」の札が付けられたままの状態が続くのでした。
水を止められた入居者
この頃には既に季節も真夏となっていましたので、とりあえずは物件オーナー様へ状況報告の一報を入れます。
またこの際、これまでの経緯(家賃は収められているが、長期に渡って水道を止められる件)をご説明いたしましたが、賃料を滞納していない以上、大家さんから「水道代を払え」などとも言えないのが現実です。
そこでとりあえずは「入居者に事情を聞いてみよう」ということになり、早速電話を入れてみます。
ちなみに、連絡したのが平日の日中でしたので『仕事で電話に出られないかな・・・』とも思ったのですが、予想に反してあっさり電話に出てくれましたので、早速「水道料金未納の件」について問い詰めたところ、入居者からは驚愕の返答が返って来ます。
実はこの入居者、入居後程なくして勤めていた建築会社を解雇されてしまったというのです。
そして現在は再就職先を探しているのですが、どうにも生活が苦しく、水道代は敢えて支払っていないと言います。
ただ、季節は真夏である上に連日猛暑が続いていますから、『大丈夫なのか?』と尋ねてみますが「もう少しの辛抱なんで」とまだまだこの生活を続けて行くおつもりのようです。
また、賃料を滞納していない以上は更なるツッコミもできませんので、その場は引き下がりますが、以来どうにも気になってしまい、時間を見付けては物件に様子を見に行くようにしていました。
なお巡回の中で気付いたのは、「停水中」と札を貼られていても「あくまで元栓のバルブを閉じただけの状態」ですから、建築の知識のある入居者は時折自分でバルブを開けて水を使用している様子です。
こうした止水の処置に『水道局も意外と優しいな・・・』と思っていたのですが、ある日巡回に行くと「水道メーターが完全に取り外され、もはや何をしても水を利用することができない状態」となっていました。
『流石にこの状況はマズいのでは』と慌てて入居者に連絡を入れますが、応答はありません。
その後も何度か電話を入れてみたのですが、やがて携帯電話まで「お客様の都合によりご利用いただけません」という滞納時のアナウンスが流れ始めます。
この音信不通の状況に『まさか室内で大変なことになっているのでは』という嫌な想像が頭をよぎったので、以降は直接訪問を繰り返しますが、その度に置いて来る手紙は受け取っている様子ですし賃料も毎月キッチリと収められていました。
そしてある日の訪問時、遂に物件のエントランスにてこの入居者とバッタリ遭遇することができたのですが、彼は巨大な水タンクを部屋に運び込んでいる真っ最中でした。
どうやら、近所の公園でタンクに水を汲み、その水で生活を行っている様子です。
「本当に大丈夫?」と改めて問い但しますが、どうやら再就職先も決まり、月末には普段の生活に戻れるとのことでした。
やがて翌月を迎えると、確かに水道メーターも元に戻されて、携帯も見事に復活を遂げます。
新たな就職先についても、自ら「転職しました」と申告してくれましたので結局トラブルは私が何もすることなく解決へと向かうのでした。
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水道代滞納トラブルについて解説まとめ
さてここまで、水道代滞納トラブルをテーマにお話をしてまいりました。
水道を止められ、携帯電話を止められても、家賃だけは決して滞納しない入居者のスピリットには感心させられるものがありますが、物件を管理する側としては「生きた心地がしなかった」のも事実です。
但し、賃料を滞納していない以上、こちらから何かアクションを起こすこともできませんし、勤務先を解雇されたからといって賃貸借契約を解除する訳にも行きませんから、これは実に歯がゆい事態でした。
この事件を経験して以来、仲間の不動産業者さんにも「水道滞納者に遭遇したことはないか?」と聞いて回っていたのですが、やはり皆さん何度かは経験をされているご様子です。(私のように賃料を滞納しないケースはレアなようですが)
また、彼らの話によれば水道局も『軽度な滞納で完全に水の供給を断つのはマズイ』と考えているようで、警告の意味でバルブを締めるだけの「一時的な停水処置」を行っているといいます。
そしてこれでも状況が改善しない場合は、最後の手段として水道メーターを撤去するという強行手段に出るようです。
ちなみに賃貸管理に慣れた業者さんでも、メーター撤去の段階になると流石にドキドキさせられるとのことでした。
確かに今では、スーパーなどでも無料で水が汲めますが、可能であれば水道代だけはキッチリと支払っていただきたいものですよね。
ではこれにて、「水道代滞納トラブルについて解説いたします!」の顛末記を締め括らせていただきたいと思います。