不動産を扱う上で避けて通れないのが「電気に係わる問題」です。

水道や下水、ガス等と並んで私たちの生活に無くてはならい設備である電気ですが、時には「あのマンションには借室電気室がある」「店舗のシャッターは動力を使用している」など、少々専門的な知識がないとお話に付いていけない場面があるのも事実でしょう。

そこで本日は「不動産と電気について解説いたします!」と題して、不動産を取り扱っている際に登場することの多い電気に関する用語や、問題についてお話ししてみたいと思います。

不動産と電気

 

キュービクル

キュービクルは正式名称を「キュービクル式高圧受電設備」と言い、高圧電流を低圧電流に変換するための装置(変電設備)のことです。

発電所から送り出される電気は6600ボルトという高圧電流であり、私たちが家庭で利用するには不向きであるため、電柱などに設置された変電設備にて電圧の調整を行ってから供給されるのが通常となります。

しかしながら工場や病院などでは大量の電気を使用するため、変電された電気を外部から取り入れるよりも、高圧電流を直接引き込んでキュービクルを利用して敷地内で変電を行う方が遥かに効率的なのです。

なお、キュービクルはその名の通り「箱型」の形状をしており、小さいものなら冷蔵庫くらいのサイズの製品もあり、敷地の隅や屋上などに設置されているのが通常です。(キュービクルには「高電圧・変電設備」というステッカーが貼ってあります)

また、キュービクルは設置者が維持管理を自費で行い、国に対して電気事業法に基づいた届出等を行う義務等がありますので、こうした事情を知らずに物件の売買がなされればトラブルに発展するのは必至となります。

よって、不動産取引で工場などを取り扱う際には「その存在に注意を払うべき設備」となっていますが、時には「店舗」や「過去に作業場等として利用されていた収益物件」にも設置されているケースもありますので、見逃さないように気を付けましょう。

更に、型の古いキュービクルの中には、内部にPCB(ダイオキシン)が使用されているもののありますので是非ご注意ください。

※PCBについては過去記事「敷地への不法投棄問題を考えます!」にて詳細な解説を行っております。

借室電気室・パットマウント

借室電気室やパットマウントという言葉も耳慣れないものであるかと思いますが、基本的には前項でご紹介したキュービクルと同様の変電設備を指す言葉です。

世帯数の多い「分譲マンション」や「賃貸マンション」等においては工場などと同様に大量の電気が必要であり、やはり高圧電流を直接引き込んだ方が効率的なケースあります。

そこで設置されることになるのが、電力会社が管理を行う変電設備となる「借室電気室」や「パットマウント」なのです。

借室電気室はマンションの一室などを利用して変電設備を設置しますが、その管理を行うのは電力会社となりますから、たとえ一棟ものの収益物件のオーナー(建物の所有者)であっても電力会社に無断で借室内に入ることは許されません。

また、借室は無償で電力会社に貸し出されているケースが殆どであるため、この設備を有する物件を購入する際には、借室電気室の賃料が得られないことも覚悟しなければなりません。

なお近年では技術の進歩により、余程の大型マンションでもない限りは借室電気室が設置されることはありませんが、その代わりに敷地内などに置かれるのがパットマウントとなります。

基本的には小型のキュービクルといった趣の箱型の工作物であり、表面には「変電設備」の文字が記されていますので簡単に見分けが付くはずです。

ちなみにパットマウントも管理は電力会社が行いますので、設置されている物件を購入したからと言ってオーナーに直接的な負担は発生しませんが、敷地内にこうした設備があることはしっかりと把握した上で購入の意思決定を行うべきでしょう。

動力

ここまで変電設備のお話をしてまいりましたが、本項で取り扱う「動力」もまた電圧に係わる用語となります。

既に申し上げた通り、大量に電気を使用する場合には高圧電力を直接物件に引き込む必要がありますが、一般家庭では低圧電力の引込みを行えば充分に用は足りるはずです。

しかしながら、これが店舗などの場合には「業務用の冷蔵庫」や「自動ドア」、マンションの共用部分ともなれば「エレベーター」など、それなりに多くの電気を利用する設備もありますよね。

また、一般家庭で主に利用されるのが単相(家庭用)の100ボルト・200ボルトの電気であるのに対して、エレベーターなどの設備は三相(業務用)の200ボルトの電力が必要となりますので、このような設備を利用するために引き込まれるのが「動力」と呼ばれる電気の種類なのです。

よって、店舗などにおいては照明設備用に「一般家庭用の電気」を引込み、業務用冷蔵庫や自動ドアなどのために別途「動力」の引込みを行うケースも少なくありません。(2種類の異なる電気を引込んでいる)

なお、動力は別名「低圧電力」とも呼ばれています。

電子ブレーカー

前項で解説した動力(低圧電力)を契約している建物に時折取り付けられているのが、この「電子ブレーカー」なるものです。

電子ブレーカーとは「設置することで動力を利用する際の電気料金を節約できる」として一時期人気を博したツールであり、本来の動力ブレーカーの周辺に後から附属品として取り付けられているケースが多いでしょう。

節約の仕組みについてはかなり専門的なご説明となってしまいますので簡単にお話ししますが、「電子ブレーカーを取り付けることで本来のブレーカーの性能よりも一時的に強い電気を流すことが可能になるため、電力会社との契約電力を最小限に抑えることができ、その分の基本料金が節約できる」というものです。

但し、電子ブレーカーの人気に便乗して「質の悪い電子ブレーカー」を設置する詐欺まがいの企業も多く存在したため、動力が引き込まれた物件の売買には少々注意が必要となるでしょう。

ちなみに電子ブレーカーの設置に際しては、販売業者と物件オーナーとの間でリース契約や(ブレーカーについての)賃貸借契約が締結されているケースが多いですから、売買に際してはこうした契約をどのように処理するかも重要な問題となります。

漏電ブレーカー

ブレーカーのお話が出ましたので、続けて「漏電ブレーカー」についてもお話ししておきましょう。

先程解説した動力はもちろん、家庭用の電力においても「漏電」は大いに危惧すべき問題です。

そして、何らかの原因で室内の電線が破損した場合などには漏電による感電や出火のリスクが高まりますから、これを監視するために取り付けられるのが漏電ブレーカーとなります。

なお、近年のブレーカーは

  • アンペアブレーカー(30Aなどの表示があるメインブレーカー)
  • 漏電ブレーカー(黄色や赤色等のボタンが付いている)
  • 安全ブレーカー(回路ごとブレーカー)

の3つがセットになっているものが主流ですが、築年数の古い物件の場合には漏電ブレーカーが付いていないものも見掛けますので、こうした物件を取引する際には注意が必要になるでしょう。

※ブレイカーを漏電ブレイカー付きのものに交換することも可能ですが、それなりの費用が発生します。

電線の釘打ちについて

ここまでお話しした漏電発生の原因となり得るのが、壁や天井への「釘の打ち込み」となります。

近年ではDIYがブームとなっていますから、「自分のお部屋に棚を後付けしたい」等の希望をお持ちの方も多いかと思いますが、不用意に釘などを打ち込んで壁の中にある電線を傷付けてしまった場合には、漏電による感電や火災のリスクが高まります。

なお、壁の中の電線の位置を正確に把握する方法はありませんが、スイッチやコンセントの周囲は電線が存在する可能性が高いでしょう。

エアコンと専用コンセントの問題

毎年のように猛暑の夏に見舞われている我が国ですから、エアコンは最早手放せないアイテムとなっていますが、不動産取引においては注意が必要な点もあります。

現在販売されているエアコンは「取付けに際して専用コンセントを利用すること」との注意書きが説明書に記載されているものが殆どです。

なお、専用コンセントとは「ブレーカーからエアコン用に単独の回路を引いたコンセント」という意味になりますので、照明のスイッチなどから回路を分岐したコンセントには『エアコンの接続は不可」ということになります。

但し、実際に専用コンセントに接続しなかったからと言って、「必ず事故に繋がるか?」という問題に関しては『それ程は可能性が高くない』ように思えますが、メーカーがそのように説明する以上はこれに従う他はありません。

また、家電量販店などから派遣されて来る設置業者も「専用コンセントでなければ設置できない」と言うケースが殆どとなりますから、物件を購入する際には専用コンセントの有無についても確認しておくべきです。

不動産と電気について解説!まとめ

さてここまで、不動産と電気というテーマでお話をしてまいりました。

電気関連設備については一般の方はもちろん、不動産業者でも充分な知識を有していないケースが往々にしてありますので、是非ご注意いただければ幸いです。

扱いを一歩間違えれば取り返しの付かない事故に繋がるのが電気ですから、最低限度の知識を身に付けた上で取引に臨むべきでしょう。

ではこれにて、「不動産と電気について解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。