日々の暮らしの中には様々なストレスが潜んでいるものです。
厄介な上司に、不仲な家族、そして自分に合っていない仕事など、その原因は様々ですが、唯一の憩いの場である自宅での住環境に係わるストレスは、その中でも非常に大きな破壊力を有していると言えるでしょう。
そして、一口に住環境の問題と言っても「排水口からの悪臭」に「害虫の出現」、「カビの発生」や「近隣関係のトラブル」など、その枚挙には暇がありませんが、最もポピュラーで解決が困難な問題の一つに挙げられるのが「騒音」に関するトラブルとなります。
そこで本日は「騒音対策について!不動産屋さん目線で考えてみます!」と題して、自分で行える防音対策等について考えてみることにいたしましょう。
深刻化する騒音問題
不動産業を営んでいると、実に様々なクレームが飛び込んで来るものです。
雨漏りや設備の故障など、その内容は多岐に渡るものとなりますが、中でも非常手を焼くことになるのが「近隣との騒音トラブル」となります。
なおテレビのワイドショーなどでは、大きな音を立てて近隣住民に迷惑を掛ける「騒音おばさん」などの存在が報じられていますが、騒音トラブルはこうした極端な例ばかりではありません。
そして、「上の階の足音がうるさい」「子供の泣き声をどうにかして欲しい」「テレビの音が大きい」といった『相手側に悪意のないケース』となれば、問題はますます厄介なものとなります。
もちろん不動産業者や管理会社としては当事者の間に入ってトラブル解決を図ろうと試みますが、故意ではないだけに簡単には改善できないことも多いですし、一度被害に遭った者は必要以上に音に敏感になってしまうものですから、「騒音トラブルに一旦火が付いてしまうと解決は非常に困難である」というのが現実でしょう。
また、こうした些細な諍いが、先程お話しした「騒音おばさん」のような大きな問題に発展してしまうこともありますから、不動産屋さん的には非常に頭の痛いところなのです。
ただ、「騒音問題は悩ましい」と嘆いたところで事態が好転するはずもありませんから、当事者間の話し合いでの解決が見込めない場合には「如何にして騒音を封じ込めるか?」という方向で手段を講じていくことになります。
そこで事項では、不動産屋さん的な自分で行える騒音対策について解説して行きたいと思います。
様々な対策が可能
騒音に悩まされている多くの方が訴えるのが「防音工事をして欲しい」という要望となりますが、実はこうした対策はそう簡単に講じられるものではありません。
通常、防音工事を行うとなれば窓をサッシごと交換したり、フローリングの張替え、壁を破壊して防音材を入れるなどの工事が必要になります。
その上、どの工事も1日や2日で完了するものではありませんし、作業スペースを考えれば「入居者には一時的な退去をお願いしなければならない」のが現実なのです。
また、こうした工事を行うとなれば費用面でもかなりの負担を強いられることになりますから、物件を購入したばかりでローンの支払いに苦労している不動産投資家様や、貯えの少ない大家さんでは資金面で実現不能というケースも少なくありません。
そしてこうした局面で威力を発揮するのが、管理会社や一般の方でも施工可能なDIY的騒音対策工事となる訳です。
但し、一口に騒音対策と言っても様々な方法がありますので、以下では施工箇所ごとにおすすめの対策法をご紹介して行きたいと思います。
窓
深夜に徘徊する暴走族や、毎晩酒盛りで大騒ぎしている隣家などが騒音の原因である場合には、まず窓の防音を考える必要があります。
もちろん完璧な対策を講じるのであれば、窓を二重サッシにするなどの工事が必要となりますが、これを行うには窓枠自体の交換が必須となりますから、かなり規模の大きな作業となってしまうでしょう。
そこでご提案したいのが、遮音カーテンなどを利用した騒音対策です。
さて、このようなお話をすると「たかがカーテンくらいで音が防げる訳がない」とお思いになられるかもしれませんが、これが意外に馬鹿にできない効果をもたらします。
ちなみに、遮音カーテン自体はホームセンターなどで購入が可能ですが、ポイントとなるのはなるべく大きなサイズの商品を選ぶことです。
音は空気を伝わって伝播するものですから、たとえ遮音カーテンがあってもガラス面が露出していたのでは殆ど効果がありません。
よって横幅もゆったり、長さも床に余る位の品を選ぶのがベストです。
そして更に防音効果を高めたいなら、レース用のカーテンレールを利用してダブル遮音カーテンとするのがおすすめでしょう。
なお、私が以前に担当したお客様の中にはこの「ダブル遮音カーテン」に加えて、キャンプなどで使用する保温マット(通称・銀マット)をカーテンと窓ガラスの間にはめ込んで騒音を防いでおられました。
但し、こうした対策は日光も遮ってしまいますので『夜間のみしか行えない』のが通常ですが、昼間の騒音に悩まされている方には「エアトース」という商品がお勧めです。
このエアトースなる商品は「ボツボツと等間隔に無数の穴が空けられている半透明のカーテン」なのですが、音がこの穴を通過すると特殊な構造によってそのボリュームが大幅にカットされる上、日の光も遮らないという優れモノとなっています。(窓にはめ込むタイプの防音ボードもあります)
これを窓ガラスに設置しておけば、昼間でも騒音をカットしながら日の光を浴びることができますから、これは実にありがたいことですよね。
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壁・天井
音のクレームの中でも最も件数が多いのが、上階のお部屋や隣室からの騒音となります。
この手の騒音に対しての一般的な対応は「壁や天井に防音工事を施す」といったものになりますが、既に申し上げた通り『一度壁や床等を破壊しての作業』が必要になりますから、入居中のお部屋でこれを行うのはかなり無理があるでしょう。
そこでご提案したいのが、今ある壁や天井の上から防音処理を行ってしまう方法となります。
なお、このようなご提案をすると「そんな専門的な工事が素人にできる訳がない!」とお叱りを受けてしまいそうですが、防音工事自体はそれ程専門的な知識を必要とするものではありません。
ちなみに防音工事の要点を簡単に言ってしまえば、音自体を吸収して和らげる「吸音材」と、音を遮断する「遮音材」を組み合わせるだけとなります。
但し、ここで重要なのが「音源側から吸音材→遮音材」の順番で工事を行っていくことです。
吸音材については、ネット通販やホームセンターでも様々なものが購入可能ですが、価格が高すぎると感じた場合には断熱材として利用されるグラスウールやロックウール、
車の防音材として利用されているニードルフェルトなどでも代用が可能でしょう。(これでも高いというなら、梱包用のプチプチや段ボールでも代用できます)
一方、遮音材も通販やホームセンターでの購入が可能ですが、こちらは代用品を見つけ辛いかと思いますので「購入してしまった方が無難」かと思います。
そしてこの2種類の素材が集まったら、吸音材、遮音材の順番で壁や天井に貼り付けていけば、これだけで簡易的な防音工事は完了です。
持ち家の場合なら、接着剤や強力両面テープでの部材の貼り付けが可能かと思いますが、賃貸の場合にはタッカー(ホームセンターで売っている大型のホチキスのような器具)などを利用しての取り付けがおすすめでしょう。
もちろん、壁紙にはタッカーによる穴が空いてしまうでしょうが、白い壁紙ならばコーキングなどで簡単に補修が可能ですから退去前にはしっかりと処理をしておきましょう。(クロス補修についての詳細は過去記事「賃貸のリフォームを大家さんが自ら行う!」をご参照ください)
また、表記の対策のみでは防音効果が足りないということであれば、2重3重に吸音材と遮音材の層を造ることで更に効果的な対策が可能ですし、見栄えが気になるようでしたら、防音層の上からベニヤ板や石膏ボードを張り付け、壁紙を貼って仕上げるという手もあります。
なお、重ね貼りの場合には厚みが出過ぎてしまい「タッカーなどでの固定が困難」となるでしょうから、こうした場合にはホームセンターで販売されている「突っ張り式の柱」である『ラブリコ』や『ディアウォール』という商品を利用して「柱で防音壁を固定する方法」がお勧めでしょう。
ちなみに天井についても同様の方法での防音対策が可能ですが、気を付けるべきなのは「防音層の落下防止」と「エアコンや電灯との取り合い」の問題です。
落下防止については壁への設置以上にしっかりとした固定が必要となりますから、タッカーや突っ張り式の柱などを駆使しての万全な補強を行う必要がありますし、
電灯などがある箇所については防音材をくり抜く必要がありますが、防音層の穴が大きくなればなるほどに効果も低くなりますから、可能であれば吊り下げ型の電灯を使用することをおすすめいたします。
※ここまでご紹介した防音対策を行うと断熱効果も期待できますから、冷暖房効率も向上しているはずです。
耳栓その他
ここまでお部屋自体に行う防音対策をご紹介してまいりましたが、それでも騒音が気になるという場合には自分自身への対策を施すこととなります。
そこでまず頭に浮かぶのが耳栓の活用です。
「耳栓」などというワードを挙げると、何とも頼りない感じがして来るかもしれませんが、今どきの耳栓は意外に侮ることができません。
なお、耳栓自体の防音性が高いことはもちろんですが、騒音以外のスマホの着信音や目覚ましのアラームといった生活に不可欠な音はしっかりと通してくれる商品も少なくありませんから、これは実に便利です。
更には窓での防音の項でご紹介した「エアトース」の耳栓版も販売されていますから、より耳栓の装着感が少ない生活をお望みなら、お試しいただく価値があるかもしれません。
なお、高機能な耳栓をしてもまだ音が気になる方にはイヤーマフを使用するという手段も残されています。
イヤーマフはヘッドホンのような形状をした防音グッズであり、飛行場で作業をする方などが身に付けている姿を目にしたことのある人も多いはずです。
そして、このイヤーマフの防音性は他に比類するものが無いとも言われる「最強のもの」となりますから、防音対策の最後の砦ともいえる代物となっています。
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騒音問題まとめ
さてここまで、自分自身で行える防音対策についてお話ししてまいりました。
防音対策と言えば「専門家に依頼する他は無い」というイメージをお持ちの方も多いでしょうが、素人でもかなりの対策を行うことができることをご理解いただけたことと思います。
また、被害を受けている側だけでもこれだけの対策が可能なのですから、音を出している側の方もできることは少なくないはずです。
例えば「足音がうるさい」と言われたなら、コルク材を床に敷くだけでも相当の防音効果が期待できますから、互いの努力で問題が解決可能となれば「これに越したことはありません」よね。
一方、どんなに守りを固めても防ぎきれない音も当然ありますから、相手に交渉の余地が無い場合には、悲惨な近隣トラブルに発展する前に引っ越しを検討する勇気も必要かもしれません。
ではこれにて、「騒音対策について!不動産屋さん目線で考えてみます!」の記事を締め括らせていただきたいと思います。