本ブログでは、これまで様々な不動産の賃貸に関する知識をご紹介してまいりました。

但し、そのどれもがお部屋や事務所・店舗など「建物の賃貸」に関するもののみであり、『土地の賃貸』については記事をお届けせずに来てしまいました。(借地権は純粋な土地の賃貸借とは言えませんし、駐車場は駐車設備の賃貸となりますので、ここでは除外させていただきます)

ちなみに、不動産の取引においては「土地の賃貸」も一つのジャンルとして確立したものとなってはいるものの、「賃料が安いため投資には向かない」「権利関係でトラブルが発生しやすい」などの理由から、『あまり人気が無い』というのも現実です。

しかしながら、既に多くの収益物件を所有している不動産投資家様や地主さんともなれば、知り合いなどから「あの土地を少し貸して欲しい」などのお願いをされることも珍しくないはずですから、こうした『お願い』をされて困った経験をお持ちの方も多いことと思います。

そこで本日は、「土地の賃貸借契約について解説します!」と題して、土地を貸す際の注意点などについて解説してみたいと思います。

土地の賃貸借契約

 

実は危険が多い土地の賃貸

冒頭でも申し上げた通り、土地の賃貸は「今一つ人気のない取引」となっているのが現状です。

そして不人気となっている理由の一つに挙げられるのが、「賃料の安さ」という点になります。

例えば駐車場として土地を貸したとしても、その賃料設定はアパートなどに比べて『格段に安いもの』となることは敢えてご説明するまでもないでしょう。(厳密に言えば駐車場は「施設の賃貸借」となりますが)

また、更地の状態では固定資産税等の税額も高額となりますから、税制面を考えても「土地の貸出しを積極的に行う方はおられない」ということになる訳です。

ただ、これまでに申し上げて来た理由以上に「土地の賃貸が避けられる原因」となっているのが、『貸し方によっては地主がトラブルに巻き込まれる危険性がある』という点になるでしょう。

さて、このようなお話をすると「土地を貸しただけでトラブルになるの?」というお声も聞えて来そうですが、これは『充分にあり得る事態』となります。

なお実際に発生しているトラブルの事例を見てみれば、その多くが『借地権に絡む問題』によるものであることに気付かされるはずです。

借地権については過去記事「借地権とは?わかりやすくご説明いたします!」にてその詳細を解説しておりますが、簡単に申せば「土地を借り、借主が建物を建てることで生じる権利」ということになります。

そして、この借地権が厄介なのは「一端借地権が発生してしまうと、借地権者(借主)が徹底的に保護されてしまう点」であり、たとえ地主に継続的に土地を貸す意思がなくても、

借主名義の建物が建った段階で「借地権が発生した」とみなされ、『半永久的に退去させることが不可能になる』というケースも有り得ますから、これでは恐ろしくて人に土地を貸すことなどできませんよね。

そこで次の項では、こうしたトラブルに陥らないための土地賃貸のテクニックについて解説したいと思います。

 

土地賃貸の形態を上手に使い分け、トラブルを回避する

では早速、「借地権を発生させずに土地を貸し出すテクニック」をご紹介して行きたいと思いますが、まず前提として押さえておいていただきたいのが土地賃貸には「いくつかの方法(形態)がある」という点となります。

また土地利用の目的に応じて、各種土地賃貸の形態を上手に使い分けることがトラブル回避のコツともなりますので、以下ではその種類をご紹介しながら解説を進めて行くことにいたしましょう。

建物所有を目的としない賃貸

最も安全性の高い土地賃貸の方法となるのが、そもそも契約において借主の土地利用目的を「建物所有を目的としない」と謳ってしまう『建物所有を目的としない賃貸借契約』となります。

例えば「資材置き場として土地を貸す」などといった場合には、利用目的を「資材置き場」と限定した上で、「建物が建てられない」ことを契約書上に明示することによって、借地権の発生を回避することができるのです。

そして、この契約形態にしておけば勝手に建物を建てられしまったとしても、単なる「契約違反」となりますので、建物を放置することなく異議を申し立てることでトラブルを解決することが可能となります。

なお、「太陽光発電設備の設置」や「屋外型看板の設置」などについても、先程の例と同様に土地の利用目的を明確し、建物の建築を不許可とすれば安全な土地の賃貸借契約を行うことができるでしょう。

ちなみに駐車場の賃貸については冒頭でも申し上げた通り、土地の貸し出しではなく「駐車場という施設の貸し出し」となりますから、こちらも借地権の発生を恐れる必要はありません。(土地の賃貸借ですらない状態となります)

但し、未舗装で区割りの線引きもせず、車止めも設置されていない状態の場合には、土地の賃貸借と判断される可能性もありますから、こうしたケースでは契約書の内容を精査する必要があるでしょう。

このように、そもそも建物の建築を禁じた賃貸借契約を締結するのであれば、土地の賃貸も安全に行うことができますが、時には「資材置き場と一緒に簡易的な事務所も設置したい」「建て替えの期間だけ、仮の店舗を出店させて欲しい」などの要望が出る場合もありますから、以下では建物の設置が前提となる契約形態をご紹介してまいります。

定期借地権

建物を建てる前提で土地を貸し出す場合に、最も安全性が高い手段となるのが平成4年の借地借家法の改正で誕生した定期借地権によって土地を貸し出す方法となります。

定期借地権の詳細については「定期借地権とは?という疑問にお答えします!」という記事にて解説していますが、この方法を用いれば更新を回避してスッパリと借地権を終了させることが可能ですし、

契約終了時に建物を地主が買い取らなければならなくなる「建物買取請求」も借主は行使できませんから、非常に安全性の高い取引が行えるはずです。

なお地主さんの土地を借り上げ、コンビニやファミリーレストランなどが運営されているのをよく目にいたしますが、こうした契約でも定期借地権はしばしば利用されるものとなります。

建物賃貸借にしてしまう方法

そしてこちらは少々費用が掛かる方法となりますが、相手が借りたいという土地に地主さんが建物を建て、それを賃貸するという手法もあります。

これならばアパートや賃貸マンションを貸すのと同様に建物を賃貸するだけですから、借地権が発生することは絶対にありません。

土地を貸すのに建物を建てて上げるなど「現実的では無い」ようにも思えますが、「建築に掛かったコストは賃料に上乗せして払う」などの方式で精算することも可能ですから、決してあり得ない方法ではないのです。

なお、定期借地権の項でお話したコンビニやファミレスへの賃貸においても、この方法はしばしば行われるものとなります。

一時使用目的の賃貸

これまで様々な土地賃貸の手法をご紹介してまいりましたが、本項で解説する一時使用目的の土地賃貸という方法は「最もリスキーなもの」となります。

なお、法律上は「一時使用目的の土地賃貸」であるならばたとえ借主名義の建物が建築されても『借地権は発生しない』ことになっているのですが、実は「訴訟において一時使用目的と認めてもらうには非常に高いハードルが存在している」のです。

ちなみに、判例などを見てみるとたとえ契約書に「一時使用目的の土地賃貸」と明記されていたとしても、現実の土地利用状況などによっては「借地権の存在を認める」といった判決が下されているケースも多々ありますから、これは堪ったものではありませんよね。

そして裁判所に一時使用目的の賃貸と認めてもらうには、「契約期間を1年以下とする」「客観的に見て借地権ではないと判断される要因がある」など、いくつもの要件をクリアーする必要がありますから、これを一般の方が実践するのは非常に困難なこととなるはずです。

よって、建物を建てる目的の土地賃貸においては危険性の高い「一時使用目的の土地賃貸」を避け、先にご説明した「定期借地権」や「建物賃貸借に切り替えてしまう方法」を用いるのがおすすめとなります。

土地賃貸まとめ

さてここまで、土地の賃貸を安全に行う方法についてお話ししてまいりました。

なお、「土地を貸して欲しい」などというお願いをされるのは『非常にレアなケースなのでは』とお考えの方も多いかと思いますが、地主さんなどの立場ともなれば「意外によくあること」のようです。

また、こうした申し出をして来るのはご近所の方であることが殆どでため無下に断ることもできず、慌てて不動産業者に相談に行くパターンが多いというのが実情でしょう。

但し、不動産屋さんの中にも「土地の賃貸借についてはあまり詳しくない」という方が少なからずいらっしゃいますから、もしも皆様がこうしたシュチエーションに立たされた場合には、本記事をご参考にご判断をいただければ幸いです。

ではこれにて、「土地の賃貸借契約について解説します!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。