歩きタバコや路上駐車など、この世には様々な「迷惑行為」が存在していますが、その中でも「最も厄介なもの」の一つに挙げられるのが不法投棄であると言われています。
確かに自宅や保有する賃貸物件の敷地などに「ゴミ」や「壊れた家電」等を捨てられたら、非常に腹が立つのと同時に、『一体どうのように対処して良いものやら』と途方に暮れてしまいますよね。
そこで本日は「敷地への不法投棄問題を考えます!」と題して、不法投棄を巡る問題や対処法について考えてみたいと思います。
不法投棄の実態
さて、まず最初に申し上げておきたいのが、不法投棄は「非常に迷惑な行為」であると共に、それ自体が「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に違反する立派な犯罪であるという点です。
そして、違反を行った者には
- 個人の場合/5年以下の懲役または1000万円以下の罰金
- 法人の場合/3億円以下の罰金
という罰則が定められていますので、これは非常に重い罪と言えるでしょう。
しかしながら、「罰則が強化されても不法投棄はなかなか減少せず、世の人々を悩ませ続けている」というのが現実なのです。
なお、本ブログの管理人である私も不動産業者に勤める立場上、更地や駐車場を管理することが多いため、これまでに様々な廃棄物を管理地に捨てられて来ました。
その主なものを挙げれば、
- 家庭ゴミ/空き缶や生ゴミ等
- 家電/エアコンや冷蔵庫、洗濯機
- その他/バイクや自動車
といったラインナップになります。
さて、ここで気になるのが「敷地内に捨てられた廃棄物の処理方法」となりますが、
土地の所有者(地主)が自腹で費用を負担して廃棄物を処分(廃棄物処理業者などへ依頼)している
というのが現実です。
ちなみに『役所などに通報すれば、行政で撤去してくれるのでは?』とお思いの方もおられるかもしれませんが、こうした状況で行政が対応してくれることはまずありませんので、結局は土地の管理者や所有者が自腹で処分するしかないのが実情となります。
※警察に通報して「不法投棄事件の証拠物件として押収して欲しい」とお願いしたこともありますが、こちらも対応はしてもらえませんでした。
※公道上に放置された廃棄物は道路管理者(国や自治体)が処分を行います。
また、私のように事業で不動産を扱っているならば「仕事の一環」と割り切ることもできなくはありませんが、一般の地主さんでもこうした憂き目に遭っておられる方は少なくないと思いますので、これは正に由々しき問題と言えるでしょう。
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不法投棄物の処理方法について
さて前項でもお話しした通り、実際にゴミを捨てられてしまった場合には、土地の所有者や管理者が自力でゴミを処分するしかなくなる訳ですが、それが空き缶や傘などの家庭ゴミであれば「収集日にゴミ捨て場に出しておく」だけで話は済みます。
しかし不法投棄物の中には「思わず処分に困ってしまうもの」もありますので、以下ではその処分方法について解説してきましょう。
粗大ゴミ
テーブルや椅子、ベッドなどは粗大ゴミとなりますので、お住いの地域の自治体の定める方法で処分を行う必要があります。
多くの地域では識別ステッカーなどを購入して、指定の収集場所にゴミを移動させることになりますが、自力で処分場へ搬送しなければならい地域も存在しているようです。
こうしたケースでは廃品回収業者に依頼を行うことになりますが、悪質な業者も少なくありませんので依頼先の選定には細心の注意を払うべきでしょう。
なお、投棄されているゴミが家電製品であり、
- テレビ
- 冷蔵庫
- エアコン
- 洗濯機
- 衣類乾燥機
以上の品々である場合には、家電リサイクル法によって粗大ゴミとしての処分ができませんので、家電量販店や廃品回収業者へ依頼を行うことになります。
自転車
不法投棄物の中でも、遭遇する機会が多いのが自転車となります。
なお、自転車に関しては粗大ゴミとしての処分も可能ですが、盗難車である場合も考えられますので、まずは警察に連絡して確認を行ってもらいましょう。
もしもここで、盗難届が出されている場合には警察による回収が期待できますが、そうでない場合には「警察の民事不加入の原則」に従って、土地の所有者が自力で処分を行わねばなりません。
ちなみに本来であれば次項でご紹介するバイクや自動車と同じく、正当な手続きを踏んだ上で処分を行うべきなのですが、自転車の場合には無料(もしくは非常に安価な費用)で撤去を行ってくれる業者がいますから、こちらを利用するのがおすすめです。
依頼する業者によっても撤去までの流れは異なるかと思いますが、通常は「所有者に向けた撤去予告文書」を一定期間自転車に貼り付け、反応がない場合には撤去を行うことになるでしょう。
バイク、自動車
さて、不法投棄をされると非常に困るのがバイクや自動車となります。
たとえボロボロの状態であっても「ある程度は資産価値がある物品」となりますので、迂闊に処分してしまうと後から所有者が現れて「駐車していただけなのに、勝手に処分された」などと因縁を付けられる可能性もありますので注意が必要です。
そこでまずは自転車と同様に警察に連絡をして、盗難届などが出ていないかの確認を行います。
そして、届出がない場合にはやはり地主が処分を行うことになりますが、次に行うべきは「車両の持ち主探し」です。
もしもナンバープレートが残されているようなら、陸運局において無断駐車車両への対策と同様の方法で所有者を調べることができますから、所有者に対して内容証明などを送りつけて撤去の要請を行いましょう。
但し、ここまでしても反応がない場合には弁護士に依頼を掛けるなどして、訴訟を提起して撤去を求めることになるでしょう。
一方、ナンバープレートが外されており所有者が特定できない場合には、裁判所の公示送達という制度を利用して訴訟を進めることになりますので、弁護士などに任せてしまう方が無難でしょう。
※公示送達は訴訟の相手側の所在が不明な場合に、一定期間の公示を行うことで訴訟手続きを進めることができる制度となります。
こうして訴訟において勝訴すれば車両の撤去することができますが、それなりの時間と費用を要しますから「可能であれば訴訟は回避したい」というのが本音でしょう。
ちなみに、前項でご紹介した自転車の撤去業者の中には訴訟なしでもバイクならば処分してくれる会社もあるようですが、自動車については正規の手順を踏まざるを得ないかと思います。
最も厄介な投棄物
そして家電や自動車以上に厄介なのが、PCBを使用した廃棄物を投棄された場合です。
ちなみに『PCBってなんだろう?』とお思いの方も多いかと思いますが、これは「ポリ塩化ビフェニル」という化学物質のことを指す言葉であり、その正体は猛毒のダイオキシンとなります。
実はこのPCB、熱に強く電気を通さない性質から、ひと昔前までは変圧器など様々な電気器機に使用されていたのです。
もちろん現在ではその危険性が明らかになり、使用が禁じられているのですが、PCBを使用した昔の器機の処分に当たっては「法令で定められた手順を踏まなければならない」とされています。
ところが、PCBを使用した器機の処分を行うには法外な費用と時間が掛かるため、その経費と労力を削減するために不貞の輩が不法投棄を行っているという訳なのです。
よって、このような物を敷地に捨てられれば土地所有者等に大きな負担がのしかかることになりますから、これは堪ったものではありませんよね。
なお、実際にPCBを使用していると思われる器機が投棄された場合には、まずは専門機関に費用を払ってPCBが使用されているかの調査をしてもらう必要があります。
その後は国が定めた機関で処分をすることになりますが、その費用は15キロ以下の器機で40万円以上、100キロの器機ともなれば70万円もの処分費が掛かることとなるのです。
その上、処分を請け負う指定機関の処理作業が追い付かない状態となっているため、自分の順番が回って来るまで格納容器に機器を収納して敷地内で保管するか、専門業者に保管を依頼(保管費もかなりのものになる)しなければならないため、その負担は甚大なものとなります。
このような理由からPCBを使用した器機は、正に史上最悪の不法投棄物ということになるのです。
不法投棄を防止する対策
ここまでの解説をお読みくだされば「不法投棄の恐ろしさ」を嫌という程にご理解いただけたことと思いますが、一番の関心事は『不法投棄にどのような対処を行うか』という点になるしょう。
そして正攻法を執るならば、犯人を特定して警察に訴え出た上で、民事訴訟を起こして損害賠償を請求するという方法になるでしょうが、たとえ防犯カメラを設置してその映像を警察に提供したとしても、犯人が捕まる(特定される)確率は非常に低いものとなりますから、あまりお勧めはできません。
そこで最も重要となるのが、とにかく「不法投棄をさせない」ことです。
なお具体的な手段としては、敷地にバリケードを作ってしまうが一番手っ取り早い方法となりますが、杭を打ち、ロープを張り巡らすくらいでは厄介者共は平気で侵入して来ますから、
「乗り越えるのが困難な高さの金属製の金網フェンスの設置」や「短いスパンで杭を打ち、胸の高さ以上にネットを張り巡らせたバリケードの作成」が必要となります。
更に、こうしたバリケードを設置した上で監視カメラやセンサーライトを取付ければ「対策は万全」と言えるでしょう。
但し、月極め駐車場など人の出入りがある場所ではバリケードを作る訳にも行きませんので、防犯カメラやセンサーライトを設置する程度の対策しか講じられないのが現実です。
ちなみに防犯カメラを設置した場合には、実際に不法投棄が行われた際に警察へ情報提供を行うと共に、敷地内に防犯カメラの画像を貼り出して「晒しもの」にするという方法も有効でしょう。
また私の経験上、「敷地内の清掃」や「設備の維持管理」、「物件巡回」を頻繁に行うことも非常に重要です。
月極駐車場であれば、ゴミ一つ落ちておらず、美しく白線が引かれて車両が整然と並んでいるような状態を維持しておくだけ、不法投棄を行う者も「ゴミを捨てる場所に選ばない」ものです。
これに対して雑草が生え茂り、白線も消えかけている「荒れた印象の駐車場」であれば、『ここならゴミを捨てても気付かれないだろう』という気持ちになるものですから、不法投棄を防止したいのであれば土地の管理を徹底するべきでしょう。
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敷地への不法投棄問題まとめ
さてここまで、不法投棄の問題についてお話をしてまいりました。
記事内においては「捨てさせない対策」に関しても述べさせていただきましたが、正直に申し上げて「完璧な防御は不可能」というのが現実です。
なお、国としては罰則を強化するという方向で不法投棄を抑止しようと試みているようですが、現実には殆ど効果を成してしないのが実情でしょう。
もちろん予算の問題もあるとは思いますが、被害者の保護に重きを置いた不法投棄対策が行われるようになることを望むばかりです。
ではこれにて、「敷地への不法投棄問題を考えます!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。