マイホームの購入などに際して、時折目にするのが「区画整理」という言葉となります。

区画整理と言えば「古い街並みをリニューアルして、新たな街を作る事業」という程度のことは理解できますが、その詳細については『正直よくわからない』という方も多いはずです。

そこで本日は「区画整理とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、区画整理の概要やこれに係わる土地を購入する際のポイントや注意点について、詳しくご説明していきたいと思います。

区画整理

 

区画整理の概要

これまで本ブログでは、都市計画法などの様々な法律によって「土地利用」や「建物の建築」に様々な制限(法令上の制限)が課せられる旨をお話ししてきました。

そして、こうした『法令上の制限』が定められる背景には「国や自治体が理想とする街並みを実現させる」という目的があるのです。

確かに、土地の最低面積を定めれば「ゆったりと余裕のある街並み」が出来上がるでしょうし、10m以上の高さの建築を禁止すれば「戸建てを中心にした閑静な街」となりますから、『理想とする街並みを実現するために法令上の制限を課する』ことは一定の効果が期待できます。

しかしながら、道幅の狭い道が蛇行し、雑多に古屋が立ち並ぶような地域においては、前述したような法令上の制限を課したとしても、そう簡単には街並みにを一新することはできません。

そこで、こうしたケースにおいては

「事業(市街地開発事業)」という手法を用いることにより、一度街並みにをリセットして『新たな街を再構築する』

ことになるのです。

なお、こうした市街地開発事業にはいくつかの種類がありますが、我々にとっても最も身近なものとなるのが、土地区画整理法の則って行われる「土地区画整理事業」となります。

ちなみに、この土地区画整理事業は、県や市などの地方自治体が主導するもののみならず、民間主体で行われることも少なくありません。

さて、具体的な事業の進め方としては、

土地所有者が協力して目指す街並み造りに障害となる建物等を全て取壊した上、不整形な土地を統合した上で道路などを敷設、その後は各所有者へ土地の再分配を行う

という流れとなります。

さて、ここまでの解説をお読みになり、「これ程の大規模な事業が本当に必要なのだろうか」と疑問を持たれた方も多いことと思います。

確かに区画整理は非常に大掛かりな事業であり、多くの手間と労力を必要とする作業となりますが、

  • 土地の形状は変更されるものの、従前の住人が住み続けることができる
  • 道路や区画が整備されることで土地の価値が上昇する
  • 事業地の一部(保留地)を売却することで資金を捻出するため、地権者等の負担が少ない

以上のような非常に大きなメリットが得られるため、現在でも多くの事業が継続中なのです。

区画整理の流れ

ここまで区画整理事業の概要を解説してまいりましたが、本項ではより詳細に事業の流れを解説していきましょう。

区画整理事業の流れとしては

  1. 区画整理事業の立案
  2. 測量などの調査
  3. 地権者の同意を取り、組合等を発足
  4. 区画整理の計画決定
  5. 区画整理の事業決定
  6. 仮換地の指定
  7. 工事着工
  8. 保留地の処分や換地計画の策定
  9. 換地処分
  10. 事業完了

以上のようなものとなります。

区画整理の第一段階は事業の立案となりますが、既にお話しした通り、国や地方自治体、民間主導など事業主体には様々なパターンがありますので、ここでは『民間主導のケース』を例に挙げてご説明していきます。

地域の地権者などが話し合って区画整理事業を行う決心(立案)をすれば、まずは測量や土地の権利関係の調査などを行って、計画の草案を決めることになるでしょう。

こうして草案が決定したなら、続いては事業主体となる『組合』を設立することになります。(組合結成には7名以上の人員、地権者の2/3以上の同意が必要です)

なお、組合の設立に当たっては地方自治体の許可が必要であり、公告を受けた後に「正式に区画整理事業がスタートする」ことになるのです。

さて、区画整理事業においては

  • 計画決定
  • 事業決定

という2つの段階があり、計画決定は事業化開始される前の準備段階で新たな建物の建築などに一定の制限が課せられることとなります。

一方、これが事業決定へと移行した場合には、原則として建築行為等が禁止されることとなり、いよいよ着工に向けての具体的な準備が進んでいくのです。

そして、事業決定後にまず行われるのが「仮換地の指定」というもので、

『事業開始前に保有していた土地(従前地)』に代わって割り当てられる「仮換地」が指定される

ことになります。

この仮換地の指定が行われた後は『従前地』の使用収益ができなくなり、建物等の取り壊しがスタートするのです。

また、制度上は「仮換地」の指定後に改めて正式な『換地』が地権者に割り振られるルールなのですが、実務上は仮換地がそのまま換地の指定を受けるケースが殆どとなるようです。

ちなみに従前地と換地(仮換地)の面積を比較した場合、換地の面積は『従前地よりも減少している』のが通常です。

こうした事態が発生する理由は

事業に参加した地権者が少しずつ土地の一部を組合に提供し(減歩を行い)、提供した土地を集約して『保留地』を確保して、この保留地を売却することで事業資金の捻出する

という区画整理の資金調達法によるものとなります。

※区画整理においては原則として地権者は費用を負担せず、保留地などの売却で事業資金を賄いますが、国や自治体からの交付金が費用に充てられるケースも少なくありません。

※計画が資金難に陥って保留地の売却しても資金が足りない場合には、別途地権者が賦課金(事業資金の提供)の負担を強いられる場合もあります。

「土地の面積が減ってしまう」と聞くと、地権者にとって非常に不利な制度に思えるかもしれませんが、区画整理が完了すれば土地の評価額は格段に向上するため、土地の面積が減少しても、決しては損をする訳ではないのです。

但し、事業完了後に「従前地」と「換地」の価格を厳密に比較した場合、その価値に誤差が生じることも珍しくありませんので、こうしたケースでは事業の公平性を図るため「精算金」という名目で地権者と組合との間で金銭の受け渡しが行われることになるでしょう。(地権者が精算金を受取ることがあれば、逆に支払いを求められる場合もあります)

こうして「保留地の処分」や「換地の計画」が完了すれば、区画整理事業はようやく完了を迎えることになり、指定された換地を利用しての新生活が始まることになります。

区画整理の事業区域内の不動産取引

これまでの解説において区画整理事業の概要についてはご理解いただけたことと思いますので、ここからは区画整理と不動産取引というテーマでお話しさせていただきたいと思います。

マイホーム探しをしていると、時折「区画整理の事業区域内」に所在する物件を目にすることがありますが、こうした物件については注意すべき点も少なくありませんので以下で詳しく解説していきましょう。

区画整理事業地内の法令上の制限に注意

既にご説明した通り、区画整理には計画決定事業決定という2つの段階がありますが、この状態の土地は「建築や土地利用に様々な制限が課せられる」という点に注意が必要です。

なお、計画決定の段階においては

  • 市街地開発事業の施行区域内(区画整理の区画内)に建築物を建築する場合には、都道府県知事等の許可が必要となる
  • 許可を得ることができるのは容易に移転、または除却が可能な建物であることに加え、2階以下で地階(地下室)がなく、主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロツク造等のものとなる

また、事業決定に段階においては

  • 土地の形質の変更
  • 建築物その他の工作物の新築、改築もしくは増築
  • 政令で定める移動の容易でない物件(重量5トンを超える物件)の設置もしくは堆積

以上の行為に『都道府県知事の許可』が必要となりますが、通常の理由では許可は下りませんので、不動産購入などにおいては注意が必要となります。

事業の進捗状況によって、土地面積等が確定しない場合がある

区画整理の事業区域の土地売買においては法令上の制限以外にも、事業の進捗状況よって事業完了後の土地(換地)の面積や形状、引渡し時期などが確定しない点に注意が必要になります。

区画整理の事業が開始されると従前地は使用できなくなり、建物等の解体が始まることになりますが、この段階に至っても土地の売買自体は可能です。

但し、仮換地が指定されていても、この段階では仮換地に登記を行うことはできませんので、

「従前地を売買対象とした契約」を締結せざるを得ない(とりあえずは従前地を売買対象として、事業完了後に換地の引渡しを受ける)

というのが実情です。

よって、区画整理事業が初期の段階(計画決定の段階など)では、

  • 換地の面積や土地の形状が確定していない
  • 「予定面積」と「実際に引き渡される換地の面積」に誤差が生じる
  • 事業が予定通りに進まず、引渡し時期が大幅に遅れる

といった事態が発生するリスクがあります。

なお、事業が進むに連れて「仮換地図」等の図面が交付されたり、「換地処分の公示」が行われるなどして、段階的に引渡される土地の概要が明確になっていくことになりますが、区画整理事業地内の物件を売買する際には、その段階で公開されている情報を徹底的に調査し、未確定な部分がある場合にはリスクを覚悟した上で取引に臨む必要があるのです。

※取引のスケジュールによっては、従前地の所有権移転登記を行った後に換地の引渡しを受ける(換地の引渡しを受ける前に売買代金を支払う)ケースもあります。

精算金や賦課金に注意

「区画整理の流れ」の項において、区画整理においては原則として地権者は費用を負担せず、保留地などの売却によって事業資金を調達する旨を解説いたしました。

そして、この保留地は各地権者が従前地から少しずつ土地を提供することによって生み出されることになりますが、区画整理によって道路や区画が整備されたことで地価が上昇するため、面積が減少しても必ず地権者が損をする訳ではありません。

但し、実際に従前地と換地の価格を比較した場合に『誤差が生じる』ことも珍しくありませんから、

区画整理事業の終盤で『この誤差を修正するための精算金の授受』が地権者と組合の間で行われる

ことになるのです。

なお、この精算金は地権者が組合から受け取る(交付を受ける)場合もあれば、反対に地権者が組合に精算金を支払う(徴収される)ケースもありますので、売買においてはその『金額』や『支払い時期』についてしっかりと調査を行う必要があるでしょう。

一方、区画整理事業の中には計画の途中で資金難に陥る場合もありますが、こうしたケースでは

地権者から賦課金を徴収して資金を調達する

ことになります。

こうした賦課金の負担を知らずに土地の取引が行われると、後々トラブルに発展する可能性がありますので、こちらについても十分なリサーチが必要となるでしょう。

保留地を購入する場合の注意点

前項にて区画整理事業の資金を調達するために保留地を確保し、これを売却する旨をお話しいたしましたが、この保留地を購入する際には少々注意が必要な点があります。

保留地は区画整理事業の途中で組合などから売りに出されますが、

保留地の所有権移転登記が行えるのは事業完了後となる

のが通常です。

もちろん、区画整理事業の事業者が売主ですから、引き渡しを受けられないと言ったトラブルが発生する可能性は非常に低いのですが、登記が行えないということは金融機関も抵当権の設定が行えないため、住宅ローンの利用を断られてしまうケースがあるでしょう。

なお、銀行の中にはこうした条件でも特例的に融資が利用できるところもありますが、借入を希望する金融機関が対応してくれないリスクは覚悟の上で購入に踏み切る必要があります。

区画整理とは?わかりやすく解説まとめ

さてここまで、土地区画整理事業をテーマに解説を行ってまいりました。

数種類ある市街地開発事業の中でも、区画整理は最も私たちが遭遇する機会の多い事業となりますので、この機会にその仕組みや不動産売買に際してのポイントや注意点を押さえておいていただければ幸いです。

ではこれにて「区画整理とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。