マイホーム探し等をしていると実に様々なロケーションの物件を目にすることとなりますが、「海沿い」などと並んで高い人気を誇るのが『川沿いの物件』となります。
確かに『見晴らしの良いリバービューの物件』には心揺さぶられるものがありますが、川が近いということで防災面での不安をお持ちの方も多いでしょうし、実は「河川法という法律による法令上の制限」にも注意が必要となるのです。
そこで本日は「河川法とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、リバーサイドの物件を購入する際に是非押さえておくべき河川法の注意点やポイントについてお話ししていきたいと思います。

河川法の概要
ではまず最初に「そもそも河川法とはどのような法律であるか」という点からはお話ししていきましょう。
河川法は1964年(昭和39年)に施行された法律であり、国土の保全や公共の安全を確保するべく、河川管理のルールを定めたものとなります。
そしてこの法律においては、国内の河川に対して
- 一級河川/国土交通大臣が管理
- 二級河川/都道府県知事が管理
- 準用河川/市町村長が管理
という「河川の等級」と「管理者」の指定を行っています。
※上記3種類以外の河川は『普通河川』と呼ばれ、河川法の支配を受けない河川となりますが実際の管理は市町村長が行うことになります。
こうして管理者が定められた河川においては、河川法に基づいて「治水に係わる行為」や「土地の利用」、「土石の採集」などについて、様々なルールが定めらていくことになるのです。
河川法の行為制限区域
前項にて河川法によって様々な行為の制限(法令上の制限)が課せられる旨をご説明いたしましたが、具体的にどのようなルールが定められているのでしょうか。
そこでここからは、河川法により定められる
- 河川区域
- 河川保全区域
- 河川予定地
- 河川保全立体区域
- 河川予定立体区域
という『5つの区域内』での行為制限についてご説明してまいります。
河川区域
さて、最初にご紹介する河川区域は
「河川そのもの」と「河川管理施設(ダムなど)」、そして「土手(堤防)」を合わせた区域
のことを指します。
そして、この河川区域内においては
- 工作物の新築や改築、または除却
- 土地の掘削、盛土や切土、土地の形状を変更する行為、または竹木の栽植や伐採
引用元: 河川法26、27条
を行う場合に、『河川管理者の許可を得なければならない』と定められています。
河川保全区域
続いてご紹介する河川保全区域とは、
河川区域の境界線から(原則として)50mの範囲に指定される区域
のことで、河川管理者が管理上の必要性がある場合にエリア指定を行うものとなります。
そして、この河川保全区域においては
- 土地の掘削、盛土または切土、土地の形状を変更する行為
- 工作物の新築または改築
引用元: 河川法55条
以上の行為に際して『河川管理者の許可を得なければならない』というルールになっています。
河川予定地
河川予定地とはその名が示す通り、
新たに(これから)河川区域となる予定の地域
に指定されるものとなります。
なお、この河川予定地域においは
- 土地の掘削、盛土または切土、土地の形状を変更する行為
- 工作物の新築または改築
引用元: 河川法57条
に際して『河川管理者の許可が必要』という定めになっているます。
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河川保全立体区域
河川法においては河川の維持管理に必要なダムや水門、ポンプ施設などの施設のことを「河川立体区域」と呼んでします。
そして、本項にてご説明する河川保全立体区域は
これらの設備(河川立体区域)を維持管理していく上で必要なエリア
に指定されるものとなります。
この河川保全立体区域においては
- 土地の掘削、盛土または切土、土地の形状を変更する行為
- 工作物の新築、改築または除却
- 載荷重が1㎡につき2トン以上の重量の土石等の集積
引用元: 河川法58条
に際して、『河川管理者の許可を得なければならない』というのがルールです。
河川予定立体区域
前項にて河川保全立体区域をご紹介いたしましたが、本項で解説する『河川予定立体区域』は
これから河川保全立体区域となる予定の地域
に指定されるエリアです。
そして、河川予定立体区域においては
- 土地の掘削、盛土または切土、土地の形状を変更する行為
- 工作物の新築、改築または除却
引用元: 河川法58条
について『河川管理者の許可が必要』という定められています。
河川法と不動産取引
ここまで河川法の概要と、この法律によって指定される行為制限エリアについて解説してまいりましたが、本項では水防法が実際の不動産取引に及ぼす影響についてご説明してまいります。
重要事項説明における取り扱い
不動産取引において、不動産会社が仲介に入る場合には契約前の重要事項説明が必須となりますが、
ここまで解説してきた「河川区域」「河川保全区域」等の『5つの行為制限区域』については、売買に際して必ず買主に対して告知されるべき事項
となります。
なお、これらの区域において建築行為など行う際には河川管理者の許可が必要となりますが、『1級、2級など河川の種類によって管理者が異なる』ことに加え、『制限される行為に対する許可基準も変わってくる』という点には大いに注意が必要となるでしょう。
物件調査における注意点
前項でもお話しした通り、河川法の行為制限エリアは売買に際して必ず重要事項説明で取り扱うべき事項となりますので、売買に臨む際には『充分な調査』が必要となります。
ちなみに、河川区域については「河川自体と堤防(土手)が指定区域」となりますので、この区域が不動産取引の対象となるのはレアケースとなるはずです。
また、河川区域の指定を受けている場合には土地の登記簿謄本(登記事項証明書)の表題部にその旨が記載されるルールになっていますから、土地の一部が区域指定を受けている場合でも、これに気付けるケースが多いはずです。
※登記簿に記載がない場合でも、河川や土手に近い土地の売買に際しては、念のため河川管理者へ区域指定の有無を確認しておきましょう。
これに対して河川保全区域は土手から一定の距離に指定される制限エリアなので、不動産取引においては最も注意すべき行為制限区域となるはずです。
また、原則として河川区域の境界から50mというルールがありますが、10mや20mといった区域もありますし、そもそも河川保全区域を指定していない河川も少なくありません。
そして、河川法の調査において最も注意すべき点は、先程もお話しした通り、
「河川の種類によって管理者が国土交通省(国)や都道府県、場合によって市町村であるといった具合に窓口が変わってくる」ことに加えて、『行為に対して許可を下す基準も異なってくる』
という点となります。
河川法が売買価格に及ぼす影響
では最後に、水防法が不動産の価格に与える影響についてご説明しておきましょう。
水防法の行為制限エリア内の物件については、建築等について河川管理者の許可が必要となりますので、行為制限のない土地に比べて「売買価格は安価となる傾向」にあります。
但し、前項でも解説した通り、許可基準は管理者によっても変わってきますし、「木造2、3階建ての物件を建てるのであれば、確実に許可が下りる」というのであれば、制限区域外の物件と価格の差が付かないケースが殆どでしょう。
よって、河川法の制限を受けるエリアの物件購入をご検討される場合には、
対象の区域で如何なる制限が課せられており、物件の面積や地形の加味した上で「土地利用にどの程度支障が出るのか」をしっかりと把握すること
が何よりも重要となるのです。
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河川法とは?わかりやすく解説まとめ
さてここまで、河川法をテーマに解説を行ってまいりました。
河川法は不動産を売買する上で注意すべき法令上の制限となりますが、川に近接している場合には水防法や特定都市河川被害対策法など、水害に関係する法律によって地価に影響が生じる可能性も十分に考えられますので、河川法のみならず他の法令やハザードマップの内容についても確認を怠らないようにしてください。
ではこれにて、「河川法とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。