街中の「少し長閑な地域」を歩いている際などに、時折見掛けるのが『生産緑地』という看板です。

また、2020年頃には「この生産緑地が不動産価格に大きな影響を及ぼす」などという噂もありましたが、これは一体どのようなお話だったのでしょう。

そこで本日は「生産緑地とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、生産緑地の概要やメリット・デメリットなどについてご説明していきたいと思います。

生産緑地2022年問題

 

生産緑地の概要

ではまず最初に、「そもそも生産緑地って何だろう?」という点からお話を始めてまいりましょう。

生産緑地とは都市計画法によって定められる地域地区の一種となり、

市街化区域において「都市農地の計画的な保全を図る」ことを目的に設定される区域

となります。

高度経済成長時代、我が国の都市部は深刻な住宅不足の状態となっていたため、政府はそれまでの「農地に対する税務上の軽減制度」を撤廃したのです。

そして、この制度変更により農地を放出する農家が激増し、「住宅地を確保したい」という政府の思惑は成功することになりますが、過度な開発は『住環境の悪化』や『防災体制の脆弱化』などの大きな問題を引き起こすとの批判が高まり始めます。

そこで政府は1974年(昭和49年)に生産緑地法を施行し、

  • 300㎡以上の広さの土地であること(法改正により当初の500㎡以上より緩和)
  • 農林漁業の継続が可能な条件を備えている土地であること
  • 農地等利害関係人(所有者等)の同意が得られていること
  • 環境の保全等に効果的で、公共目的の土地としてふさわしいものであること

といった条件を満たした農地について「生産緑地としての指定」を行った上、税制上の優遇を受けられる制度を導入することにしたのです。

さて、税制優遇が受けられとなれば「農家の方にとっては非常にありがたい制度」という気がしてまいりますが、当然ながら生産緑地にもメリットとデメリットが存在しますので、以下で詳しく解説してまいりましょう。

生産緑地のメリット

ではまず、生産緑地のメリットから見ていくことにいたします。

固定資産税等が安くなる

農地と言えば「固定資産税等が安い」というイメージをお持ちかもしれませんが、都市部近郊(市街化区域内)の農地については『それなりの税額』となってしまうケースも珍しくありません。

実は一口に農地と言っても

  • 一般農地/市街化調整区域にある農地
  • 一般市街化区域農地/一般的な市街化区域にある農地
  • 特定市街化区域農地/三大都市圏の特定市にある市街化区域農地

という3つの種類があり、農地の種類に応じて

  • 一般農地     /(評価方法)農地評価  (課税方法)農地課税
  • 一般市街化区域農地/(評価方法)宅地並み評価(課税方法)農地に準じた課税
  • 特定市街化区域農地/(評価方法)宅地並み評価(課税方法)宅地並課税

以上のように固定資産税等の評価方法や課税方法が異なっており、一般市街化区域農地や特定市街化区域農地における税額はかなり高額となるケースが多いのです。

なお、生産緑地の指定を受けることができれば、市街化区域でありながら「一般農地と同等の評価方法や課税方法が適用される」ことになりますから、その節税効果は絶大なものとなります。

※生産緑地に指定された場合、従前の1/10、1/100の税額となることもあります。

農地における相続税納付の猶予

生産緑地においては相続税についても優遇を受けることができます。

相続税は土地の評価額を算出し、これに税率を掛けて計算されますが、生産緑地においては

「農業投資価格という特殊な評価額(非常に安価)を用いて計算された税額」のみを納税するものとし、これを超える『通常の評価額で計算された税額』の支払いは猶予される

という特別ルールが存在するのです。

なお、農業投資価格で計算された相続税額は非常に安価なものとなりますので、強力な相続税対策となるのは間違いないでしょう。

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生産緑地のデメリット

さて続いては、生産緑地のデメリットについて解説してまいりましょう。

30年間は農地を続ける必要がある

生産緑地の指定を受けた場合には、その後30年間に渡って農地として運営していくことが義務付けられることになります。

そして、「農地として存続するために必要な用水路の管理」なども義務に含まれることになるでしょう。

ちなみに、30年が経過したとしても自動的に生産緑地の指定が解除される訳ではなく、

  1. 「自治体への土地の買取り申立ての申請」を行う
  2. 買取りが不能な場合は「農林漁業希望者への売却のあっせん」が行われる
  3. あっせんが不調に終わった場合は「行為制限が解除され、通常の売却が可能となる」

以上の順番で処理が行われることにとなるのです。

ちなみに30年の経過を待たずに指定が解除されるには、農業従事者の「死亡」や「大怪我」などの理由が必要となります。

生産緑地は土地利用が困難となる

前項で解説した通り、生産緑地は原則として30年間に渡って農地として利用する必要がありますが、土地の利用に際しては

  • 建築物その他の工作物の新築、改築または増築
  • 宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更
  • 水面の埋立て、または干拓

以上の行為を行うのに際して『都道府県知事の許可』が必要となります。(災害発生時の応急措置などは例外となる)

また、知事への申請を行ったとしても

  • 農林漁業を営むために必要となる生産、貯蔵、集荷等の施設
  • 農林漁業に従事する者の休憩施設
  • 農産物等の販売施設

などの目的以外には、許可が下りないのが実情です。

更には、農地を宅地として利用する際などに必要な「農地転用の手続き」も不能となるため、土地の利用には非常に大きな制限が課されることになるでしょう。

相続税の納付猶予の落とし穴

生産緑地のメリットの中でご紹介した「相続税の納付猶予」には意外な落とし穴があります。

生産緑地に指定されることで確かに相続税の納付は猶予されますが、

農地としての利用を停止してしまった際には、猶予されていた相続税の支払いが求められる上に、利子税まで請求される

ことになるのです。

なお、多くの生産緑地においては相続税の猶予から20年経過で「相続税が免除」となりますが、特定市街化区域農の中には『被相続人が亡くなるまで免除とならないケース』もあります。

生産緑地の2022年問題とは何だったのか?

さて、これまで解説にて生産緑地の概要についてはご理解いただけたことと思いますが、ここで気になるのが「冒頭でお話しした2022年問題とは何だったのか」という点でしょう。

既にお話しした通り、生産緑地においては30年間の営農義務が課せられることになりますが、生産緑地法が改正された1992年から数えて30年目に当たるのが「2022年」となります。

そして、この30年が経過した後は特典として与えられていた税務上の優遇措置も適用されないルールとなりますから、生産緑地を保有する農家の負担は一気に増大することになるはずです。

なお、こうした状況において生産緑地が一気に売りに出されることになれば、都市部において12000ヘクタール(東京で言えば世田谷区と大田区の面積合計を超える広さ)もの土地が売却されることになりますから、

『地価が一気に下落するのでは?』という危惧が生じた

というのが「2022年問題」なのです。

※生産緑地の指定が解除された土地については地方自治体に買取りを求めることができる等のルールもありますが、必ず買ってもらえる訳ではありません。

そこでここからは、「2022年がどのように決着したのか」という点について見ていきましょう。

生産緑地の指定解除で本当に地価は急落したのか

まず結論から申し上げれば、2022年に地価の暴落と言った事態は発生しませんでした。

そして、その背景には地価の暴落を防ぐために以下のような対策が講じられたことによります。

特定生産緑地の指定

実は生産緑地に係わる2022年問題については、政府も危惧していたようで2018年から「特定生産緑地」という新たな制度をスタートさせていました。

この制度を利用して「特定生産緑地の指定を地方自治体から受ける」ことができれば、たとえ2022年に生産緑地の指定解除を受けても、

その後10年単位で特定生産緑地として固定資産税等の税制優遇を受けることが可能となる

のです。(10年毎に更新も可能)

また、生産緑地の場合にはビニールハウスや農具小屋等の営農に関連した施設しか敷地内に建設できなかったのに対して、特定生産緑地では「野菜や果物の直売所」や「収穫した作物を利用したカフェ・レストラン」の設置等が許可されることになりました。

近年、農家は潜在的な後継者不足の問題を抱えていますが、「特定生産緑地」の指定を受ければ営農の義務も10年刻みとなり、高齢となった農業従事者の負担を軽減させることができるでしょうし、カフェやレストランの経営ができるとなれば年老いた両親の跡を継いで農家に転身する若者も増えていく結果となったようです。

農地賃貸制度の拡充

これまでの生産緑地においては、「農地を第三者に貸し出した場合には固定資産税等の税制優遇を受けることができない」というのがルールでした。

また、農地を第三者に貸し出した場合には土地の返還について地方自治体の許可などが必要(農地法18条)であり、一度農地を賃貸してしまうと『簡単には取り戻せない』のが実情だったのです。

しかしながら2018年に施行された「都市農地の賃貸の円滑化に関する法律」においては、

農地を第三者に貸し出した場合でも生産緑地の税制優遇を継続することが可能となりましたし、農地法18条による制限も受けない

ことになりました。

これにより、今後はビジネスとして「農地の貸出し」が行える可能性も出てまいりますので、2022年を境に一気に農地が売り払われるリスクはかなり軽減されることとなったのです。

生産緑地の分布と期限

1992年の生産緑地法の改正から30年目となる2022年ですが、この年を迎えたからと言っても一気に全ての農地が生産緑地の指定を外される訳ではありません。

ちなみに国土交通省の資料によれば、2022年に生産緑地の指定を外れるのは全体の約80%程度とされています。

また、各県の生産緑地の分布を見てみれば、東京は全体の約25%を占めるものの23区内には指定区域が少ないですし、大阪府16%、埼玉県13%、神奈川県10%といった具合にかなり分散されていますから、一定量の生産緑地が売却されたとしても地価への影響は限定的となるはずです。

更に、相続税の優遇を受けるためには相続発生から20年間は営農を続ける必要がありますから、

たとえ1992年に生産緑地の指定を受けていたとしても、2022年に土地の売却できない農家が多かった

ことも理由の一つと言えるでしょう。(特定生産緑地制度を利用せざるを得ない)

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生産緑地とは?わかりやすく解説!まとめ

さてこれまで、生産緑地というテーマで記事をお届けしてまいりました。

マイホーム探しにおいて「生産緑地を購入する」といったケースはないでしょうが、生産緑地に接する土地などを購入すれば長年に渡って閑静な住環境を維持できる可能性が高まりますから、物件を探しておられる方は是非この記事の内容を頭の片隅に留めておいていただければ幸いです。

ではこれにて、「生産緑地とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせいただくことといたします。