現在、不動産市場において活発に売買されているのが、不動産投資を目的とした収益物件となります。

また世界経済を見渡せば新型コロナウイルスのパンデミックや中国経済の失速などを受けて「今後の見通しが不明瞭な時代」に突入していますから、『景気動向に左右され辛い不動産投資に人気が集まるのも当然と言えば当然』かもしれません。

但し、収益物件の売買については「マイホーム用物件とは異なる様々なリスク」が潜んでいるものですから、『一般の方が不動産投資に参入するには少々ハードルが高い』というのも事実でしょう。

なお、一口に「収益物件ならではリスク」といっても、『賃借人が入居中のために室内を確認できず、雨漏りなどの瑕疵に気付けない』といった物理的な問題から、『物件を購入して直ぐに退去が連発し、想定していた賃料収入が得られない』などの収益面のトラブルまでその種類は様々です。

ちなみに数あるトラブルの中でも、非常に厄介なものとなるのが「物件オーナーと賃借人の間で繰り広げられる賃貸借契約にまつわる揉め事(賃料の滞納や退去時の揉め事等)」となりますので、これから収益物件を購入される予定の方は充分に注意を払うべきでしょう。

そこで本日は、私が実際に体験した賃貸借契約絡みの厄介事を「収益物件売買時の賃貸契約トラブル体験記をお届け!」と題して、ご紹介してみたいと思います。

収益物件売買時の賃貸契約トラブル

 

収益物件の売買

今回の顛末記の舞台となる物件は駅から徒歩8分、築年数15年の木造2階建てアパートというスペックのものになります。

なお、現在では売買専門の営業マンとして仕事をしている私ですが以前は賃貸管理を担当していた関係で、地元の地主さんとは未だに繋がりを持っており、今回はこうした大家さんのお一人からアパートの売却を依頼を受けたという訳です。

ちなみに、こちらの物件は立地も良い上に満室となっていましたから、売却希望価格も「それなりのお値段」となることを予想していたのですが、地主さんは『急遽資金が必要』とのことでしたので価格はグッとお値引して表面利回り8%という値付けで募集を開始します。

また、この時の私は既に収益物件の売買経験もそれなりに積んでいましたので、「あまり苦労せずに取引を終えられそうだな・・・」などと気軽に考えながら、レインズに物件登録を行って購入希望者が現れるのを待つことにしました。

そして待つこと2週間、知り合いの不動産業者さんがお客様をご案内してくださり、見事に買付け(お申込み)を頂くことに成功します。

その後も売買契約の締結、決済と順調にお話は進んで行き、引渡し後の物件管理も私の会社に任せて頂けることとなりました。

そこで各入居者に向け、「アパートの所有者変更に伴い、賃料の振込口座が変わります」という旨を通知をすることにします。

実はこうした収益物件のオーナーチェンジにおいては「誤って以前の大家さんの口座に賃料を振込んでしまった」という入居者が少なからず居るものなのですが、今回は誰一人として間違える者がおらず『幸先の良い賃貸管理業務のスタート』を切ることができました。(売買の前から管理をしていたので厳密にはリスタートですが)

但し、1人だけ少々賃料が少々遅れ気味の入居者がおりましたので、若干気にはなっていたのですが、オーナーチェンジから2年目に差し掛かる頃にはこの入居者が2ヶ月分の賃料を溜め込む「滞納者」へと育ってしまったのです。

その上この入居者は賃貸保証会社は利用しておらず、本人にどんなに督促しても滞納分の回収は難しそうなので、ここは連帯保証人に連絡する他はありません。

そこで止む無く連帯保証人に電話を入れて「事の次第」を伝えた上で、賃料の支払いをお願いしたところ、話を聞き終えた連帯保証人(以下 H氏)からは「近日中に(私の)会社へ伺う」とのお返事が返って来ます。

こうしたH氏の対応に『わざわざ出向いて支払いをしてくれるなんて、どれだけ誠意のある保証人なのだろう』と感心すると共に、トラブル解決への光明に管理人は胸を撫で下ろすのでした。

それから10日後、40代半ばと見受けられる暗そうな雰囲気の男性(H氏)が私の店舗に現れます。

そして、『滞納賃料を支払いに来てくれた』と思い込んでいる私は賃料の領収書を片手に笑顔で彼を迎え入れますが、H氏の口からは意外な台詞が飛び出したのです。

「物件のオーナーが変更された以上、私に連帯保証人としての債務は存在しません」、これがH氏の主張でした。

トラブル発生

このH氏、賃料を滞納している入居者の兄であり、現在は一般の企業で働いてものの数年前まで司法試験合格を目指して猛勉強をしていたという経歴の持ち主であるといいます。

そして、彼の主張によれば「賃貸借契約は指名債権であるため、債務者である自分に通知を行わずに債権が譲渡された以上、契約は無効である」とのことです。

 

『指名債権て何?』

 

お恥ずかしながら、H氏の主張を聞いた際の私の率直な感想はこのようなものでした。

なお、当然ながらこの状況でまともな反論ができるはずもなく、とりあえずは返答を保留して「後日ご連絡をする」こととしました。

そこで慌ててネットなどを駆使して調べてみたところ、指名債権とは「支払う相手が限定された債権」を指す言葉であるようです。

また確かに金銭消費貸借契約(お金を借りる契約)や賃貸借契約などは、この指名債権に分類されており、指名債権の譲渡には債権を譲渡する人(今回の場合はアパートを売った地主さん)からの通知、又は債務者(入居者や連帯保証人のH氏)の承諾が必要であるといいます。

ちなみ入居者に対しては、賃料の支払先変更のお知らせにてオーナーが替った旨を伝えていましたが、確かに連帯保証人に対しては一切の通知をしていません。

しかし、これまでの収益物件の取引においても入居者への周知はしているものの、連帯保証人への通知など行ったことがありませんし、他の不動産業者さんからもこのようなトラブルが発生したという話は聞いたことがありません。

『さて、これは困った』と頭を悩ませてはみたものの、全く解決の糸口を見出すことはできませんでしたので、当社の顧問弁護士に相談してみることにします。

そして相談を持ち込んでから数日後、弁護士より回答の連絡が入って来ました。(先生が出張中であったため、メールで資料を送って連絡を待っていた)

『万が一にも連帯保証が無効となれば、これはかなりヤバイな・・・』などと心配しながら電話に出てみるますが、その答えはありがたいことに「問題なし」というものでした。

実は過去には、この問題を争点とした訴訟もあったようなのですが、「判決は保証人への通知は不要」とのことであったそうです。

但し、オーナーチェンジ後に著しく契約内容を変更している場合には無効となる可能性もあるとのですから、今後は注意が必要かもしれません。

そして、この弁護士からの回答をH氏に伝えますが、何やら納得がいかないご様子でしたので、顧問弁護士よりH氏に直接連絡を入れてもらったところ大人しく滞納賃料の振込みをしてくれるとのことでした。

収益物件売買トラブルまとめ

さてここまでが、私が体験した収益物件の売買に関する保証人トラブルの顛末となります。

私も長年不動産屋さんをしておりますが、自分の法律に関する知識の乏しさを深く反省させられる事件でした。

また、「先輩から教えられた」「仲間の業者がやっているから・・・」と根拠も考えずに契約ごとを進めることは『非常に大きなリスクを伴う行為』であることを思い知らされました。

今後は、こうしたトラブルをスマートに解決できるように精進を重ねて行きたいと思います。

なお顧問弁護士の先生曰く「H氏の知識レベルを考えれば、司法試験を諦めたのは正解だったと思う」とのことですから、H氏には是非他の道で頑張っていただきたいものです。

ではこれにて、「収益物件売買時の賃貸契約トラブル体験記をお届け!」のトラブル顛末記を締め括らせていただきたいと思います。