前回お届けした記事では「プライベートビーチ付き物件」の購入に際して、必ず知っておくべき海岸法についての解説を行いましたが、やはり『海辺の別荘やマイホーム』は多くの方が理想として掲げる物件であるようです。
そして、海沿いの物件を語る上で「プライベートビーチ」と並んで人気が高いのが、ヨットハーバーなどに隣接した『ハーバービューの物件』となるでしょう。
そこで本日は「港湾法とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、港に隣接する物件の購入に際して押さえておくべき、港湾法の概要や注意すべき行為制限地域のルールについてお話ししていきたいと思います。

港湾法の概要
港湾法は「港の秩序ある整備と適正な運営、そして交通(航路)を発展させること」を目的に、1950年(昭和25年)に施行された法律です。
なお、一口に港と言っても大小さまざまな規模のものがありますが、この法律では
- 国際戦略港湾/長距離輸送網の拠点となり、国際競争力の強化に必要な重要な港湾
- 国際拠点港湾/国際戦略港湾以外の国際海上貨物輸送網の拠点となる港湾
- 重要港湾/海上輸送網の拠点となり、他国の利害に重大な関係持つ港湾
- 地方港湾/表記以外の港湾
引用元: 港湾法第2条2項
とった種別分けを行って、そのルールを定めています。
また、こうした港の種類分けに加えて、湾岸法では数種類のエリア指定を行って湾岸地域の管理を行っているのですが、その詳細を解説する前に押さえておいていただきたいのが、
- 陸域/水際線(海と陸の境界線)より先の「陸地部分」
- 水域/水際線より先の「海」
という『港湾法における陸地と海の考え方』となります。
そして、陸域と水域という観念を前提に指定されるのが、
- 港湾区域/水域に指定される区域
- 港湾隣接地域/陸域に指定される区域
という区域であり、建築行為等に一定の制限が課せられることになります。
また陸域である港湾隣接地域については、これに重ねて臨港地区というエリア指定を行うことが可能です。
※臨港地区が港湾隣接地域に重ねて指定される場合、臨港地区の範囲は港湾隣接地域を超えてより広い範囲(より内陸の地域も含めた範囲)で指定を受けるケースが少なくありません。
この臨港地区は港湾の管理・運営上必要となる地域を確保するために、最小限度の範囲で指定される地域となります。
なお、臨港地区とは都市計画法における地域地区の一種となりますから、自治体が都市計画において定めるのが通常ですが、都市計画区域外においては港湾管理者が国土交通大臣の認可を受けて指定を行うことが可能です。
更に、この臨港地区内においては港湾管理者が
分区/港湾を安全・円滑に運用するために、臨港地区を更に細かく目的別に区域分けした地域
と言うエリア分けを行うこと可能であり、この地域においても一定の行為制限が課せられることになります。
このように港湾法では、ここまでご紹介してきたエリア制限を駆使して法律の目的である「港の適正な管理」を進めていくことになりますが、制限の詳細については次項で詳しく見ていくことにいたしましょう。
港湾法における行為制限
前項にて港湾法の概要についてはおおよそご理解いただけたことと思いますので、ここでは港湾法によって指定される
- 『港湾区域(海域に指定される区域)』と『港湾隣接地域(陸域に指定される区域)』
- 臨港地区内(港湾隣接地域と重複し、更にそれを超えた陸域側に指定される地域)に指定される『分区』
以上の地域における行為制限についてご説明してまいります。
港湾区域と港湾隣接地域
港湾区域と港湾隣接地域においては
- 指定区域の占用
- 土砂の採取
- 水域施設、外郭施設、係留施設、運河、用水渠きよ又は排水渠の建設又は改良
引用元: 港湾法第37条1項4号
- 港湾管理者が指定する護岸、堤防等の水際線から20m以内の地域での構築物の建設や改築
- 廃棄物(港湾管理者が指定したもの)の投棄
- 地下水の揚水施設(動力を用いたものが対象)の建設や改良
引用元: 港湾法施行令第14条
について「港湾管理者の許可」が必要となります。
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臨港地区内に指定される『分区』
臨港地区は湾の円滑な管理・運営を行うことを目的に、都市計画法、または港湾法において「港湾隣接地域を含む、より広い範囲の港湾に隣接した地域(陸域)」に指定されるエリアです。
そして、臨港地区内においては港湾管理者が『分区』と呼ばれる更に細かいエリア分けを行うことが可能であり、
- 商港区/旅客や一般貨物の取り扱いを行う区域
- 特殊物資港区/石炭、鉱石等の物資の取り扱いを行う区域
- 工業港区/工場等の施設を設置を目的とする区域
- 鉄道連絡港区/鉄道と鉄道連絡船との連携を目的とする区域
- 漁港区/水産物の取り扱い、漁業を目的とする区域
- バンカー港区/船舶用燃料の貯蔵・補給を目的とする区域
- 保安港区/爆発物等の危険物を取り扱いを目的とする区域
- マリーナ港区/マリンスポーツ、レクリエーションを目的とする区域
- クルーズ港区/観光旅客の利便性を図るための区域
- 修景厚生港区/景観整備、港湾関係者の福利厚生を目的とする区域
引用元: 港湾法第39条
以上の地域(分区)を指定することができます。
そして、上記のエリアについては
地方公共団体(都道府県等)が条例で定める各地域の利用目的を著しく阻害する建物の新築や改築、用途の変更は禁止というルール
になっています。
よって、実際の建築制限などについては『自治体ごとに異なるルール』が定められていますので、この点には注意が必要でしょう。
港湾法における各種協定区域について
ここまで港湾法における「エリア指定を伴う行為制限」についてご説明してきましたが、この法律では港湾管理者と『港に隣接する土地や施設等の所有者』との間で以下の協定を結ぶことができるルールとなっています。
- 特定港湾情報提供施設協定/見学施設等を所有者に代わって湾岸管理者が管理する協定
- 共同化促進施設協定/荷物の積み下ろし等を行う施設を所有者に代わって湾岸管理者が管理する協定
- 官民連携国際旅客船受入促進協定/クルーズ船の誘致などを目的に係留施設等を所有者に代わって湾岸管理者が管理する協定
- 協働防護協定/気候変動による浸水被害等への対処を円滑に行うこと目的とする協定
- 災害応急対策港湾施設使用協定/災害発生時の緊急輸送等の可能にするための協定
引用元: 港湾法
そして、上記の協定が結ばれた土地については
協定締結後に土地や施設の所有者になった者等に対しても協定の効力が及ぶというルール(協定の承継効)
になっているため、協定に伴う行為制限がある場合は物件購入者もこれに従う義務が生じるのです。
湾岸法と不動産取引
このように湾岸エリアの土地利用に様々な制限を課する港湾法ですが、実際の不動産取引においてはどのような点に注意すべきなのでしょうか。
まず、媒介業者(不動産業者)が介在する不動産売買で行われる重要事項の説明においては、取引対象の物件が
- 港湾区域と港湾隣接地域
- 臨港地区内に指定される『分区』
- 港湾法における各種協定区域
に存する場合に告知(および説明書への記載)が必要というルールになっています。
なお、港湾法の制限エリアの調査は港湾管理者に対して行うことになりますので、実務上は「都道府県等の担当部署」にて確認を行うことになるでしょう。
※近年ではホームページ上に制限エリアを掲載している自治体も少なくありません。
そして、最も気になるのが『港湾法の制限が不動産の資産価値に如何なる影響を与えるか』という点になりますが、これらの行為制限エリアに属する物件の売買に際しては、自治体等との綿密な事前打ち合わせや調査が必要となりますし、その結果次第では買主が思い描く土地利用ができない可能性もありますので、通常の物件と比べて「評価額はどうしても安価となってしまう」のが実情です。
但し、臨港地区内に指定される『分区』に属する物件については、「自治体が指定する用途に適した土地利用が目的の購入者」にとっては非常に価値のあるものとなりますので、こうしたケースでは通常の土地よりも高い資産価値を有することになるでしょう。
※マリーナ港区におけるレストラン用地などは、飲食店の用地として非常に魅力がある
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港湾法とは?わかりやすく解説まとめ
さてここまで、港湾法をテーマに解説を行ってまいりました。
『ハーバービューの物件』は非常に魅力的ではありますが、あまりに海に近づき過ぎると港湾法による様々な制限を受けることになりますので、これらの制限エリアから一歩離れた地域での物件探しがおすすめとなります。
また、ベイサイドエリアは津波などの災害のリスクが高い地域ですし、本日ご紹介した港湾法以外にも自治体が条例で独自の制限を課している地域も多いので、この点には十分にご注意いただきたいと思います。
ではこれにて「港湾法とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきます。