現在我が国ではインバウンド政策が功を奏し、多くの外国人が観光目的で来日を果たしています。
そして外国人観光客の多くが『日本の街並みや風景に大きな感銘を受けている』とのお話を耳にいたしますが、我が国にはその美しい景観を維持するための「景観法」という法律が存在していることをご存じでしたでしょうか。
そこで本日は「景観法とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、景観行政団体や景観計画、不動産取引の際に注意すべき景観計画区域等の法令上の制限についてお話ししていきたいと思います。

景観法の概要
冒頭にて「多くの外国人観光客が日本の景観を絶賛している」と申し上げましたが、日本が好景気に沸いた高度経済成長時代やバブル期には『経済活動を優先した無秩序な開発』が各地で繰り広げられていました。
しかしながら、こうした状況が続くに連れて徐々に私たち国民の心中に「美しい日本の風景を取り戻したい」という想いが強まっていくようになったのです。
そして、2004年(平成16年)に施行されることとなったのが、
美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造を目指した「景観法」という法律
となります。
なお、この景観法の概要を端的にご説明するならば、
「景観行政団体」と呼ばれる組織が『景観計画』となるものを策定し、この計画を実行するために必要な「景観計画区域」というエリア指定を行って、建築行為などに様々な制限を課することで景観を維持していく法律
ということになるでしょう。
景観行政団体と景観計画
前項にて景観法の概要についてはある程度ご理解いただけたことと思いますので、本項では「景観行政団体」と「景観計画」について更に詳しくご説明していくことにいたしましょう。
景観行政団体とは景観法の肝となる「景観計画」を策定する組織を指しますが、この団体となることができるのは
- 指定都市(50万人以上の人口を要件とする政令指定都市)
- 中核市(20万人以上の人口を要件とする政令指定都市)
- 都道府県
- 都道府県知事の同意を得た市町村
以上の自治体等となります。
そして、この景観行政団体が定めるのが「景観計画」であり、
- 現にある良好な景観の保全
- 地域の自然、歴史、文化等からみて、地域の特性にふさわしい良好な景観の保全
- 地域間の交流の拠点となる土地の良好な景観の保全
- 住宅市街地の開発等によって創設された景観の保全
- 今後、不良な景観が形成されるおそれがある地域の保全
引用元: 景観法第8条
などを実現することを目的に、
- 景観計画区域の設定
- 良好な景観の形成のための行為の制限
- 景観重要建造物または景観重要樹木の指定
- 屋外広告物等への制限
引用元: 景観法第8条
といったルールを定めていくことになるのです。
「景観計画区域」「景観地区」等の景観法に係わるエリア指定
ここまでの解説にておいて、景観法は「景観計画区域」を指定して『景観計画』を実現するための法律であることをご理解いただけたことと思います。
そして本項では、景観計画区域において『具体的にどのような行為の制限等が発生するのか』という点についてご説明していきたいと思います。
なお、景観法においては景観計画区域以外にも「準景観区域」「景観地区」「景観協定」という3つの区域指定が可能となりますので、各区域の違いについても合わせて解説していきましょう。
景観計画区域
景観法の区域指定の中でも最もメインの存在となるのが「景観計画区域」であり、景観計画は原則として景観計画区域の中のみで効力を発するものとなります。
なお、景観計画区域内における行為制限としては
- 建築物の新築、増築、改築もしくは移転、外観変更による修繕もしくは模様替、色彩の変更
- 工作物の新設、増築、改築若しくは移転、外観変更による修繕もしくは模様替、色彩の変更
- 開発行為等
- 良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれのある行為
- 景観計画に従い景観行政団体の条例で定める行為
引用元: 景観法第16条
などが定められており、これらの行為を行う際には「事前に景観行政団体(自治体など)の長へ届出」を行う必要があります。
また、景観計画区域では景観に大きな影響を与える建物や樹木について、景観行政団体が
- 景観重要建造物
- 景観重要樹木
という指定を行うことができますが、これらに対して解体、伐採などを行う場合には、届出ではなく景観行政団体の「許可」が必要となる点にもご注意ください。
さて、ここまでの解説をお読みになり「景観計画区域での行為制限は届出制が殆どなので、それ程厳しいルールではないな」と感じられた方も多いことと思います。
実は景観計画区域は「広い範囲に景観計画を設定するために、敢えて厳しい行為制限を定めていない」というのが実情なのです。
よって、景観行政団体がより「強力が行為制限を行いたい」と考える地域がある場合には、次項で解説する『景観地区』を設定することになります。
景観地区
既に解説した通り、景観計画において強力な行為制限を課したい際に設定されるのが『景観地区』というエリアです。
この景観地区は20種類以上ある地域地区の一つに数えられるものであり、都市計画区域内および準都市計画区域内のみに定められる制限区域となります。
なお、具体的な行為制限としては
- 建築物の形態意匠の制限
- 建築物の高さの最高限度または最低限度
- 壁面の位置の制限
- 建築物の敷地面積の最低限度
引用元: 景観法第61条
以上のものとなります。
そして、景観地区の行為制限は強制力を持っている上、「地域ごとに異なるルール」が定められていますので、建設等を行う場合には細心の注意を払う必要があるのです。
準景観地区
前項で解説して景観地区は「都市計画区域内」および「準都市計画区域内」のみに定められる制限区域です。
よって、「規制のないエリア」においては景観地区を設定することができず、景観に乱れが生じる可能性が出てきます。
そこで登場したのが『準景観地区』であり、こちらは「規制のないエリア」でも指定が可能となりますので景観地区と同様の行為制限を課することができるのです。
景観協定
そして最後にご紹介するのが、景観計画区域内の住人が自主的に景観保護のルール定める「景観協定」が結ばれたエリア(景観協定区域)です。
その名称から建築協定の一種のように思われるかもしれませんが、建築協定が「建築基準法」を根拠にしているのに対して、こちらは『景観法による制度』という違いがあります。
但し、制度の内容自体は非常に類似点が多く、
「土地所有者が全員の合意」をもって協定を結び、これを『景観行政団体の長が認可することで成立する』ものであり、その効力は「協定に参加した土地所有者のみに及ぶ」
という内容です。
なお、この協定によって定めることができる制限としては
- 建築物の形態意匠に関する基準
- 建築物の敷地、位置、規模、構造、用途または建築設備に関する基準
- 工作物の位置、規模、構造、用途、または形態意匠に関する基準
- 樹林地、草地等の保全または緑化に関する事項
- 屋外広告物の表示、または屋外広告物を掲出する物件の設置に関する基準
- 農用地の保全または利用に関する事項
- その他良好な景観の形成に関する事項
引用元: 景観法第81条
以上のものとなります。
不動産取引と景観法
ここまで景観法について詳しく解説してまいりましたが、この法律の影響を受ける地域の不動産を売却する際にはどのような点に注意すれば良いのでしょう。
不動産売買においては売買契約を締結する前に重要事項説明が行われますが、取引対象の物件所在地が
- 景観計画区域
- 景観地区
- 準景観地区
- 景観協定区域
以上の区域内に該当する場合には、必ずその旨を告知する必要があります。
なお、景観計画区域は非常に広い範囲に渡って設定されていることが多い上、自治体によっては「区域指定はされているが具体的な行為制限はなく、建築等に際して届出も不要」というルールを定めているところもありますので、こうした地域では全く問題なく物件の取引が可能となります。(但し、重要事項説明で区域指定を受けている旨の告知は必須)
これに対して、「景観地区」「準景観地区」「景観協定区域」においては
建築できる建物に大きな制約が課されるケースが多いので『売却価格にも大きな影響が出る』
はずです。
但し、景観法による制限は物件の値付けに当たって、必ずしもマイナス要因に働くとは限らないのも事実です。
建物を建てる際に多くの制約があったとしても、周辺の景観が今後も末永く維持されることは「物件の大きなセールスポイント」となる可能性も十分にありますので、
購入に際しては行為制限の概要をしっかりと把握した上で、景観法上の制限が『プラスに働いているエリアであるのか』『マイナスに働いているエリアであるのか』を判断することが重要となるでしょう。
景観法とは?わかりやすく解説!まとめ
さてここまで、景観法をテーマに解説を行ってまいりました。
不動産の販売図面を見ていると、時折「景観法の制限あり」といった文字を目にいたしますので、この機会に景観法の概要をしっかりと把握して、物件購入に臨んでいただければと思います。
ではこれにて「景観法とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。