繁華街などを歩いていると、色々な名称が付けられてビルを見掛けますよね。

「山田ビル」など昔ながらのネーミングから、一体何語か判らない不思議な横文字が並んだものまで、そのバリエーションは実に様々です。

そして、こうしたビルの名前を見ていると時折見掛けるのが「●●共同ビル」といった名称となりますが、この共同ビルとは一体如何なるものなのでしょうか。

そこで本日は「共同ビルとは?という疑問にお答えします!」と題して、この共同ビルという建物について考えてみたいと思います。

共同ビルとは

 

共同ビルとは

「共同ビルと聞いても、今一つイメージが湧かない」、このような感想をお持ちの方も多いかもしれません。

そこでまずは「この共同ビルとはどのような建物であるか」という点から、お話を始めさせていただきたいと思います。

共同ビルとは、その名が示す通り「複数の所有者が建物を共有しているビル」ということになるでしょう。

そして、この説明を聞けば「何でわざわざそんな面倒なことをするのだろう?」と不思議に思われるかもしれませんが、

「都心の駅前の一等地に土地は所有しているものの、面積が小さ過ぎて有効利用ができない」といったお悩みをお持ちの方は意外に多く、『周辺の地主さんと協力してビルを建築するというケース』は少なくないものです。

ちなみに、私も賃貸の管理業務などで共同ビルを扱ったことがありますが、物件によっては修繕に掛かる費用の負担割合が明確に決まっていなかったり、いざ修繕を行おうとすると共有者が費用の支出を拒んだりと、なかなか面倒なケースも少なくありませんでした。

しかしながら、こうしたトラブルが発生するが目に見えているにも係らず、今なお多くの共同ビルが建築され続けているのです。

そこで次項では、たとえリスクを負ってでも建築に着手したくなる共同ビルの魅力について解説してまいりましょう。

 

共同ビルのメリット

では具体的に、共同ビルの利点について見て行くことにいたします。

設計の自由度の向上

狭い土地に建物の建築プランを入れると、何処かしらに必ず無理な点が生じてしまうものです。

特にビルともなれば、階段に廊下、そしてエレベーターなど多くの共用部分を作らなければなりませんので、こうした設備を組み込むと「貸出すことができる賃貸部分は極わずかしか残らない」といったケースも多いことでしょう。

その点、近隣の土地と合わせて建築計画を立てれば賃貸部分も広く取ることができるでしょうし、吹き抜けを作るなど自由度の高い設計が可能になります。

また、敷地に余裕が生まれることで隣地との距離も空けることができますから、お部屋の日照という意味でも有利な建築が行えるはずです。

コスト削減にも有効

そして、もう一つの利点に挙げられるのが建築コストが削減できるという点です。

もちろん、1人で負担しなければならない建築費を複数人に頭割りすれば、それだけ資金繰りは楽になるでしょうが、建物の建築費は施工面積が大きくなればなる程に安くなるという特色も見逃せません。

また、ユニットバスやシステムキッチンなどの設備も大量発注することで単価をかなり下げられますから、小さな土地に小さな建物を建てるよりも遥かにコストを圧縮できるはずです。

このように経費を圧縮すれば、余った費用でより良い建物の仕様にすることができますし、他の物件にはない贅沢な設備を導入することも可能になるでしょう。

収益率の向上

さて、ここまでお話しして来た「設計の自由度の向上」と「コストを削減しながらも建物の質が向上させられる」という2つの利点から、新たに生じることになるのが「収益率の向上が見込める」というメリットとなります。

豪華なエントランス、充実の設備、広く明るいお部屋となれば、黙っていても借り手が現れるでしょうし、近隣の物件に対して強い競争力を獲得できれば賃料設定も高額になるのは当たり前のことですよね。

よって、自分の土地だけでビルを建てるよりも、共同ビルとすることで「遥かに多くの賃料収入を見込むことができる」という訳なのです。

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共同ビルのデメリット

冒頭でも申し上げた通り、共同ビルにはそれなりの「やり辛さ」も存在します。

この項では、共同ビルの問題点とその対処方法を解説してまいりましょう。

管理・建物維持の困難さ

共同ビルの経営の最大の問題点とも言えるのが、管理・建物維持の難しさとなります。

例えば、建物に不具合が出た場合には「共有物」であるが故に所有者全員が費用を負担することになりますが、自分に割り当てられた賃貸部分が直接被害を被っていない所有者などは工事費の支出に応じてくれないケースも多いようです。

また、オーナーの一人が所有するお部屋に「問題のある賃借人」が入居してしまい、他の所有者の貸出している部屋の住人とトラブルに発展することもあるでしょうし、キャバクラなどビルの品格を損なうテナントを入居させてしまうなどして、共有者同士の揉め事に発展したというケースも耳に致します。

なお、こうしたトラブルを回避するためには「分譲マンションの管理組合」を参考にした管理規約を定め、管理費・修繕積立金の徴収などに関するルールを建築当初から作っておくことが重要です。

ちなみに、分譲マンションとは異なり組合員の人数は少ないはずですから、明確なルールさえ定めれば共同ビルの経営はそれ程困難なことではないはずです。

建築時・建替え時のトラブルに注意

また、複数の所有者が存在することは新築や建て替え時にも様々な問題を生じさせる可能性があります。

例えば新築時においては、所有者同士の意見がまとまらずに建物のプランがなかなか決定しなかったり、施工途中で発生した工事の変更点などを巡って揉め事に発展することも多いようです。

更には一人の所有者から「自分に割り当てられる部屋だけは輸入品のシステムキッチンを入れたい」などといった要望が出れば、設備の大量発注により建築コストを削減するメリットが台無しにしてしまうこともあり得ます。

そして建築後50年、60年と経過した際にはビルの建替えも必要になりますが、所有者にも代替わりが発生しているでしょうから、意見の統一が行えず何時まで経っても建て替えができないというパターンもあるでしょう。

まず新築時のトラブル回避については、そもそも「建築プランありきの状態」で共同ビルのプロジェクトを立ち上げ、「プランに賛同してくれるならばプロジェクトを進める」という姿勢で事業に臨むのがベストです。

また完成までの打ち合わせについても当事者同士が直接話し合うと「感情のもつれ」などが生じやすいですから、建築に詳しい不動産会社などに報酬を払って各所有者の間を取り持ってもらうのが良いでしょう。

なお建替えに際しては、プロジェクト立ち上げの段階で「建替えの時期」や「費用の負担按分」などを取り決めておくのが得策です。

相続・売買等の問題

さて、もう一点問題となるのが相続や売買が発生した際のトラブルについてとなります。

共有物であるが故に「そもそも扱いが難しい物件」であるにも係わらず、相続などによって更に所有者の頭数が増えてしまえば、無用なトラブルを引き起こされる可能性も高くなるのは当たり前のことでしょう。

また、いざ売却しようとしても運営がルール化されていない共同ビルなどはなかなか買い手が付かない可能性もあり得ます。

こうしたトラブルを回避するには、やはり厳格な管理規約を定めておくことが何よりの対策となるはずです。

そして運営のルールがしっかりと守られていれば、持分や区分所有権の売却もスムーズに行えるでしょうし、相続による代替りや持分の分割が行われても恐れる必要はありません。

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共同ビルまとめ

さてここまで、共同ビルのメリットやデメリットについて解説してまいりました。

「共同」という名称を聞くだけで『面倒臭そうな印象』を持たれるかもしれませんが、適切な運用を行えばメリットも非常に大きいことがご理解いただけたはずです。

そして、「限られた土地を上手に利用していくこと」が資産運用にて成功を収めるための最重要ポイントとなりますから、土地有効活用の選択肢の一つとして共同ビルの建築をご検討いただければ幸いです。

ではこれにて「共同ビルとは?という疑問にお答えします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。