マイホームを保有されている方や、不動産投資家さんにとって非常に気掛かりなのが、「建物の修繕工事に関する問題」なのではないでしょうか。
そして、「本来であれば、10年毎に屋根や外壁の修繕は行うべき!」などと言われても、『そんな予算がある訳ない・・・』という方も少なくないはずです。
また、『ローンの支払いが厳しく、毎月ギリギリでやり繰りしている』という方におかれましては「気になる建物の症状はあるが、見て見ぬふりをしている・・・」という人もおられることでしょう。
しかしながら雨漏りなどに関しては、放置することで「取り返しの付かない状況」に陥ることもありますから、どうにか資金を捻出して、適切な修繕を行っておきたいところです。
そこで本日は「修繕を火災保険で行う方法について解説いたします!」と題して、火災保険や地震保険を利用した建物修繕工事費用の捻出方法について考えてみたいと思います。
地震保険や火災保険の補償対象となる修繕工事は意外に多い
冒頭でのお話を聞いて、「火災保険で建物の修繕費用を出してもらうことができるの?」と疑問に思われた方も多いことでしょう。
確かに、火災保険といえば「火事の際に保険料が支払われるもの」というイメージが強いかもしれませんが、選択する保険商品によっては風災や雪災、水災などの様々な災害に対して保険金が支払われるケースもありますので、
雨漏りが発生した際などには「建物の老朽化だろう」と諦めるのではなく、しっかりと調査をしてみることで「突風」や「雹の直撃」が原因である事実が判明し、保険金による修繕か可能となる場合もあるのです。
また、火災保険は被害を受けてから3年間は補償の対象となっている商品が多いですから、かなり前から放置している不具合も保険でカバーできる可能性がありますし、自動車保険とは異なり、何回保険を利用しても保険料が値上がりすることもないのです。
ちなみに近年では、こうした保険の上手な使い方に着目した「火災保険の申請サポートサービス(建物の調査を行い、保険申請の補助をしてくれるサービス)」といった事業を展開する業者も増えつつありますから、こうした状況からも「保険を利用しての建物修繕が如何に有益なものであるか」をご理解いただけるはずです。
なお、このようなお話をすると『火災保険の申請サポート業者を利用した方が、手間が掛からず、確実に保険金を手に入れられるのでは』とお考えになられるかもしれませんが、この手の業者には充分な注意が必要となるでしょう。
申請サポート業者の殆どは、現地調査や保険の申請を無料で行い、保険金が支払われた場合にのみ、報酬を頂く(または修繕工事の施工を行う)といった料金システムになっていますが、
その報酬額は良心的な業者でも保険金の30~40%、悪質な業者ともなれば50%以上もの金額を請求してくることもありますから、これでは肝心な建物の修繕費用が不足してしまいますよね。
更には、偽りの報告を行って(発生していない損害をでっち上げて)、保険金を騙し取ろうする業者も存在するようですから、これではお話にもなりません。
そして、こうした悪徳業者が口を揃えて謳うのが「保険の申請は、素人が行っても認められないことが殆どである」という台詞なのですが、不動産業者として何度も申請を行って来た管理人的には『そんなことは、決してない』というのが本音です。
そこで次項では、経験のない方でもスムーズに保険の申請を行うためのテクニックをご紹介していきたいと思います。
保険を利用した修繕工事のポイント
では早速、保険申請のポイントについて解説していきたいと思いますが、火災保険と地震保険では「申請の手順」などに違いがありますので、以下ではケース毎にお話を進めてまいります。
なお、火災保険・地震保険は共に「経年劣化は補償の対象外」となりますので、この点にも注意しながら解説を読み進めていただければと思います。
火災保険の場合
さて、火災保険の申請に当たっては、まず最初に「自分が加入する保険商品の内容を確認すること」が何よりも重要です。
例えば雨漏りの修繕においては、風災が補償範囲に含まれているのなら「強風によって屋根瓦がズレた」という理由であれば保険金支払いの対象となるでしょうし、「屋根瓦の破損」が雨漏りの原因であれば、雹災が補償の対象となっている必要があります。
なお、保険商品によっては「工事費用の一部が免責」という条件(どんな工事を行うにしろ、10万円は施主の自己負担が必要などの条件)が付されていることもありますし、「20万円以下の工事は保険の対象外」といったパターンも少なくないので、事故報告を行う前にしっかりと確認をしておくべきです。
また、火災保険の申請に当たっては「損害の証拠写真」と「修繕工事の見積書」が必須となりますので、まずはお付き合いのある工務店さんやリフォーム業者さんなどに依頼して、被害状況の確認と写真の撮影、見積書の作成を行いましょう。(雨漏りなどの場合には屋根の確認が必須となりますので、確認作業もプロに任せるべきです)
一方、既に発生している雨漏りなどを保険金で修繕しようという場合でも、まずは原因の特定が最優先事項となりますので、工事業者に調査の依頼を行うべきですが、ここで重要なのが「どのような破損であれば、保険の対象となるか」を事前にしっかり伝えた上で調査を行ってもらうことです。
仮に、現在発生している雨漏りの原因が補償の範囲外であっても、他に保険の対象となる破損個所があれば、それを理由に保険金を取得できる可能性もあるでしょう。
※このケースでは「損害発生から何年以内なら保証の対象となるか」についても、事前に確認しておく必要があります。
ちなみに、無料で建築会社に建物の点検を依頼する訳にもいきませんから、それなりの費用は必要になりますが、他の工事のついでに屋根などの点検をしてもらえば、費用を安価に抑えることができるはずです。
そして損害の証拠写真と見積書が揃えば、後は保険会社へ事故の報告を行うのみとなりますが、もしも保険契約を代理店経由で行っているのであれば、代理店にも一度相談してみるのがおすすめです。
原則として、保険代理店は事故報告の受付けを行っていませんが、調査結果を伝えた上で、保険金の請求方法について相談すれば良いアドバイスがもらえるケースも少なくありません。
もちろん、代理店の中には「何もアドバイスはできないので、保険会社に直接連絡して欲しい」といった対応をする会社もありますが、中には『屋根瓦の破損であれば、雹災よりも飛来物による被害として報告した方が良い』といった具合に、保険金請求をより有利に進めるための助言をしてくれることもあります。
※こうした意味でも、代理店選びは保険会社選びと並んで、非常に重要な要素となります。
こうして事故報告が完了すれば、後日、保険金請求書が送られてきますので、必要事項を記入した上、見積書等を添付して返送を行えば、後は保険会社からの結果報告を待つのみです。
さて、ここで気になるのが「保険会社の調査員(鑑定人)が現場を見に来ることはないのか?」という点になりますが、通常、火災保険の場合は殆ど調査員が来ることはありません。
但し、損害写真に不自然な点があったり、見積書の金額が水増しされている可能性がある場合には現地調査となることもありますので注意が必要です。
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地震保険の場合
火災保険に続いては、地震保険についての解説となりますが、まずは地震保険の概要について簡単にご説明した後に、保険金請求のテクニックをお話ししてまいりましょう。
地震保険の概要
地震保険は保険会社と国が共同で運営している保険となりますので、どの保険会社で加入しても条件の差異はありません。
また、地震保険に単独で加入することはできず、火災保険契約時にセットで加入することとなり、保険金額は火災保険の保険金額の50%が上限である上、保険金の支払限度額も5000万円までという縛りがあります。
※2億円の火災保険に加入した場合、地震保険の保険金額の上限は1億円となるが、たとえ建物が全壊しても5000万円以上の保険金が支払われることはない
さて、このようなお話をすると「だったら5000万円以上の地震保険に加入する人はいないのでは・・・」と思われるかもしれませんが、地震保険は一部損壊や半壊でも保険金の支払いを受けることが可能です。
- 一部損・・・保険金額の5%
- 小半損・・・保険金額の30%
- 大半損・・・保険金額の60%
もしも仮に、1億円の地震保険の加入している物件が「一部損」の被害を受ければ、支払われる保険金は500万円、「小半損」なら3000万円、大半損なら5000万円(本来は6000万円だが、5000万円の上限規定により減額)という保険金の受取条件となります。
よって、「地震保険には上限があるから、5000万円以上は加入しない」という契約をしていると、一部損で250万円、小半損で1500万円、大半損で3000万円しか受け取れないことになりますので、全壊以外の場合には「大きな損」となってしまうケースもあるのです。
ちなみに地震保険が支払われる条件には「主要構造部の損害額」と「消失または流失した床面積」の2通りがありますが、ここでは「主要構造部の損害額」に応じて保険金が支払われるパターンについて取り扱います。
地震保険で修繕を行う方法
前項の解説にて、地震保険のおおよその概要はご理解いただけたことと思いますので、ここでは具体的な保険金の請求方法をお話ししてまいります。
地震保険も火災保険と同様に、加入している保険会社に事故報告を行った上で保険金の請求を行いますが、最も大きな違いは「地震保険では殆どのケースで調査員が現地を確認に来る」という点です。
また、事前に見積書を用意しておく必要もなく、調査員が現地で調査した結果に基づいて一部損、小半損、大半損などの判定を行った上で、申請書を提出することになるでしょう。
よって、実際の修繕工事にいくら費用が掛かるかに係わりなく、定められた保険金を受け取ることができるのです。
なお、通常の地震であればその被害の多くは「一部損と認定されるか否か」という程度のものとなるかと思いますが、保険金支払いのポイントは『主要構造部の損害額』となりますので、たとえ外壁に大きなヒビが入っていたとしても、主要構造部分に影響のない損傷であった場合には、保険金を受け取ることはできないでしょう。
ちなみに管理人は、大きな地震が発生した場合には管理する物件を巡回して「損傷がないか」の確認を行い、『これは!』という被害を発見した場合には無駄になっても構わないので、必ず保険会社に事故報告を行うようにしています。
そして、これはあくまでも私の個人的な感想ですが、鉄骨造やRC造の建物では躯体にちょっとしたヒビが入っていても保険の対象とならないケースが多いのに対して、木造建築では外壁の小さな亀裂(もちろん亀裂の位置にもよりますが)でも保険金が受け取れる場合が多いように思えます。
また、地震保険の請求期限は地震発生から3年以内となっていますから、他の修繕工事で建築業者に屋根を点検してもらう場合などには、地震による被害と思われる点がないかも必ず確認してもらうようにしましょう。
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修繕を火災保険で行う方法について解説!まとめ
さてここまで、建物の修繕工事を火災保険や地震保険を利用して行う方法についてお話ししてまいりました。
冒頭で申し上げた通り「発生してもいない損害で保険金を手に入れよう」などといった考え方は論外ですが、『ダメで元々』の精神で申請をしてみたら、想像以上に高額な保険金を手に入れることができ、余った保険金で破損個所以外の修繕が可能となるといった状況は決して珍しくありませんので、
台風やゲリラ豪雨、突風や地震などの後には建物を隅々まで点検して、「保険金が出るかも」という損傷を見付けた場合には躊躇なく申請を行うべきでしょう。
決して安くない保険料を支払いっている以上、遠慮する必要は全くないのです。
また、保険会社の事故受付窓口の方や、保険会社の依頼を受けた調査員の方も、皆さんや私たちと同じ生きた人間ですから、高圧的な態度で接したり、無理な要望を強引に通そうとすれば、気分を害してしまうのは当たり前です。
よって、こうした方々に対しては常に敬意を持って接し、「ご協力をお願いする」という姿勢で交渉に臨むのが重要なのではないでしょうか。
ではこれにて、「修繕を火災保険で行う方法について解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。