マイホームとして一戸建て物件を選択した際に、販売業者から説明を受けることになるのが建物の工法に関する事項です。

但し不動産売買における重要事項の説明では、多くの情報を取り扱わなければならないため、建物の工法についての説明は非常に「サラリ」と流されるケースも多く、『購入したは良いけれど、建物の構造はあまり理解していない・・・』という方も多いことでしょう。

もちろん、「しっかりした建物であれば何でも良い」というのも一つの考え方ではありますが、一生に一度の大きな買い物に当たって『建物の構造も理解していない』というのも少々不安ですよね。

ちなみに一戸建て物件の中には、鉄筋コンクリート造といったレアな物件も時折存在してはいますが、その多くは木造住宅であり採用されている工法といえば「在来工法」または「2×4工法」のどちらかとなるのが通常です。

そこで本日は「在来工法と2×4工法について解説いたします!」と題して、日本の木造家屋の代表的な工法として知られるこの2つの工法のメリットやデメリットについて比較してみたいと思います。

在来工法と2×4工法

 

在来工法とは

では最初に、在来工法についてのご説明から始めさせていただきます。

「在来」という言葉が象徴するように、日本に古来から伝わる伝統的な建築技法の流れを汲むとされているのが、こちらの工法です。

なお正式名称は「木造軸組工法(もくぞうじくぐみこうほう)」と呼ばれる工法であり、「柱」や「梁」、「筋交い」という木材のパーツを組み合わせて建物の骨組みを作って行きます。

ただ、このように説明しても一般の方にはなかなか構造のイメージが付き難いことと思いますが、わかりやすく表現するならば「柱などを用いてジャンブルジムのような骨組みを作ってから、壁を貼っていく工法」とご理解いただければスムーズなのではないでしょうか。

ちなみに、在来工法の本質を端的に説明する際に「柱で建物を支える工法」と表現されるのは、こうした骨組みの構造を指してのこととなります。

また「在来」という名称故に、『日本家屋の伝統技法がそのまま活かされている』と思われている方も多いかと思いますが、実はこの工法が本格的に普及していったのは1960年以降のことです。

もちろん、在来工法誕生の裏には我が国で長年培われて来た建築技法が強い影響を及ぼしてはいますが、厳密には異なる点も多く、伝統技法を現在風に改良・進化させて完成した技法というのが適切な説明となるでしょう。

そして誕生以来、長年に渡って木造家屋の主流工法とされて来ましたから、所謂「町場の工務店」などは殆どがこの工法による建築を行っています。

一方、建物の特徴としては「柱が建物の荷重を支える」ため、窓などの開口部を多く取れるというメリットがある反面、施工する職人の技術の差がはっきりと出やすいという弱点も存在している上、建築コストもやや割高になる傾向があります。(工務店や使用する材料にもよる)

 

2×4工法とは

これに対して2×4方法は、1975年頃に海外からもたらされた比較的新しい工法となります。

その名が示す通り、2インチ(約5cm)×4インチ(約10cm)の木材を並べて「壁を作る」ように組み立てていく工法(正式には木造枠組壁工法)で、「在来工法をジャングルジム」に例えるなら、2×4工法は木製の目の細かい『虫かご』に壁を貼り付けて行くような工法と表現できるでしょう。

なお、実際に用いられる木材は2インチ×4インチ以外にも、2×6、2×10などの種類がある上、材木のサイズ(2×4など)は乾燥させる前の生木の寸法となりますから、現実に利用される木材は表示よりも1回りサイズダウンしたものとなります。

ちなみに2×4工法は在来工法と異なり、使用される材木のサイズが一定であるため、工場での大量生産による「材料費の削減」と「品質の確保」が可能な上、施工に高い技術を要しないため「職人の腕による仕上がりの差が出辛い」のが特徴です。

また、材木を一定のピッチで並べて「壁を作る」工法であるが故に地震にも強く、壁や天井に石膏ボードを貼ることにより、耐火性も高いという点が最大のメリットとなるでしょう。

さて、このようにご説明すると「2×4工法にはメリットが多い」のように感じられるかもしれませんが、元々がアメリカやカナダなど「湿度の低く乾燥した地域の工法」であるため、「高温多湿の日本の気候では耐久性に問題が生じるのでは?」という指摘も存在します。

更には、建物への荷重を壁が支えているため、あまり多くの窓や扉(開口部)を設けることが困難であることに加え、その位置についても自由に決めることができないという弱点も持っているのです。

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在来工法と2×4工法はどちらが優れている

ここまで記事をお読みくださり、在来工法と2×4工法に関する基礎的な知識はお持ちいただけたことと思います。

しかしながら、自分がこれからマイホームを購入するのにあたり、「在来工法と2×4工法のどちらを選択すれば良いのか?」との判断を迫られた場合には、未だ自信を持っての決断ができない状態であることしょう。

そこで本項では、2つの工法について分野別の優劣を解説してみたいと思います。

コストの問題

コストの問題については、工場での部材の大量生産が可能な2×4工法が有利とのご説明を行いましたが、これはあくまで一般的な見解となります。

近年では2×4工法との価格競争に勝利するべく在来工法用の部材を大量生産しているハウスメーカーも存在しますから、「現在ではどちらのコストが低い」とは一概に断じられないのが実情です。

耐震性・耐火性の問題

こちらも2×4工法が優れているというのが一般的な意見となりますが、耐震性については「在来工法もかなり追いついて来ている」のが実情です。

阪神淡路大震災や東日本大震災などを経て、在来工法においても木材の接合に金物を使用するのが当たり前になりつつありますから、耐震性についても優劣付けがたいというのが現実でしょう。

また耐火性能についても室内部材・外壁材などの進歩は目覚ましいものがあり、工法の違いというよりは「利用している部材による」というのが正直なところです。

施行技術について

2×4工法は比較的工事が簡単で、在来工法は高度な技術が求められるとお話ししましたが、この点に関しては現在でも変わりがありません。

そして近年では、ハウスメーカー同士が価格競争にやっきになっていますから、「安さを売りにしている在来工法のハウスメーカー」については『施行技術の面でリスク』が増加している可能性が高いでしょう。

経験が少ない職人を安価で現場に派遣しているケースもよく耳に致しますから、在来工法を選択する場合には、しっかりと施工実績などを確認した上で工務店を選びたいところです。

建物のデザイン性

続いて比較するのが建物のデザイン性という部分です。

各工法の説明においてもお話ししましたが、2×4工法は壁で建物を支えているため、好きな位置に自由な大きさの窓を設けることができません。

また、「1部屋について、最低これだけの壁を設けなければならない」という設計上のルール(壁量)もありますから、日の光が入り辛い部屋が出来てしまう可能性も高まります。

よって、こだわり抜いた設計の家を建てるのであれば、在来工法がおすすめとなるでしょう。

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在来工法と2×4工法まとめ

さてここまで、木造住宅の2大工法とも呼ばれる在来工法と2×4工法を比較検討してまいりました。

もちろん、建てる方の好みの問題もあるとは思いますが、私が個人的に意見を述べさせていただくとすれば、お金を掛けて良い家、こだわりのある家を建てたいのであれば在来工法にするべきであるかと思います。

一方、コストをできる限り削減しながらも、一定水準の建物を手に入れたいと考えるならば2×4工法がおすすめという結果になるでしょう。

つまり、技術革新によって耐火性や耐震性については甲乙付け難い状況となっている両工法ではありますが、腕の差がもろに出てしまう在来工法においては『それなりのコストを掛けないと(腕の良い職人が施工を行わないと)危険』ということになります。

これに対して、2×4工法なら安さを売りにしているハウスメーカーでも「それ程には酷い建物にはなりません」から、コスパも良くそれなりの家が手に入るという訳です。

マイホームの購入は一生に一度の重要なイベントですから、各々の目的に合わせた適切な建物選びをして行きたいものですよね。

ではこれにて、「在来工法と2×4工法について解説致します!」の知恵袋を閉じさせていただきたと思います。