我が国の将来に大きな影を落としているのが、「超高齢化社会」などと呼ばれる高齢化率の上昇に関する問題です。
そして、高齢化社会は医療費・介護費等の増大や国力の衰退など様々な事態を引き起こすこととなりますが、不動産業界において最大の課題となっているのが「高齢者等の受け入れが可能な賃貸物件が圧倒的に不足している」という問題となります。
そこで本日は「住宅セーフティネット法とは?賃貸経営のお役立ち知識をお届け!」と題して、高齢者等の住宅問題に一石を投じるであろう、この法律の概要と近年の改正点、不動産投資に際して押さえておくべきポイントなどについて解説してまいりましょう。

住宅セーフティネット法の概要
住宅セーフティネット法(正式名称/住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)は2007年に施行された法律であり、住宅の確保が困難な高齢者や低額所得者等の賃貸住宅への入居を促進するために制定された法律となります。
但し、施行当初は賃貸物件を保有する大家さんや不動産業者からの反発が激しく、この法律が掲げる入居率の向上という目的はなかなか果たすことができなかったようです。
しかしながら2017年の法改正においては
- 賃貸人の申請による「住宅確保要配慮者向け賃貸住宅」の登録制度の導入
- 登録された住宅に対する改修費や家賃補助制度の導入
- 住宅確保要配慮者の入居支援制度の設立
以上の項目が追加されることになりました。
この改正においては「住宅確保要配慮者向け賃貸住宅」の登録を行うことで、貸主に対しての補助金や入居者への家賃補助制度が整備されることとなり、住宅確保要配慮者の入居を大きく促進する結果となりましたが、超高齢化に歯止めの掛からない現状では『まだ十分とは言えない内容』でした。
そこで2025年10月に更なる法改正が実施されることとなったのです。
※本記事では「住宅セーフティネット法の改正」をテーマにお話ししていますが、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」や「住宅金融支援機構法」などの関連法令の改正に関する内容も含まれておりますので、その旨ご了承願います。
住宅セーフティネット法の改正点
ではここからは、住宅セーフティネット法の2025年改正の内容について詳しく解説していきたいと思います。
終身建物賃貸借契約締結のための認可制度の変更
賃貸物件を借りる際に締結されるのが「建物賃貸借契約」となりますが、この契約において借主が死亡した場合には賃貸借契約自体が相続人へと相続されることになります。
よって、賃貸物件を借りた身寄りのない高齢者が亡くなった場合には、貸主は相続人を探し出した上で『解約の手続き』を行う必要があるのです。
また、相続人自体が存在しない場合には貸主が家庭裁判所に申し立てを行って判決を得た上で、賃貸借契約を解約しなければならないルールであり、こうした法律の仕組みが「高齢者への物件貸し出しの大きな障害」となっていました。
そこで「高齢者の居住の安定確保に関する法律」においては、こうした問題を解決するべく、貸主より許可申請が行われた物件については
- 許可を受けた物件においては「終身建物賃貸借契約」の締結が可能
- 終身建物賃貸借契約では借地借家法の定めに係わらず、「賃貸借契約は相続人へ相続されない」
という特殊な賃貸借契約を締結することが可能となりました。
なお、この契約を締結するためには
- 契約者が60歳以上であること
- 同居する配偶者または親族も60歳以上であること(契約者死亡時、同居人は同条件で再契約が可能)
- 契約期間は契約者死亡時まで
といった制限が課せられることになります。
そして今回の法改正に当たっては、これまで物件(住居)ごとに申請を行って「終身建物賃貸借契約が締結可能な物件」とする必要があったところを、
「事業者(貸主、物件オーナー)に対する許可」へと変更
されました。
これにより、物件ごとに許可申請をする必要がなくなり、保有する物件について一気に許可を得ることが可能となったのです。
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居住支援法人による残置物処分制度
前項の終身建物賃貸借契約を締結すれば、契約者が亡くなった場合でも容易に賃貸借契約の解除が可能となりますが、ここで問題となるのがお部屋に残された残置物の処分となります。
終身建物賃貸借契約はあくまでも「賃貸借契約が相続されない」というだけであり、お部屋の荷物は対象外なのです。
そこで今回の改正においては、
行政から認定を受けた「居住支援法人」と「借主」が事前に『同意(覚書等の取り交わし)』を行っておくことで適切な残置物の処分が可能になる
という制度が導入されることになりました。
ちなみに「居住支援法人」はNPO法人や社会福祉法人などの非営利法人のみならず、不動産管理会社や賃貸保証会社などの一般法人についても指定を受けることが可能です。
そして、入居者は貸主との賃貸借契約とは別に、居住支援法人と『残置物処分に関する合意』を締結することで、契約者が亡くなった後でも適切に残置物を整理することができるようになります。
さて、ここで気になるのが「残置物の処分費用を居住支援法人がどのように賄うのか?」という点であるかと思いますが、この点に関しては個々のケースごとに
- 退去時精算後の返還敷金を充てる
- 入居時の賃貸保証会社との契約にて残置処分費給付の特約を付加する
- 生前に分割で居住支援法人に残置物処分費用を積み立てる
などの方法が想定されることになるでしょう。
賃料保証制度の拡充
ここまでの解説をお読みになれば、入居者に万が一の事態が発生した場合にも「賃貸借契約の解除」や「残置物処分」については改正住宅セーフティーネット法による対処が可能であることをご理解いただけたはずです。
しかしながら、貸主の立場としては『入居中に賃料の滞納が発生した場合はどうするのか?』という点が気になるところなのではないでしょうか。
確かに、住宅確保要配慮者となれば安定した収入は見込めませんし、夫婦での入居に際しては「契約期間中に配偶者が亡くなる」といった事態も十分に想定できます。
こうした経済状態の悪化に際しては生活保護を申請するといった手段も考えられますが、単身者向けの給付金では賃料を支払いきれないケースが殆どでしょうから、結局は賃料を滞納する結果となるでしょう。
そこで住宅セーフティーネット法では「賃料保証制度の拡充」も改正内容に盛り込まれており、
- 自治体からの家賃補助の拡充
- 居住支援法人に認定した「賃貸保証会社」への補助金給付
などを行うことで、賃料滞納リスクの軽減を図っているのです。
居住サポート住宅
そして、最後にご紹介するのが「居住サポート住宅」という制度の導入となります。
高齢者などに住宅を貸し出す際に、貸主が最も不安を感じるのが「孤独死」についてなのではないでしょうか。
物件内で入居者が亡くなり、発見が遅れて特殊清掃が必要となれば、原状回復費が高額となるばかりか、次回の募集では「事故物件」という烙印を押されてしまう場合もあります。
そこで改正住宅セーフティーネット法では「居住サポート住宅」への認定制度を創設し、この認定を受けた物件は
- 見守りサービス利用料の補助金交付
- 見守りサービス利用に向けた改築費用についての補助金交付
- 福祉施設と連携しての定期訪問の実施
などの優遇措置を受けることが可能になったのです。
こうした優遇措置を利用して、定期的に入居者の状態を確認することができれば「事故」が発生するリスクを飛躍的に低下させることができるでしょう。
居住中物件でも法改正のメリットが得られる
ここまで住宅セーフティーネット法の改正内容について解説してまいりましたが、実は『現在入居中のお部屋』に関しても法改正のメリットを受けることが可能です。
例えば、老夫婦がお部屋を借りていて「入居者の一方が認知症を発症した」「配偶者が亡くなり賃料が払えない」といった事態が発生することは充分に考えられますが、通常の賃貸借契約では『そのままお部屋を借り続けてもらう』のが非常に厳しい状況となってしまいます。
※一方の入居者が認知症患者の面倒を見続けるのは困難ですし、同居人が死亡した場合は生活保護を受けてもファミリータイプ物件の家賃を賄いきれません。
こうした状況において、改正住宅セーフティーネット法の制度を活用すれば
- 貸主が自治体に申請を行うことで「(普通賃貸借契約を解約して)終身建物賃貸借契約へと切り替えることが可能」になる
- 借主と居住支援法人との間で残置物処分の合意を結ぶことが可能となる
- 自治体の家賃補助制度を利用できる
- 居住サポート住宅としての登録を行い、見守りサービスを導入することができる
といった対応が可能となりますから、入居者は安心して居住が続けられ、貸主も将来への不安を感じることなくお部屋を貸し出せるようになるのです。
このように住宅セーフティネット法の改正は「住宅確保要配慮者が入居可能な物件を増加させる」ばかりではなく、既に入居を開始している高齢者やその大家さんなどに対しても「希望の光」となり得る内容となっているのです。
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住宅セーフティネット法とは?まとめ
さてここまで、住宅セーフティネット法をテーマに解説を行ってまいりました。
今回の法改正で導入された制度を上手く利用すれば、住宅確保要配慮者のお部屋探しが容易になるばかりか、これまで高齢者への物件の貸し出しに消極的だった不動産投資家へ「新たなビジネスチャンス」を提供することにもなりますので、これは正に『画期的な法改正』と言っても過言ではないでしょう。
但し、家賃補助制度や居住サポート住宅の要件などは自治体によってその扱いが大きく異なりますので、実際にアクションを起こす場合には関係各所としっかりと事前打ち合わせをした上で、行動に移していただければ幸いです。
ではこれにて「住宅セーフティネット法とは?賃貸経営のお役立ち知識をお届け!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。