マンション仲介業者

 

これまで本ブログでは、戸建て分譲の体験記新築戸建ての客付け体験記など、私の実体験を素にした記事をお届けしてまいりましたが、売却依頼に関するお話は未だ記しておりませんでした。

そこで本日は、「マンション仲介業者のお仕事レポート(売却編)」と題して、分譲マンション売却における元付け体験記をお送りしたいと思います。

ちなみに「元付け業者」とは、物件を売りたい側のお客様に付く不動産業者を指す用語であり、これに対して買い手側に付く不動産屋さんを「客付け業者」と呼んでいます。

なお取引においては、この2社が売主と買主を共同で仲介を行うケースが多いのですが、実は厄介な仕事は殆どが売主側の「元付業者」が請け負うことになるです。

では早速、初めての元付け体験記をお届けいたしましょう。

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初めての元付け

入社当初は賃貸の営業マンをしていた管理人ですが、売買部門に欠員が出たことで、めでたく(?)売買営業マンへの転身を余儀なくされます。

以来、それなりの営業成績は上げてはいたものの、その内訳は「全てが購入の依頼」、つまり客付け業務オンリーとなっていました。

不動産屋さん的には、「客付け」も「元付け」も完璧にこなせて初めて一人前なのですが、元付けは何かと責任が重い上、以前の取引において元付け業者さんのミスによるトラブルも経験していたため、「できる限り、元付けは避けて通りたい・・・」という気持ちもあったように思います。

しかしながら、嫌がれば嫌がる程に不運を引き寄せてしまう性分である故か、ついに売却のご依頼が舞い込んできます。

以前に戸建てを仲介したお客様からご連絡が入り、「親族がマンションを売りたがっているので、相談に乗ってやって欲しい」というのです。

もちろん断る訳には行きませんし、成績を上げるためには絶好のチャンスとなりますから、引き攣った笑顔で「ではとりあえず、お話を窺うところから・・・」とのお返事を返します。

そして依頼者に直接ご連絡を入れてみたところ、「現在、自宅として使用している物件を売却する意向である」とのことでしたので、早速ご自宅に伺うアポイントを取り付けました。

ちなみに取引の対象となる物件は築15年程の分譲マンションの一室であり、専有部分の面積は60㎡、間取りは2LDKであるとのことです。

オートロックを開けていただき、お部屋に向かいながらマンション内部の様子を注意深く観察していきますが、共用部分の管理も行き届いており、『なかなか良いマンション』というのが最初の印象でした。

『これは直ぐに売れてしまうのでは・・・』などと少々テンションを上げながら、専有部分にお邪魔させていただきましたが、共有部分の美しさに反して室内の壁紙には子供の落書きが無数に施されている上、フローリングも傷だらけです。

その荒廃した室内の様子に若干動揺しながらも、リビングにて売主さんと打ち合わせを開始します。

さて、売主さんのキャラクターはといえば、真っ黒に日焼けしたファンキーなお父さんといった容貌の方で、平日は大工さんとして働き、休日はサーフィンを楽しむのが趣味というタイプの方でした。

まずはひとしきりの挨拶を終え、事前に用意しておいた査定報告書を手渡します。

査定報告書とは、物件の売却見積書とも呼べる書類(詳細は「査定報告に関する記事」をご参照ください)であり、今回は事前に「売却が前提」とお聞きしていましたので、昨夜の内にこれを作成しておいたのです。

なお、これが初めての査定報告書の作成だったのですが、室内がこんなに荒れていることは完全に想定外であり、「ちょっと高額に査定し過ぎたのでは?」と早くも心臓の鼓動が高鳴り始めます。

心の動揺のため少々たどたどしくなった説明を、眉をしかめながら聞き入るご主人様でしたが、最終的には私に売却依頼を任せるとのお返事を頂くことができました。

とりあずは売却依頼を確保できたことに若干興奮気味の管理人だったのですが、帰り際に、「いやー、どこの不動産屋さんにお願いしても、あなたの所ほど高い値段を付けてくれた会社はなかったんだよね!」という衝撃的な一言を頂いてしまします。

「???」

『もしや査定額に何か誤りがあったのでは?』と急に不安になって来たので、慌てて事務所に戻り、査定報告書のデータを確認してみます。

物件の査定を行う際には、レインズ・アットホーム(不動産業者間の売り情報共有ツール)などに掲載されている成約事例を参考にしているのですが、改めてデータを確認してみると査定に利用した過去の事例は、同じマンション内ではあるものの角部屋や5階、6階という高層階のお部屋ばかりだったのです。

一方、今回の対象物件は1階であるため、当然その分「査定価格を低めに提示するべき」ですし、部屋の痛み具合を考えれば、査定価格は明らかに高額過ぎます。

とは言え、これは最早「後の祭り」、アフター・ザ・カーニバルです。

とりあえずは不安な気持ちに蓋をして、買手の募集に全力を挙げることにしました。

そこでまずは、手持ちのお客様(物件探しの依頼を受けているお客様)に声を掛けてみますが、良い返事を頂くことはできず、新聞折り込みチラシ等の広告活動も行ってみますが、こちらも反響はありません。

また今回は、専任媒介を頂いていましたので、早々にレインズへの登録を済ませ、お客様を持っている不動産業者からの問い合わせを待ってみることにします。

しかし、待てど暮らせど問い合わせの電話は鳴らず。

そして、意気消沈する私を見兼ねた上司からは「やっぱり値段が高過ぎるのではないか・・・」という痛すぎるご指摘が飛び出します。

止むなく売主様の元を改めてご訪問し、恐る恐る正直に訳を話して売買価格値下げの提案をしてみますが、お相手は予想通りご立腹のご様子です。

「高く売ってくれるっていうから、あんたの所に頼んだんだよ!」「最初だけ高く査定しておいて、仕事を取ろうって腹か?」等、言われたい放題です。

確かに落ち度をこちらにありますから、ここは謝罪の一手ですが、最終的には200万円の値引きに応じて貰えました。

但し、急ぎの売却ではなかったため、まずは100万円ずつ段階的に値段を下げて行くことにしますが、やはり購入者が現れたのは200万円の値引きを行ってからのことでした。

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連発するトラブル

こうして、どうにかこうにか買い手も見付かり、取引は契約・決済へと進んで行きます。

但し、今回は元付け業者として取引に参加していますので、物件調査に重要事項説明書・契約書の作成など、やるべき作業はてんこ盛りです。

慣れない作業に四苦八苦しながら仕事をこなし、いよいよ決済・引渡しを迎えることになりますが、ここで更なるトラブルが発生します。

物件の引渡し(決済)も近付いて来ましたので、売主に対して正規の仲介手数料の金額を提示したのですが、「いやいや、値段の付け方間違えておいて、満額取るつもりか?半額くらいにまけるのが筋なんじゃないのか?」との仰せ。

当然こちらとしても「媒介契約の際にお約束してますから・・・」と必死で頑張りますが、事態は拗れるばかりです。

このままでは埒があきませんので、止む無く上司に相談して値引きに応じることにしましたが、その金額は正規価格の30%OFFという有様です。

とはいえ、「これでようやく取引は完了・・・」と胸を撫で下ろしていたのですが、まだまだ不幸は続くのでした。

引渡しから数か月後、今度はマンションを買った方からのクレームが入ります。

お話を聞いてみれば、組合から来た通知に「現在、管理費・修繕積立金の値上げする議案が審議中」との旨が記されていたというのです。

買主様からの「こんな話、聞いてないんだけど!」という明らかに怒気を孕んだ声に怯えながら、とりあえず事態の調査に乗り出します。

まず当たるべきは、取引対象のマンションの管理を委託されている「管理会社」です。

分譲マンションの不動産取引においては、管理組合の運営内容まで知る術がないため、マンションの管理会社へ報酬を支払って「(マンションの)重要事項に係る調査報告書(売買の重要事項説明とは別物)」の作成を依頼します。

※調査報告書には管理費や修繕積立金の金額や滞納の有無、駐車場や駐輪場の利用料など、分譲マンションの売買に欠かせない情報が記載されています。

これを受け取った仲介業者は、その内容を参考にして取引用の「重要事項説明書」を作成するのですが、その管理会社の報告書に誤りがあったのではないかと考えたからです。

実際に書面を見ながら担当者に問い合わせてみますが、「いやいや、備考欄に組合の議事録参照って書いてあるでしょ!」という実にツレナイお返事が返ってきます。

『そんなバカな!』と慌てて確認したところ、確かに報告書の備考欄には他の項目に混ざって非常に小さな文字で「管理費等について提起されている議題については第●期総会議事録参照のこと」との文字があり、丹念に議事録を見ていくと冊子の中程に「管理費等値上げに関する議題が提起されている旨」が書かれていました。

『いやいや、これは気付かないでしょ!』と心の中でツッコミながも、尻尾を巻いて電話を切ります。

以降、買主様と何度か話し合いが持たれ、最終的には「値上げが決議され、その値上がりの度合いにより後の処理を協議する」として、経過を見守ることになりました。

その後は正にドキドキの日々が続くことになりましたが、半年後に組合が出した結論は「管理費等の値上げ案、否決」というものであり、正に首の皮一枚で取引上の事故を回避することができたのです。

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マンション元付けまとめ

このように「トラブル続き」という表現がピッタリだったのが、私の初めての元付け取引でした。

そして、今当時のことを振り返ってみれば、私のツメが甘さが全てのトラブルの原因であったことは明白です。

また管理費等の値上げに関しては、もし値上げ案が可決されていたならば、かなりの揉め事に発展していたのは必至ですから、今考えても背筋が寒くなる思いがします。

仮に重要事項説明書に「管理費等の値上げの議案が提起されており、将来値上げとなる可能性があります」という一言が書かれていれば、何一つ問題が生じなかったのに、この文言が抜けただけで『トラブルに直結してしまう』という現実を考えると、やはり不動産仲介は怖いものですよね。

ではこれにて、「マンション仲介業者のお仕事レポート(売却編)」の記事を締め括らせていただきたいと思います。