結婚や出産に次ぐ、人生の一大イベントとされるのがマイホームの購入です。

なお、不動産の購入に際しては非常に大きな資金が必要となりますから、多くの方が長年に渡る住宅ローンの返済を背負って行くことになりますし、購入した物件に万が一欠陥が見付かれば、その後の人生に大きな影響が出ることだってあり得るはずです。

また、様々な事情からマイホームを手放すことになった場合にも、購入価格と比較にならない安値でしか売却できない物件も存在しますから、住宅の購入に際しては充分な注意が必要となるでしょう。

さて、このようなお話をすると「こうした失敗を避けるために不動産屋さんがいるのでしょ?」と言われてしまいそうですが、不動産業者のクオリティーにもピンからキリまであるのが実情ですし、不動産に詳しくない一般の方が業者の品質を見抜くことは至難の業と言わざるを得ないのが実情です。

そして、こうしたトラブルを回避するために必要となって来るのが「マイホームの購入希望者自身が一定レベルの不動産の知識を身に付けること」となります。

もちろん、プロレベルの知識を身に付ける必要はありませんが、担当する営業マンの話を聞いて『この人、取引経験が少ないな・・・』といったことが見抜けるだけのスキルは是非身に付けておくべきでしょう。

そこで本日は「住宅購入前に知っておくべき知識をご紹介!」と題して、マイホームの購入に際して是非押さえておきたい知識をお届けすると共に、管理人がアマゾンkindleにて販売しております電子書籍「マイホーム購入成功マニュアル」についてもご紹介をさせていただきたいと思います。

住宅購入

 

全ての物件に共通のする知識

さて、冒頭にて「住宅購入希望者が知っておくべき知識をお届けする」と申し上げましたが、一口にマイホームと言っても分譲マンションから一戸建て、土地を購入して注文住宅を建てるなど、様々なケースがあるものです。

そこで本項では、まず全ての物件種別に共通する『知っておくべき知識』をご紹介して行くことといたします。

不動産売買の仕組みを知る

失敗しないマイホーム探しをするためにまず知っておきたいのが、「不動産取引の仕組み」と「売買の流れ」についてとなります。

なお、取引の仕組みを理解していれば「物件探しを依頼している仲介業者が誰からどれだけの報酬を得ることができるか」といったお金の流れが見えて来ますから、仲介手数料の価格交渉などもしやすいはずですし、取引の流れを把握していれば「業者の段取りの良し悪し」を見抜くことができますから、仲介業者の選別も行いやすくなるはずです。

さて、そもそも不動産の売買とは「買主が売買代金を支払う」のと引き換えに「売主が所有権の移転登記と物件引渡しを行う」ことで取引が成立します。

但し、売買代金を一括で支払うことができる買主は稀ですので、まずは買主が手付金を支払った上で売買契約を締結して、後日決済(残代金の支払い、所有権移転登記と物件引渡し)を行うことになるのです。(住宅ローンを利用する場合は必ず契約を先行することになります)

そして、取引の当事者である売主・買主のサポート役となるのが仲介業者(不動産業者)であり、買い手の募集や購入物件の紹介などの対価として仲介手数料を頂くことになります。

また、売主・買主の間を1社の仲介業者が取り持つこともあれば、売主側に1社・買主側に1社と2社の仲介業者が介在するケース(共同仲介)もあり、この場合には原則として各々の依頼主からのみ報酬を得ることになるのです。(状況によっては仲介業者が3社、4社と入ることもあり得ます)

よって、仲介業者が1社のみの場合は高額な仲介手数料収入が見込めますが、その数が増えて来ると、必然的に報酬額も減額されることになってしまいます。

※購入対象が新築の建売やリノベーション物件である場合には、原則として売主は不動産業者となりますが、売主の立場である以上は買主と同様にしっかりと仲介業者に手数料を支払うことになります。

一方、取引の流れに関してはと言えば、買主が購入の意思を固めたなら、まずは買付証明書を売主へと送付するところから「取引がスタート」することになります。

そして、売主・買主間で金額や条件面での合意が取れれば売買契約の締結となりますが、契約前に仲介業者は重要事項説明というイベントを行わなければなりません。

この重要事項説明は宅地建物取引業法によって義務付けられたものであり、仲介業者が買主に対して『物件における重要な事項(権利関係や住環境上の問題点、法令によって定めらた土地利用の制限の内容)』を説明し、これに納得してもらった上で契約の締結に臨むことになります。

こうして売買契約が締結されれば、ここでようやく住宅ローンの申込みが可能となりますので、銀行の審査を経て融資の実行が行われ、残代金の支払いと所有権移転登記、そして物件の引渡し(決済)が行われることになるのです。

仲介業者の選び方

前項の解説をお読みれば、売買の取引において仲介業者が非常に大きな役割を担うことご理解いただけたかと思いますので、ここでは仲介業者の選び方について解説してみたいと思います。

住宅購入希望者から見れば、優れた仲介業者とは「未公開物件情報などをバンバン紹介してくれる会社」というイメージがあるかもしれませんが、これは『半分正解で、半分は誤った考え方』と言えるでしょう。

例えば、如何に物件情報に精通した不動産業者であっても、紹介する物件の問題点を正確に見抜くスキルがなければ、取引上のトラブルが生じる可能性が高まります。

一方、如何に取引上のスキルの高い業者でも物件情報力に乏しいのでは、やはり満足の行く住宅購入は叶いませんから、ここは非常に難しいところです。

また、一口に未公開物件情報と言っても対象物件が「新築戸建て」なのか「中古マンション」であるのかなどの違いによって、選ぶべき業者の種類も異なってきますので、そのハードルは益々高いものとなってしまいます。

では、一体どのようにすれば自分が求める物件情報を保有する業者に出会うことができるのでしょう。

もしも貴方が「新築の戸建て物件(建売物件)を探している」のであれば、建売屋さんと呼ばれる戸建て分譲業者に建売用地の情報を提供している業者を選ぶことが重要です。

建売屋さんは土地の仕入れに力を貸してもらって業者に対して、優先的に販売活動をさせることが殆どですから、こうした業者と巡り合うことができれば『世に出ていない未公開物件情報を素早く入手することができる』でしょう。

これに対して、一般の方が売主である中古マンションがターゲットであるならば、少しでも多くの売却依頼を受けている業者を選定する必要がありますから、大手の仲介業者などを中心に業者の選定を行うことがポイントとなるはずです。

無理のない資金計画を立てる

既に申し上げた通り、マイホームの購入には多額の資金が必要となりますから「多くの方々が住宅ローンを利用する」ことになりますが、ここでも注意を払うべき事項が多々あります。

なお仲介業者の中には「今の家賃の金額と比べてみてください、ローンを組んで家を買ってしまった方が絶対にお得ですよ」などというセールストークを展開する者も少なくありませんが、これを鵜呑みにしてはいけません。

マイホームを取得すれば固定資産税や都市計画税の支払いが必ず付いて回ることになりますし、分譲マンションならばこれに加えて管理費や修繕積立金も必要になって来ますから、これらの費用の支払いも念頭に入れて住宅ローンを利用しなければなりません。

更に現在は非常に金利が低い時期ですから、住宅ローン利用時に変動金利を選択した場合には後から徐々に返済額がアップして行く可能性も充分にあり得ますから、資金計画を立てる際には充分な検討が必要となるのです。

そして、この検討を行う際に最も注目すべきなのが「返済比率」の問題となります。

ちなみに返済比率とは「収入に対するローン返済額の割合」を示した数値であり、金融機関が貸し出しを行う際には、この数値を基に貸し出し上限額などが決定されます。(物件の担保評価なども加味されますが)

よって、「銀行がローンを組んでくれる以上は、充分に返済が可能な借入額である」という言い方もできるのですが、現実に月々の支払いが滞って物件が競売に掛けられてしまう方も決して少なくはありませんので、金融機関が定める返済比率を下回る水準で借入れを行うべきでしょう。(銀行も商売ですから、なるべく多くの貸し出しを行いたいのが実情です)

但し、この返済比率の基準は銀行によってバラバラですから、「何を基準に自分なりのボーダーラインを定めるか」が非常に悩ましいところなのです。

なお、私の経験則から申し上げれば「収入の25%程度」を返済比率の上限として借入額を算出するのがおすすめかと思います。

ただ、現在の金利の低さですと返済比率25%であってもオーバーローンとなってしまうケースがありますので、借入れの上限額を決定するには更に慎重な検討が必要となるでしょう。

 

さてここまで、物件種別を問わずにマイホーム購入前に知っておくべき知識をご紹介してまいりました。

記事のボリュームの問題で細かいご説明ができなかった部分もありますが、詳細については拙著「マイホーム購入成功マニュアル① 基礎知識編」にて解説しておりますので是非こちらをご一読ください。

なお、電子書籍においては「借入額の上限の定め方」や「おすすめのローン商品」、「仲介手数料を値引きさせるテクニック」、「失敗しない仲介業者の選び方」などについても解説を行なっております。

 

戸建てや土地購入に際して知っておくべき知識

ここまで「全ての物件に共通するマイホーム購入に際して必要な知識」をお届けしてまいりましたが、本項では『戸建てや土地の購入時に押さえておくべき事項』をご紹介し行きましょう。

土地の形状や面積について

さて、一口に土地といってもその面積や土地の形状は様々です。

正方形や長方形、時には三角の物件も目に致しますし、言葉では表せないないような複雑な形のものや「旗竿地(間口の狭い通路を経て道路に接続する物件)」と呼ばれる土地も存在します。

もちろん、どのような形状の土地を購入するのも買主の自由なのですが、あまり奇抜な形状の物件を購入すると建物を建てる際に苦労させられることになるでしょう。

実は民法においては隣地との境界線から50cmの距離を空けて建物を建築するルールが定められています。(隣地の承諾があれば後退は不要)

よって、仮に間口が4mの長方形の土地に建物を建てるとなると、幅3m(土地の間口4m-両サイドの境界線からの後退0.5m+0.5m=3m)の家しか建築できないことになる訳です。

そしてこれが三角形の土地ともなれば、土地の中心部分にしか建物を建てることができませんから、物件の資産価値は大きく下落することになるでしょう。

また旗竿地などの間口が極端に狭い物件の場合には、道路に接する間口が2m以上確保されていなければ建築確認を取得することができませんし、通路部分をカースペースとして利用するのであれば少なくとも2.5mの幅がなければ自動車のドアの開閉にも苦労することになるはずです。(普通自動車の横幅は1.8m以上あり、ドアを開けて乗り降りする場合には更にスペースが必要となる)

こうした事情から、土地や一戸建ての物件を選ぶ場合には「土地の形状」が非常に重要な要素となって来ます。

一方、土地の面積についても注意すべき点は多々あります。

近年では40㎡台の戸建て物件も増えていますが、こうした土地では建築可能な建物の間取りが極端に制限されることになりますから、土地としての資産価値はどうしても低いものとなってしまうでしょう。

また、ある程度の大きさが確保されていても、面積が80㎡以下の土地に一定以上の間取り(3LDK、4LDKなど)を入れようと思えば、建物を3階建てにせざるを得なくなるのが通常です。

ちなみに地域によっては建物を建てる土地に対して「面積を100㎡以上とすること」などの制限を定めているところもありますから、こうしたエリアで面積の小さな土地を購入することは避けなければなりません。(既に建物が建っている土地については問題なく建て替えが可能です)

前面道路について

土地などの購入に当たっては、物件が接する道路についても注意すべき点があります。

前面道路に関してまず注意するべきなのが、「建築基準法上の道路に面しているのか否か」という問題です。

実は一口に道路といっても様々な区別があるのですが、この建築基準法上の道路に面していない物件においては建物の再建築を行うことができません。(但し、この道路に面している場合でも「接道幅が2m未満の場合」には再建築不可となります)

また、建築基準法の道路の中にも

  • 道路法による道路(建基法第42条1項1号)
  • 開発道路(建基法第42条1項2号)
  • 建築基準法の施行の時、すでに存在した道路(建基法第42条1項3号)
  • 都市計画道路などに伴う道路(建基法第42条1項4号)
  • 位置指定道路(建基法第42条1項5号)
  • 2項道路(建基法第42条2項)

といった種類があり、2項道路(建基法第42条2項)の場合には原則としてセットバックが必要となります。

ちなみにセットバックとは「道路の幅員が4m確保できていないケースにおいて、道路の中心から2mの敷地後退をしなければならないルール」のことであり、こうした道路に面した物件を購入すると建替え時に敷地の一部を道路として提供しなければならなくなるのです。

※道路提供した部分は建築面積に含めることができず、ブロック塀などを建てることもできません。

※確保するべき道路幅員が6mの地域も存在します。

よって、充分な広さが確保された土地であると思って購入したものの、建替え時のセットバックにより土地面積が大幅に減少してしまう物件も存在しますので、この点には注意が必要でしょう。

※道路種別の中には「但し書き道路」というものもありますが、こちらについては別記事「但し書き道路について解説いたします!」をご参照ください。

一方、建築基準法上の道路種別とは別に「公道」と「私道」という区別も存在します。

ご存知の通り、公道は県や市、都などの地方自治体が管理する道路を指し、私道はその管理を民間が行っている道路です。

※前述の建築基準法上の道路であっても、公道である場合と私道である場合があります。

なお、公道であれば道路に不具合が生じた際にも行政がその整備に当たりますが、私道の場合には道路の所有者がメンテナンスを行う必要があるのです。

そして通常、私道に面している物件を購入する場合には「私道部分の所有権」もセットで売買されるケースが多いのですが、時には『前面道路が完全に他人のもの』というパターンもあります。

こうした土地を買ってしまうと、配管工事を行うに当たって道路を掘る際に地権者の許可が必要になりますし、「自動車での通行を禁じる」などと言われてしまうこともあり得ますので、必ず『道路権利者の通行や掘削の許可』を得ている物件を購入するべきでしょう。

ちなみに私道の権利がセットになっている物件でも、道路部分に複数の所有者が存在する場合には、後々のトラブルを回避するために他の権利者から通行や掘削の許可を取得した上で物件を売りに出すのが通常です。

さて、ここまで道路の種類についてお話をしてまいりましたが、道路上に設置されている施設についても注意する必要があります。

例えば物件の前面に電柱や道路標識、ゴミ捨て場などがある場合には、これを気軽に移動させることができないケースもありますので、物件を見に行く際にはこれらの施設にも気を配るようにするべきです。

水道・下水・電気等について

道路に続いては、物件へと供給されている水道や下水、電気などについても知っておくべきことがあります。

これらの設備は物件が接する道路上の本管(電気の場合は本線)から分岐した引込管(線)を経由して、各宅地に引き込まれることになりますが、水道や下水の本管には「公設本管」と「私設本管」という2つの種類が存在します。

公設本管とはその名の通り、地方自治体などの公的な機関が管理する本管となりますから、トラブルが生じた場合でも行政が修繕に当たることになります。

これに対して私設本管は民間が管理する本管となりますから、漏水などが生じた際にはその所有者がメンテナンスを行うことになるのです。

なお、原則として公道に敷設されている本管は公設本管が殆どとなりますが、私道の場合はその多くが私設本管となるでしょう。(私道の公設本管もなくはありません)

一方、本管から分岐する引込管についても注意すべき点はあります。

例えば、公道上の公設本管から分岐して宅地に引き込まれる水道の引込管は、公道に埋まっている部分も含めて民間の所有物となります。

よって、管の劣化などを原因として引込管交換工事を行う場合や、新たに配管を引込むケースでは、公道部分の工事費用も含めて予算を組む必要が生じて来るのです。

更に、購入した物件の引込管が他人の土地を経緯由して自分の敷地に引き込まれているケースでは、地中越境に関する問題が生じることになるでしょう。

建物について

さて戸建てを購入するとなれば、雨漏りやシロアリの被害など「建物に関する心配事」が付いて回るものです。

但し、新築の建売物件を購入するのであれば、こうした建物の欠陥等に関する問題についてはあまり気にする必要はないでしょう。

実は近年、不動産業者が分譲する建売物件に関しては住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」や「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」などによって、徹底的な法整備が行われ、

分譲主は建物の主要な部分について10年間に渡って責任を負わねばならなくなった上、倒産などのリスクに備えての供託金の預け入れや保険への加入を義務付けられているです。

よって、過去には購入した新築建物の欠陥などを巡って「その後何年も裁判を行う」というケースもありましたが、現在ではこうしたトラブルは激減しておりますので新築住宅を購入するに当たっては「最も恵まれた時代」ということができるでしょう。

一方、中古建てについてもインスペクションと瑕疵保険という制度が定着しつつあります。

インスペクションとは住宅検査を指す言葉であり、この検査に合格した物件については「建物の欠陥に対する保険」に加入することが可能となります。

そして、瑕疵保険に加入している中古物件を購入すれば万が一建物に欠陥が見付かっても、買主は保険によって救済される(修繕費用が保険によって支払われる)ことになりますから、これは非常にありがたい制度となるはずです。

但し、まだまだインスペクションや瑕疵保険に加入していない中古戸建ても少なくありませんし、たとえ保険に入っていたとしても『問題がある物件は回避したい』というのが本音かと思いますので、内覧に当たっては雨漏りや配管の漏水、建物の傾きなどに注意しながら物件を見て回る必要があるでしょう。

権利関係について

ここまで戸建てや土地を購入する際の注意点を解説してまいりましたが、最後にお届けするのが権利関係の問題についてとなります。

一口に「権利関係」といっても様々なパターンがありますが、まず押さえておくべきは土地の境界についてとなるでしょう。

我が国では土地ごとに境界線が定められており、境界標と呼ばれる目印(↑や+などの記号が刻まれた石杭や金属プレート、鋲など)が設置されています。

しかしながら設置から年月を経れば「境界標が紛失してしまうケース」もありますし、「そもそも境界の確定を行っていない」という土地も存在しているのです。

そして、こうした状況において発生して来るのが「境界を巡る権利関係のトラブル」となります。

例えば売主から「ここが境界線だよ」と言われていたにも係わらず、後日隣地の方から『境界線の位置に納得できない!』などと言われるケースは現実に発生していますので、土地の売買に際して境界の確認測量を必ず済ませるべきでしょう。

また境界線について争いがなくとも「隣家の軒がこちらの敷地に飛び出している」、「購入した家の配管が隣地を通過して引き込まれている」といった越境問題が生じている場合もありますので、

よって、物件の引渡しに際しては『越境の解消』、もしくは『関係権利者と覚書を取り交わすなどして、今後の取り決めを済ませておくこと』が重要です。

 

さて以上が、土地や戸建てを購入する際に押さえておくべき知識となりますが、実はまだまだお話ししておきたい情報が多々あります。

「中古戸建てを購入する際に自分で行える欠陥発見法」や、「登記簿記載事項証明書(登記簿謄本)のチェックポイント」、そして「建築確認に関する基礎知識」や「擁壁・ブロック塀などの工作物についての注意点」などがそれに当たりますが、

これらについては拙著「マイホーム購入成功マニュアル② 戸建てと売地の購入 土地・建物・権利関係編」にて詳細な解説を行っておりますので是非お手に取っていただければ幸いです。

 

分譲マンションの購入に際して知っておくべき知識

土地や戸建てに続いては、分譲マンションについて押さえておくべき知識をご紹介してまいります。

住環境について

住環境については、本記事の冒頭にて「全ての物件に共通する事項」として取り扱いましたが、壁や天井、床などを挟んで見ず知らずの第三者が日々の生活を送っているマンションにおいては戸建て以上に住環境の問題が生じやすい環境となりますので、細心の注意を払う必要が出て来ます。

そして、ここで注意すべきとなるのが

  • 騒音の問題
  • 厄介な住人の問題
  • 事故物件の問題

という3点です。

騒音については、築年の新しいマンションであれば「ある程度の対策」は施されているはずですし、古い物件でも防音工事などを行うことで一定の効果を上げることができますが、これはあくまでも『通常の生活騒音に対する備え』ということになります。

よって、如何に対策を講じても複数の子供が走り回っていればそれなりの音は聞こえるものですし、中には大音量で音楽を聴いたり、室内で騒音や振動を伴う作業を行う住人もいますから、事前に近隣住人についてのリサーチを行っておくことが非常に重要です。

また、他人の音が気になるのであれば、「自分たちが生活している音に不快感を抱いている者」がいる可能性も充分にあります。

そして、こうした隣人が『性格的に難のある人物』であった場合には、問題は更に厄介なものとなるでしょう。

更に厄介な住人の中には、「お部屋をゴミ屋敷化させている者」や「近隣に嫌がらせを繰り返す者」もおりますので、こうした住人の部屋に面した物件を購入することだけは避けたいところです。

なお、分譲マンションの場合には事故物件についても注意が必要でしょう。

もちろん購入するお部屋や、その隣りが事故物件であれば必ず告知が行われるはずですが、これが「3軒・4軒隣り」「フロアーが異なる」となって来れば説明を行わない業者も出て来るはずです。

戸建てであれば2軒・3軒離れてしまえば気にならない事項が、マンションの場合には資産価値に大きく係わってまいりますので、この点には充分にご注意いただければと思います。

マンションの建物について

続いて「マンションの建物」についてのお話となりますが、戸建てに比べてチェックポイントは非常に少なくなるのが特徴です。

分譲マンションの建物は「共用部分」と「専有部分」に大別することができますが、雨漏りやの原因となる屋根や外壁、建物の傾きなどに係わる基礎などは共用部分となり、そのメンテナンスを行うは管理組合の仕事ですから『お部屋の購入者が建物に欠陥によって負担を強いられる可能性は非常に低い』ということができるでしょう。

但し、お部屋の中で既に雨漏りの兆候がある場合には当然これを見過ごすことはできません(対処するのは管理組合ですが)し、お部屋の内側(床下や天井裏)は専有部分となりますから、「下水の漏れ」や「水道管の老朽化」などについての責任は購入者に降り懸かって来ますので決して気を抜くことはできません。

管理組合や管理会社について

そして、分譲マンションを選ぶ上で非常に重要な項目の一つとなるのが管理組合や管理会社についてとなります。

如何に素晴らしいマンションであっても日々の清掃やメンテナンスが適切に行われていなければ、その資産価値は徐々に下落していくものですし、組合運営が適切に行われておらずに財務状況が悪化すれば、将来的に修繕積立金などが跳ね上がる可能性も否めません。

なお、こうした危険なマンションを回避するためにはマンション内をしっかりと見て回ることと、管理組合が備える長期修繕計画書や重要事項調査報告書の内容をしっかりと確認しておくことが重要です。

購入するお部屋の内部のみならず、共用部分の利用の仕方や掃除の仕上がりに目を配れば、管理会社や管理組合の姿勢を知る手掛かりとなりますし、修繕計画の内容と実情、修繕積立金の使われ方などを見れば、分譲マンションの行く末をリアルに想像することができることでしょう。

借地権付き建物の売買について

分譲マンションに続いては、借地権付き建物を購入する際の注意事項を見てまいりましょう。

借地権付き建物であっても、取引対象が戸建てであれば既にお話しした「戸建て購入の知識」をお役立ていただくことができますが、問題となるのは『借地契約』についてとなります。

借地という言葉の通り、「土地を借りて、そこに借地人名義の家を建てる」のが借地契約となりますが、建物の建替えや契約の更新、そして建物の売却などに際しては『一定の金銭を地主に対して支払わねばならない』のがルールです。

但し、借地契約はその期間が30年以上に及ぶことも珍しくありませんから、こうした費用について明確な取り決めがされておらず、将来的に地主と借地人の間でトラブルが生じることも少なくありません。

よって借地権付きの建物を購入する場合には、これらの費用などについてより詳細な打ち合わせを地主と行い、その内容をしっかりと借地契約の中に盛り込んでおくのが得策です。

ちなみに、近年では借地に建つ分譲マンションも目にすることがありますが、借地契約の終了と共に建物を取り壊すのが原則となりますから、その資産価値はどうしても低くなってしまいます(その分、販売価格もお手頃です)し、

売却する際には譲渡承諾料の問題も出て来ますので、購入に際しては充分な検討が必要になるかと思います。

 

これまで分譲マンションや借地権付き建物を購入する前に押さえてべき知識をお届けしてまいりましたが、読者の皆様におかれましてはまだまだ知りたいことがあるはずです。

分譲マンションであれば、「厄介な住人を発見する方法」や「良い管理会社・管理組合の見分け方」、そして「新築と中古はどちらにするべき?」「リノベーション物件のメリットとデメリット」などがそれに当たるでしょう。

また借地権についても「地代や更新料、各種承諾料の相場」や「地主との交渉のポイント」については是非押さえておきたい知識となりますが、これらの事項については「マイホーム購入成功マニュアル④ 分譲マンション・借地権編」にて解説を行っております。

 

法令上の制限について

ここまで物件種別による「知っておくべき知識」をお届けしてまいりましたが、ここで再び全ての物件に共通するポイントのご紹介となります。

実は我が国では、土地の利用方法や建物の計画などに関して「法律による様々な制限」が課せられており、これを『法令上の制限』と呼んでいます。

そして、このようなお話をすると「マイホームを買うのに、そのような専門的な知識は不要なのでは?」と思われるかもしれませんが、そうした考えは『少々危険である』と言わざるを得ません。

例えば、土地を購入して店舗兼自宅を建築しようと思っていても、用途地域の制限にて店舗の営業ができないというエリアが存在しますし、建替えに際して3階建てを希望していたにも係わらず、高さ制限によって実現不能な地域もあるでしょう。

また、「分譲マンションの購入希望者には係わりのないお話なのでは?」とお思いになられるかもしれませんが、法令上の制限を知ることで『今後、物件周辺の街並みがどうように変わって行くのか』『隣りの空き地にどの程度の大きさの建物が建つのか』といった事項についての予想が可能となりますので、知識を身に付けておいて決して損はないはずです。

なお、一口に法令上の制限と言っても約50種もの法律に係わる事項を学ぶ必要がありますから、その全てを網羅するのは至難の業と言わざるを得ません。

但し、マイホーム購入に必要な知識のみに絞り込んで勉強を行えば、それ程の時間と労力を要することはありませんので、ご興味のある方は是非、拙著「マイホーム購入成功マニュアル③ 戸建てと売地の購入 法令上の制限編」をご一読いただければと思います。

ちなみに本書では、法令上の制限以外にも「マイホーム購入における相場観の身に付け方」などについて解説を行っております。

 

住宅購入前に知っておくべき知識まとめ

さてここまで、マイホーム購入に際して押さえておくべき知識というテーマで記事をお届けしてまいりました。

家を購入するとなると「仲介業者の説明を信用するしかない」というのが通常ですが、その説明が必ずしも正しいとは限りませんから、後々のトラブルを避けるために購入希望者自身もある程度の知識を身に付けておく必要があるでしょう。

なお、本記事にてお伝えしきれなかった知識については拙著「マイホーム購入成功マニュアル」シリーズにて詳細な解説を行っておりますので、この機会に是非お手に取っていただければ幸いです。

 

ではこれにて、「住宅購入前に知っておくべき知識」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。