以前、本ブログでは「居住用賃貸物件の契約の流れ」についてご説明する記事をお届けいたしましたが、この記事を読まれた方から『月極駐車場の利用者募集や契約の契約等に関しても解説して欲しい』とのご要望を頂いておりました。

そこで本日は、こうしたニーズにお応えして「駐車場契約の流れ」について解説する知恵袋をお届けすることにいたしましょう。

駐車場契約の流れ

 

月極駐車場契約の特色

さて、月極駐車場の契約までの流れをお話しする前に、まずは一般の賃貸物件と月極駐車場の違いについてご説明してみたいと思います。

そしてここで前提となるのが、駐車場は借地借家法の適用を受けない賃貸物件であるという点です。

通常の貸室賃貸ですと、借地借家法にて賃借人保護の様々なルールが定められていますから、例えば「貸主が借主に解約を迫る場合には正当事由(解約をせざるを得ない止むなき理由)」が必要となりますが、

駐車場ではこうした制限がありません(借主の保護は不要であるため、オーナーの一存で解約が可能となります)ので、契約書の内容次第で自由な取り決めが可能となります。

ちなみに駐車場の契約に借地借家法が適用されないのは、土地を貸すのではなく「駐車施設を貸し出すため」という理由によりますから、未舗装・未線引きの駐車場を貸す場合などには「借地借家法の対象」とみなされるケースもあるのでご注意ください。

また、駐車場は宅地建物取引業法についても適用対象外ですから、仲介に不動産業者が入る場合にも重要事項の説明は不要ですし、宅地建物取引士や不動産業の免許さえ必要ないのです。

そうとなれば、仲介手数料も取り放題(報酬の上限規定が存在しない)ということなりますが、駐車場だけに賃料も安いですから、結局は取れても賃料の1ヶ月が関の山となるでしょう。

更にアパート等とは異なり、オーナー様が個人で利用者を募集をしても、それ程のリスクが無い(実はリスクもあるのですが)ため、不動産業者が空き区画にお客様を付けても、大家さんからは広告宣伝費がもらえないのが通常です。

よって、不動産業者が駐車場仲介をした場合の報酬は「お客様(駐車場利用者)からの仲介手数料(賃料の1ヶ月分が相場)のみ」ということになります。

なお、このような状況の中で問題となるのが、駐車場の募集看板を見た他の不動産屋さんから「お客様を付けさせて欲しい」と頼まれた場合です。

広告宣伝費を大家さんから頂けない以上は、お客様から貰う仲介手数料を折半するしか方法はありませんが、駐車場の賃料相場が安い地域では「報酬が数千円となってしまうケースもある」でしょう。

こうした事情から、不動産屋さんが管理を請け負っている駐車場については「他の不動産業者による客付けは禁止」、または「お客様を付けても報酬はなし」というのが暗黙のルールとなっているのです。

さて、このようなお話をすると「そのようなルールがあるならば、そもそも駐車場にお客様を付けて来る不動産屋さんがいないのでは?」と思われるかもしれませんが、

『家を買われた方』や『賃貸のお部屋を借りた方』の仲介をした不動産業者は、お客様から「駐車場を探して欲しい」と頼まれると、これを断る訳にはいきません。

そこで、『報酬がもらえない』のを承知しながら駐車場を探し回り、「報酬はなしで構いません」と前置きして、空き区画にお客様を付けてくることがあるのです。

※時折、「どうしても報酬が欲しい」と粘る業者もいますが、管理会社からは「かなり迷惑がられる」ことになります。

このように月極駐車場は賃貸物件でありながら、アパートなどとは大きく扱いが異なりますから、借りる側も直接管理会社へ連絡を入れて契約を締結するケースが圧倒的に多い物件となるのです。

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月極駐車場の申込みから成約までの流れ

さて、駐車場を取り巻く現状をご理解いただけたところで、駐車場契約の流れについて見て行くことにいたしましょう。

駐車場の新規募集・申込み

既に申し上げた通り、管理を任された不動産業者は駐車場の募集業務で大きな利益を上げることはできませんから、SUUMOなどの物件情報共有媒体に費用を掛けた広告を出すことは稀です。

※近年ではアットホームなどの一部の媒体で無料で物件情報が掲載できるようになったため、広告を目にすることもあるかもしれません。

そこで月極駐車場におけるメインの広告活動となってくるのが、現地に募集看板を掲げるという方法です。

そして、看板を見たお客様からの問い合わせが管理会社に舞い込めば、「賃料や敷金などの条件を提示した上で、即契約に進む」というのが一般的な流れです。

しかしながら、近年では駐車場契約でのトラブルも増えつつありますので、申込書を書いてもらい、それを基にオーナー様に審査をしてもらったり、連帯保証人の擁立、賃貸保証会社の加入などを義務付ける管理会社も増えつつあるのが実情でしょう。

ちなみにDX化が進み始めた不動産業界においては、申込み手続きをスマホで完結できる「スマート申込み」を導入している管理会社も増えつつありますが、未だに昔ながらの申込み方法を採用している不動産業者が多いようです。

月極駐車場契約前の準備

さて、申込みが完了し無事にオーナー様や賃貸保証会社の審査をクリアーすれば、次は契約の準備段階へと話は進みます。

まず管理会社は契約の締結に先駆けて、賃料や敷金などの明細を記した精算書を申込人へ送付することになるでしょう。

なお、駐車場の契約に際してやり取りされる主な費用は以下のとおりとなります。

  • 賃料(前家賃を含む)
  • 敷金(賃料の1ヶ月程度が相場)
  • 賃貸保証会社の保証料(賃料の半月〜1ヶ月分程度)
  • 車庫証明発行手数料

ちなみに、これらの契約金については事前に管理会社やオーナーの口座へ振込んだ上で契約に臨むの原則となりますが、現金で精算を行う場合には契約の場で受け渡しが行われることになります。

また、契約に際しては申込人が提出を求められる書類もありますので、精算書にはこちらも記載されているのが通常です。

提出する書類や資料は管理会社にもよりますが、以下のものが挙げられます。

  • 借主の身分証明書(個人契約の場合)
  • 会社謄本(法人契約の場合)
  • 駐車場利用者の身分証明書(借主と駐車場利用者別の場合)
  • 連帯保証人承諾書(連帯保証人を擁立する場合)
  • 連帯保証人の印鑑証明(連帯保証人を擁立する場合)
  • 借主の収入証明書類(個人契約の場合)
  • 決算書の控え(法人契約の場合)

自動車保管場所契約の締結

契約金の準備が整い、必要書類が揃えばいよいよ契約の締結となりますが、駐車場の契約においては重要事項の説明が不要であるため郵送で契約を済ませる管理会社が多い上、近年では電子契約により完全非対面で契約手続きを完結するケースも増えつつありますが、借主・管理会社双方の「人となり」を互いに確かめる意味でも直接会って契約を締結するのがおすすめです。

※駐車場の契約書の内容については、別記事「駐車場契約書と特約の内容を解説いたします!」という記事にて解説させていただいておりますので、「契約書の内容が心配!」という方は是非こちらをご参照ください。

ちなみに、契約期間については1年間または2年間というのが通常であり、契約が満期を迎えた場合には借主が更新料や事務手数料を支払って更新手続きを行うことになります。

なお、更新料の相場に関しては半月分から1ヵ月分という管理会社が多いようですが、契約期間が1年間の場合には更に安価に設定されるケースが多いようです。

※契約の更新に関しては「自動更新」となっている契約書も存在しますが、管理会社としては更新料等も貴重な収入源となりますので更新料を設定しているところが多いでしょう。

また契約に際しては、借主から「車庫証明の発行」を求められる場合がありますが、こちらも有料としている管理会社さんが多いでしょう。

一方、車庫証明の発行手数料に関しては数千円が相場となっていますが、中には1万円以上の費用を請求する会社もあるようです。

こうして契約書の読み合わせが完了し、駐車場使用契約書や賃貸保証契約書への署名・捺印が完了すれば契約は終了となります。

月極駐車場を契約する際の注意点

このように月極駐車場の契約は意外と簡単に完了してしまうものですが、最後に契約締結に際してのポイントや注意点をお話ししてみたいと思います。

賃料振込み口座の確認

通常、契約書には賃料の振込先が記されているものですが、この口座をしっかりと確認しておくことが重要です。

実は契約締結前に契約金を振り込んだ口座と、駐車場利用開始後の賃料振込口座が異なるケースは意外に多いですから、不要なトラブルを避ける意味でも必ず確認をするようにしましょう。

駐車場の両隣の車種などを確認しておく

実際に駐車場を使い始めたら隣の契約車両が思ったよりも大型であり、「車の出し入れ」や「乗り降り」が非常に大変というケースも少なくありません。

また、隣の区画の方が怖そうなカスタムカーなどに乗っている場合もあり得ますから、この点は是非確認をするようにしてください。

なお、アパートなどの契約とは異なり、他の空き区画さえあれば「契約の場で区画の変更をしてもらう」ことも不可能ではありませんので、相談してみる価値はあるはずです。

管理会社の営業時間や緊急対応について聞いておく

月極駐車場を借りるのに「緊急事態」を想定される方は少ないでしょうが、実は急な困りごとが発生することも少なくありません。

例えば、お隣の区画の方が誤って自分の区画に車を止めてしまったり、全く関係のない車両が違法駐車で自分の区画を占領しているといったケースは意外に多いものです。

よって、こうした緊急事態に備えて管理会社の営業時間や、トラブルの際に「オーナー様に直接連絡をとることが可能であるか」といった点は聞いておく方が無難でしょう。

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月極駐車場の契約の流れ!まとめ

さて、以上が「駐車場契約の流れ」の解説となります。

色々な意味で「あまり手間の掛からない」という点が特徴の駐車場の契約ですが、ここまで解説して来たように『お部屋を賃貸するのとは異なる点』も少なくありませんので、充分に注意を怠らず契約に臨んでください。

なお、本記事は原則として「これから駐車場の管理を行う不動産屋さん」や「初めて月極駐車場の契約に臨む借主様」に向けた書き方をしておりますが、『自宅の空地などを利用して、自力で駐車場経営を始めてみようか』というオーナー様や、『現在、不動産会社に管理を任せているが、その管理体制に疑問がある』という大家さんなどにも是非ご参考にしていただければ幸いです。

ではこれにて、「駐車場契約の流れを解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。