景気動向に左右され辛く、安定した収益を生み出す投資対象として根強い人気を博しているのが「不動産投資」です。

そして、前回の記事におきましては各種投資対象物件の特性についてお話をいたしましたが、今回はいよいよ物件の下見に際して注意すべき点や、「購入するべきか?しないべきか?」という意思決定をする上でのポイント等について解説をしてみたいと思います。

では早速、「収益物件購入のポイントと注意点について」の知恵袋を開いてみましょう。

収益物件購入のポイント

 

物件の収益性のみに囚われてはならない

不動産投資を始めようと決心して、ある程度の資金計画が固まれば、次はいよいよ物件を選ぶ段階に入ってきます。

ネット上には投資用物件を専門に扱う情報サイトが溢れておりますし、皆さんの身近におられる、戸建てやマンションの仲介をメインとしている一般的な不動産屋さんでも、収益物件の情報を入手することは可能です。

そしてこの段階で、多くの購入希望者の頭の中には「どんな物件でも利回りさえ回れば!」という思いがあるかと思いますが、これは投資を成功させる上で非常に危険な考え方となります。

もちろん投資なのですから、儲けを優先するのは当たり前ですが、厄介な物件を掴まされれば、その後に大変な苦労を背負い込むことになりますから、「リスクと収益を天秤に掛けながらの慎重な物件選び」を行うべきでしょう。

では実際に、物件選びのポイントを見て行くことにしましょう。

※なお、本記事では一棟タイプのアパート・マンションにおける物件選びを前提に解説をさせていただきます。

 

物件の立地と住環境

一口に「投資物件を選ぶポイント」といっても、そこには様々な要素があるものですが、最初に確認するべきは立地と住環境についてということになるでしょう。

まず立地についてですが、駅から遠く離れ、交通の便が悪い地域にある投資物件は、通常よりも高い利回りが設定されていることが少なくありませんが、安易にこうした高利回り物件に心惹かれてしまうのは大変に危険です。

交通の便が悪い地域は、潜在的に入居希望者が少ないエリアということになりますし、現在のように賃貸物件が余りつつある時流の中では、空室が発生した場合に「次の入居者が決まらない」というリスクが高まることになるでしょう。

このような空室リスクを回避したいのであれば、なるべく駅に近い物件、そして、たとえバス便であっても停留場までの距離が近く、駅まで行くバスの本数が多い物件を選ぶようにするべきです。

また、物件からコンビニやスーパー等の利便施設までの距離も重要な判断要素となりますし、検討の対象がファミリータイプの物件ならば学校や病院等の施設の有無についても考慮する必要があります。

一方、どんなに便利な立地であっても物件の周辺に幹線道路や電車の線路があれば、騒音や振動の被害が想定されますし、工場やカラオケスナックに近接する物件についても同様のリスクが生じることになるでしょう。

更に、お墓や葬儀場などの所謂「嫌悪施設」にも近接していないかという点も確認しておくべきです。

ちなみに幼稚園や小学校などの施設は、物件の近くにあってもあまり問題がないように感じますが、音楽を大音量で流したり、送り迎えの時間にズラリと自動車が並んで渋滞を発生させる等のトラブルを引き起こす、「隠れ嫌悪施設」となる場合もありますので是非ご注意ください。

投資物件選びに際しては、こうした「一見気付かないリスク」に対してもマイホームを購入する時のが如く、問題を発見するアンテナを張り巡らせながら周辺環境を吟味していく必要があるでしょう。

 

建物の外観について

また立地や住環境と並んで、意外に大切なのが建物の外観や物件全体の印象、つまり不動産の業界用語でいう「面(つら)」と呼ばれる要素となります。

築年数の新しいアパートなどでは、作り手もそれなりに意匠を凝らした外見にするものですが、古い投資用物件に関しては、見た目度外視の物件も少なくありません。

このようなお話をすると「お部屋の中さえ良ければ問題はないのでは・・・」と思われるでしょうが、建物の見た目の印象や雰囲気は、入居希望者の意思決定に大きな影響を及ぼすものとなりますから、物件選びの際には必ず意識を配るべき点となるでしょう。

なお、現況の外見が今一つの場合には「将来的に改善の余地があるか否か」も、下見の際には確認しておくべき要素となります。

 

建物内部について

さて続いては、建物の内部に係るチェックポイントを見てまいりましょう。

収益物件の場合、新築でもない限りは「物件の内部を見ないまま、購入の意思決定をしなければならない(既に入居者がいるために室内を見ることができない)ケース」も多々あります。

しかしながら、室内を見ないで購入するのは、プロの不動産業者でもかなりリスキーな行為ですから、空室が一部屋でもあれば、室内を見せてもらえるよう交渉してみましょう。

また、どうしても中が見られない場合には販売用の図面だけではなく、建築確認図面なども手に入れるようにして、「物件の外観から内部構造を少しでもイメージできる状態」にした上で下見に臨むべきです。

なお、投資物件の中には「よくよく考えてみると非常に無理のある間取り」の建物が、平然と建てられていることも多いですから、内部が見られない場合は図面と想像力をフルに活かして、間取りの特色や弱点を見抜くようにしましょう。

ちなみに、物件を見慣れてくると「図面を見ただけで間取りの問題点」に気が付けるようになりますが、慣れない間は、自分の家の間取りに検討対象物件を当てはめてみる方法がお勧めです。

例えば、『購入を検討している物件のトイレが狭過ぎる』ように感じたならば、図面からその寸法を割り出し、自分の部屋のトイレでメジャーなどを用いて「どれくらいの狭さであるのかを再現」してみれば、一目で間取りの欠点に気付くことができますよね。

こうした作業は非常に地道なものとなりますが、内部を見ることのできない物件を検討する上では非常に重要なものとなります。

 

満室想定利回り・現在の賃料設定・滞納状況など

そして次に注意するべきは、「満室想定利回り」や「現在の賃料設定」等に関する問題です。

販売図面などに記されている物件の利回りは、満室想定賃料収入(収益物件が満室となった場合に想定される賃料収入)で算出されたものであることが殆どですが、これを鵜呑みにして物件を購入する訳には行きません。

そこでまずは、「想定賃料の設定自体に無理がないか?」という点をチェックしてみましょう。

売主から収益物件の売却を依頼された仲介業者(これを「元付け業者」と呼びます)は、購入者の目を惹くために『到底借手が現れないような高額の賃料設定で想定利回りを計算し、これを広告に掲載しているケース」も珍しくありませんから、必ず自分自身で近隣の賃貸相場をネット検索するなどして確認を行うようにしてください。

また、現在空室となっており「入居者募集中」となっているお部屋の賃料についても、同様の理由で故意に引き上げられている可能性がありますのでご注意ください。

なお、既に物件を借りている居住中の入居者の賃料設定についても、一度冷静に見直してみる必要があります。

建物が古くなればなる程に、入居者の募集に際しての賃料設定を低くしていかねばならないのが現実ですが、10年、20年と居住を続けている入居者の賃料設定は、お部屋を借りた当時のままである可能性が濃厚です。

よって、古くからの入居者が退去し、新たな入居者と入れ替わる度に、賃料収入が目減りしていくという憂き目に遭う投資家は非常に多いですから、居住中の入居者の賃料設定についても、固定収入とは考えずに退去後の減収リスクを考えておくべきでしょう。

ちなみに現況満室となっている物件でも、へヴィな滞納者などがいると、購入後に大変な苦労を背負わされる可能性があります。

賃料の滞納が3ヶ月分ともなれば、訴訟を起して退去を迫ることが可能となりますが、裁判費用に強制執行の費用、明渡し後のリフォーム費用は相当な金額となるはずですし、解決に至るまでの時間と労力を考えれば、強烈な滞納者の住まう物件には手を出さない方が無難であるかもしれません。

更に現在滞納者がいない場合でも、将来のリスク備えて「居住中の入居者が賃貸保証会社を利用しているか」といった点も確認をしておくべきです。(賃貸保証会社を利用していない場合には連帯保証人を擁立しているケースが多いのですが、いざ滞納が発生した際に保証人が支払いに応じてくれないことも少なくありません)

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管理について

さて、続いて確認するべき事項となるのが対象物件の管理についての問題です。

物件によっては、現在の管理会社(物件の管理を行う不動産業者)がオーナーチェンジ後(売買後)も引き続き管理を行う場合があり、「賃料収入の5%を管理費として徴収する」などの条件が付けられていることも少なくありません。

もちろん、こうした管理会社が適正な管理を行って、仕事に見合った管理報酬を請求してくる分には問題がないのですが、中にはクオリティーの低い仕事しかしてくれない業者も少なくありませんので注意が必要です。

また、特に管理会社が定められていない場合には、自分で管理を引き受けてくれる不動産業者を探して、依頼を行う必要がありますから、これに必要となる経費も考慮しておかねばなりません。

なお、どんな会社に物件の管理を依頼するべきかについては、別記事「賃貸管理会社選び方をご紹介いたします!」にて詳しく解説しております。

一方、戸数の少ない物件については、オーナーが自力で管理を行うことも可能ですので、自分自身で管理をしてみたいという方には「賃貸管理は大家が自ら行ってしまおう!」の記事を参考になさってください。

ちなみに、一口に賃貸物件の管理といっても「入金管理」や「契約管理」といった管理形態の違いもありますので、こちらに関しては別記事「賃貸管理会社の仕事内容をご紹介いたします!」をご一読いただければと思います。

 

修繕履歴について

収益物件の購入を検討するに当たっては、元付け業者などから様々な資料の提供(レントロール【賃料収入の一覧表】や建築確認関連の資料など)を受けることができますが、

その中でも、対象物件がこれまでにどのようなメンテナンスを行って来たかを記録した「修繕履歴」は特に重要なものとなります。(必ずしも全ての物件に備えられた資料ではありませんが)

例えば建物の屋根や外壁は、定期的なメンテナンスが必要となりますが、過去十数年間こうした工事をしていない中古物件ならば、将来的に工事に要する費用を差し引いた金額で物件を買い入れなければならないでしょう。

また修繕履歴を見ていて「屋根の補修工事の回数が多い」ならば、『過去に雨漏りが発生していた可能性が高い』といった具合に、物件の欠陥などを予想することも可能になるのです。

よって、物件資料の中に「修繕履歴」が含まれている場合には、隅々まで内容を確認するべきでしょう。

 

入居者の属性について

収益物件を購入する際には、可能であるならば「どのような職業に就き、如何なる家族構成の者が物件に入居しているか?」といった情報を知りたいところですが、

個人情報保護の観点から、たとえ購入希望者であっても、ここまで突っ込んだ内容の資料を入手するのはなかなか困難です。(契約が前提であれば情報が開示されるケースもありますが)

そうとなれば、どんな入居者がいるかは「蓋を開けてみてのお楽しみ!」という博打状態となってしましそうですが、ある程度ならば入居者の情報を現地で収集することも可能となります。

例えば、バルコニーの洗濯物をよく見てみれば作業着やYシャツ、そして子供服が干されていたりしますから、部屋ごとの家族構成や職業の予測が何となく付いて来るものです。

更に、共用廊下に置かれている入居者の私物や、駐輪所の自転車・三輪車の数なども合わせて考えれば、入居者全体の雰囲気がおおよそ掴めますから、現地で得られる情報は意外に少なくありません。

ちなみに、私が投資物件の下見に際してよく見るようにしているのは、「バルコニーへの荷物の置かれ方」「郵便受けの溢れ具合」「廊下等に置かれたゴミの状況」等であり、こうした点に着目していくと「問題のありそうな入居者」が居住しているか否かも見えて来るものです。

 

建物の状況について

そして次に気になるのが投資対象となる建物自体の状況です。

先程も申し上げた修繕記録などが入手できれば、それと見比べながら建物をチェックして回るのがベストですが、たとえ資料が入手不能でも、下見でかなりの情報を得ることができます。

まず建物の外観をじっくり観察することによって、外壁の剥がれやクラックの状況から修繕時期の予測はある程度可能となりますし、物件の屋上への立ち入りが禁止されていても、近くに高いビルなどがあれば、そこから屋上防水の状態を確認できる場合もあるでしょう。

更に建物の内部(廊下や階段、エントランス)からも、雨漏りの痕跡等がないかをじっくりと確認するべきです。

また、下水枡の蓋やパイプスペースなど、自力で確認することができる場所については、全て内部を見てみることをおすすめします。

「そんなことをして何が判るの?」と思われるかもしれませんが、例えばパイプスペースを開けて「水道管の腐食」や「下水配管の不具合」を発見できれば、後に必要となってくる修繕工事費の予測が可能となりますし、

下水枡の内部が汚れていれば、「配管清掃の不足」または「下水の勾配が確保されていない」という状況が見えてくるものです。

ちなみに、下水枡の内部が破損している場合や、枡・建物の周囲に地盤沈下の形跡が見られる場合には、漏れ出した汚水が地中の土を押し流し、地下空間を形成している可能性もありますので充分な注意が必要となるでしょう。

なおこの他にも、物件が抱える防犯上の問題点(外部から容易に進入が可能な箇所がある等)や、近隣の建物との取り合い(隣家の窓と物件の窓がバッティングしている等)、そして物件が面する道路上の施設(建物の目の前にゴミ捨て場などがないか等)についても、しっかりと確認をしておくべきでしょう。

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収益物件購入のポイントと注意点まとめ

さてここまで、収益物件を選ぶ際のポイントや注意点について解説してまいりました。

記事をお読みになればお気付きかとは思いますが、「どんな小さなヒントも見逃さない」という一種探偵的な要素が、投資物件選びには必要不可欠と言えるでしょう。

また投資である以上、リスクは必ず潜んでいるものですが、「不動産投資に限っては投資家の洞察力と経験で殆どの危険を回避できはず」ですから、是非とも五感を磨き上げ、お宝物件をGETしていただきたいものです。

これにて「収益物件購入のポイントと注意点についての知恵袋」を閉じさせていただきたいと思います!