収益物件の空室を抱えるオーナー様にとって、一番の関心事は「いつになったらお部屋に申し込みが入るのだろう」ということかと思います。

また、「相続でアパートなどを譲り受けた」という大家さんならともかく、ローンを抱えている投資家さんにとっては、空室の有無は正に死活問題となりますから、これは正に由々しき問題となるでしょう。

そしてこのような時には、管理会社から届く申込書がまるで「天の助け」のように感じてしまうものですが、焦って入居審査を通過させてしまったばかりに、後々大変なトラブルに発展することも少なくありません。

以前の記事「賃貸入居審査のコツをご紹介いたします!」では、申込人の人柄や身分を確認する手法についてご紹介しましたが、読者の方から「もっと詳しいことを教えて欲しい」との反響を多く頂いておりました。

そこで本日は、入居申込人と大家さんの「唯一の懸け橋」となる『入居申し込み書』の見方についてお話ししてみたいと思います。

では早速、賃貸申し込み書類から入居者の真実を見抜く知恵袋を開いてみましょう。

賃貸申し込み書類

 

申し込み書類から読み取れる情報は意外に多い

賃貸物件の運用を行っているオーナー様はもちろん、一度でも賃貸物件を借りた経験のある方なら、誰でも賃貸の申し込み書をご覧になったことがあることと思います。

この入居お申し込み書、物件を管理している管理会社によっても書式は様々ですが、大抵の場合はA4の用紙一枚程度の書式となっていますから、「あれの何処にそんなに多くの情報が・・・」と思われた方も多いことでしょう。

しかしながら、能々その内容に目を通して見ると意外に役に立つ情報が隠れているものです。

なお、以前に書いた「入居審査のコツの記事」では『大家さんが自分で行える審査の手法』をメインに解説をいたしましたが、今回は「申込書のツッコミ所を利用して、申込人の真の姿を見極める方法」をお教えしたいと思います。

では、一体申込書のどの部分に着目するべきなのでしょうか。

記載漏れ

管理会社から申し込み書が送られて来た際に、「書面上に多くの記載漏れがある」というケースをご経験された大家さんも多いことと思います。

これは申込人が自分の勤め先の会社の住所や、連帯保証人となる者の住所や年齢、そして勤め先・年収などのデータを知らない場合に起こる現象です。

ちなみに管理会社としては、「とりあえず申込みがあったことを大家さんにいち早く知らせるため、空欄が目立つ申し込み書であってもまずは届けておきたい」という心理が働くものですから、こうした不完全なお申し込み書がオーナー様の手下に届くことになります。

もちろん、不明点が埋まった段階で改めて「完全版の申し込み書」が送られて来るのですが、まず見るべきはその空欄の状況です。

例えば「本人の勤め先の住所が空欄となっているケース」では、これから入社するのであるならばともかく、自分の会社の所在地さえ暗記していないというのは、申込人に少々問題があることは明らかですよね。

また、連帯保証人が親である場合などに、その方の生年月日や年齢、勤め先などを知らないのは、これもちょっと気になるところでしょう。

なお、もう一点注意すべきなのが、完全版の申込書が送られて来るタイミングです。

『この物件に入居したい』という意思が強ければ、たとえ申し込み書に埋められない箇所があっても即座に情報を集めて報告して来るはずですし、申込人自身や保証人の基本的な情報であるにも係らず、それを調べるのに長い時間を要するのは違和感を感じずにはおれないでしょう。

添付されて来る免許証

通常、申し込み書の送付には身分を証明する運転免許証が添付されているものです。(保険証などの場合もありますが)

そしてここで注目するべきは、この免許証の裏面の部分に記載された住所変更の履歴となります。

仮にゴールド免許の場合であっても更新期間は5年となりますし、それ以外の免許証は3年で更新時期となりますが、免許証の裏側を確認すれば「この期間内に何回引っ越しをしたか」という情報を得ることができる訳です。

なお、この短期間に何度も引っ越しを繰り返しているようならば、管理会社を通して「引っ越しの理由」などについて尋ねてみるべきでしょう。

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勤続年数

こちらも入居申し込み書には必ず書いてある情報です。

なお、住宅ローンの審査などにおいては融資の承認を得るのに「勤続年数が3年以上であること」が求められる点から考えても、「勤続年数」と「滞納のリスク」がある程度リンクしていることは確実でしょう。

よって、勤続3年以上とまでは言いませんが、せめて1年くらいの勤続年数は欲しいところですから、これに満たない者には連帯保証人と賃貸保証会社のダブル保証を課すのなどの方法がおすすめです。

ちなみに一般的な企業では、新規に採用した者に対して「試用期間」を設けるのが通常です。

そして、その期間は平均で3ヶ月~6ヶ月となっていますから、この期間中の者は突然解雇される可能性もありますので、判断には細心の注意が必要になるかと思います。

勤務先

職業で人間性を決め付けることは、あまり感心することではないかもしれませんが、これが物件の運営に直結するのであれば話は別です。

基本、飲食関係の方は転職回数が多い傾向にありますし、私のような営業職の中には歩合給の割合が高いケースも多く、収入に浮き沈みがある可能性が高いでしょう。

また、工場勤務や物流関係、医療や介護に携わるお仕事の場合には夜勤が当たり前にありますので、夜間の掃除・洗濯などによる騒音問題を惹き起こすことも少なくありません。

これだけ審査落ちにする訳にはいきませんが、給与体系や職務内容を管理会社に詳しくヒアリングさせ、入居の可否を判断する材料としたいところです。

転居理由

これもお申し込み書にはありがちな記入欄ですが、ここを空欄のまま提出してくる申込み人は意外に多いものです。

以前の記事「入居者の退去理由から知る、長く住みたくなるお部屋の作り方!」でもお話ししましたが、退去の理由には「やむを得ない理由」「そうでもない理由」が存在します。

そして、「そうでもない理由」で引っ越しをする者は、これを繰り返す傾向がありますので、このタイプの入居者に長く住んでもらえる確率は低いでしょう。

よって転居理由が空欄の場合は、これ幸いと「詳しい退去理由」を問いただすよう管理会社に依頼してみましょう。

誤字脱字・字の美しさ

申し込み書の文字にまで着目し始めると「もはやプロファイリングの世界」になってしまうかもしれませんが、質の悪い入居者を見抜くには意外に大切な項目となります。

そして、あまりに字が乱れている者や、書き間違えが甚だしい場合にはやはり注意が必要となるでしょう。

また字が汚いだけならいざ知らず、乱暴・投げやりに書いている者は更に心配です。

これから世話になる大家さんに対して雑な対応をする人は、近隣住民にも必ず迷惑を掛けるものです。

もちろん、申し込み書の文字だけで入居の可否を判断することはできませんが、迷いが生じた際には意外に役立つ情報となります。

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入居申し込み書まとめ

さて、ここまで申込書から読み取れる情報についてお話ししてまいりました。

あくまでも予想の域を出ない判定方法も少なくありませんが、私自身、そしてお付き合いのある管理会社さんたちの間でも、これらの項目はかなり重点を置いているポイントとなりますから、是非入居審査時のご参考にしていただければと思います。

なお、冒頭でもお話しした通り、申し込み書は借り手と貸し手を直接繋ぐ唯一のツールとなりますから、可能な限りの注意を払い、入居後のトラブルを回避したいものです。

ではこれにて、「賃貸申し込み書類から入居者の真実を見抜く!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。