お部屋を借りる際などに、借主に義務付けられているのが「借家人賠償保険」への加入となります。

今や賃貸借契約には付きものとなった借家人賠償保険ですが、その詳細についてはあまり理解していないという方も少なくないことでしょう。

そこで本日は「借家人賠償保険とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、保険加入の意義から補償の範囲、実務における取り扱いまでわかりやすくご説明したいと思います。

借家人賠償保険

 

借家人賠償保険とは

ではまず最初に「借家人賠償保険とは何なのか」という点からは解説を始めましょう。

そもそも借家人賠償保険とは

偶発的な事故(火災、爆発、水濡れ等、)により、借主(入居者)が建物に損害を与えてしまった場合に、貸主(大家さん)へ損害の賠償を行うための保険

と定義付けられています。

※但し、「入居者が転んだ拍子に壁に穴を開けた」というような『破損』は対象外となります。

さて、初めから説明が少々難しくなってしまいましたので、具体的な例を挙げてご説明していきましょう。

例えば賃貸物件を借りている入居者がタバコに火を点けたまま寝てしまい、火事を起こして建物が燃えてしまったとします。

このケースにおいて、入居者は「眠ってしまった」という過失があり、借主が負う注意義務に違反したことになりますので、貸主(大家さん)は入居者に対して建物の修理費用等の賠償を求める(損害賠償請求)ことが可能となるのです。

但し、建物に与えた損害を賠償するには相当な資力が必要となるはずですから、賃貸で部屋を借りている人間がこれを支払うのは「少々荷が重い」というのも事実でしょう。

そこで賃貸物件への入居に際して、賃借人が加入を義務付けられているのが借家人賠償保険という保険となる訳です。

入居者がこの保険にさえ加入していれば、火災を起して建物に被害を与えた際にも保険金が支払われます(入居者に対して)から、大家さんの損害賠償請求に対して「支払いが不能」といった事態を防ぐことができるでしょう。

ちなみに、ここで気になるのが「大家さんが火災保険に加入している場合はどうなるのだろう」という点についてであるかと思います。

仮に大家さんが火災保険に加入していれば、建物代については保険金を受け取れるはずですから、借主が借家人賠償保険へ加入する必要はないように感じるかもしれませんが、この2つの保険は

  • 大家さんが加入する火災保険/借主に損害賠償を請求できない事故に備えての保険
  • 借主が加入する借家人賠償保険/借主に大家さんへの賠償責任がある時に、借主へ支払われる保険

上記のような性質の違いがありますので、仮に大家さんの火災保険で保険金が出たとしても、借主に責任がある場合には賠償を逃れることはできませんので、賃貸物件への入居に際しては必ず加入しておくべき保険となるのです。

借家人賠償保険の内容について

さてここからは、より具体的に借家人賠償保険の内容を見ていきましょう。

借家人賠償保険の保険料と契約期間

ここまでお話ししてきたように、賃貸物件の入居に際しては借家人賠償保険への加入が義務付けられていますが、保険料と契約期間はどのようになっているのでしょうか。

原則として借家人賠償保険は、空室の募集を行っている賃貸管理会社が代理店を務めている保険会社の商品を契約することになりますので、保険料について一定の基準はありません。

但し、あまり高額な保険料を設定すると、保険料自体がネックとなってお部屋が決まらないケースも出てくるため

  • 単身向け物件(1R・1Kなど)/15000~20000円程度
  • ファミリータイプ物件/20000~35000円程度

に設定されているケースが多いはずです。

ちなみに契約期間についてはお部屋の賃貸借契約の期間に合わせて、2年間となっていることが多いでしょう。

そして、賃貸借契約の更新を迎えた際には、借家人賠償保険についても再加入することになります。

借家人賠償保険の補償内容

続きましては、借家人賠償保険の補償内容等についてご説明していきます。

賃貸借契約には必須の借家人賠償保険ですが、その内容をよく確認してみると何種類かの他の保険商品と組み合わされたものとなっており

  • 借家人賠償保険
  • 家財保険
  • 個人賠償責任保険
  • 修理費用補償

以上が主な保険の種類となります。

最もメインの保険となる借家人賠償保険は、既にお話ししたように偶発的な事故(火災など)が原因で建物に損害を与えた際に補償される保険であり、賠償金額の上限は1000~2000万円に設定されることが殆どです。

これに対して家財保険は、入居者が泥棒に入られた場合や、雨漏り等によってパソコンなどの家具に被害が出たケースにおいて支払われる保険となりますので、「借主自身を守るための保険」と言えるでしょう。

借家人賠償保険の保険料を支払うのはあくまで入居者ですが、この家財保険を付加することで「賠償に係る保険だけではなく、入居者自身にもメリットがある保険」とすることができる訳です。

なお本来は、入居者の所有する家財の価値に合わせて保険額を取り決めるべきですが、多くの入居者は「安ければそれで良い」という判断をしているのが現実でしょう。

さて、続いてご紹介するのが個人賠償責任保険であり、こちらは「第三者へ損害を与えてしまった場合に補償を受け取れる保険」となります。

例えば、自転車で歩行者に怪我をさせてしまった場合などはこの保険の対象となりますから、「借家人賠償保険が賃貸している建物を対象にしている」のに対して、個人賠償責任保険は『人に対して賠償責任を負う際の保険』と呼べるものです。

そして、最後にご紹介するのが修理費用補償であり、こちらは「借りている建物に関して、賠償責任は負わないものの、契約上で原状回復が義務付けられている損害について補償される保険」となります。

例えば、契約書の特約で「借主は責任の有無に関係なく、窓ガラスの破損を自費で修繕する」と定められており、飛び石などでガラスが割れた場合には、保険金を受け取ることができる訳です。

但し、こうした特約が結ばれるケースは稀ですから、この保険が付加されている商品はあまり見掛けません。

このように借家人賠償保険は他のいくつかの保険とセットで商品化されている場合が殆どですから、自分が加入する際にはその内容をじっくりと確認する必要があるでしょう。

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保険会社について

ここまで借家人賠償保険について解説してまいりましたが、保険商品を扱う会社や組織は様々であり、大手の保険会社から、賃貸保証会社が運営する会社、また保険ではなく共済で保証を行う組織もあります。

そして運営会社によって「保険料が高い・安い」「保険金が出やすい・出辛い」など様々な違いがありますが、総じていえるのは大手の保険会社が提供する商品は保険料も安く、保証も手厚い傾向にあるということでしょう。

なお保険会社によっては、入居者とその同居人の自転車事故等に対しても上限1億もの保険金(個人賠償保険付き)が支払われる上、掛け金も非常にお手頃という商品もありますから、大家さんとしてはこうした保険商品を用意していることを募集時のPRに利用すれば、物件自体に付加価値を与えることにもなるはずです。

但し、借家人賠償保険は管理会社が保険代理店の資格を取得して、加入者の募集を行うのが通常ですから、選べる保険会社の種類はかなり限定さることになるのが現実しょう。

更に、大手保険会社の代理店資格を維持して行くためには厳しい契約ノルマをクリアーし、頻繁に行われる研修・テストを受けなければならないなど、代理店側の負担も大きいですから、

大家さんが自由に保険会社を選びたいのであれば、物件管理を任せる段階から扱える保険会社の種類を確認しておくか、管理会社とは別の保険代理店を利用することをお勧めいたします。(契約等の手続きは管理会社に任せるが、保険契約については指定の代理店にて行う等)

借主は自分で保険会社を選ぶべき

では最後に、これからお部屋を借りる借主へ向けて、より有利な借家人賠償保険の選び方を解説しておきましょう。

まず前提として申し上げておきたいのが

管理会社が用意した保険商品が気に入れない場合には、自分で保険契約を締結して補償内容を提示することで問題なく入居が可能になる

ということです。

もちろん事前に、管理会社や大家さんへの通告が必要になりますし、「賠償額の上限を2000万円以上にすること」などの条件を付けられる可能性はありますが、しっかりとした保険会社の商品に加入するのであれば、文句を言われることは原則ありません。

※店舗などの事業用物件の契約では、むしろ借主が自分で選んだ保険に加入するのが一般的です。

そして、「自分で保険会社を選べる」となれば、是非商品選びに際して注目していただきたいのが

  • 個人賠償責任保険の補償内容
  • 水災補償の有無
  • 地震保険の有無

となります。

既に解説した通り、個人賠償責任保険の内容は保険会社ごとに大きく異なっており、補償上限額が1000万円程度の会社から、特約次第で1億、2億まで限度額を上げることができるケースもあります。

自転車事故などでは高額の賠償請求が行われることも増えてきましたので、補償範囲は家族全員、そして保証額もなるべく上限を上げておいて損はないでしょう。

また、異常気象が叫ばれる昨今では、水災に対する特約も付加しておくべきです。

河川の氾濫以外にも、土砂災害が補償対象に含まれる保険も多いですから、河川やがけ地の周辺、1階に所在する物件では是非水災特約をご検討ください。

なお、大地震の発生リスクが高まっていますから、万が一に備えて家財の地震保険にも加入しておくべきかと思います。

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賠償保険まとめ

さてここまで、借家人賠償保険をテーマに解説をお届けしてまいりました。

「お部屋を借りるだけなのに、保険への加入を強制されるのは気に入らない」とお考えの方も多いことと思いますが、ご説明して来たとおり『借家人賠償保険はあくまでも借主を守るための保険』となりますので、その点を是非ご理解いただければ幸いです。

また、他の特約を付加することで日常生活における様々なリスクに対処できますから、お引越しを機会にご自身やご家族の危機管理を見つめ直してみるのも非常に意義のあることなのではないでしょうか。

ではこれにて、「借家人賠償保険とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。